この記事で分かること
- 販売額増加の理由:生成AIがスマホ等の身近な端末まで普及し、半導体需要が拡大するためです。また、最先端「2nm世代」の量産投資や、AIに不可欠な高機能メモリ、先端パッケージ向け装置の需要が加速することも大きな要因です。
- 特に需要が高まる装置:新構造「GAA」採用により、極微細な回路を描くEUV露光装置や、原子レベルで膜を制御するALD成膜装置、複雑な隙間を洗う精密洗浄装置の需要が急増します。工程の複雑化が装置の単価と台数を押し上げます。
- GAAとは:Gate-All-Aroundの略で、電流が流れる通り道(チャネル)をゲートが全周囲から包み込む次世代のトランジスタ構造です。電気制御力が高く、2nm以降の微細化における電力効率の向上とリーク電流の抑制を可能にします。
日本製半導体製造装置の販売額増加
日本半導体製造装置協会(SEAJ)が2026年1月に発表した最新の需要予測によると、日本製半導体製造装置の販売額は2026年度に前年度比12.0%増の5兆5,004億円に達する見通しです。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC151Z40V10C26A1000000/
この予測は、生成AI(人工知能)ブームを背景とした空前の需要増と、次世代プロセスへの投資加速を反映したもので、日本の装置メーカーにとって極めてポジティブな内容となっています。
販売額増加の理由は何か
日本半導体製造装置協会(SEAJ)が2026年1月15日に発表した最新の需要予測において、販売額が5兆5,004億円に達するとされる主な理由は、「AI需要の裾野拡大」と「次世代プロセスの量産開始」の2点に集約されます。
1. AIの「サーバーから端末(エッジ)」への波及
2024〜2025年はデータセンター向けのAIサーバー投資が中心でしたが、2026年度は「AI PC」や「AIスマホ」が一般消費者に広く普及するフェーズに入ります。
- 買い替え需要: 2025年10月のWindows 10サポート終了に伴うPC刷新と、AI搭載端末への移行が重なり、デバイス向けの半導体需要が爆発的に増加します。
- 高機能化: 端末側でAI処理を行う(エッジAI)ため、搭載される半導体の微細化・高性能化が必須となり、より高度な製造装置が必要とされます。
2. 「2nm世代」の本格量産フェーズ突入
2026年度は、最先端の2nm(ナノメートル)世代ロジック半導体の量産が本格化する重要な年です。
- 新技術への投資: 従来の構造から「GAA(ゲート・オール・アラウンド)」構造への転換に伴い、洗浄、成膜、リソグラフィなどの各工程で装置の単価が上昇し、販売額を押し上げます。
- 日本の拠点稼働: 日本国内でもRapidus(ラピダス)の量産ライン立ち上げに向けた装置搬入がピークを迎える時期にあたります。
3. メモリ(HBM・NAND)市場の全面回復と高度化
AIに不可欠な高帯域幅メモリ(HBM)の増産に加え、停滞していたNANDフラッシュメモリの投資も回復します。
- 後工程の重要性: 複数のチップを積み重ねる「3Dスタッキング」や「チップレット」などの先端パッケージング技術において、日本の装置メーカーが強みを持つボンディング装置や切断・検査装置の需要が急増しています。
4. 世界的な「地政学的リスク」への対応(地産地消)
各国が半導体のサプライチェーンを自国で完結させようとする動き(経済安保投資)が続いています。
- グローバルな新工場建設: アメリカ、欧州、そして日本国内(TSMC熊本工場など)で建設が進む新工場の稼働に向けた装置需要が、一過性ではなく数年にわたって継続しています。
販売額予測の構成要因まとめ
| 牽引カテゴリー | 主な要因・背景 | 影響度 |
| ロジック・ファウンドリ | 2nm量産投資、AI端末向けプロセッサ | ★★★ |
| メモリ (DRAM/HBM) | AIサーバー向けHBM3e/HBM4の増産 | ★★★ |
| メモリ (NAND) | 3D NANDの層数増加(300層〜)への投資回復 | ★★☆ |
| 後工程 (パッケージ) | チップレット、2.5D/3D実装技術の普及 | ★★★ |
今回の予測は、2025年度からの「3年連続のプラス成長」を見込んでおり、日本の装置産業が極めて強い成長サイクル(スーパーサイクル)にあることを示唆しています。

