この記事で分かること
・iPS細胞とは何か:iPS細胞は、皮膚や血液などの体細胞に特定の遺伝子を導入することで、胚性幹細胞(ES細胞)と同様にさまざまな細胞に分化できる能力(多能性)を持たせた細胞です。
・どのようにして、多能性を持たせるのか:特定の転写因子によって細胞の遺伝子発現プログラムが初期化させ、さまざまな種類の細胞に分化できる能力を持った状態にしています。
・今回の装置の特徴:勧善閉鎖系による自動作動、コンパクトさ、コスト低減などが要因となり、iPS細胞の製造効率と品質が向上しています。
アイピースによる、iPS細胞の製造装置の展示
米国の新興企業(アイピース)が、2025年の大阪・関西万博において、iPS細胞の製造装置を展示する予定です。この装置は、iPS細胞を体細胞へ分化させることも可能で、再生医療の進展に寄与すると期待されています。
https://www.asahi.com/articles/AST3G3CJGT3GPLBJ003M.html?utm_source=chatgpt.com
同万博では、iPS細胞から作製された「脈動する心臓」の展示も計画されており、最先端の再生医療技術を体感できる場となる見込みです。
iPS細胞とは何か
iPS細胞(人工多能性幹細胞)は、皮膚や血液などの体細胞に特定の遺伝子を導入することで、胚性幹細胞(ES細胞)と同様にさまざまな細胞に分化できる能力(多能性)を持たせた細胞です。2006年に山中伸弥教授(京都大学)らによって開発され、2012年にはノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
iPS細胞の特徴
- 多能性:体のあらゆる細胞(神経細胞、心筋細胞、肝細胞など)に分化できる
- 自己複製能力:長期間にわたり増殖できる
- 患者自身の細胞から作成可能:拒絶反応のリスクを軽減できる
iPS細胞の応用分野
- 再生医療:失われた組織や臓器を再生する治療(パーキンソン病、心筋梗塞、脊髄損傷など)
- 創薬:疾患モデルの作製や新薬の効果・副作用の検証
- 病態研究:遺伝性疾患のメカニズム解明
課題と今後の展望
- 安全性:がん化のリスクを減らす技術開発が進行中
- コスト:培養コストを下げ、大量生産を可能にする技術が求められる
- 倫理的問題:iPS細胞由来の臓器移植に関する倫理的議論が必要
iPS細胞技術は、再生医療だけでなく、医薬品開発や基礎研究の分野でも大きな可能性を持っています。

iPS細胞は、皮膚や血液などの体細胞に特定の遺伝子を導入することで、胚性幹細胞(ES細胞)と同様にさまざまな細胞に分化できる能力(多能性)を持たせた細胞です。再生医療や医薬品開発、基礎研究の分野でも大きな可能性を持っています。
なぜ多能性を持つのか
iPS細胞が多能性を持つ理由は、特定の転写因子によって細胞の遺伝子発現プログラムが初期化されるためです。
1. 多能性とは?
多能性(pluripotency)とは、さまざまな種類の細胞に分化できる能力のことを指します。通常、皮膚細胞や血液細胞などの体細胞は特定の機能に特化していますが、iPS細胞はすべての細胞種(内胚葉・中胚葉・外胚葉)に分化することができます。
2. iPS細胞が多能性を持つ仕組み
iPS細胞は、山中伸弥教授らによって発見された山中因子」と呼ばれる4つの転写因子を導入することで、体細胞をリプログラム(初期化)することで作られます。
山中因子(Yamanaka factors)
- Oct3/4(OCT4):多能性を維持する遺伝子のスイッチをONにする
- Sox2:Oct3/4と協力して多能性遺伝子の発現を制御
- Klf4:細胞の増殖や生存に関与
- c-Myc:細胞増殖を促進し、初期化効率を向上させる
これらの因子を導入することで、体細胞の遺伝子発現が初期化され、ES細胞(胚性幹細胞)と同じような多能性を獲得します。
3. 多能性を維持するメカニズム
iPS細胞は、特定のエピジェネティックな制御によって多能性を維持します。
- ヒストン修飾:特定の遺伝子のON/OFFを調節し、多能性を維持
- DNAメチル化のリセット:体細胞の分化プログラムを解除し、初期化する
このような仕組みにより、iPS細胞は多能性を獲得し、さまざまな細胞に分化できる能力を持つようになります。

