6月19日の日経平均株価、史上最高値更新

この記事で分かること

なぜ高騰しているのか

AI・半導体分野の業績拡大、東証改革による株主還元、デフレ脱却に伴う物価と賃金の好循環に加え、欧米の高値警戒感や中国の地政学リスクを背景とした海外投資家の「日本株シフト」が重なったことが主因です。

バブルだとする理由

一部の半導体銘柄に偏った歪な上昇であること、企業の利益成長を追い越した指標面の割高感、景気実感や個人消費との激しい乖離、さらに「乗り遅れたくない」という投資家の過剰な楽観主義が根拠に挙げられます。

まだ割安とする根拠

株価急騰以上に企業の利益や純資産が劇的に成長しており、PERやPBRなどの指標が過去のバブル期や米国株に比べ依然として低水準なこと、デフレ脱却による名目成長や巨額の株主還元余力があることが根拠です。

6月19日の日経平均株価、史上最高値更新

 6月19日の日経平均株価は5営業日連続での取引時間中の史上最高値更新、そして終値ベースでも7日続伸となりました。 

 18日に「7万円」の大台を突破したばかりの中でのこの急騰は、現在の市場の熱気をそのまま映し出しています。

 わずか2か月ほどで6万円台から7万円台へと突き抜けた足元の相場は、東証プライムの売買代金が14兆円を超えるなど非常に分厚いエネルギーに支えられています。一方で、今回の午後の急落が示した通り、利益確定のタイミングを計る売り圧力も確実に強まっています。

なぜ高騰しているのか

 日経平均がここまで突き抜けて高騰している(7万円台の大台に乗る)背景には、単なる「バブル的な思惑」だけではなく、日本の経済構造や企業業績が根本から変わったことを示す強力なエンジンが複数同時に回っているからです。

1. 「AI・次世代半導体」ブームが思惑から「実需」へ

 2024年頃までの半導体株の上昇は「これからの期待感」が中心でしたが、現在は「実際の業績の爆発的な伸び」に裏打ちされています。

  • 生成AIの急速な普及に伴い、データセンターの増設やサーバーの大容量・高速化(HBMや3D積層などの次世代パッケージング技術)が世界中で猛烈に進んでいます。
  • 日本には、この最先端プロセスに不可欠な半導体製造装置や、高機能な化学部材(フォトレジストや高純度ガスなど)で世界シェアの過半数を握る企業がゴロゴロしています。これらの企業の利益が桁違いに膨らみ、日経平均を強烈に押し上げています。

2. 東証主導の「資本効率改革」が本物になった

 東京証券取引所(東証)が数年前から進めてきた「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業の改善要求」をはじめとするガバナンス改革が、完全に実を結びました。

  • 日本企業がこれまでに溜め込んできた巨額の現預金を、「自社株買い」や「増配」といった形で株主に猛烈に還元するようになりました。
  • 「日本企業は投資家を軽視している」というかつての悪評が消え去り、ROE(自己資本利益率)の向上を本気で目指す姿が、国内外の投資家から「持続可能な企業価値の向上」として高く評価されています。

3. 30年ぶりの「デフレ完全脱却」と物価・賃金の好循環

 日本経済が長年苦しんできたデフレから、ついに「マクロ経済のゲームのルール」が変わりました。

  • 企業が原材料費の上昇を適切に価格転嫁(値上げ)できるようになり、それが企業の売上高や利益を名目ベースで大きく押し上げています。
  • さらに、歴史的な高水準での賃上げが定着したことで、「物価が上がる→賃金が上がる→企業の売上と利益が増える」という正常な経済のサイクルが回り始めました。投資家にとって、「現金をそのまま持っていると目減りする(=株や不動産などのリスク資産に資金をシフトすべき)」というマインドに切り替わったことも大きいです。

4. 消去法ではない、グローバル資金の「日本株シフト」

 海外の機関投資家(年金基金やヘッジファンドなど)のポートフォリオにおいて、日本株の存在感が劇的に高まっています。

  • 米国株の高値警戒感や、中国市場の不透明感・地政学的リスク(米中対立など)を背景に、グローバル資金の受け皿として「政治的に安定しており、法治が機能し、なおかつ企業改革が進んでいる日本市場」が、世界で最も魅力的な投資先の一つとして選ばれています。

 「企業の稼ぐ力が上がり、株主還元も増え、マクロ経済もデフレから脱却した。そこへ世界的なAI革命の波と、日本の地政学的な優位性が重なった」というのが、現在の歴史的な高騰の全貌です。

AI・半導体関連の業績拡大、東証改革による株主還元の強化、デフレ脱却による物価と賃金の好循環に加え、地政学リスクを背景とした海外資金の日本株シフトが重なったことが、歴史的な高騰の主な要因です。

バブルだとする理由は何か

 いくら業績や経済環境が良いと言っても、現在の「7万円台」という驚異的なスピードと水準は「実態を超えたバブル(過熱)だ」と警戒する声も根強くあります。そう主張する専門家が挙げる主な根拠は、次の4つに集約されます。

