TEMの種類 STEMとCTEMの特徴は何か?両者を組合せた分析例は?

この記事で分かること

  • TEMの種類:広い範囲を一度に写すCTEM、細いビームでスキャンするSTEM、原子の並びを見るHRTEMがあります。また、タンパク質用のクライオTEMや、レンズの歪みを正して原子を鮮明にする収差補正TEMなど、目的に応じた専門機も存在します。
  • CTEMとは:幅の広い平行な電子線を試料に一気に当て、透過した像をレンズで拡大して一度に投影する、最も基本的な観察手法です。原子レベルの構造や結晶の状態を直感的に把握するのに適しています。
  • STEMとは:電子線を極細の点に絞り、試料を走査して透過信号を収集する装置です。原子番号が大きいほど白く写るZコントラスト像が得られ、微細な構造観察と同時に、原子レベルでの精密な元素分析を行えるのが最大の強みです。

TEMの種類

機器分析とは、化学反応を用いる古典的な化学分析に対し、物質が持つ物理的・化学的性質を精密な機器で測定し、その物質の成分や構造を分析する方法の総称です。

  高感度で迅速な分析が可能であり、微量な成分や複雑な混合物も精度高く分析できるため、現代の科学技術分野で広く利用されています。 

 今回は、透過電子顕微鏡、TEMの種類に関する記事となります。

TEMにはどんな種類があるのか

 TEM(透過電子顕微鏡)は、観察の目的や手法、加速電圧の強さによって、いくつかの種類や「モード」に分類されます。主なものは以下の通りです。

1. 観察手法による分類

 最も一般的な分類で、電子の当て方や画像の作り方が異なります。

  • CTEM(コンベンショナルTEM / 通常のTEM):幅広い電子線を一気に試料に当て、投影された影を画像化します。学校の顕微鏡に最も近い使い方です。
  • STEM(走査透過電子顕微鏡):電子線をナノ単位の細い点(プローブ)に絞り、試料の上をスキャンして画像を組み立てます。元素分析や、重い原子を白く光らせて見る「高角散乱暗視野法(HAADF-STEM)」に非常に強いのが特徴です。
  • HRTEM(高分解能TEM):電子の波としての性質(位相)を最大限に利用し、原子の並び(格子像)を直接観察するための特殊な設定・機種です。

2. 用途・特殊機能による分類

  • クライオTEM(Cryo-TEM):試料を液体窒素などで急速凍結したまま観察します。生体分子(タンパク質など)や、熱に弱い材料を生に近い状態で壊さずに観察できます。
  • 環境TEM(E-TEM):通常は真空中でしか使えないTEMですが、試料室にガスを流しながら観察できます。触媒が反応する瞬間のリアルタイム観察などに使われます。
  • 収差補正TEM:レンズの歪み(収差)を補正する装置(コレクター)を搭載したハイエンド機です。原子一つひとつをより鮮明に、かつ正確な位置で捉えることができます。

3. 加速電圧による分類

電圧が高いほど電子の透過力が強くなり、厚い試料が見やすくなります。

  • 100〜120kV級: 主に生物組織や高分子材料の観察に使われる汎用型。
  • 200〜300kV級: 金属、半導体、セラミックスなどの硬い材料や、原子分解能の観察に使われるハイエンド型。

主に、広い範囲を一度に写すCTEM、細いビームでスキャンするSTEM、原子の並びを見るHRTEMがあります。また、タンパク質用のクライオTEMや、レンズの歪みを正して原子を鮮明にする収差補正TEMなど、目的に応じた専門機が存在します。

CTEMとは何か

 CTEM(Conventional Transmission Electron Microscope)とは、日本語で一般型(または従来型)透過電子顕微鏡と呼ばれます。

 現在主流の「スキャン(走査)型」であるSTEMと比較して、学校で使う光学顕微鏡に最も近い仕組みを持つ基本のTEMのことです。

1. CTEMの特徴

  • 「面」での照射: 電子線を細く絞らず、幅の広い平行なビームとして試料全体に一度に照射します。
  • 一括投影: 試料を通り抜けた電子を、対物レンズなどで拡大し、カメラや蛍光板に一度に投影して画像を得ます(写真撮影と同じ感覚です)。
  • 波の性質を利用: 電子の「波」としての性質(位相)を直接利用するため、原子が並んでいる様子(格子像)を観察するのに非常に適しています。

