この記事で分かること
- アメリカの天然ガス採掘の状況:シェールガス革命により世界最大の天然ガス生産国です。生産量は過去最高水準にあり、LNG輸出が牽引力となり、2050年まで増加が見込まれています。
- 高値の理由:予想以上に厳しい冬の寒波予測による暖房需要の急増と、記録的なLNG(液化天然ガス)輸出による需給逼迫が主な原因です。
米国の天然ガス価格が約3年ぶりの高値
米国の天然ガス価格が約3年ぶりの高値に上昇しています。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO93044430V01C25A2ENG000/
この価格高騰は、特に暖房を天然ガスに頼っている米国の家計にとって、光熱費の上昇という形で影響が出ることが予想されています。
アメリカの天然ガス採掘の状況は
米国の天然ガス採掘(生産)状況は、以下に示すように、「シェール革命」によって世界をリードする地位にあり、非常に活発で、現在も記録的な高水準を維持しています。
1. 世界最大の天然ガス生産国
- 米国は、2010年代の「シェール革命」以降、世界最大の天然ガス生産国となっています。
- 2021年の生産量は日量平均で過去最高を更新し、その後も増加傾向が続いています。
2. 生産を支えるシェールガス開発
- この生産量の急増を支えているのは、シェールガス(非在来型天然ガス)の開発です。
- 水平掘削(Horizontal Drilling)と水圧破砕(Fracking/Hydraulic Fracturing)という技術の進歩により、従来採掘が困難だった地層からのガス生産が可能になりました。
- 主要な生産地は、特にテキサス州やペンシルベニア州などのパーミアン盆地やアパラチア盆地です。
3. 堅調な増産トレンドと国際市場への影響
- 天然ガス価格の上昇や旺盛なLNG(液化天然ガス)輸出需要に牽引され、米国のエネルギー企業は生産を堅調に維持・拡大しています。
- 米国エネルギー情報局(EIA)の分析では、生産量とLNG輸出量は2050年まで増加する見通しとされています。
- 現在、米国は世界最大のLNG輸出国の一つであり、欧州やアジアなど国際市場における供給の「要」として、その影響力を強めています。
4. 随伴ガスとM&A
- 原油採掘時に一緒に産出される随伴ガスの生産も増加しており、特にパーミアン盆地がその増加分の大部分を占めると予測されています。
- 最近では、シェール企業間でM&A(合併・買収)が活発化しており、業界全体の合理化と寡占化が進み、競争力や規模が拡大しています。
天然ガス価格の高値が続くと、採掘企業はさらなる増産に動くインセンティブが働くことになりますが、天然ガスの生産には掘削費用や環境規制への対応など、様々な要因が絡んできます。

米国は、シェールガス革命により世界最大の天然ガス生産国です。生産量は過去最高水準にあり、主に水平掘削技術でパーミアン盆地などが牽引。LNG輸出が牽引力となり、2050年まで増加が見込まれています。
高値となっている理由は
米国の天然ガス価格が高値となっている主な理由は、冬の需要の増加と記録的な輸出、それに伴う需給の逼迫という、短期的な要因と構造的な要因が複合的に作用しているためです。
1. 短期要因:予想外の寒さと暖房需要の急増
- 冬の始まりの寒波: 米国北東部や中西部などの主要な暖房地域で、12月の気温が例年以上に低下することが予測されています。
- 需要の急増: この寒波予測により、住宅や商業施設での暖房用天然ガスの需要(引き出し)が急増し、市場の需給バランスが大幅に引き締まっています。
2. 構造要因:LNG(液化天然ガス)輸出の増加
- 世界最大の輸出国: 米国はシェールガスの生産増加を背景に、世界最大のLNG輸出国の一つとなっています。
- 記録的な輸出量: 特に欧州がロシア産ガスからの脱却を進めているため、米国のLNG輸出は過去最高水準に達しており、国内市場の供給を恒常的に引き締める要因となっています。
3. 在庫の減少と需給の逼迫
- 在庫の取り崩し: 冬の暖房シーズンに入り、天然ガスの貯蔵在庫が取り崩される速度が市場の予想を上回って推移しています。
- 需給逼迫観測: 輸出が増える中で、寒い気候により在庫が急速に減少していることが、市場の需給逼迫観測を強め、価格を押し上げています。
これらの要因により、米国の天然ガス先物価格(ヘンリーハブ)は、過去3年間の高値水準で推移しています。

米国の天然ガス価格が高値になっているのは、予想以上に厳しい冬の寒波予測による暖房需要の急増と、記録的なLNG(液化天然ガス)輸出による需給逼迫が主な原因です。
ヘンリーハブとは何か
「ヘンリーハブ(Henry Hub)」は、米国の天然ガス市場において最も重要な指標価格の呼称です。
これは、ルイジアナ州に存在する天然ガスの集積地(流通ハブ)の名称に由来しています。
ヘンリーハブの重要な点
- 米国の天然ガス指標価格
- ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)などで取引される天然ガス先物取引の受け渡し場所および基準点として採用されています。
- この先物価格が、米国内における天然ガスの価格を決める**デファクトスタンダード(事実上の標準)**となっています。
- パイプラインの結節点
- ヘンリーハブは、米国の広大な天然ガスパイプライン網において、複数の州内および州間パイプラインが接続する重要な流通拠点です。この立地から、全米の需給を反映しやすい価格が形成されます。
- 取引の単位
- 価格は通常、「100万英国熱量単位(MMBtu)あたり、何米ドル」という形で表示されます。
私たちが「米国の天然ガス価格が高値」と聞く場合、通常はこのヘンリーハブ価格のことを指しています。
日本の電力会社などが輸入するLNG(液化天然ガス)の価格も、以前は原油価格に連動していましたが、近年はヘンリーハブ価格を指標とする取引が増えつつあり、国際的にも注目されています。

ヘンリーハブは、米国ルイジアナ州にある天然ガス流通の集積地です。NYMEXの天然ガス先物取引の指標であり、その価格は米国内だけでなく国際的な天然ガス市場の基準価格(MMBtu単位)として機能します。

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