フジクラの株価好調 どんな製品を製造しているのか?好調の要因は何か?

この記事で分かること

  • フジクラの製品:電線製造で培った「つなぐ」技術を核に、光ファイバー・融着接続機(世界トップ級)、フレキシブルプリント基板、自動車用ワイヤハーネスなど、情報通信から自動車まで多岐にわたるグローバル事業を展開しています。
  • 好調の要因:AIデータセンター向け光ファイバー需要の爆発的拡大が主因です。米国市場でのAI投資活発化と、同社が世界トップ級シェアを持つ光ファイバー・融着接続機の貢献、そして関連企業であるコーニングの好決算も追い風となっています。
  • 超多心・細径高密度光ファイバーケーブルとは:大量の光ファイバーを細く密に収納したケーブルです。これにより、限られたスペースで大容量データを高速伝送でき、データセンターや5G/6G網構築の効率化・省スペース化に貢献します。

フジクラの株価好調

 フジクラの株価が好調で、2025年7月30日には大幅に株価が続伸し、上場来高値を更新しています。

 https://finance.yahoo.co.jp/news/detail/e80a6dcd1e38b66627ec28d67160d9beb4632d04

 情報通信事業部門が大きく伸長し、大幅な増収増益を達成したことや今後も米国でのAI関連インフラ整備の進展などの好材料があり、続伸しているものと思われます。

フジクラはどんな企業なのか

 株式会社フジクラは、1885年(明治18年)に創業した日本の大手非鉄金属メーカーです。電線製造で培った技術を基盤に、現在は多岐にわたる事業を展開するグローバル企業となっています。

主な事業内容

 フジクラグループの事業は大きく以下の柱に分かれています。

  1. 情報通信事業:
    • 光ファイバ・ケーブル、光部品・機器、光ファイバ融着接続機などを扱っています。特に光ファイバー融着接続機では世界トップクラスのシェアを誇ります。
    • 情報化社会のインフラを支えるソリューションを提供しており、データセンター向けの需要拡大も期待されています。
  2. エレクトロニクス事業:
    • フレキシブルプリント基板(FPC)、コネクタ、電子ワイヤなどを製造・販売しています。FPCは携帯電話やデジタルカメラ、スマートフォンなどに広く使われています。
    • 高度な精密加工技術を活かし、最先端アプリケーションに貢献しています。
  3. 自動車事業:
    • 自動車用ワイヤハーネス、ジョイントボックス、メインヒューズボックス、プラスチック成形品などを製造しています。
    • モビリティ革命に向け、次世代の車載電装システム開発にも注力しています。
  4. エネルギー事業:
    • 送電線、産業用電線、配電・民需部品などを手掛けています。社会の基盤を支えるインフラ製品を供給しています。
  5. 不動産事業:
    • 旧本社工場跡地の再開発によって誕生した複合都市「深川ギャザリア」の運営なども行っています。

強み

 フジクラの強みとしては、以下の点が挙げられます。

  • “つなぐ”テクノロジー™: 電線・ケーブル製造で培ってきた「つなぐ」技術を基盤とし、情報通信、エレクトロニクス、自動車、エネルギーといった幅広い分野で、社会インフラや先端製品に貢献しています。
  • 高い技術力と研究開発力: 光ファイバーやフレキシブルプリント基板、光ファイバー融着接続機など、世界トップクラスのシェアを持つ製品を多く生み出しており、継続的な研究開発によって新たな技術や製品を創出しています。特に超微細加工技術や金型内製化といった製造技術力にも強みを持っています。
  • グローバルな事業展開: 世界各地に約140の拠点を持ち、売上に占める海外比率は7割に及ぶなど、グローバル市場で事業を展開しています。
  • 多角的な事業ポートフォリオ: 幅広い事業分野を持つことで、特定の市場変動に左右されにくい安定した経営基盤を築いています。
  • 持続可能性への貢献: カーボンニュートラル社会への貢献を目指し、高温超電導技術の応用など、次世代エネルギー分野の研究開発にも取り組んでいます。

 このように、フジクラは長年の歴史で培った「つなぐ」技術と、変化に対応する多様な事業展開、そしてグローバルな視点を持つことで、社会に貢献し続けている企業です。

フジクラは1885年創業の老舗非鉄金属メーカーです。電線製造で培った「つなぐ」技術を核に、光ファイバー・融着接続機(世界トップ級)、フレキシブルプリント基板、自動車用ワイヤハーネスなど、情報通信から自動車まで多岐にわたるグローバル事業を展開しています。