2. STEM(走査透過電子顕微鏡)との違い

 最近のTEM装置は、この2つのモードを切り替えて使えるものがほとんどです。

特徴CTEM(一般型)STEM(走査型)
電子の当て方広く、平行に一度に当てる極細の点に絞ってスキャンする
像の作り方そのまま拡大して投影(カメラ)点ごとの信号を計算機で合成
得意なこと結晶構造、原子の直接観察元素分析、重い原子の強調表示

幅の広い平行な電子線を試料に一気に当て、透過した像をレンズで拡大して一度に投影する、最も基本的な観察手法です。光学顕微鏡と同じ仕組みで、原子レベルの構造や結晶の状態を直感的に把握するのに適しています。

STEMとは何か

 STEM(Scanning Transmission Electron Microscopy:走査透過電子顕微鏡)とは、電子線をナノメートル以下の極細の「点」に絞り、試料の上をスキャナ(走査)しながら透過した信号を読み取る顕微鏡です。

 通常のTEM(CTEM)が「ライトで照らして一気に影を写す」方式なら、STEMは「懐中電灯を細く絞って、端から順に照らして画像を組み立てる」方式といえます。

1. STEMの主な特徴

  • 高分解能: 電子線を極限まで細く絞るため、原子一つひとつを非常に鮮明に捉えることができます。
  • 同時分析: 透過した電子だけでなく、同時に発生するX線なども測定できるため、画像を見ながらその場所の元素を特定できます。
  • ボケが少ない: 点で照射して点で検出するため、厚みのある試料でも像がボケにくい性質があります。

2. STEMの得意技:Zコントラスト (HAADF-STEM)

 STEMで最もよく使われる手法の一つにHAADF(高角環状暗視野)法があります。

  • 原子番号(Z)に比例: 重い原子(原子番号が大きいもの)ほど電子を大きく散乱させるため、画像上で白く明るく写ります。
  • 直感的な理解: 「白い点は金(Au)の原子、暗い部分はカーボン(C)」といったように、見た目だけで元素の違いを直感的に判断できます。

3. なぜ元素分析が得意なのか

 STEMは「いま、この一点を照らしている」という情報が明確です。そのため、電子が当たった瞬間に放出される特性X線(EDS)エネルギー損失(EELS)を測定することで、「この原子は何の元素か?」を極めて高い精度でマッピングできます。

電子線を極細の点に絞り、試料を走査して透過信号を収集する装置です。原子番号が大きいほど白く写るZコントラスト像が得られ、微細な構造観察と同時に、原子レベルでの精密な元素分析を行えるのが最大の強みです。

CTEMとSTEMの組み合わせによる分析例は

 CTEMとSTEMを組み合わせて分析することで、「全体の結晶構造(形や並び)」「局所的な元素情報(中身)」を多角的に把握できます。

1. 次世代半導体デバイスの構造解析

 ナノメートル単位の微細な回路(FinFETなど)を分析する際に必須の組み合わせです。

  • CTEMで: 回路全体の歪みや、結晶の「欠陥(格子欠陥)」がどこにあるかを位相コントラストで特定します。
  • STEMで: ゲート絶縁膜などの薄い層の厚さを正確に測り、同時にEDS元素マッピングで異なる元素(Si、O、金属など)が境界で混ざり合っていないかを検証します。

2. 触媒ナノ粒子の活性評価

 燃料電池や自動車の排ガス浄化に使われる「ナノ粒子」の分析です。

  • CTEMで: 粒子の表面(ファセット)がどの結晶面で構成されているかを確認し、触媒としての活性が高い形状かどうかを判断します。
  • STEMで: HAADF-STEM像により、担体(土台)の上に載っている「貴金属の単一原子」を白い点として可視化し、元素ごとの分散状態を正確に捉えます。

3. 合金やセラミックスの界面分析

 材料の強さを決める「結晶粒界(粒と粒の境目)」の分析です。

  • CTEMで: 回折パターン(電子回折)を用いて、隣り合う結晶の向き(配向)や角度を解析します。
  • STEMで: 界面に特定の不純物元素が数原子分だけ分離(偏析)していないか、EELS(電子エネルギー損失分光)を用いて、化学結合の状態(酸化状態など)まで含めて分析します。

 このように、現在の材料開発では両方のモードをシームレスに切り替えて使うのが一般的です。

CTEMで試料全体の結晶状態や格子欠陥を捉え、STEMで特定の微小領域における元素分布や原子番号の差を鮮明にします。この両輪により、材料の「物理的な構造」と「化学的な組成」を原子レベルで紐付けられます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました