この記事で分かること
- GlobalFoundriesの特徴:顧客の設計に基づく半導体プロセス技術です。特にRF SOI、FDX-SOI、パワーマネジメントなど、差別化された特殊プロセスによる自動車、IoT、通信向けのチップ製造に強みを持ちます。
 - 工場拡張の理由:欧州内の自動車・IoTチップ需要増への対応と、世界的な半導体サプライチェーンの脆弱性解消、そして欧州の半導体自給率と主権の強化です。
 
GlobalFoundriesの工場拡張
GlobalFoundries(グローバルファウンドリーズ、GF)は、ドイツのドレスデン工場(Fab 1)の製造能力を大幅に拡大する計画を進めています。
https://jp.investing.com/news/company-news/article-93CH-1299129
この拡張は「SPRINTプロジェクト」と名付けられています。
GlobalFoundriesの製品にはどのようなものがあるのか
GlobalFoundries(グローバルファウンドリーズ、GF)は、特定の顧客向けに半導体を製造するファウンドリ(受託製造専門企業)であるため、「GFの製品」とは、顧客の設計に基づきGFが提供する半導体プロセス技術やプラットフォームのことを指します。
GFは、最先端の微細化競争から一線を画し、幅広いアプリケーションに対応する差別化された特殊なプロセス技術に注力しているのが特徴です。
GlobalFoundriesの主要な製品プラットフォーム
GFが提供する主要なプロセス技術と、それらが適用される主な分野は以下の通りです。
| プロセス技術 | 主な特徴と用途 | 
| RF SOI (Silicon-On-Insulator) | 高周波(RF)通信向け。低ノイズ、低消費電力、高周波性能を実現し、5Gミリ波用のフロントエンドモジュールなどで広く採用されています。 | 
| FinFET | ハイパフォーマンスなコンピューティング、ネットワーキング、モバイルプロセッサなど向けの技術。現在、主に14nm/12nm世代の技術を提供しています。 | 
| FDX-SOI (Fully Depleted SOI) | 超低消費電力と低リーク電流が特徴。特にIoT、モバイル、車載、エッジAIなどのアプリケーションで、高い電力効率と性能を両立させます。 | 
| Power Management | 高効率な電力管理・変換を実現するソリューション。自動車、産業用、データセンターなどで不可欠な高耐圧、組み込みメモリなどをミックスした技術(例:BCD、BCDlite)が含まれます。 | 
| Silicon Photonics (SiPh) | 光通信向け。半導体チップ上に光回路を統合し、データセンターやクラウドインフラにおける高速データ伝送を実現します。 | 
| CMOS (Feature-rich CMOS) | 組み込みメモリや高精度アナログ回路を統合できる汎用性の高いプロセス。自動車、産業用制御システム、スマートホームデバイスなど、信頼性が求められる分野に適しています。 | 
| SiGe (Silicon Germanium) | 超高周波(無線通信やレーダー)向け。量産可能なファウンドリの中では業界最高のFmax(最大発振周波数)を持つ高周波トランジスタ技術を提供しています。 | 
| GaN (窒化ガリウム) | 次世代の高効率パワー半導体向け。自動車やAIデータセンター向けの電力効率を高めるソリューションとして、IPポートフォリオの強化を進めています。 | 
注力分野と顧客
GFは、特に以下の成長分野に強みを持っています。
- 自動車 (Automotive): パワーマネジメント、組み込みメモリ、高信頼性CMOSなどのプロセスで、車載チップ市場に不可欠な存在です。
 - IoT/エッジコンピューティング: FDX-SOIなどの超低消費電力技術で、バッテリー駆動のエッジデバイスやIoTデバイスを支えます。
 - データセンター/通信: SiPhやRF SOI、FinFET技術で、5G通信インフラやクラウドデータセンターの高速化、大容量化に貢献しています。
 
