電子部品:コイル、インダクタ コイルと何か?電流変化を抑えることができる理由は何か?

この記事で分かること

  • コイル、インダクタとは:コイルは、電線をらせん状に巻いた電子部品で、電流が流れると磁力が発生します。この磁力を利用して、電流の変化を抑える役割を持つ部品をインダクタと呼びます。
  • 電流変化を抑えることができる理由:コイルは電流の変化に応じて、その変化を打ち消すように電圧を発生させるため、電流の変化を妨げる働きをすることができます。

コイル、インダクタ

 日本の電子部品メーカーは、半導体製造分野では後れを取っているものの、コンデンサやセンサーなどの部品分野では、長年にわたり世界市場で強い競争力を保ち続けており、台湾企業による買収も報じられています。

 https://news.yahoo.co.jp/articles/7c65f370b3f25f662f603f1b6f59d590fba4cd46

 日本の電子部品メーカーは、長年にわたって培ってきた高い技術力、品質へのこだわり、そして特定のニッチ分野での圧倒的な強みにより、世界市場でその地位を確固たるものにしています。

 今回は受動部品であるコイル、インダクタについての記事となります。

コイル、インダクタとは何か

 コイルは、電気を流すと磁力を発生させる電子部品です。この磁力によって電流の変化を抑えたり、特定の周波数の信号を通したりする役割があります。この役割を果たす部品を、インダクタと呼びます。インダクタは、日本語で「誘導子」とも呼ばれます。


コイルの構造と原理

 コイルは、電線をらせん状に巻いたシンプルな構造をしています。この形状から、英語で「coil」と呼ばれます。

 電線に電流を流すと、右ねじの法則に従って、電線の周りに磁場が発生します。コイルは、電線を何度も巻くことで、この磁場を強めています。

インダクタンス

 コイルの性能を示す重要な指標がインダクタンスです。これは、コイルがどれだけ電流の変化を妨げるかを示す値で、単位はヘンリー(H)です。

 インダクタンスは、コイルの巻き数、断面積、長さ、そして内部のコア(磁性体)の材質によって決まります。巻き数が多いほど、断面積が大きいほど、また磁性体が優れているほど、インダクタンスは大きくなります。


主な役割と用途

 インダクタンスの特性を活かし、コイルは以下のような用途で使われています。

  • ノイズ除去: ノイズ成分(高周波)を遮断し、必要な信号だけを通します。
  • DC-DCコンバータ: 電圧を上げたり下げたりする際に、エネルギーを一時的に蓄える役割を担います。
  • フィルター回路: 特定の周波数の信号だけを通したり、遮断したりするのに使われます。
  • 発振回路: 共振を利用して特定の周波数の信号を生成します。

 スマートフォン、パソコン、テレビ、自動車の電子制御装置など、現代の多くの電子機器に不可欠な部品です。

コイルは、電線をらせん状に巻いた電子部品で、電流が流れると磁力が発生します。この磁力を利用して、電流の変化を抑える役割を持つ部品をインダクタと呼びます。インダクタは、高周波ノイズの除去や、DC-DCコンバータなどの電源回路に不可欠な部品です。

なぜ磁力によって電流の変化が起きるのか

 磁力によって電流が変化する現象は電磁誘導と呼ばれ、2つの主要な法則で説明されます。


ファラデーの電磁誘導の法則

 コイルを貫く磁束(磁力線の数)が変化すると、その変化を妨げる方向に起電力(電圧)が発生し、その結果として電流が流れます。磁束の変化が速いほど、またコイルの巻き数が多いほど、発生する起電力は大きくなります。磁束を変化させるには、磁石を動かしたり、電磁石の電流を変えたりする方法があります。

レンツの法則

 電磁誘導によって流れる誘導電流の向きは、磁束の変化を打ち消すような磁場を生成する方向になります。たとえば、コイルに磁石のN極を近づけると、コイルはその動きを妨げようとN極を生成するような向きに電流を流します。逆にN極を遠ざけると、それを引き戻そうとS極を生成する向きに電流が流れます。これは、エネルギー保存の法則が根底にある現象です。

コイルで磁力による電流の変化を緩やかにすることのできる理由

 たとえば、コイルに流れる電流を急に増やそうとすると、磁束も増加します。すると、コイルは「磁束の増加を妨げよう」として、元の電流とは逆向きの電圧を発生させます。この逆向きの電圧が電流を押し戻すように働き、電流の増加をゆっくりとさせます。

 逆に、電流を急に減らそうとすると、磁束は減少します。すると、コイルは「磁束の減少を妨げよう」として、元の電流と同じ向きの電圧を発生させます。この電圧が電流を維持しようと働き、電流の減少を緩やかにします。

 このように、コイルは電流の変化に応じて、その変化を打ち消すように電圧を発生させるため、電流の変化を妨げる働きをするのです。この性質をインダクタンスと呼びます。

コイルの磁束が変化すると、その変化を妨げようとする起電力が発生します。この現象を電磁誘導と呼び、起電力によって電流が流れるため、電流に変化が起きます。これは、エネルギー保存の法則に基づいています。

コイルにはどのような種類があるのか

 コイルには、用途や構造によって様々な種類があります。主要な種類は以下の通りです。

1. 形状による分類

  • 巻線タイプ:最も一般的なコイルで、導線を芯材(コア)に巻き付けて作られます。大電流を扱う電源回路や、高いインダクタンスが必要な用途に適しています。
  • 積層タイプ:フェライトなどの材料と導体パターンを交互に重ねて焼き固めたもので、小型化に適しています。スマートフォンの内部など、スペースが限られた用途でよく使われます。
  • 薄膜タイプ:半導体製造技術を応用し、基板上に薄いコイルパターンを形成したものです。非常に小型で、高精度な高周波回路に用いられます。

2. コア(芯材)の有無による分類

  • 空芯コイル:芯材を持たない、単にらせん状に巻かれたコイルです。磁気飽和が起きず、エネルギー損失が少ないため、主に高周波回路や無線通信機器で使われます。
  • コア入りコイル:鉄やフェライトなどの磁性体を芯材として使用したものです。磁性体の働きにより、同じ巻き数でもインダクタンスを大きくすることができます。電源回路やノイズ対策に多く使われます。

3. 用途や構造による分類

  • チョークコイル:特定の周波数帯の信号を遮断する目的で使われるコイルです。電源ラインのノイズ除去や高周波ノイズのフィルタリングに用いられます。
  • トロイダルコイル:ドーナツ状のコアに導線を巻き付けたコイルです。磁束がコア内に閉じ込められるため、外部への漏れ磁束が非常に少ないという特徴があります。低ノイズが求められるオーディオ機器や電源回路に用いられます。
  • ソレノイドコイル:中空の円筒形に導線を巻いたもので、電流を流すと内部に強い磁場を発生させます。この磁場を利用して可動鉄心を動かすため、電磁石として使われます。電磁弁やリレーなど、電気エネルギーを直線運動に変換する用途で広く利用されています。

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