この記事で分かること
- AMDとの連携理由:GPU供給の多様化とコスト効率の追求、そしてNVIDIA独占を避けるためです。設計初期から協力し、AIワークロードに最適化されたチップを共同開発する戦略です。
- 他の半導体メーカーとの連携:AMDへの出資オプションに加え、NVIDIAと最大1000億ドルのシステム導入提携、Broadcomと独自AIチップ量産、SamsungやSK Hynixとメモリー供給で協力しています。
- 複数の半導体メーカーとの連携を進める理由:NVIDIA依存の回避と供給源の多様化です。複数のメーカーに出資・協力することで、計算資源の安定確保とAIワークロードに最適化したチップ開発を同時に進め、コスト効率を最大化しています。
OpenAIとAMDのAIインフラ分野での包括提携
OpenAIとAMDがAIインフラ分野での包括提携を発表し、OpenAIがAMD株を最大10%取得できるオプションを持つ枠組みが明らかになりました。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-10-06/T3PIAWGP493500
この動きは、AI半導体市場におけるNVIDIAの優位性に変化をもたらす可能性があり、AIインフラ競争の新たな段階を示すものとして注目されています。
AMDを選んだ理由は何か
OpenAIがAMDを選んだ主な理由は、AI開発に必要な計算資源の供給網の多様化と、次世代AIワークロードに最適化されたハードウェアを共同で設計し、コスト効率と性能を追求する戦略にあります。
1. 供給源の多様化とコスト競争力の確保
現在、AI向けGPU市場はNVIDIAが圧倒的なシェアを持っています。OpenAIがAMDと提携・出資する最大の戦略的目的は、このNVIDIA一強の状況(ベンダーロックイン)を避けることです。
- 供給リスクの分散: NVIDIAからの供給が滞った場合のリスクを軽減し、計算リソースを安定的に確保するため、AMDを強力な「第2の供給源(セカンドソース)」として育成・利用します。
- 価格交渉力: 競合となるAMDの存在感を高めることで、GPUチップ全体の価格競争を促し、AIインフラ構築の総保有コスト(TCO)を最適化することを狙います。
2. 次世代AIに合わせた「共同設計」の推進
今回の提携は単なるGPUの購入ではなく、製品ロードマップの初期段階から深く連携する「戦略的パートナーシップ」であることが特徴です。
- 最適化: OpenAIは、自社の巨大なAIモデル(LLM)の訓練や推論といった特定のワークロードに最も適したメモリ設計や大規模スケーリング(数千GPUの連携)の技術的知見をAMDに提供します。
- 「使われる前提」の製品開発: AMDは、世界最先端のAI開発企業であるOpenAIのニーズを直接設計に取り込むことで、自社のInstinct GPUを「本番環境に真に適合した」高性能かつ高効率な製品へと進化させる機会を得ます。
3. オープンエコシステム(ROCm)へのコミット
AMDは、NVIDIAのクローズドなエコシステム(CUDA)に対抗し、オープンなAIソフトウェアプラットフォーム「ROCm」を推進しています。
- 柔軟性の追求: OpenAIは、AMDのオープンなアプローチを通じて、将来的な特定のAIチップへの過度な依存を避け、より柔軟で標準的な技術に基づいたインフラを構築したいと考えています。
OpenAIはAMDの技術力に「お墨付き」を与え、資金と大規模な発注量をもって育成することで、AI競争の生命線である計算資源の確保と競争力の強化を同時に図っていると言えます。

