この記事で分かること
PP製造用触媒とは
原料のプロピレンを重合させてポリプロピレン樹脂にする化学物質です。単に反応を促すだけでなく、分子構造を綺麗に揃えて樹脂の剛性・耐熱性・強度といった品質や加工性を左右する重要な役割を担います。
東邦チタニウムの新触媒の特徴
フタル酸エステル不使用の環境対応型(ノンフタレート)で高活性を実現した触媒です。優れた立体規則性制御により樹脂の剛性を従来比2割以上高め、自動車部品等の薄肉・軽量化や省資源化に大きく貢献します。
フタル酸エステルの働き
触媒の内部ドナーとして機能し、反応点の配列を制御します。不規則な結合を起こす無効な部位を塞ぎプロピレン分子の向きを揃えることで、生成されるポリプロピレンの剛性や耐熱性を高める役割を果たします。
東邦チタニウム、PP製造用次世代触媒
東邦チタニウムは、ポリプロピレン(PP)製造用次世代触媒の量産を開始しました。
既存の触媒品と比較して2割以上の剛性向上を可能にする高機能触媒となっており、樹脂製品の薄肉化・軽量化(自動車部材の軽量化による燃費・電費向上など)に貢献するものとされています。
また、欧州のREACH規制におけるSVHC(高懸念物質)指定に対応するため、フタレート類を使用しないノンフタレート(非フタレート)系触媒を主力として展開します。従来のフタレート触媒と同等以上の触媒活性と性能を備えている点も特徴といえます。
環境規制の強化や省資源化ニーズが高まるグローバル市場に向け、次世代触媒の安定供給を通じて高付加価値ポリオレフィン市場でのシェア拡大を目指しています。
PP製造用触媒とは何か
PP(ポリプロピレン)製造用触媒とは、原料であるプロピレン(単量体)を化学反応させて長い鎖状の高分子(ポリプロピレン樹脂)へと効率よく結合(重合)させるための化学物質です。
単に反応を促進するだけでなく、完成するプラスチックの分子構造や強度・耐熱性などの品質を左右する極めて重要な役割を担っています。
主な役割
- 立体規則性の制御:プロピレン分子が持つメチル基(CH3)の向きを一方向に揃えて結合させます。向きが綺麗に揃った構造(アイソタクチック構造)になることで分子同士が隙間なく密に並び、ポリプロピレン特有の高い剛性(硬さ)・耐熱性・強度が生まれます。
- 重合活性(生産性)の向上:極めて少量の触媒で大量のプロピレンを高速に反応させ、製造効率を高めます。
- 分子量・分子構造の調整:分子の長さ(分子量)やその不揃いさ(分子量分布)をコントロールし、自動車部品向けやフィルム向けなど、用途に応じた成形加工性や柔軟性・耐衝撃性を付与します。
代表的な触媒の種類
- チーグラ・ナッタ触媒:世界のPP生産の大部分を占める標準的な触媒。塩化マグネシウム(MgCl2)などの担体に四塩化チタン(TiCl4)を保持させた構造をしており、高剛性な汎用・工業用PPの大量生産に優れます。
- メタロセン触媒:活性点(反応が起こる場所)の構造が統一された精密な錯体触媒(シングルサイト触媒)。分子量のばらつきが小さく、透明性やヒートシール性(熱接着性)に優れた高機能PPの生産に用いられます。

