この記事で分かること
- 予察用資材とは:農作物の病害虫の発生を事前に察知し、防除のタイミングを判断するための資材のことです。
- どのように利用されるのか:様々な方法で、害虫を捉え、数を数えるなどすることで、発生状況を把握して薬剤散布や天敵放飼を行っています。必要な時にだけ、薬剤散布を行うことで、薬剤の無駄遣いを減らすことができます。
クラレの新しい予察用資材
クラレは、ハダニの発生を可視化し、農薬に頼らずに管理できる予察用資材「プルトラップ®-9」を新たに発売しました。
https://www.kuraray.co.jp/news/2025/250508
ハダニの発生状況を把握することで、適切なタイミングでの防除が可能になります。薬剤に頼らない捕獲方法により、農薬の使用量を減らし、持続可能な農業を支援することもできるとしています。
予察用資材とは何か
予察用資材」とは、農業や園芸の現場で 以下のような方法で、病害虫の発生を事前に察知し、防除のタイミングを判断するための資材 を指します。
- 害虫や病害の発生を早期に発見する
→ 例えば黄色や青色の粘着シート、フェロモントラップ、捕獲罠などで害虫を捕まえ、数を数える。 - 発生状況を把握して適切な対策を立てる
→ 実際に被害が広がる前に薬剤散布や天敵放飼などの防除を計画できる。 - 農薬の無駄遣いを減らす
→ 発生がない時期に薬剤を使わず、必要な時だけ適切に使用できる。

予察用資材と農作物の病害虫の発生を事前に察知し、防除のタイミングを判断するための資材のことです。
予察用資材にはどのような物質が利用されるのか
予察用資材に使われる「物質」は、その目的によってかなり違います。主に次の種類があります:
1. 粘着シート系
- 使われる物質:粘着剤(ポリブテン、ポリイソブチレン、ゴム系粘着剤など)
- 用途:黄色や青色の粘着シートに害虫(アブラムシ、コナジラミ、スリップスなど)が引き寄せられ、くっついて捕獲される。
2. フェロモントラップ系
- 使われる物質:昆虫の性フェロモン(特定の害虫種が分泌する化学物質を合成したもの)
- 用途:主にオスを誘引し、発生状況やピークを予測する。
- 例:コナガ、オオタバコガ、ヨトウガ用のフェロモンルアー。
3. 色誘引・光誘引資材
- 使われる物質:
- 着色材(黄色、青色、白色などの特定波長を反射する塗料やフィルム)
- 光源(紫外線やLEDライト)
- 用途:色や光に誘引される習性を利用して、特定の害虫を集める。
4. 化学誘引資材
- 使われる物質:食餌誘引物質(糖蜜、酵母、アンモニア、酢酸、トリメチルアミンなど)
- 用途:スズメバチやハエ類などを誘引する。
5. 物理的捕獲資材
- 使われる物質:特別な薬品は使わず、ネット、プラスチック、紙などの物理構造だけで誘引・捕獲。
- 用途:カブリダニやハダニ用の落下捕獲板、クラレの「プルトラップ®」のような仕組み。

予察用資材には、粘着シート、フェロモンによるトラップ、色や光、化学物質による誘導、物理的な捕獲などが利用されています。
ハダニはどんな農産物の害虫なのか
ハダニはとても重要な農業害虫で、特に以下のような作物に被害を与えます。
代表的な被害作物
- 果樹類
・リンゴ
・ナシ
・モモ
・ブドウ
・カンキツ類 - 野菜類
・ナス
・キュウリ
・トマト
・イチゴ
・ピーマン
・メロン - 花き類(花卉)
・バラ
・カーネーション
・キク
・ユリ - 豆類・その他
・ダイズ
・マメ科牧草
・茶
ハダニによる被害の特徴
- 葉の裏に寄生して 汁を吸う(吸汁害)。
- 吸汁された部分は 白斑状(かすり状) になり、光合成が低下。
- ひどくなると葉が 黄化・落葉 → 樹勢低下・収量減少につながる。
- 多発すると、クモの巣状の糸を張って群生し、作物全体を覆う。
主な種類
- ナミハダニ(Two-spotted spider mite, Tetranychus urticae)
- カンザワハダニ
- ミカンハダニ
- ナシハダニ

ハダニは多くの農作物に影響を及ぼす農業害虫です。
ハダニはなぜ明るい色を好むのか
ハダニが 明るい色(特に白や黄色など)を好む理由 は、完全に解明されているわけではありませんが、いくつかの科学的な推測があります。
主な理由・仮説
- 視覚による誘引
ハダニは小さいですが、ある程度の視覚を持っています。
明るい色(特に白や黄色)は背景の植物(緑色)と強くコントラストし、ハダニが移動の目印として認識しやすいと考えられています。
- 光の反射・温度特性
白や黄色は光をよく反射し、周囲より温度がやや高くなることがあります。
ハダニは乾燥や高温を好むため、自然とこうした場所に集まる習性がある可能性があります。
- 植物の生理との関係
黄色や白い部分は、植物にとって生育が若い(新芽や花など)のサインである場合があります。
新芽は柔らかく吸汁しやすいため、ハダニが自然と集まる可能性があります。
関連する応用例
この「色への好み」は、粘着シートやトラップ資材の設計に活かされ、黄色や白色の資材がハダニ予察用によく使われています。逆に、作物保護では黄色のマルチやテープを避け、光の反射シートで忌避効果を狙う場合もあります。

ハダニが明るい色を好む理由は完全には解明されていませんが、視覚による誘導や光の反射、温度特性などが可能性として挙げられています。
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