この記事で分かること
圧力測定フィルムとは
圧力測定フィルムとは、圧力を受けると内部のマイクロカプセルが破壊されて赤く発色する特殊フィルムです。圧力の強さに応じて色の濃淡が変化するため、目に見えない面全体の「圧力の大きさや分布」を一目で視覚化できます。
圧力で形状不良を測る理由
ウエハーの反りや装置の傾きがあると、接合時の圧力が不均一になるからです。加熱・加圧された「実プロセスと同じ状態」でのミクロな歪みや異物の挟み込みを、圧力のばばらつきとして正確に検知できます。
12インチに最適化する理由
最先端ラインの主流サイズに合わせることで、現場での裁断ゴミや手袋からの汚染(コンタミ)を完全に防げるからです。装置の自動搬送にも対応し、実際の製造時と同じ超クリーンな状態で高精度に測定できます。
富士フイルムの半導体ウエハーの圧力測定フィルム
富士フイルムが2026年6月8日、半導体ウエハー形状の圧力測定フィルム「円形プレスケール」を発表しています。
同社のロングセラー製品である圧力測定フィルム「プレスケール」の技術をベースに、半導体製造現場のシビアな要求に合わせて最適化された製品です。
ウエハー同士、あるいはウエハーとインターポーザを接合する「ウエハーボンディング工程」では、わずかな圧力の不均一が致命傷になってしまいます。
高精度での圧力測定は微細化と多層化が進む最先端の半導体製造プロセス(特に先端パッケージング技術)における大きな課題を解決するアプローチとして注目を集めています。
圧力測定フィルムとは何か
圧力測定フィルムとは、目に見えない面全体の「圧力の大きさ」や「圧力の分布(ばらつき)」を、色の濃淡として視覚化(発色)できる特殊なフィルムです。
世界的には富士フイルムが開発・販売している「プレスケール(Prescale)」という製品が代名詞となっており、製造業の品質管理や研究開発の現場で広く使われています。
1. 圧力が「見える」仕組み
フィルムの内部には、高度な化学技術が詰め込まれています。
- マイクロカプセルの層: フィルムの表面に、さまざまな大きさの「微細なカプセル(中に無色の染料が入っている)」が均一に塗布されています。
- 圧力による破壊: フィルムに圧力が加わると、その強さに応じた大きさのカプセルが破壊され、中の染料が染み出します。
- 化学反応(発色): 染み出した染料が、隣接する「顕色剤(色を出す成分)」と反応し、赤く発色します。
【ポイント】
圧力が弱いと薄い赤に、圧力が強いと濃い赤になります。この色の濃淡をチェックすることで、面内のどこにどれだけの圧力がかかっているかが一目で判別できます。
2. 主な特徴とメリット
従来の電子的な圧力センサーと比較して、以下のような独特な強みを持っています。
- 「面」全体をシームレスに測定できる電子センサー(マトリクスセンサーなど)は「点」の集まりですが、フィルムは全面が感光体のようなものなので、境界線のない高解像度な圧力分布が分かります。
- 極薄である(狭い隙間に挟める)厚みが100μm〜200μm(およそ紙1〜2枚分)程度と非常に薄いため、機械のわずかな隙間や、2つの部材の噛み合わせ面などに直接挟み込んで測定できます。
- 電源・配線が不要フィルムをハサミで必要な形にカットし、測定したい場所に挟んで圧力をかけるだけなので、屋外や動的な装置内でも手軽に使用できます。
3. 主な用途
製造業を中心に、あらゆる「接触」や「プレス」が発生するプロセスで活用されています。
| 分野・対象 | 具体的な測定内容 |
| 半導体・液晶 | ウエハーの貼り合わせ(ボンディング)圧の均一性、ロールの接触圧 |
| 自動車・機械 | エンジンヘッドガスケットの締付圧、ブレーキパッドの当たり方、金型の調整 |
| 電子基板・実装 | ICチップのマウント圧、スクリーン印刷時のスクレーパー圧 |
| 包装・印刷 | ヒートシール(熱袋留め)のシール圧、印刷ロールのニップ圧(挟み込み圧) |
| 医療・人間工学 | 足裏の圧力分布、歩行解析、介護用ベッドや車椅子の座面圧(床ずれ防止) |
4. 進化する測定・解析技術
かつては「赤くなったフィルム」を人間の目でカラーサンプル(見本帳)と見比べ、おおよその圧力を推測する使い方が主流でした。
しかし現在では、発色したフィルムを専用のスキャナーやスマートフォンアプリで読み取り、デジタル画像として解析するシステムが普及しています。これにより、以下のような定量的なデータ管理が可能になっています。
- 圧力の具体的な数値化(例:3.5 MPaなど)
- 3Dグラフィックによる圧力分布の可視化
- 測定データのPC保存、ロットごとの品質トレーサビリティの確保
こ のように、圧力測定フィルムは「挟んで、プレスして、見る」というシンプルさでありながら、現代の精密なものづくりを支える不可欠な検査・計測ツールとなっています。