最高値の背景は何か

 フジクラが最高値を更新している背景には、主に以下の要因が複合的に作用しています。

AIデータセンター向け需要の爆発的な拡大

  • 生成AIの普及に伴い、世界中でデータセンターの建設が急増しています。データセンターでは膨大なデータを高速で処理・転送する必要があるため、高性能な光ファイバーや関連部品が不可欠です。
  • フジクラは、光ファイバー・ケーブルや光ファイバー融着接続機(光ファイバー同士をつなぐ機器)において世界トップクラスのシェアを誇ります。特に、超多心・細径高密度光ファイバーケーブルなど、データセンター向けに特化した革新的な製品開発にも成功しており、この需要拡大の恩恵を最も大きく受けている企業の一つとされています。
  • 同社の売上高の4割弱を米国市場が占めており、米国のAI関連投資の活発化が直接的な追い風となっています。

米国の光学製品大手コーニングの好決算発表

  • フジクラは米国の通信機器メーカーであるコーニングと光ファイバー関連で提携関係にあります。直近では、コーニングが市場予想を上回る好決算を発表し、データセンター関連事業の好調がその要因として挙げられました。
  • このコーニングの好業績が、フジクラをはじめとする日本の電線・光通信関連銘柄への連想買いを誘発し、株価を押し上げる要因となっています。

堅調な業績推移と今後の成長期待

  • フジクラは2025年3月期の連結業績で、情報通信事業の好調を背景に大幅な増収増益を達成しました。この好調な業績が、投資家の安心感を高め、さらなる成長への期待を膨らませています。
  • 今後のAI関連需要の継続的な増加が見込まれる中、フジクラの技術力と製品ラインナップが、長期的な成長ドライバーになるとの見方が強まっています。

 これらの要因が重なり、フジクラの株価は上場来高値を更新する勢いを見せていると考えられます。

フジクラの最高値更新は、AIデータセンター向け光ファイバー需要の爆発的拡大が主因です。米国市場でのAI投資活発化と、同社が世界トップ級シェアを持つ光ファイバー・融着接続機の貢献、そして関連企業であるコーニングの好決算も追い風となっています。

超多心・細径高密度光ファイバーケーブルとは何か

 「超多心・細径高密度光ファイバーケーブル」とは、その名の通り、非常に多くの光ファイバーを、より細く、より高密度にケーブル内に収めたものです。

 これは、現代の通信インフラ、特にデータセンターや5G/6Gといった大容量・高速通信網の構築において非常に重要な技術です。

  • 超多心: ケーブル一本あたりに含まれる光ファイバーの心線数が非常に多い(数千心にも及ぶ)。これにより、一度に多くの信号を伝送できるため、大容量通信が可能になります。
  • 細径・軽量: 従来同程度の心数を持つケーブルと比較して、外径が大幅に細く、軽量化されています。
    • メリット:
      • 省スペース化: 限られたスペース(例えば、既存の地下管路や電柱の配線スペース)に、より多くの光ファイバーを敷設できるようになります。これにより、新たなインフラ整備のコストや手間を削減できます。
      • 施工性向上: ケーブルが細く軽いため、敷設作業が容易になり、人件費の削減にもつながります。
      • CO2削減: ケーブルの製造・輸送・布設の過程で発生するCO2排出量の削減にも貢献します。
  • 高密度: 光ファイバーがケーブル内で非常に密に収納されています。
    • キー技術: フジクラでは「SWR®(Spider Web Ribbon®)」や「WTC®(Wrapping Tube Cable®)」といった独自技術を用いて、光ファイバー間の間隔を適切に保ちつつ、高密度収納を実現しています。これにより、光信号の損失を抑えながら、柔軟な取り扱いも可能にしています。
  • 用途:
    • データセンター内配線: サーバーラック間の高速大容量接続。
    • データセンター間接続: 複数のデータセンターを結ぶ基幹回線。
    • 都市部でのFTTH (Fiber To The Home) 展開: マンションや集合住宅への引き込み、既存設備の有効活用。
    • 5G/6G基地局への接続: 大容量通信の需要に対応。

 簡単に言えば、限られた空間で、より多くの情報を、より速く、効率的に送るための次世代光ケーブルであり、AIデータセンター需要の急増に伴い、その重要性が高まっています。フジクラはこの分野で世界をリードする技術と製品を持っています。

超多心・細径高密度光ファイバーケーブルは、大量の光ファイバーを細く密に収納したケーブルです。これにより、限られたスペースで大容量データを高速伝送でき、データセンターや5G/6G網構築の効率化・省スペース化に貢献します。