GlobalFoundriesは、顧客の設計した製品を製造することで、スマートフォン、PC、車、通信機器など、幅広い電子機器の実現を支えています。

GlobalFoundriesの製品は、顧客の設計に基づく半導体プロセス技術です。特にRF SOI、FDX-SOI、パワーマネジメントなど、差別化された特殊プロセスに注力しており、自動車、IoT、通信向けのチップ製造に強みを持ちます。
工場拡張の理由は何か
GlobalFoundries(グローバルファウンドリーズ)がドイツのドレスデン工場を拡張する主な理由は、以下の3点に集約されます。
1. 欧州内の旺盛なチップ需要への対応
特にドレスデン工場が注力する自動車産業や、IoT、産業用制御システムなど、欧州域内における特殊な半導体チップ(組み込みメモリ、パワーマネジメント、RFなど)の需要が非常に高まっています。この需要増に応えることが最大の理由です。
2. サプライチェーンの強靭化と地政学リスクへの対応
近年、世界的な半導体不足や地政学的な緊張の高まりにより、サプライチェーンの脆弱性が顕在化しました。
- 回復力の強化: 製造拠点を欧州、米国、アジアなど世界中で拡大することで、回復力のある(レジリエントな)信頼できるパートナーとしての役割を強化する狙いがあります。
 - 欧州の半導体主権: 欧州チップ法のもと、ドイツ政府や欧州連合(EU)が半導体の域内生産を重視しており、その半導体主権を確立する上でGFの工場拡張は重要な役割を担います。
 
3. 特定技術への注力と競争力の強化
拡張される製造能力は、GFが強みを持つ低消費電力、組み込みセキュアメモリ、ワイヤレス接続などの技術に焦点を当てています。これにより、自動車や重要インフラ向けといった付加価値の高い分野での競争力を一層強化します。
欧州の強い需要と世界的なサプライチェーンの安全保障への対応が、この大規模な拡張投資の主な推進力となっています。

拡張の主な理由は、欧州内の自動車・IoTチップ需要増への対応と、世界的な半導体サプライチェーンの脆弱性解消、そして欧州の半導体自給率と主権の強化です。
欧州内の自動車メーカーの半導体需要が増加している理由は
欧州内の自動車メーカーの半導体需要が増加している主な理由は、自動車産業で急速に進む「CASE」と呼ばれる構造変化、特に電動化とデジタル化です。
自動車の「電子化」と「高度化」
自動車が従来の機械製品から「走るコンピューター」へと進化していることが、半導体搭載量を爆発的に増やしています。
1. 電動化(E: Electrification)
- EV/HEVへの移行: 内燃機関(ガソリン車)から電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)へ移行することで、パワー半導体(IGBT、MOSFET、GaNなど)の搭載量が大幅に増加します。
- これらの半導体は、バッテリーの電力制御、モーター駆動、充電システムなど、高電圧・大電流を扱う部分に不可欠です。
 - 一般的な自動車一台あたりの半導体搭載額が約200ドル程度であるのに対し、電気自動車では約2倍の400ドル以上に跳ね上がると言われています。
 
 
2. 自動運転・ADAS(A: Autonomous & S: Shared/Service)
- 高性能プロセッサの必要性: 先進運転支援システム(ADAS)や自動運転技術(Autonomous Driving)が高度化するにつれて、リアルタイムで膨大なデータを処理するための高性能なマイコン(MCU)やSoC(System-on-a-Chip)が必要になります。
 - センサーの増加: 周囲を認識するためのカメラ、レーダー、LiDARなどのセンサーの数が増え、その一つ一つに専用の半導体が搭載されます。
 - 高信頼性への要求: 人命に関わるため、これらのシステムには特に高い信頼性と耐環境性を持つ半導体が求められます。
 
3. コネクテッド化(C: Connected)
- 車内情報システム: ナビゲーション、インフォテイメント、デジタルコックピットなど、車内の快適性や機能性を高めるためのデジタルシステムが高度化し、多くの半導体を必要とします。
 - 通信機能: 車両同士やインフラとの通信(V2X)や、ソフトウェア更新(OTA: Over-The-Air)を可能にするための通信用チップの需要が増加しています。
 
結果としての需要増加
これらの進化の結果、自動車一台あたりの半導体搭載額は継続的に増加しており、欧州の主要自動車メーカーは安定した供給源を確保するために、GlobalFoundriesのような域内ファウンドリへの発注を増やしています。

電気自動車(EV)への移行によるパワー半導体の搭載増と、自動運転(ADAS)の高度化による高性能マイコンやセンサーチップの需要増加です。
 

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