この記事で分かること
1. ミリ波センサーとは何か
ミリ波センサーとは、波長がミリ単位の電波を照射し、反射波を解析して対象物との距離や位置、速度、微細な動きを非接触で測定する技術です。カメラと違いプライバシーを守りつつ、暗闇でも高精度に検知できます。
2. どんな連携をするのか
旭化成が持つ「ミリ波レーダー用ICと姿勢検知アルゴリズム」に、日清紡マイクロデバイスの「超小型モジュール実装・製品化技術」を掛け合わせ、顧客が導入しやすい「完成品センサー」を共同開発します。
3. 短い電波を使用するメリットは何か
短い電波は、ミリ単位の微細な振動(呼吸や心拍)や対象物の輪郭を高精度に識別できる点がメリットです。また、電波の波長が短いためアンテナを数ミリサイズまで小型化でき、機器自体の超小型化が可能になります。
日清紡マイクロデバイスと旭化成グループのミリ波センサー開発
日清紡マイクロデバイスと、旭化成グループで半導体事業を担う旭化成エレクトロニクス(AKM)は、60GHz帯ミリ波センサーモジュールの共同開発に向けたパートナーシップ連携を2026年6月17日に発表しました。
今回の協業では、旭化成(AKM)の持つ高度なIC技術・信号処理技術と、日清紡マイクロデバイスが培ってきた高密度なモジュール実装・量産化技術が組み合わせ、主に介護・高齢者見守り(エイジテック)や住宅設備、家電分野での活用を想定した次世代センサーの市場投入を目指すものです。
ミリ波センサーとは何か
ミリ波センサーとは、波長が「ミリメートル単位」の非常に短い電波(一般的に30GHz〜300GHzの周波数帯)を照射し、対象物から跳ね返ってくる電波を分析することで、物体の位置、距離、速度、さらには微細な「動き(振動)」を非接触で高精度に測定する技術です。
自動運転車の衝突防止システム(車載レーダー)のほか、最近では介護・見守り、スマート家電など、私たちの身近な生活空間への導入が急速に進んでいます。
1. ミリ波センサーの仕組み
基本原理は一般的なレーダーと同じですが、ミリ波という特性を活かしてより高度な検知を行います。
- 電波の送信: センサーからミリ波の電波(FMCW方式と呼ばれる連続波などが主流)を空間に向けて照射します。
- 電波の反射: 空間にある人や物体に電波が当たり、跳ね返ってきます。
- 受信・解析: 戻ってきた電波の「時間差(遅れ)」から距離を算出し、「周波数のズレ(ドップラー効果)」から物体の移動速度を測定します。さらに、複数のアンテナを使うことで物体の正確な方向(角度)まで立体的に捉えることができます。
2. 他のセンサー(カメラ・赤外線など)との違い・強み
ミリ波センサーが「次世代の見守り・検知技術」としてこれほど注目されているのは、従来のセンサーが持つ弱点を克服しているからです。
| センサーの種類 | メリット | デメリット(ミリ波が勝る点) |
| カメラ | 誰が何をしているか一目でわかる。 | プライバシーの侵害(トイレや浴室に置けない)。暗闇や霧、湯気に弱い。 |
| 赤外線(焦電型) | 安価で、人の動き(熱)を検知できる。 | 人がじっとしていると検知できない。細かい位置や姿勢まではわからない。 |
| 超音波 | 近距離の障害物検知に強い。 | 音速の変化(気温や風)に影響を受けやすく、計測距離が短い。 |
| ミリ波センサー | カメラレスでプライバシーを保護。暗闇・湯気に強く、静止していても検知可能。 | 構造が複雑で、これまではコストが高かった(現在はモジュール化で低下中)。 |
3. ミリ波センサーの特徴
ミリ波は周波数が非常に高いため、電波でありながらミリメートル単位の微細な変化を感知できます。これにより、以下のような高度な識別が可能です。
① 衣服や毛布を「透過」して微小な動きを捉える
ミリ波はプラスチックや布、紙などの「電気を通しにくい素材」をある程度すり抜ける(透過する)性質があります。
そのため、「布団を被って寝ている人の、呼吸による胸のわずかな上下の動き」を衣服や毛布越しに非接触で検知できます。
② 3D点群(ポイントクラウド)による姿勢認識
跳ね返ってきた電波を処理することで、対象物の輪郭を「点の集まり(点群)」として立体的に浮かび上がらせます。映像(画像)ではないため個人の特定はできませんが、「その人が今、立っているのか、椅子に座っているのか、床に倒れ込んでいるのか」という姿勢の判別が正確に行えます。
4. 主な応用分野
- 自動車(ADAS): 前走車との距離を測る衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)のキーデバイス。
- 介護・ヘルスケア: トイレや寝室での転倒検知、ベッド上での呼吸・心拍の24時間見守り(バイタルサイン測定)。
- スマート家電・住宅設備: エアコンが人の位置や活動量を検知して風向きを調整する、人が近づくと自動で開閉するドア・トイレなど。
- セキュリティ: 侵入者の検知や、オフィスビルの在室状況(フリーアドレスの空席確認)の把握。
ミリ波センサーは、「プライバシーを守りながら、カメラ以上に精緻に人間や環境の状態をデータ化できる」という、これからのデジタル社会・高齢化社会に不可欠な目(センサー)となっています。

