積水化学のケミカルルーピング装置

化学プラントのイメージ画像 脱炭素

この記事で分かること

積水化学のケミカルルーピング装置

 積水化学工業は、自社開発した「ケミカルルーピング CO2 →CO 反応装置(小型試験装置)」を日本コークス工業より受注しました。企業向け案件としての本装置の受注はこれが初となります

 工場や事業活動等から排出されるCO2 を有効利用するCCU(Carbon Capture and Utilization:炭素捕獲・利用)の実装に向けた実証試験および CO2削減効果の試算を行う予定です。

 両社は検証結果を基に、さらなる技術連携や事業化に向けた検討を進める方針です。

ケミカルルーピング技術とは何か

 ケミカルルーピング(Chemical Looping)技術とは、金属粒子などの「酸素キャリア(反応媒体)」を媒体とし、酸化反応と還元反応を別々の領域または工程で周期的に繰り返す化学反応プロセスです。

 一般的な化学反応のように原料同士を直接混ぜ合わせるのではなく、金属触媒などが酸素の受け渡し役(キャリア)となって「ループ(循環)」することが名前の由来です。

基本的な仕組み

 この技術は大きく分けて2つの反応の組み合わせで構成されます。

  1. 還元工程(酸素の放流・受け渡し)
    • 酸化状態にある金属(金属酸化物)が燃料や還元ガスと反応し、自身に含まれる酸素(格子酸素)を供給して自らは還元状態(酸素が抜けた状態)になります。
  2. 酸化工程(媒体の再生・再酸化)
    • 酸素を失った金属が空気や水蒸気、あるいは対象ガス(CO2 など)と反応して再び酸素を取り込み、元の酸化状態へと戻ります。

 この2つの反応を繰り返すことで、金属媒体は消費されることなく循環し続けます。

主な応用例と特徴

1. ケミカルルーピング燃焼(CLC)

  • 目的: 発電や水素製造時の $\text{CO}_2$ 回収
  • 仕組み:燃料を空気で直接燃やさず、金属酸化物から酸素を奪わせて燃焼させます。
  • メリット: 排ガス中に空気の主成分である窒素($\text{N}_2$)が混ざらないため、複雑な分離設備を使わずに高純度な $\text{CO}_2$ を直接回収可能です。

2.CO2 資源化(CO2 → CO 変換など)

  • 目的: 安定した CO2を原料(一酸化炭素や合成ガス)へ再資源化
  • 仕組み: 媒体を介して反応段階を分割し、熱力学的に極めて安定で反応しにくい CO2 から高効率に酸素を奪い取ります。
  • メリット: 直接反応させるよりも反応障壁が下がり、低いエネルギー・高温負荷で高い変換率(90%以上など)を達成できます。

 化学・エネルギー分野において、脱炭素(カーボンリサイクル・CCU)を実現する次世代のキーテクノロジーとして注目されています。

金属などの媒体を介し、酸化反応と還元反応を周期的に繰り返す技術です。原料同士を直接反応させず媒体が酸素の受け渡しを行うことで、エネルギー負荷を抑えながら高効率なCO2 回収や有用ガスへの変換を実現します。

各工程でどのような反応が起きているのか

 積水化学の装置では、触媒(金属粒子)が入った容器内で流すガスを交互に切り替える「固定床・ガス切り替え方式」を採用しています。

反応の2つのステップ

ステップ1:触媒の還元(酸素を抜いて活性化する)

 触媒(MOx:Mは金属)に還元ガス(H2 など)を流し、触媒から酸素を取り去って反応しやすい状態(M)にします。

  • 化学式: MOx + x H2 → M + x H2O
  • 内容: 触媒が酸素を失い、副産物として水蒸気(H2O)が発生します。

ステップ2:CO2の変換(酸素を奪い取ってCOを生成する)

 酸素を失った触媒(M)に CO2 ガスの排ガスを流します。触媒が CO2 から強力に酸素を奪い取ることで、CO2 が CO に変換されます。

  • 化学式: M + x CO2 → MOx + x CO
  • 内容: CO2 から酸素が1つ奪われて CO(一酸化炭素)になり、触媒は再び元の状態(MOx)に戻ります。

全体(トータル)の反応式

 2つのステップを合わせると、全体の反応は次のようになります。

  • 全体式: CO2 + H2 → CO + H2O

仕組み上の工夫と特徴

  • ガス切り替え方式
    • 触媒となる粉末粒子を別々の部屋へ移動させるのではなく、ひとつの容器に固定したまま導入するガス(H2 と CO2)を交互に切り替えます。これにより、装置の摩擦や触媒の劣化を小さく抑えられます。
  • 90%以上の高い変換率
    • CO2 と H2 を直接混ぜて反応させると平衡制約(限界)がありますが、金属触媒を介して段階的に反応を進めることで限界を回避し、高い割合で CO に変換できます。

固定容器内の触媒へ流すガスを交互に切り替えます。まずH2で触媒の酸素を抜き活性化させ、そこにCO2を通すと触媒が酸素を奪い取ってCOを生成します。触媒が元の状態に戻るサイクルを繰り返し高効率に変換します。

一酸化炭素は何に利用されるのか

 一酸化炭素(CO)は非常に反応性が高く、主に以下の用途で利用されています。

1. 化学品の基礎原料

  • メタノール(CH3OH): COと水素(H2)を反応させて作ります。プラスチックや薬品、接着剤などの原料になります。
  • 酢酸(CH3COOH): メタノールにCOを反応させて作ります。合成繊維や塗料などに幅広く使われます。
  • 樹脂・ウレタン原料: COと塩素から作られる化合物を経由して、自動車のシートやポリカーボネート(透明な強化樹脂)の原料になります。

2. 合成燃料(e-fuel・SAF)の製造

  • COとH2を組み合わせたガスから、FT合成(フィッシャー・トロプシュ合成)という技術を用いて、ガソリンや軽油、持続可能な航空燃料(SAF)を作り出します。脱炭素の液体燃料として注目されています。

3. 製鉄での還元剤

 高炉の中で鉄鉱石(Fe2O3)から酸素を奪い取り、金属の鉄(Fe)を取り出すための還元剤として不可欠な役割を果たしています。

一酸化炭素は反応性が高く、メタノールや酢酸などの化学品や樹脂の原料、SAFをはじめとする合成燃料の製造に利用されます。また、製鉄において鉄鉱石から酸素を奪い鉄を取り出す還元剤としても不可欠です。

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