圧力測定フィルムとは、圧力を受けると内部のマイクロカプセルが破壊されて赤く発色する特殊フィルムです。圧力の強さに応じて色の濃淡が変化するため、目に見えない面全体の「圧力の大きさや分布」を一目で視覚化できます。
なぜウエハの圧力ばらつきを計測するのか
ウエハーを他の部品と貼り合わせる際の「圧力のばらつき」を測定することは、ウエハーや装置の歪み・形状不良をあぶり出していることとなります。
以下に示すように最先端の半導体製造において、圧力ばらつきを計測することの重要性が増加しています。
1. 貼り合わせる「ナノレベルの平坦度」を確かめるため
現在の半導体、特にHBM(高帯域幅メモリ)や3D積層チップは、ウエハー同士を直接重ねて接合します(ウエハーボンディング)。
もしウエハーに目に見えないほどの「反り」や「うねり」があると、上から均一にプレスしても、出っ張っている部分は圧力が強く、凹んでいる部分は圧力が弱く(または隙間が空いて接合不良に)なります。
つまり、圧力を測ることで、ウエハーのミクロな形状異常や異物の挟み込みを間接的に検知できるのです。
2. 装置の「押す力の歪み」を排除するため
どれだけウエハーが完璧に真っ平らでも、装置のプレス機(ヘッド)がわずかに傾いていたり、熱膨張で歪んでいたりすると、ウエハーに均一な力が伝わりません。
ウエハーと同じ形状のフィルムを挟んで圧力を測ることで、「装置側がウエハーに対して本当に真っ直ぐ、均一に圧力をかけられているか」という装置側の形状・精度の不備をチェックできます。
3. 実プロセスと同じ「熱と負荷」がかかった状態を再現するため
ウエハーは、ただ置いてある時と、実際に装置で加熱・加圧(最大200℃以上)された時で熱膨張により形状が変化します。
レーザーなどを使う一般的な形状測定器は「静止した状態」しか測れませんが、圧力測定フィルムを挟む方法なら、「実際に熱と圧力をかけて接合しているその瞬間」のウエハーの歪みや状態を、圧力の分布として正確に写し取ることができます。
「圧力が不均一=ウエハーが反っている、または装置が傾いている」
半導体の微細化・多層化が進んだ現在、ウエハーのわずかな変形や装置の傾きは、チップが丸ごと動かなくなる致命傷(ボイドと呼ばれる空隙の発生)につながります。
そのため、「実際に負荷がかかった状態の形状の正しさ」を担保する最も確実な手段として、圧力による計測が行われています。

ウエハーの反りや装置の傾きがあると、接合時にかかる圧力が不均一になるからです。加熱・加圧された「実プロセスと同じ状態」でのミクロな歪みや異物の挟み込みを、圧力のばらつきとして正確に検知できます。
12インチウエハーへの最適化を行う理由は何か
12インチ(直径300mm)ウエハーへの完全最適化を行う最大の理由は、「最先端半導体の生産効率(歩留まり)を落とさずに、超クリーンな環境で高精度な測定を行うため」です。
1. クリーンルーム内での「ゴミ(コンタミ)」を徹底的に防ぐため
最先端の半導体工場は、チリ一つ許されない極限のクリーンルームです。
- 従来: 四角いロール状のフィルムを、現場でハサミやカッターを使ってウエハーの円形に切り出していました。しかし、裁断時にどうしても目に見えない「微細なプラスチックの破片やチリ」が発生し、これが装置やウエハーに付着して回路を破壊する原因(歩留まり低下)になっていました。
- 最適化後: 工場出荷時点で完璧な円形に高精度プレカットされているため、現場での裁断が不要になり、ゴミの発生をゼロに抑えられます。
2. 人の手による「汚れや皮脂」の付着を防ぐため
微細化が進む半導体では、作業員の手袋に付いたわずかな汚れや油分も致命傷になります。
- 今回の最適化では、円形の外側に「持ち手(タブ)」が作られています。ロボットアームや作業員がこの持ち手だけを掴んで装置にセットできるため、測定面(発色エリア)に一切触れることなく搬送・配置が可能になり、汚染リスクを極限まで排除できます。
3. 最先端半導体(HBMなど)の主流サイズであるため
現在、AI用半導体やHBM(高帯域幅メモリ)といった、最も圧力管理がシビアな最先端チップはほぼ100%「12インチウエハー」のラインで製造されています。
- 装置側も12インチウエハーを自動で搬送・プレスするように設計されているため、測定フィルム側も「寸分違わぬ12インチの円形(位置決め用の切り欠きなども含む)」である必要がありました。サイズが完璧に一致しているからこそ、実際の製造時と全く同じ圧力分布を再現できます。
「 手作業で切るとゴミが出るし、手で触ると汚れるし、サイズがズレる」という現場の課題をすべて解決し、最先端ラインで安全・手軽に使えるようにするための完全最適化です。

12インチは最先端半導体の主流サイズであり、それに完全最適化することで、現場での裁断ゴミや手袋からの汚染(コンタミ)を完全に防げるからです。実際の製造時と同じ超クリーンな状態で高精度に測定できます。

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