プラスチックごみの建築資材へのリサイクル どのように製造されるのかリサイクルするのか?

この記事で分かること

どんな建築資材を作るのか

家庭の廃プラを原料に、高い耐久性や精度が求められる部材を製造します。具体的には、鉄筋の被り厚を確保するコンクリート打設用スペーサーのほか、内装仕上げ材や断熱材などへの活用が検討されています。

どのようにリサイクルするのか

廃プラを熱分解して「再生油」に戻すケミカルリサイクルを採用しています。これを出光の設備でナフサとして精製し、新品同等の品質の樹脂を製造。エンプラスが成形し、竹中工務店が建設現場へ導入する仕組みです。

プラスチックごみの建築資材へのリサイクル

 出光興産、竹中工務店、およびエンプラスの3社が、消費者から回収した廃プラスチックを建設資材へとリサイクルすることを開始したことが報じられています。竹中工務店の建設現場で廃プラ由来の建材を使用しています。

 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC132I90T10C26A4000000/

 これまでリサイクルが難しかった「家庭から出るプラスチック」を、耐久性が求められる「建築資材」へとアップサイクルする試みとして注目されています。

どんな建築資材になるのか

 出光興産、竹中工務店、エンプラスの3社による取り組みで、実際にどのような建築資材への転換が想定されているのか、その具体例と技術的な背景を整理します。

 この実証実験の大きな特徴は、廃プラスチックの性質に合わせて「目に見える部材」から「構造を支える隠れた部材」まで幅広く検討されている点です。

1. 具体的な検討部材の例

 現在、以下のような部材への活用が具体的に想定されています。

  • コンクリート打設用スペーサー: 鉄筋の被り厚を確保するために設置する部品です。強度が求められますが、外見の美しさは問われないため、再生プラスチックの導入が比較的容易です。
  • 内装用仕上げ材・化粧パネル: 廃プラを意匠的に加工し、タイルやパネルとして壁面などに利用します。
  • 断熱材・床下部材: 住宅やビルのエネルギー効率を高めるための断熱ボードや、床下の配管を固定する支持部材などです。
  • 仮設資材: 建設現場で一時的に使用される養生シートやフェンス、プラスチック敷板など。繰り返しの再利用が前提となるため、循環型モデルに適しています。

2. プラスチックの種類と用途の使い分け

 廃プラスチックの状態によって、加工方法と最終製品が使い分けられます。

原料の状態加工手法主な製品例
単一素材でクリーン(PET, PE, PPなど)マテリアルリサイクル(溶かして成形)スペーサー、配管支持具、仮設フェンス
混合・汚れた廃プラ(家庭ゴミなど)ケミカルリサイクル(油化→ナフサ還元)高純度な樹脂としての内装材、精密なジョイント部品

3. 「竹中工務店」が関わる意味:建築現場での実装

 竹中工務店がこの輪に加わっている最大の理由は、「建設現場特有の厳しい要求水準」をクリアするためです。

  • 耐久性と安全性: 建築資材には、数十年にわたる耐候性や難燃性が求められます。実証実験では、再生材が実際の環境下で劣化しないか、構造的な強度を維持できるかを検証します。
  • 施工性: 現場の職人が扱いやすいか、既存の金物と適合するかといった「使い勝手」も、普及に向けた重要な評価項目となります。

4. 資源の「ストック」としての建築物

 このプロジェクトが目指すのは、単にゴミを減らすことだけではありません。

 建物を「プラスチックの貯蔵庫」と捉え、数十年後にその建物が解体される際、再びそれらの資材を回収して新しい資材へと作り変える「クローズドループ(閉じた循環)」の構築を目指しています。

 今後、この試みが進むことで、私たちが日常的に出すプラスチック容器や包装が、数年後には都市を構成するビルの一部として「再就職」しているかもしれません。

家庭から出る廃プラを油化・再資源化し、高純度な樹脂として再生します。これを原料に、竹中工務店の知見を活かしてコンクリート打設用スペーサーや内装材、断熱材などを製造し、実際の建設現場での利用を目指しています。

どのようにリサイクルするのか

 この取り組みでは、主に「ケミカルリサイクル(油化)」という手法が用いられます。従来の再利用(マテリアルリサイクル)では困難だった、汚れや種類の混じった家庭用プラスチックを処理できるのが強みです。リサイクルの工程は大きく分けて以下の3ステップです。

1. 油化(ケミカルリサイクル)

 回収された廃プラスチックを熱分解して、液体状の「再生油」に戻します。これにより、プラスチックを分子レベルで分解し、不純物を取り除くことができます。

2. 原料化(ナフサ還元)

 出光興産の製油所にある既存の設備(流動接触分解装置など)を活用し、再生油をガソリンやナフ サ(プラスチックの原料)に精製します。この手法のメリットは、「石油から作った新品(バージン材)」と全く同等の品質に戻せる点にあります。

3. 製品化(マスバランス方式)

 精製された原料をエンプラスが精密成形し、建設資材として製造します。

  • マスバランス方式:再生原料が一部含まれていることを証明する管理手法を適用し、製品全体を「リサイクル製品」として価値付けします。

 このように、一度「油」に戻すことで、品質を落とさずに建設現場で求められる高い強度や耐久性を持つ資材へと生まれ変わらせています。

家庭の廃プラを熱分解して「再生油」に戻すケミカルリサイクルを用います。これを出光興産の設備でナフサとして精製し、新品同等の品質の樹脂を製造。エンプラスが成形し、竹中工務店が建設資材として活用します。

リサイクルの課題はなにか

 このプロジェクトが社会実装(普及)に向けて解決すべき主な課題は、主にコスト、供給体制、品質担保の3点に集約されます。

1. 経済性とコスト

 現在、廃プラスチックを「油」に戻して再び樹脂を作るプロセスは、石油から新品(バージン材)を作るよりもコストが高くなります。リサイクル資材の価格を、建設市場で受け入れられるレベルまでいかに抑えるかが最大の焦点です。

2. 回収ロジスティクスと不純物

 家庭から出る廃プラは、産業廃棄物に比べて汚れや異物の混入が多く、回収・分別の手間がかかります。安定した品質の「再生油」を作るために、自治体と連携した効率的な回収システムの構築が不可欠です。

3. 長期的な耐久性と法規制

 建設資材には数十年単位の耐用年数が求められます。再生材が経年劣化に耐えうるか、また建築基準法などの厳しい安全基準や防火基準を継続的にクリアできるか、長期的なデータ検証が必要です。


最大の課題は、新品より高価になりがちな再生コストの削減です。また、汚れの多い家庭廃プラを効率よく回収する体制整備や、建築物に求められる数十年の耐久性・安全性をいかに長期間担保するかが鍵となります。

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