i特定の転写因子によって細胞の遺伝子発現プログラムが初期化させ、さまざまな種類の細胞に分化できる能力を持った状態にすることが可能です。
ES細胞との違いは何か
iPS細胞とES細胞(胚性幹細胞)の主な違いには以下のようなものが挙げられます。
項目 | iPS細胞(人工多能性幹細胞) | ES細胞(胚性幹細胞) |
---|---|---|
作製方法 | 体細胞に「山中因子」を導入して初期化 | 受精卵から内部細胞塊を取り出して培養 |
細胞の供給源 | 皮膚や血液などの体細胞(患者自身の細胞も可) | 受精卵(主に余剰胚) |
多能性 | 高い(ほぼES細胞と同等) | 非常に高い(万能性) |
拒絶反応 | 患者自身の細胞を使えば低リスク | 他人の細胞なので免疫拒絶の可能性あり |
倫理的問題 | なし(受精卵を破壊しない) | あり(受精卵を使用するため生命倫理の問題) |
臨床応用の進展 | iPS細胞由来の細胞移植が進行中 | 研究は進んでいるが、倫理的課題あり |
主な違いの詳細
- 作製方法の違い
- iPS細胞は、皮膚や血液などの体細胞に「山中因子(Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc)」を導入し、遺伝子発現を初期化することで作製。
- ES細胞は、受精卵(胚盤胞)の内部細胞塊を取り出して培養することで作製。
- 免疫適合性
- iPS細胞は患者自身の細胞を用いることができるため、免疫拒絶のリスクが低い。
- ES細胞は他人由来の細胞であるため、移植時に免疫拒絶が起こる可能性がある。
- 倫理的課題
- iPS細胞は体細胞から作るため、倫理的問題はほぼなし。
- ES細胞は受精卵を使用するため、「生命の始まりをどう考えるか」という倫理的議論がある。
どちらが有望か?
- iPS細胞は倫理的な問題がなく、患者自身の細胞を使えるため実用化が進んでいる。
- ES細胞は多能性が高く研究に適しているが、倫理的問題や免疫拒絶の課題がある。
そのため、臨床応用ではiPS細胞が主流になりつつありますが、基礎研究では今もES細胞が重要な役割を果たしています。

iPS細胞とES細胞(胚性幹細胞)の主な違いは、作製方法や倫理的課題、免疫適合性などにあります。
iPS細胞を利用して、どんな臓器を作った事例があるのか
i PS細胞を活用した臓器や組織の作製は、さまざまな研究で成功しています。以下は主な例です。
1. 心臓(心筋組織)
- iPS細胞から心筋細胞を作製し、脈動する心臓組織を作ることに成功。
- 移植用の心筋パッチや心筋シートとして活用され、心筋梗塞の治療に応用される可能性がある。
2. 肝臓(ミニ肝臓)
- iPS細胞から肝臓の原基(オルガノイド)を作製し、マウスに移植して機能することを確認。
- 将来的に肝不全患者の治療や移植に応用が期待される。
3. 腎臓(腎組織)
- iPS細胞から腎臓の前駆細胞を作製し、ネフロン(腎臓の機能単位)を形成することに成功。
- しかし、尿を排出するシステムの開発が課題。
4. 角膜
- iPS細胞から角膜上皮細胞を作り、角膜移植の臨床試験が進行中。
- 角膜損傷や疾患による視力障害の治療に応用が期待される。
5. 血小板
- iPS細胞から血小板を作製し、血液製剤としての応用が進められている。
- 献血に依存しない血小板供給の実現を目指している。
6. 皮膚(人工皮膚)
- iPS細胞から表皮細胞を作り、重度のやけど患者向けの移植治療の研究が進行中。
7. 神経細胞(脳オルガノイド)
- iPS細胞からミニ脳(脳オルガノイド)を作製し、神経疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病など)の研究に活用。

多くの臓器が作成されており、まだ研究段階のものも多いですが、将来的に臨床応用が進めば、移植医療や難病治療の大きな突破口になると期待されています。
アイ・ピース株式会社はどんな会社なのか
アイ・ピース株式会社(I Peace, Inc.)は、iPS細胞の製造と提供を専門とするバイオテクノロジー企業です。2015年に米国カリフォルニア州パロアルトで設立され、京都市に製造拠点を持っています。
同社のミッションは、病気に苦しむ患者の苦痛を和らげ、健康な人々が高品質な生活を維持できるよう支援することです。そのために、すべての人が自分自身のiPS細胞を持ち、それを生涯にわたって利用できる未来を目指しています。
iPS細胞の量産と低価格化を実現し、個人向けに医療用iPS細胞の作製・保管サービス「マイ・ピース(MiPSC)」を提供しており、このサービスは、血液由来のiPS細胞を作製・保管し、将来の再生医療に備えるものです。
また、企業向けには、研究用および臨床用のiPS細胞の製造受託サービスを提供し、再生医療の研究開発を支援しています。
同社のCEOである田邊剛士氏は、京都大学の山中伸弥教授の研究室出身で、世界で初めてヒトiPS細胞の作製に成功した論文の第二著者です。このような背景から、I Peaceは高い技術力と専門性を持ち、再生医療の分野で革新的な取り組みを続けています。

I Peaceは高い技術力と専門性を持ち、再生医療の分野で革新的な取り組みを続け、iPS細胞の製造と提供を専門とするバイオテクノロジー企業です。
今回の製造装置の特徴は何か
アイ・ピース株式会社(I Peace, Inc.)が開発したiPS細胞製造装置には、以下の特徴があります。
- 完全閉鎖系の自動作製装置:iPS細胞の作製全工程を外部環境から遮断されたシステム内で完結させることで、汚染リスクを低減し、高品質な細胞製造を実現しています。
- 省スペース設計と集積性:装置はコンパクトに設計されており、複数のユニットを効率的に配置することで、大量生産が可能です。
- 多種同時製造能力:複数のドナー由来のiPS細胞を同時並行で作製できるため、個別化医療や研究の多様なニーズに応えます。
- コスト削減への貢献:自動化と効率化により、従来高額だったiPS細胞の作製コストを大幅に削減し、広範な利用を促進します。

勧善閉鎖系による自動作動、コンパクトさ、コスト低減などが要因となり、iPS細胞の製造効率と品質が向上し、再生医療や創薬研究の進展に寄与しています。
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