PP(ポリプロピレン)製造用触媒とは、原料のプロピレンを重合させてポリプロピレン樹脂にする化学物質です。反応を促すだけでなく、分子の立体構造を揃えて強度や耐熱性といった樹脂の品質を制御する重要な役割を担います。
東邦チタニウムの新触媒の特徴は何か
東邦チタニウムが展開するPP(ポリプロピレン)製造用の次世代触媒(THC触媒)の主な特徴は以下の通りです。
- 樹脂の「高剛性化」と「軽量化」を実現
- 極めて高い立体規則性(立体特異性)の制御技術により、生成されるポリプロピレンの剛性を大幅に高めます。これにより、自動車部材や家電製品の薄肉化・軽量化が可能となり、燃費や電費の向上・省資源化に貢献します。
- 環境対応型(フタレートフリー)
- 欧州REACH規制などの環境規制(SVHC:高懸念物質指定)に対応するため、フタル酸エステル系化合物を使用しない「ノンフタレート触媒」を採用しています。従来のフタレート系触媒と同等以上の触媒活性と性能を実現しています。
- 高重合活性による生産性向上
- 触媒活性(単位触媒あたりで重合できる樹脂の量)が従来比で30〜40%向上しており、PPの製造コスト削減や製造プロセスの効率化に寄与します。また、ポリマー内に残る触媒残渣を低減できるメリットもあります。
- 高い粒径制御性とカスタマイズ性
- 各種ポリオレフィン製造プロセスに適応した粒子径の制御が可能であり、自動車部材向けからフィルム用、家電用まで、顧客メーカーの製造ラインや要求性能に合わせた柔軟なカスタマイズに対応します。
- 独自ドナー技術との相乗効果
- 自社開発した外部ドナー(
U-donor™やT01-donor™など)を組み合わせることで、水素応答性や共重合活性をさらに向上させ、結晶化核剤などの添加剤使用量を削減できる特性も持ちます。
- 自社開発した外部ドナー(

東邦チタニウムのPP用新触媒は、フタル酸エステル不使用の環境対応型(ノンフタレート)で高活性を実現。高い立体規則性制御により樹脂の剛性を従来比2割以上向上させ、自動車部品等の薄肉・軽量化に貢献します。
フタル酸エステルの働きは何か、どのように排除したのか
フタル酸エステルの働き
PP(ポリプロピレン)製造で広く使われるチーグラ・ナッタ触媒において、フタル酸エステル(ジイソブチルフタレート: DIBP など)は内部電子ドナー(内部ドナー)と呼ばれる重要な助剤として働きます。
- 立体規則性の制御(高剛性化):担体である塩化マグネシウム(MgCl2)の表面で四塩化チタン(TiCl4)と均一に配列・結合し、不規則な結合を起こす無効な反応点を塞ぎます。これによりプロピレン分子の向きが綺麗に揃う活性点(アイソタクチック構造を形成する部位)を集中して作り出し、樹脂の剛性や耐熱性を大幅に高めます。
- 触媒構造の安定化:触媒粒子が合成される過程でマグネシウム化合物と細かく錯体を形成し、触媒の微細構造や粒子形状を均一に保持する役割を果たします。
どのように排除したのか(ノンフタレート化)
欧州REACH規制などでフタル酸エステルが生殖毒性等の懸念から高懸念物質(SVHC)に指定されたため、分子設計と製造プロセスの両面から代替・排除が進められました。
- 安全な新規ドナー化合物への置き換え:フタル酸骨格を持たない環境対応型の有機化合物を新たな内部ドナーとして採用しました。
- 1,3-ジエーテル類:高い触媒活性と立体規則性を両立する化合物。
- コハク酸エステル類(Succinate):分子量分布を広げ、樹脂の加工性を向上させる化合物。
- ジオールエステル類(Diol ester)やマロン酸エステル類:耐衝撃性や強度バランスを整える化合物。
- 触媒合成プロセスの再設計:代替化合物はフタル酸エステルと比べてマグネシウムやチタンに対する結合力や立体的大きさが異なります。そのため、触媒を製造する際の反応温度、溶媒条件、チタン処理の時間やタイミングなどを精密に再設計・最適化しました。
- 外部ドナーとの組み合わせ最適化:重合反応時に後から加える「外部ドナー」(アルコキシシラン系化合物など)との組み合わせを工夫することで、非フタル酸系触媒であってもフタル酸触媒と同等以上の反応活性と高い剛性を維持できるようにしています。

PP製造用触媒の「内部ドナー」として機能し、反応点の配列を制御します。不規則な反応を抑えてプロピレン分子の向きを均一に揃えることで、生成されるポリプロピレン樹脂の剛性や耐熱性を高める役割を担います。


コメント