1. 一部の「半導体エリート銘柄」による歪んだ牽引

 日経平均という指数を引っ張っているのは、実はアドバンテストや東京エレクトロンなど、指数への影響力が極めて大きい一部の半導体・ハイテク関連株だけという点です。

 「日本経済全体が強い」わけではなく、特定の人気セクターだけに世界中の資金が集中して指数を吊り上げている「歪んだ上昇」であるため、ここが崩れると一気に瓦解するリスクがあります。

2. 利益の伸びを追い越した「割高感(PERの急上昇)」

 株価が企業の純利益の何倍まで買われているかを示す指標をPER(株価収益率)と呼びます。

 日本株の適正水準は歴史的に14〜16倍程度とされてきましたが、現在の急騰によってこの倍率が大きく跳ね上がっています。つまり、「将来の利益への期待」をあまりにも前借りしすぎた価格(割高な水準)になっており、少しでも業績が期待を下回れば大暴落につながるという指摘です。

3. 一般の「景気実感」や「個人消費」との激しい乖離

 株価は7万円を超えてお祭り騒ぎですが、実体経済や私たちの生活実感とは大きくかけ離れています。

 大企業や輸出企業が最高益を叩き出す一方で、物価高に賃金が追いつかない層の個人消費は伸び悩んでおり、中小企業の経営もコスト高で苦しいままです。「実体経済の裏付けがない、金融市場だけのマネーゲームだ」と言われる所以はここにあります。

4. 「FOMO(乗り遅れる恐怖)」による過剰な楽観

 「まだ上がる、今買わないと置いていかれる」という投資家の焦り(FOMO: Fear of Missing Out)だけで相場が動いているという側面です。

 市場から恐怖心が消え、リスクを無視して買いが買いを呼ぶ状態は、過去のあらゆるバブルの末期症状と共通しています。19日の後場に一瞬で500円以上も急落した激しい乱高下は、市場がそれだけ「高所の恐怖」を感じており、脆い状態である証拠だとも言えます。

 1989年のバブル期(PERが60倍を超えていた時代)に比べれば、企業の利益が出ている分「まだ健全だ」という見方もあります。しかし、「期待値が実態を追い越し始めている」という意味では、十分にバブルの領域に入っているという警戒論は無視できません。

一部の半導体銘柄に偏った上昇と指標面の割高感、実体経済や生活実感との激しい乖離、さらに「乗り遅れる恐怖」による投資家の心理的過熱や過剰な楽観が市場を支配していることがバブルと主張される理由です。

まだ割安とする意見の根拠は何か

 日経平均が7万円台に達しても「まだ割安(あるいは適正水準)だ」と主張する強気派の専門家は、株価の「絶対額(7万円という数字)」ではなく、「企業が稼ぐ力(利益)」を基準にしています。

1. 企業の利益が過去最高(PERはまだ10歳代後半)

 株価を1株当たり純利益で割ったPER(株価収益率)で見ると、現在の日本株全体のPERは17〜18倍前後にとどまっています。

  • 1989年のバブル期:PERは60倍以上(利益の60年分まで買われていた)という異常値でした。
  • 現在の米国株(S&P500):PERは20倍を超えており、主要テック銘柄は30〜40倍以上がザラです。つまり、株価の数字自体は高いものの、それ以上に「企業の利益(EPS)」が劇的に伸びているため、国際的にも歴史的にも、決して実態から乖離した割高な水準ではないというロジックです。

2. 解散価値や資産から見ても割安(PBRの比較)

 企業の純資産に対して株価が何倍かを示すPBR(株価純資産倍率)でも、日本株の割安感が際立ちます。 現在の日本株のPBRは平均して1.5倍〜2倍未満です。

 これに対して米国株(S&P500)のPBRは4倍を超えています。日本企業は依然として多くの現金や不動産、優良資産を抱えており、企業の「解散価値」や持っている資産の価値から逆算すると、株価はまだまだ過小評価されているという見方です。

3. 「名目GDP成長(インフレ)」による株価の底上げ

 日本がデフレを脱却し、物価や賃金が毎年2〜3%上がる「マクロ経済の正常化」が起きたことが決定打となっています。

 世界を見渡せば、インフレ経済の国(米国など)の株価は、企業の売上高や資産価値が名目ベースで膨らむため、長期的に右肩上がりになるのが普通です。 

 日本株はこれまで30年間デフレで押し下げられていた分、「世界の普通の国並みの株価上昇トレンド」にようやく乗ったばかりであり、現在の高騰はその初期の修正プロセスに過ぎないという意見です。

4. 尽きない「自社株買い」と「増配」の原資

 日本企業が保有する手元資金(現預金)は、依然として300兆円を超えています。

 東証の改革圧力を受けて、企業は今後もこの巨額の資金を使って自社株買いや増配を続ける余裕が十分にあります。

 株主への還元が手厚くなれば、株価が上がっても「配当利回り」などの投資妙味が維持されるため、国内外の長期投資家にとって下値が極めて堅い、魅力的な市場であり続けるとされています。

 「1989年のバブル期は『利益がないのに株価だけが上がった』が、今回は『利益が猛烈に増えたから株価が上がった』。だからまだ割安である」というのが、強気派の一貫した主張です。

過去のバブル期とは異なり企業の利益や純資産が劇的に成長しているため、PERやPBRなどの指標が歴史的・国際的に見て依然として低水準であること、デフレ脱却による名目成長や株主還元余力の大きさが根拠です。

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