本の概要
21世紀の最重要キーワードの一つはゲノムであり、医学生物学の研究から様々な臨床応用にも利用されるため、技術的な側面だけでなく、文化的な側面殻も多くの議論が起きています。
特に生殖には謎も多く、ゲノム編集による解明と不妊症や不育症などの治療も望まれています。
生殖医療や周辺技術の変化は女性の権利を向上させますが、従来の家族観を変化させる面もあるため、多くの人がゲノムについての理解を深める必要があります。
生命倫理はたしかに重要な概念ですが、日本では生命倫理という言葉を免罪符にして、議論が進んでいない面もあります。
多く人がゲノムに対する知識を深め、議論に参加し、画一的な禁止ではなく、ものごとを柔軟に進めていく必要があります。
この本がおすすめの人
・ゲノムに対する知識を身に着けたい人
・ゲノム医療の現状を知りたい人
・ゲノム医療がもたらす倫理観の変化について知りたい人
ゲノム編集について詳しい、「ゲノム編集とは何か」の要約はこちら
本の要約
ゲノムをめぐる社会の動きはどのようなものか
中国でゲノム編集した子供が生まれるなど、ゲノム技術の進化は留まることがありません。
21世紀の最重要キーワードの一つはゲノムであり、医学生物学の研究から様々な臨床応用にも利用され始めています。
技術面だけでなく、社会文化的側面から語られる機会も増えいています。
ゲノムは21世紀の最重要キーワードでゲノム研究の進化はとどまることがありません。
なぜ、ゲノム研究が大きく進化したのか
ゲノム編集とは遺伝情報であるDNAなどを人為的に改変する方法です。
これまでの生物の品種改良のように偶然に頼ったものから、ピンポイントで改変できるようになったことで、大きく発展しています。
現在の生殖医療は決して万能でありません。生殖においては謎も多く、ゲノム編集による解明と不妊症や不育症などの治療も望まれている分野になっています。
ゲノムをピンポイントで改変できるようになったことで、技術が大きく発展しています。
生殖医療はどのような状況か
日本では少子化が進み、平均希望子供数も減少傾向にあります。
子供を産む年齢も高齢化し卵子の凍結を行う人の数も増加しています。卵子凍結を行ってもその卵子を使用しないことも多い。
キャリアを積む過程で今は、子供を産まないという選択が卵子の凍結という行動につながっているものと思われています。
日本ではヨーロッパと異なり、いつまで卵子を保存するのかが明確化されていません。
とりあえず今は子供を持たないことを選択する女性の意向をどのように尊重すべきか考えることが重要となります。
卵子の凍結の増加などが生殖医療でも見られています。女性の意向をどう尊重すべきかを考えることが重要です。
生殖医療の進化は家族にどのような影響があるのか
卵子凍結などは自分の遺伝的なつながりのある子を持ちたい気持ちの現れです。自分のゲノムにこだわりがなければ、第3者から精子や卵子の提供を受けるという方法もあります。
一般的な概念として生殖と性行為と家族形成が一つのものとして扱われてきましたが、精子や卵子の提供や体外受精などでこれらが別々となる可能性は十分にあります。
人々の価値観や思い込みに基づいている法律や医療現場が答えられていない部分も多く、時代遅れになってしまっている。
精子や卵子の提供、体外受精で生殖と性行為と家族形成が別々になっていく可能性があります。
法制度や医療現場が時代遅れになってしまっている部分もあります。
ミトコンドリア病とは何か、ゲノム治療がどのように用いられているのか
ミトコンドリアは細胞内にあり、細胞の活動を支えるエネルギーを産生する役割を持っています。細胞本体とは異なる遺伝情報を持ち、もともと別の細菌であったものが取り込まれて利用されていると考えられています。
ミトコンドリアは母方からのみ子に伝わることが知られています。
ミトコンドリア病はミトコンドリアの機能不全によって起きますが、これまで対策がありませんでしたが、卵子の段階で健康なミトコンドリアを移植しておくなどの方法で子供にミトコンドリア病が伝わることを防ぐことができます。
このような遺伝情報を書き換えたり、改変する治療は精度が悪いこと、体細胞を改変しても効果が長続きしないことなどの理由でうまく治療ができませんでした。
