この記事で分かること
- CDMOとは:医薬品開発製造受託機関のことで、医薬品の製造プロセス開発、製造業務を受託する専門企業のことです。
- 低分子薬とは:低分子薬とは、分子量が小さい有機化合物でできた医薬品の総称で、日常的に目にする薬の多くが該当します。高分子量のバイオ医薬も注目されていますが、低分子薬にも安定した需要があります。
- どんな企業がCDMOを利用するか:資金や設備投資を抑えたい、特定の専門技術やノウハウを必要、開発・製造スピードを加速させたい企業が、企業医薬品の開発・製造における外部パートナーとして、利用されています。
太陽ホールディングスの低分子薬CDMOへの投資
太陽ホールディングスは、医薬品事業への投資を継続し、特に低分子薬のCDMO(医薬品開発製造受託)事業に向けて300億円超の投資を行う方針です。
https://chemicaldaily.com/archives/652599
同社はグローバルな生産体制構築や高品質な製品の提供、再生医療分野・遺伝子治療分野への参入など、医療・医薬品事業の幅を広げていくことを目標としており、それに向けた投資と考えられます。
CDMOとは何か
CDMOとは、Contract Development and Manufacturing Organizationの略で、日本語では「医薬品開発製造受託機関」と訳されます。
これは、製薬会社が医薬品の開発から製造までの一連のプロセスを外部に委託する際に、それらの業務を受託する専門企業のことです。
具体的には、以下のようなサービスを提供します。
- 開発業務 (Development): 医薬品の製造プロセス開発、分析法の開発、品質管理試験、製剤化研究など。
- 製造業務 (Manufacturing): 原薬の製造、製剤の製造、包装、品質管理など。
CDMOが注目される理由
近年、CDMOの需要が高まっている背景には、以下のような要因があります。
- 製薬会社の効率化・専門性集中: 製薬会社は、自社で全ての開発・製造設備や専門人材を抱える代わりに、CDMOに委託することで、研究開発やマーケティングなど、自社のコアコンピタンスに集中できます。
- 新薬開発の複雑化・多様化: バイオ医薬品や再生医療など、新しいタイプの医薬品開発が進むにつれて、高度な専門技術や設備が必要になります。CDMOは、これらの分野で専門的なノウハウや設備を提供できます。
- 設備投資のリスク低減: 製薬会社が自社で大規模な製造施設を建設するには巨額の投資が必要であり、需要変動のリスクもあります。CDMOを活用することで、これらの設備投資リスクを軽減できます。
- グローバルな規制対応: 医薬品の製造には各国の厳しい規制(GMPなど)への対応が求められます。CDMOは、これらの規制に対応した品質管理体制や設備を有しています。
CMOとの違い
CDMOと似た用語に「CMO(Contract Manufacturing Organization:医薬品製造受託機関)」がありますが、CDMOはCMOに加えて「開発(Development)」の機能も包括している点が大きな違いです。
CMOは主に製造フェーズのみを受託するのに対し、CDMOは開発初期段階から商用生産までを一貫してサポートすることができます。
太陽ホールディングスが低分子薬のCDMO増産に投資しているのは、まさにこのような市場のニーズに対応し、医薬品事業をさらに強化していく戦略の一環と言えます。

CDMOとは医薬品開発製造受託機関のことで、医薬品の製造プロセス開発、製造業務を委託する専門企業のことです。
低分子薬とは何か
「低分子薬」とは、その名の通り、分子量が小さい(一般的に500〜900ダルトン以下)有機化合物でできた医薬品の総称です。化学合成によって製造されるのが特徴です。
私たちが日常的に目にする多くの薬(風邪薬の錠剤、痛み止め、抗生物質など)が、この低分子薬に分類されます。
低分子薬の主な特徴
- 分子量が小さい: これが最も大きな特徴です。分子が小さいため、体内での吸収性が良く、細胞膜を通過して細胞内の標的に作用することができます。
- 経口投与が可能: 分子量が小さく、消化管からの吸収が良いものが多いため、錠剤やカプセルとして口から服用できることが多いです。これは患者さんにとって利便性が高いというメリットがあります。
- 化学合成で製造: 有機化学の手法を用いて、比較的シンプルな工程で製造されます。このため、製造コストが比較的安価であり、大量生産が可能です。
- 標的: 細胞内の酵素、受容体、タンパク質など、特定の分子に結合してその機能を調節することで薬効を発揮します。
- 安定性: 比較的安定しており、常温で保管できるものが多いです。
バイオ医薬品との違い
近年、低分子薬と対比される形で「バイオ医薬品(生物学的製剤)」が注目されています。両者の主な違いは以下の通りです。
特徴 | 低分子薬 | バイオ医薬品 |
分子量 | 小さい(500〜900ダルトン以下) | 大きい(数千〜15万ダルトン程度) |
製造方法 | 主に化学合成 | 主に細胞培養などの生物学的プロセス |
剤形 | 錠剤、カプセル、散剤など、経口投与が多い | 注射剤がほとんど(タンパク質のため消化酵素で分解される) |
構造 | 比較的単純で明確 | 複雑で多様 |
安定性 | 比較的安定 | 不安定なものが多い(冷蔵保存が必要など) |
コスト | 比較的安価 | 高価になりがち |
作用機序 | 細胞内にも浸透し、多様な標的に作用できる | 主に細胞外の標的や細胞表面の受容体に作用する |
例 | アスピリン、イブプロフェン、多くの抗がん剤、降圧剤 | インスリン、抗体医薬品、ワクチン、遺伝子治療薬 |
低分子薬は、その利便性や製造コストの面から、依然として医薬品の主流を占めています。しかし、バイオ医薬品は、従来の低分子薬では治療が難しかった疾患や、より特異的な作用が求められる疾患(特定のがんや自己免疫疾患など)に対して、高い治療効果を発揮することが期待されています。
太陽ホールディングスが低分子薬のCDMO増産に投資しているのは、低分子薬の安定した需要と、その製造に関する高度な技術とノウハウの重要性を認識しているためと考えられます。