ミリ波センサーとは、波長がミリ単位の電波を照射し、反射波を解析して対象物との距離や位置、速度、微細な動きを非接触で測定する技術です。カメラと違いプライバシーを守りつつ、暗闇でも高精度に検知できます。
短い電波を使用するメリットは何か
短い電波(周波数が高い電波)を使用する主なメリットは、「極めて高い精度で、細かなモノや動きを識別できること」にあります。
ミ リ波センサーのように、波長が数ミリメートルという短い電波を使うことで、具体的に以下のような3つの大きなメリットが生まれます。
1. 「ミリ単位」の微細な動き・振動を検知できる
電波は、「自分の波長よりも小さいものは素通りし、同じかそれ以上の大きさのものには跳ね返る」という性質があります。
波長がセンチメートル単位の長い電波(Wi-Fiやスマホの電波など)では人間の大まかな動きしか分かりませんが、ミリ単位の短い電波であれば、「呼吸による胸のわずかな上下の動き」や「血管の脈動(心拍)」といった、目に見えないほどの微小な振動まで非接触で正確に捉えることができます。
2. 対象物の「形」や「姿勢」をシャープに立体識別できる
電波が短い(周波数が高い)と、光のようにまっすぐ進む性質(直進性)が強くなります。さらに、アンテナを小さくできるため、1つのセンサーに多数の送受信アンテナを詰め込むことができます。
これにより、跳ね返ってきた電波をレーダーがキャッチした際、対象物の輪郭を無数の細かい「点」として捉えることができ、「人間が今どんな姿勢(立っている・倒れている)でいるか」をカメラを使わずにシャープに立体識別できます。
3. 機器自体を「超小型化」できる
アンテナの理想的な大きさは、使用する電波の波長に比例します。
- 長い電波: アンテナが大きくなる(例:テレビのアンテナや車の長いラジオアンテナ)
- 短い電波(ミリ波): 波長が数ミリしかないため、アンテナ自体を数ミリ〜数センチのチップサイズに収めることができる
このおかげで、センサーモジュール全体を親指サイズにまで小型化でき、家電や介護ベッド、天井など、あらゆる場所に目立たずに設置することが可能になります。
メリットの裏返しとして、直進性が強すぎるために「障害物の後ろに回り込む(回折する)力」が弱く、壁などの遮蔽物があると電波が遮断されやすいという弱点もあります。そのため、ミリ波センサーは「同じ部屋の中」など、特定の空間を高精度に見守る用途に最適化されています。

短い電波は、ミリ単位の微細な振動(呼吸や心拍)や対象物の輪郭を高精度に識別できる点がメリットです。また、電波の波長が短いためアンテナを数ミリサイズまで小型化でき、機器自体の超小型化が可能になります。
どんな連携をするのか
今回の連携は、旭化成(AKM)の「半導体チップ(IC)とアルゴリズム」に、日清紡マイクロデバイスの「モジュール実装技術」を掛け合わせ、「誰もがすぐに使える超小型の完成品センサー(モジュール)」を共同開発するものです。具体的には、以下のような役割分担と技術の統合を行います。
① 旭化成エレクトロニクス(AKM)の役割
- 頭脳(IC)の提供: 高精度に電波をコントロールするミリ波レーダー用ICを提供します。
- 知能(アルゴリズム)の提供: 跳ね返ってきた電波(点群データ)から、人間の「立つ」「座る」「倒れる(転倒)」といった姿勢を正確に見分ける独自のソフトウェア技術を組み込みます。
② 日清紡マイクロデバイスの役割
- 身体(モジュール)の構築: AKMのチップとアンテナを、極小の基板上に効率よく配置・パッケージングする「高密度実装技術」を担当します。
- 製品化・認証の取得: ノイズ対策を施して製品としての信頼性を高め、日本国内で電波を出すために必須となる「技適(工事設計認証)」などの法的な手続きをクリアした状態に仕上げます。
連携によって生まれるメリット
これまでは、ミリ波センサーを使いたくても「アンテナの設計が難しい」「データの解析が複雑すぎる」という技術的ハードルがありました。
この2社が連携することで、「電源をつなぐだけで、人間の姿勢や動きのデータを正確に出力してくれる親指サイズの超小型モジュール」が誕生します。
これにより、介護機器メーカーや住宅設備メーカーは、自社の製品にミリ波センサーを極めて簡単に、そしてスピーディーに組み込めるようになります。

旭化成が持つ「ミリ波レーダー用ICと姿勢検知アルゴリズム」に、日清紡マイクロデバイスの「超小型モジュール実装・製品化技術」を掛け合わせ、顧客が導入しやすい「完成品センサー」を共同開発します。

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