光ファイバーはどのように製造されるのか

 光ファイバーの製造は、非常に高い精度と清浄度を求められる複雑なプロセスです。大きく分けて「プリフォーム製造」と「線引き・被覆」の2つの主要工程があります。

1. プリフォーム製造(母材合成)

 プリフォームとは、光ファイバーの「もと」となる、直径が数cm~数十cm程度のガラス製の棒です。このプリフォームに、光ファイバーが持つべき屈折率分布が形成されます。主な製造方法としては、いくつか種類がありますが、日本では特に「VAD法(気相軸付法)」が広く採用されています。

VAD法(Vapor-phase Axial Deposition: 気相軸付法)の概略
  1. 原料ガスの供給と反応:高純度のケイ素化合物(例:四塩化ケイ素 SiCl₄)やゲルマニウム化合物(例:四塩化ゲルマニウム GeCl₄、屈折率調整用)などの原料ガスを、酸水素バーナーの火炎中に供給します。
  2. ガラス微粒子の生成と堆積:火炎中で原料ガスが化学反応(火炎加水分解)を起こし、非常に微細なガラス粒子(スート)が生成されます。
  3. 多孔質母材(スートプリフォーム)の形成:このガラス微粒子を、回転しながら上方に引き上げられるスタートガラスロッド(種棒)の先端に連続的に堆積させていきます。これにより、多孔質で白色のガラスの塊(スートプリフォーム)が軸方向に成長していきます。光ファイバーのコア(中心部)とクラッド(外側)に対応する屈折率分布は、この堆積時にガスの組成を調整することで形成されます。
  4. 脱水・焼結・透明ガラス化:生成された多孔質のスートプリフォームは、次に電気炉に入れられ、高温で加熱されます。この工程で、ガラス中に含まれる微量の水分(OH基)が除去され、さらにガラス微粒子が焼結され、透明で均質なガラスの塊(透明プリフォーム)となります。水分は光の吸収を招き、伝送損失の原因となるため、徹底的な除去が必要です。
その他のプリフォーム製造方法
  • MCVD法 (Modified Chemical Vapor Deposition): 石英ガラス製の管の内側に原料ガスを流し、外部から加熱してガラスを堆積させる方法。
  • OVD法 (Outside Vapor-phase Deposition): ターゲットとなる棒の周りにガラス微粒子を堆積させる方法。

どの方法も、高純度で不純物の少ないガラスを、正確な屈折率分布で製造することが非常に重要です。

2. 線引き・被覆(ファイバ化加工)

透明なプリフォームが完成したら、いよいよ光ファイバーに引き伸ばす工程です。

  1. 線引き(延伸):プリフォームは、巨大な「線引きタワー」と呼ばれる装置の最上部にセットされます。プリフォームの下端が約2000℃にもなる電気炉で加熱され、ガラスが溶融状態になります。溶けたガラスは重力と、下方に設置された巻き取り装置によって引き伸ばされ、髪の毛ほどの細さ(通常、外径125マイクロメートル)の光ファイバーの素線(裸ファイバー)となります。この時、直径が常に一定になるよう、高精度な制御が行われます。
  2. 冷却:引き伸ばされたばかりの光ファイバーは高温なので、すぐに冷却されます。適切な冷却によって、ファイバーの強度を保ちます。
  3. 保護被覆(コーティング):ガラスである光ファイバーは、非常に脆く、表面に微細な傷がつくだけでも容易に破断してしまいます。そのため、線引き直後のまだ高温の状態で、すぐに2層の紫外線硬化型樹脂などでコーティングされます。これにより、ファイバー表面を保護し、強度を向上させます。通常、この被覆を含めた外径は250マイクロメートルになります。
  4. 検査・巻き取り:被覆された光ファイバーは、光学特性(伝送損失など)や機械的強度(引っ張り強度など)が厳しく検査されます。その後、長距離(数km~数十km)にわたってドラムに巻き取られ、光ファイバー心線として完成します。
  5. ケーブル化(必要に応じて):完成した光ファイバー心線は、さらに保護材やテンションメンバなどを用いて、使用目的に応じた光ケーブルへと加工されます(例:超多心・細径高密度ケーブルなど)。

 このように、光ファイバーは原料の高純度化から、精密なガラス合成、そして極めて細く引き伸ばす技術、さらに表面保護まで、様々な高度な技術が組み合わさって製造されています。

光ファイバーは、まず高純度ガラスを加熱し、屈折率分布を持つ棒状の「プリフォーム」を製造します。次に、プリフォームを約2000℃で溶かし、髪の毛ほどの細さに引き伸ばし、強度保護のため樹脂で被覆して完成させます。

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