低分子薬とは、分子量が小さい(一般的に500〜900ダルトン以下)有機化合物でできた医薬品の総称で、日常的に目にする薬の多くが該当します。近年、分子量の大きいバイオ薬も注目されていますが、低分子薬にも安定した需要があります。
CDMOを利用する企業はどんな企業か
CDMO(医薬品開発製造受託機関)を依頼する企業は、多岐にわたりますが、主に以下のカテゴリーに分けられます。
- 創薬ベンチャー企業(バイオベンチャー):
- 特徴: 独自の画期的な医薬品候補(シーズ)や技術を持つが、自社で大規模な開発・製造設備を持つ資金や人員がないケースが多いです。
- CDMOに依頼する理由:
- 初期投資の抑制: 高額な研究開発設備や製造プラントへの投資を避け、少ない資金で医薬品開発を進めることができます。
- 専門知識の活用: 臨床試験に向けた製剤開発、品質管理、製造プロセス開発など、高度な専門知識と経験をCDMOから得られます。
- 開発スピードの加速: CDMOの持つ既存の設備やノウハウを活用することで、開発から製造までの期間を短縮し、迅速に臨床試験や上市へと進めることができます。
- 大手製薬会社:
- 特徴: 自社で研究開発部門や製造工場を持つ大手企業ですが、特定の分野や生産能力の補完、リスク分散のためにCDMOを活用します。
- CDMOに依頼する理由:
- 生産能力の補完: 特定の医薬品の需要が急増した場合や、自社工場では対応できない生産能力が必要な場合に、CDMOに委託して生産量を調整します。
- 特定の技術・専門性の活用: 新しいモダリティ(バイオ医薬品、再生医療、遺伝子治療など)や、特殊な製剤技術が必要な医薬品の場合、その分野に特化したCDMOの技術力を活用します。
- リスク分散: 自然災害や設備の故障など、自社工場での生産が困難になった際のリスクヘッジとして、外部のCDMOを利用します。
- グローバル展開: 各国の異なる規制(FDA、EMA、PMDAなど)に対応した製造を行うために、それぞれの地域に拠点を持つCDMOを活用します。
- コスト削減: 自社工場を常にフル稼働させるよりも、外部委託することで固定費を変動費化し、コスト効率を高めることができます。
- 化学メーカーや食品メーカーなど、異業種からの参入企業:
- 特徴: 医薬品分野への新規参入を検討している企業が、既存の製造技術や研究開発力を活かして医薬品事業に乗り出す際にCDMOを活用することがあります。
- CDMOに依頼する理由: 医薬品製造に関する規制やノウハウ、品質管理体制を短期間で構築することが難しいため、CDMOの専門知識と設備を利用します。
まとめると、CDMOは、医薬品の開発・製造における外部パートナーとして、以下のようなニーズを持つ企業に利用されています。
- 資金や設備投資を抑えたい企業
- 特定の専門技術やノウハウを必要とする企業
- 開発・製造スピードを加速させたい企業
- 生産能力の柔軟性を高めたい企業
- リスクを分散したい企業
- グローバルな規制対応が必要な企業
太陽ホールディングスが低分子薬のCDMO事業に力を入れているのは、これらの幅広い企業からのニーズに応え、医薬品開発・製造における重要なインフラとしての役割を強化しようとしているためです。

CDMOは、資金や設備投資を抑えたい、特定の専門技術やノウハウを必要、開発・製造スピードを加速させたい企業が、企業医薬品の開発・製造における外部パートナーとして、利用されています。
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