OpenAIがAMDを選んだのは、GPU供給の多様化とコスト効率の追求、そしてNVIDIA独占を避けるためです。設計初期から協力し、AIワークロードに最適化されたチップを共同開発する戦略です。
OpenAIの他の半導体メーカーとの協力状況はどうか
OpenAIは、AMD以外にも、AIインフラの課題解決とNVIDIAへの依存脱却を目指し、複数の半導体・関連企業と大規模な提携や協力を進めています。
主要な半導体メーカー・関連企業との関わりは以下の通りです。
1. NVIDIA (エヌビディア)
OpenAIは、AIチップ市場で支配的なNVIDIAとも極めて大規模な提携を進めており、AMDとの提携はNVIDIAへの依存を分散させるための戦略の一環です。
- 投資と供給: NVIDIAはOpenAIに対し、段階的に最大1,000億ドル(約15兆円超)を投資する計画を発表しています。
- システム導入: OpenAIは、次世代AIモデルの訓練・運用のために、合計10ギガワット(GW)規模のNVIDIAシステム(Vera Rubinプラットフォームなど)を導入する予定です。
2. Broadcom (ブロードコム)
OpenAIは、外部のGPUだけでなく、独自のAIチップ(カスタムチップ)の開発・量産にも取り組 んでおり、Broadcomはその重要なパートナーです。
- 役割: Broadcomと協力し、独自AIチップの量産を開始しています。これは、NVIDIAやAMDといった外部メーカーへの依存度を下げるための、長期的な戦略の一つです。
3. メモリーチップメーカー(Samsung, SK Hynix)
AIインフラ構築の巨大プロジェクト「スターゲート」計画においては、先進的なメモリーチップの供給に関して、韓国の主要メーカーと提携しています。
- 役割: Samsung(サムスン電子)やSK Hynix(SKハイニックス)といった企業が、AIデータセンターの標準装備となる高性能メモリーチップであるHBM(High Bandwidth Memory)の供給パートナーとしてプロジェクトに参加しています。
OpenAIの戦略は、高性能AIチップの主要な供給元を確保しつつ、カスタムチップの開発も並行して進めることで、AIインフラの「複線化」と計算資源の安定調達を極限まで推し進めることにあります。

OpenAIは、AMDへの出資オプションに加え、NVIDIAと最大1000億ドルのシステム導入提携、Broadcomと独自AIチップ量産、SamsungやSK Hynixとメモリー供給で協力しています。
OpenAIの多くの半導体メーカーと連携する理由は何か
OpenAIが複数の半導体メーカーと大規模な提携や出資オプション(株式ワラント)を結ぶ戦略の理由は、AI開発における最大の課題である「計算資源のボトルネック解消」と「戦略的自立性の確保」に集約されます。
1. 供給網の多様化とリスク分散
AIの進化速度は計算資源(GPU)の量と質によって決まります。現在、この市場はNVIDIAが圧倒的なシェアで独占しているため、単一サプライヤーに依存することはOpenAIにとって重大な事業リスクとなります。
- 独占リスクの回避: NVIDIA一強の状態では、供給不足や高騰、技術的な制約といったベンダーロックインのリスクが高まります。AMDやその他のメーカーを育成し利用することで、安定した供給ルートを確保し、リスクを分散します。
- コスト効率の最適化: 複数の競争相手を持つことで、チップの価格競争を促し、AIインフラ構築の総保有コスト(TCO)を削減することを目指します。
2. 性能の最大化と共同設計
OpenAIが求める計算能力は既存の市場製品では満たせないため、単に既製品を買うだけでなく、設計段階から関与しています。
- ワークロードの最適化: AMDとの提携に見られるように、OpenAIは自社の超大規模なAIモデル(LLM)の訓練・推論に特化したメモリ設計やラックレベルのスケーリング(数千GPUの連携)といった技術的な知見を提供します。これにより、特定のAIワークロードに対して最高の性能を発揮するカスタム仕様のチップを共同で生み出します。
- 独自チップの開発: Broadcomとの連携で進める自社設計チップ(カスタムシリコン)の量産も、特定のタスクに特化した性能を極限まで高め、NVIDIAやAMDといった外部メーカーへの依存度を下げるための重要な戦略です。
3. 次世代AIインフラへの投資と影響力
OpenAIがパートナー企業に「出資オプション」を持つことは、単なる顧客ではなく「戦略的な共同経営者」としての地位を確立します。
- 長期的な利益の一致: 株式を取得するオプションを持つことで、OpenAIの成功がパートナー企業の株価上昇につながり、両社の長期的な利益を一致させることができます。これにより、パートナーはOpenAIのニーズを最優先で満たす動機が高まります。
- 大規模プロジェクトの推進: NVIDIAや韓国のメモリーメーカー(Samsung, SK Hynix)との提携は、OpenAIが主導する巨大なAIデータセンター構想「スターゲート」の実現に不可欠です。複数の企業を巻き込んだ巨大投資を通じて、次世代AIを駆動するための世界最大の計算インフラを構築しようとしています。

OpenAIの戦略は、NVIDIA依存の回避と供給源の多様化です。複数のメーカーに出資・協力することで、計算資源の安定確保とAIワークロードに最適化したチップ開発を同時に進め、コスト効率を最大化します。
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