しかし、クリスパーキャス9による精度向上や幹細胞や生殖細胞を改変することで持続性を得ることができる可能性も出てきています。
細胞内でエネルギーを産生するミトコンドリアの異常でミトコンドリア病は発生します。
ゲノム編集の精度向上、肝細胞、卵細胞の改変が可能となれば治療が可能になる可能性があります。
海外と日本の子供を産むこととに関する考え方の違いはどこにあるのか
デンマークでは、子供を持つことや家族を形成することは女性の権利と考えられており、婚姻状態や性的志向とは無関係に子供を持ちたい女性の権利が尊重されている。
しかし、日本では家父長制の影響が強く、父親のいない家庭が想像しにくく、伝統的な家族観が唯一のものと考える人が少なくない。
今後は精子の提供などで性行為なしで女性が子供を産む可能性も出てきています。
諸外国では子供を持つことと婚姻状態や性的志向は無関係ですが、日本では伝統的な家族観でしか考えない人も少なくありません。
日本の女性の権利の問題点はどこか
避妊や人工中絶問題はキリスト教による禁止など宗教上の理由から政治的な問題になることも少なくありません。
日本では宗教的な軋轢は少ないが、女性の性と生殖に関する健康と権利を満たして要るとは言い難い状況です。
配偶者の同意が必要である問題は解決しつつありますが、胎児に出生前検査などで異常が見つかった時の対処については明記されていない状態です。
女性の性と生殖に関する健康と権利を満たしているとは言えない状況です。
出生前診断をどうとらえるべきか
単一遺伝子の異常によって起きることが明らかになっている疾患の数は増加しています。
その結果出生前の検査で異常と見つかる胎児の数も増えています。
これらの出生前の検査には命の選別や障害者への差別の原因となるなどの声も少なくありません。新生児のゲノムをスクリーニングし、データ化するなどの技術も生まれている。
ゲノムに対する人々の知識が追いついておらず、ゲノム技術に対する反発や議論の多くは十分な知識と理解がないことに起因しているのかもしれません。
遺伝子の異常で発症する疾患が明らかになることで、出生前に疾患を把握することもできるようになっていますが差別につながるなどの反発も上がっています。
多くの人のゲノムに対する知識が追いついていないため問題が起来ている部分もあります。
生命倫理という言葉の持つ意味はなにか
体外受精など新しい技術が生まれるたびに、生命倫理という言葉が使用されています。
生命倫理は宗教的、文化的、哲学的な背景から形成されています。ヒト胚を用いた研究ではES細胞などの取り扱いなど生命倫理に関する議論が活発化しています。
ヒト胚を用いた研究について明確に禁止しているドイツなどのように過去の過ち(ナチスによる優生学の利用)から慎重になっている例もあります。
日本では生命倫理という言葉が免罪符のように使用され、議論が進められていないような側面もあります。
法律などによる枠組み、議論がなくても問題が大きくならなかったのは、同調圧力による自己規制による部分が多く、今後も持続可能であるかは大きな疑問である。
生命倫理は宗教的、文化的、哲学的な背景から形成されるため、各国で異なっています。
日本では生命倫理という言葉が免罪符のように使用され、議論が進められていないような側面もあります。
我々はゲノムとどう向き合うべきか
我々はすべて、ゲノムの子であり、ゲノムについて考えることはすべての人に必要なことです。病気の治療や生殖医療などをどう評価するかは透明性のある議論が必要になります。
そのためにも多くの人がゲノムに対する知識を身に着ける努力をし、社会がサポートすることが求められます。
ゲノム編集を含む胚研究や医療など各国での捉え方はそれぞれです。単一的な答えが出るものではなくまだまだゲノムについてわからないことも非常に多くなっています。
コンスタントにその場の小解決を目指すようなアプローチが最も現実的な方法。新たな科学的発見や急速な進歩発展が予測される分野では朝令暮改もすべきです。
多くの人がゲノムに対する知識を身に着ける必要があります。
大きく発展することが期待されている分野であり、画一的な禁止ではなく、コンスタントにその場の小解決を目指すようなアプローチが最も現実的な方法となります。
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