この記事で分かること
- ミラダシとは:プラントベースフードの一種で、大豆などの植物性原料を独自に加工し、動物性食品に共通する「うまみ」や「コク」を生み出すことで、動物性ダシの風味と満足感を再現しています。
- プラントベースフードの課題:味や食感、栄養面での再現性の低さです。また、価格が高く、流通や消費者への認知度がまだ低いことも普及の妨げとなっています。
不二製油のプラントベースフード、ミラダシ
不二製油は、植物性原料のみで動物性のうまみを再現した「MIRA-Dashi(ミラダシ)」の海外輸出を積極的に拡大しています。
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この戦略の背景には、同社の70年以上にわたる植物性油脂とタンパクの研究開発で培った「MIRACORE」という独自の技術ブランドがあります。この技術は、プラントベースフード(PBF)に不足しがちな「物足りなさ」を克服し、動物性食品特有の「満足感」を植物性素材で実現することを目指しています。
ミラダシはどのように製造されるのか
不二製油の「MIRA-Dashi(ミラダシ)」は、同社独自の技術ブランド「MIRACORE(ミラコア)」によって製造されています。この技術の核心は、長年にわたる植物性油脂と植物性タンパクの研究開発の知見を融合させることにあります。
一般的なプラントベースフード(PBF)は、動物性食品に比べて「物足りない」と感じられることが少なくありません。不二製油はこの物足りなさの原因が、動物性食品に豊富に含まれるタンパク質と油脂にあると考えました。
そこで、ミラダシでは、以下のような技術を組み合わせて、動物性のうまみやコク、満足感を植物性原料で再現しています。
- 植物性油脂とタンパク質の組み合わせ: とんこつスープの「豚脂(油脂)」と「コラーゲン(タンパク質)」の関係のように、植物性の油脂とタンパク質を組み合わせることで、動物性の風味や口当たりを再現しています。
- 素材の選定と加工: 大豆などの植物性原料を独自の方法で加工し、動物性の原料を煮出した際に出るような、奥深い「うまみ」や「コク」を生み出しています。
- 風味の再現: ビーフ、チキン、カツオ、白湯、貝といった様々な動物性のダシの風味を、植物性原料のみで再現するための独自のレシピや製造プロセスが用いられています。
これらの技術によって、ミラダシは、単に味を似せるだけでなく、料理に深みと満足感を与える「ダシ」としての役割を植物性原料で果たしています。これにより、ヴィーガンやベジタリアン、アレルギーを持つ人々だけでなく、健康志向や環境配慮からプラントベースフードを選ぶ人々にも、満足度の高い食体験を提供できるのです。

不二製油の「MIRA-Dashi(ミラダシ)」は、長年の植物性油脂とタンパク質の研究に基づいた独自の「MIRACORE」技術で製造されます。大豆などの植物性原料を独自に加工し、動物性食品に共通する「うまみ」や「コク」を生み出すことで、動物性ダシの風味と満足感を再現しています。
動物性のうまみやコクを再現する方法は
動物性のうまみやコクを再現する方法は、主に以下の2つの要素を組み合わせることで実現されます。
1. うま味成分の組み合わせ
「うま味」は、単一の成分だけでなく、いくつかの成分を組み合わせることで、より強く感じられる「相乗効果」が生じます。特に重要なのが、以下の3つのうま味成分です。
- グルタミン酸:昆布やトマト、野菜などに多く含まれる、アミノ酸系のうま味成分。
- イノシン酸:カツオや煮干し、肉類など、動物性食材に多く含まれる核酸系のうま味成分。
- グアニル酸:干ししいたけなどに多く含まれる核酸系のうま味成分。
これらを組み合わせて利用することで、動物性食材に多いイノシン酸や、干ししいたけに多いグアニル酸の風味を植物性原料で補い、うま味を増強させることができます。
2. タンパク質と油脂の利用
動物性のコクや満足感は、うま味成分だけでなく、タンパク質と油脂の組み合わせによってもたらされます。不二製油の「MIRA-Dashi(ミラダシ)」のように、植物性タンパク質(大豆など)と植物性油脂を独自の技術で組み合わせることで、動物性のダシを煮出した時のような、濃厚で深みのある口当たりや風味を再現します。
これらの要素を組み合わせることで、植物性原料のみでも、動物性食材に匹敵する、あるいはそれ以上の豊かなうまみとコク、満足感を生み出すことが可能になります。

動物性のうまみとコクは、主にグルタミン酸とイノシン酸、グアニル酸といったうま味成分の相乗効果と、タンパク質と油脂の組み合わせによって再現されます。これらの要素を植物性原料で適切に組み合わせることで、動物性ダシに似た濃厚な風味と満足感を生み出します。
ミラダシなどのプラントベースフードの課題は
ミラダシをはじめとするプラントベースフード(PBF)には、市場拡大を目指す上でいくつかの課題があります。
味や食感、栄養面での課題
プラントベースフードは、技術の進歩によって動物性食品にかなり近づいてきていますが、まだ完全に再現できていない部分もあります。特に以下の点が課題とされています。
- 風味・満足感: 動物性のうまみやコク、満足感を再現することは大きな挑戦です。不二製油の「ミラダシ」はこの課題を解決するために開発されましたが、多くのPBFにおいて、消費者が物足りなさを感じる場合があります。
- 食感: 肉や卵、チーズなどの独自の食感を植物性原料で完璧に再現することは難しく、開発が求められています。
- 栄養バランス: 動物性食品と全く同じ栄養バランスを実現することは簡単ではありません。特に、ビタミンB12や鉄分、亜鉛など、動物性食品に多く含まれる栄養素を、植物性食品でいかに補うかが課題です。
価格と流通の課題
- 価格の高さ: PBFは、通常の食品に比べてまだ価格が高い傾向にあります。これは、特殊な加工技術や研究開発にコストがかかるためで、より多くの消費者に普及させるには、価格を下げることが重要です。
- 流通・陳列場所: スーパーなどでの流通や陳列場所が明確でないことも課題の一つです。「どこで買えるかわからない」という消費者の声もあり、専用コーナーを設けるなど、売り場の工夫が求められます。
消費者の意識と普及の課題
- 表記のわかりにくさ: プラントベースフードと謳われている商品でも、つなぎなどに卵や乳製品といった動物性由来の添加物が含まれている場合があります。これにより、ヴィーガンやアレルギーを持つ人々が安心して商品を選べないケースがあり、より明確でわかりやすい表示が求められています。
- 「意識高い系」のイメージ: PBFは「健康や環境に配慮する人たちが食べるもの」というイメージが強く、多くの一般消費者が日常的に手に取るには至っていないのが現状です。

ミラダシをはじめとするプラントベースフードの課題は、味や食感、栄養面での再現性の低さです。また、価格が高く、流通や消費者への認知度がまだ低いことも普及の妨げとなっています。
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