生成AIがスマホ等の身近な端末まで普及し、半導体需要が拡大するためです。加えて、最先端「2nm世代」の量産投資や、AIに不可欠な高機能メモリ、先端パッケージ向け装置の需要が加速することも大きな要因です。
2nm世代の量産で需要が増える装置は何か
2nm世代の量産において、特に需要が急増する装置は、「GAA(Gate-All-Around)」という新しいトランジスタ構造への移行と、さらなる微細化に対応するためのものが中心となります。
1. 露光装置(リソグラフィ)
- EUV(極端紫外線)露光装置: 2nmの超微細な回路を描くには不可欠です。特に、より高解像度な「High-NA(高NA)EUV装置」の導入が、この世代から本格化します。
- 需要の理由: 3nm世代以上に多くの工程でEUVを使用するため、導入台数が増え、装置自体の単価も上昇します。
2. 成膜・エッチング装置
- 原子層堆積(ALD)装置: GAA構造では、ゲートがチャネルを全周囲から囲むため、非常に複雑な隙間に均一な膜を作る必要があります。原子レベルで膜を制御できるALD装置の重要性が極めて高まります。
- 選択的エッチング装置: GAA特有の「ナノシート」を切り出す際、特定の材料だけを精密に削り取る高度な技術が求められ、装置の買い替えや追加導入が進みます。
3. 洗浄装置
- 超精密洗浄装置: 構造が複雑(3D化)になるほど、微細な隙間にゴミや残留物が残りやすくなります。回路を壊さずに汚れを除去する、日本企業(スクリーンHDなど)が得意とする高精度な洗浄装置の需要が拡大します。
4. 計測・検査装置
- 電子ビーム(EB)検査装置: 2nmレベルの欠陥は従来の光学検査では見つけにくいため、電子ビームを用いたより高分解能な検査装置が必要です。
- 需要の理由: GAA構造の導入により歩留まり(良品率)の確保が難しくなるため、より頻繁に、より精密な検査が行われるようになります。
5. 後工程装置(アドバンスド・パッケージング)
- ハイブリッド・ボンディング装置: 2nmチップを他のチップと積み重ねる(3D積層)技術がAI向けで多用されます。チップ同士を直接接合する非常に精度の高い装置が必要です。

2nm世代では新構造「GAA」採用により、極微細な回路を描くEUV露光装置や、原子レベルで膜を制御するALD成膜装置、複雑な隙間を洗う精密洗浄装置の需要が急増します。工程の複雑化が装置の単価と台数を押し上げます。
Gate-All-Aroundとは何か
Gate-All-Around(GAA)とは、次世代の半導体トランジスタの構造のことで、一言で言えば「電流が流れる通り道(チャネル)を、制御する役目のゲートが360度全周囲から包み込む構造」のことです。
2nm(ナノメートル)世代以降の微細化を実現するための切り札として、世界中の半導体メーカーが導入を進めています。
1. 構造の進化:なぜ「包み込む」のか
これまでのトランジスタ構造と比較すると、その進化がわかります。
- プレーナー型(平面型): ゲートがチャネルの「上」だけに接している。(20nm世代まで)
- FinFET(フィンフェット): チャネルを魚のひれ(フィン)のように立て、ゲートが「3方向」から囲む。(現在の主流:3nm/5nm世代など)
- GAA(ゲート・オール・アラウンド): チャネルを独立したシート状(ナノシート)にし、ゲートが「上下左右の4方向(全周囲)」から完全に包む。
2. GAAを導入する主なメリット
ゲートがチャネルを完全に囲むことで、電気の流れを極めて精密にコントロールできるようになります。
- リーク電流の抑制: 微細化が進むと、スイッチをオフにしても電気が漏れる(リーク)問題が深刻化しますが、全周から抑え込むことでこれを劇的に減らせます。
- 低消費電力と高速化: FinFETに比べて同じ電圧でもより多くの電流を流せるため、消費電力を抑えつつ、処理スピードを向上させることが可能です。
- 設計の自由度: チャネルとなる「ナノシート」の幅を変えることで、性能(パワー)と省エネ性能を用途に合わせて細かく調整できます。
3. なぜ2nmで必要なのか
これまでの主流だった「FinFET」構造では、3nmから2nmへとさらに小さくしようとすると、ゲートによる制御が限界に達し、電気が漏れすぎて発熱や誤作動の原因になってしまいます。
この「物理的な限界」を突破するために、GAAという全く新しい3D構造が必要になったのです。

GAA(Gate-All-Around)とは、電流が流れる通り道(チャネル)をゲートが全周囲から包み込む次世代のトランジスタ構造です。従来の3方向から囲むFinFETより電気制御力が高く、2nm以降の微細化における電力効率の向上とリーク電流の抑制を可能にします。

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