この記事で分かること
MRIとは何か
強力な磁場と電波を利用して体内の断面を画像化する医療技術です。放射線を使わないため被ばくがなく、脳や筋肉、関節といった柔らかい組織(軟部組織)を鮮明に描き出せるのが大きな特徴です。
なぜオープンにできたのか
人を筒状のコイルで囲む従来の方式から、磁石を「上下から挟み込む構造」へ変えたためです。磁場の不均一を高精度に補正する技術が確立されたことで、周りを開放した状態でも正確な撮影が可能になりました。
なぜオープン型では低磁場なのかとなるのか
主に電気不要な永久磁石を採用しており、高磁場化すると磁石が巨大化・重量化しすぎる物理的限界があるためです。また、上下の磁極間の隙間(空気層)が広いほど磁気が減衰しやすいことも要因です。
富士フィルムのオープンMRI
富士フイルムは、狭所恐怖症の患者や小児にも配慮した開放感のあるデザインと、低ランニングコストを特長とする永久磁石オープンMRIを展開しています。
従来の永久磁石オープンMRIは「患者の快適性」や「導入・維持コストの低さ」に優れる一方、超電導型(1.5T/3.0Tなど)に比べて磁場強度が低いため撮像時間が長くなりやすい点が課題でした。
新世代モデルでは、AI画像処理と撮像シーケンスの最適化によりその弱点を大幅に克服しています。
MRIとは何か
MRI(磁気共鳴画像法:Magnetic Resonance Imaging)は、強力な磁気(磁場)と電波(ラジオ波)を利用して、体内の断面を精密に画像化する医療用の画像診断技術です。
最大の特徴は、X線などの放射線を一切使用しない点にあります。
どうやって体内を撮影しているのか
人間の体の約60%は水分でできており、水や脂質にはたくさんの水素原子核(プロトン)が含まれています。MRIはこの水素原子の性質を利用して画像を生成します。
- 整列: 強力な磁石の中に体を入れられると、普段はバラバラの方向を向いている体内の水素原子が、磁場の方向へ一斉に綺麗に並びます。
- 共鳴: そこへ特定の周波数の電波(RFパルス)を当てると、水素原子がエネルギーを吸収して向きを変えます(これが「磁気共鳴」現象です)。
- 信号受信: 電波を止めると、水素原子は元の状態に戻ろうとしながら微弱な電波(信号)を発します。
- 画像化: 組織の種類(脳・筋肉・脂肪・腫瘍など)によって信号が戻るスピード(緩和時間)が異なります。この違いをコンピューターで計算し、白黒の濃淡(コントラスト)として断面図を作成します。
MRIの主なメリットと得意な検査
- 放射線被ばくがない: X線を使わないため、繰り返し検査を行っても被ばくの心配がありません。
- 軟部組織(柔らかい組織)の描出に優れる: 骨に囲まれた脳、脊髄、関節の靭帯・半月板、筋肉、骨盤内の臓器(子宮・卵巣・前立腺など)の描写力がきわめて高いのが特長です。
- 任意の角度で切り出せる: 体の向きを変えることなく、横切り(水平断)、縦切り(矢状断・冠状断)、斜めなど、自由な角度の断面画像が得られます。
- 血管を描出できる: 造影剤を使わずに脳血管などの動脈を描出する技術(MRA:磁気共鳴血管撮影)も利用されています。
CT(放射線検査)との主な違い
MRIとよく比較されるCT(コンピューター断層撮影)には、それぞれ異なる役割や強みがあります。
| 項目 | MRI | CT |
| 使用する技術 | 磁石と電波 | X線(放射線) |
| 被ばく | なし | あり |
| 得意な部位・病変 | 脳、神経、靭帯、筋肉、骨盤内臓器、早期の脳梗塞 | 骨折、出血(急性期)、肺(呼吸器)、腹部全体(急性期) |
| 撮影時間 | 15〜30分程度(比較的長い) | 数秒〜数分(非常に速い) |
| 注意点 | 体内に金属(ペースメーカー等)があると受けられない場合がある | 放射線被ばくへの配慮が必要 |
ポイント: 急を要する頭部出血や骨折、胸部(肺)の評価にはCTが第一選択となりますが、脳梗塞の早期発見や関節・神経の細かな病変の鑑別にはMRIが威力を発揮します。

MRI(磁気共鳴画像法)は、強力な磁場と電波を利用して体内の断面を画像化する医療技術です。放射線を使わないため被ばくがなく、脳や筋肉、関節といった柔らかい組織(軟部組織)を精細に描き出すのが大きな特徴です。
なぜオープンにできたのか
オープンMRIが実現できた最大の理由は、磁場の作り方(磁石の配置)を根本から変えたことにあります。
決定的な違いは「磁場の向き」
一般的なトンネル型とオープン型では、磁場を通す方向と磁石の構造が全く異なります。
| 項目 | トンネル型(一般的な超電導MRI) | オープン型(富士フイルム等) |
| 磁場の向き | 水平方向(頭から足へ突き抜ける) | 垂直方向(上から下へ突き抜ける) |
| 磁石の配置 | 人を囲むようにコイルを筒状に巻く | 上下対向(2枚の磁石で上下から挟む) |
| 構造上の制限 | 均一な磁場を作るため「筒(トンネル)」が必須 | 左右や前後を広く開放できる(C型アーチなど) |
オープン構造を可能にした3つの技術的ブレイクスルー
「上下から挟む形」にすればオープンにできるものの、技術的には大きなハードルがありました。それを克服したのが以下の技術です。
1. ネオジム磁石(永久磁石)の対向配置
電気を通し続けなくても強力な磁場を発する「ネオジム磁石」などを上下に配置し、プレート状のポールピース(磁極)で挟み込む構造を開発しました。
これにより、巨大な冷却装置や筒状のコイルを使わずに磁場を発生させることが可能になりました。
2. 高精度な磁場補正技術(シミング)
オープンな形状にすると、磁気が外へ逃げてしまい「磁場のムラ(不均一)」が生じやすくなります。
磁場が不均一だと画像が歪んでしまうため、磁極の形状を緻密に計算し、特殊なコイルで磁束の乱れを極限まで補正(シミング)する技術によって綺麗な画像を担保しました。
3. C型アーチの構造解析技術
上下にある何トンもの重い磁石を「片側の柱(1本柱)や2本柱」だけで支えつつ、ミリ単位のたわみも許さない高い強度設計が実現したことで、患者の周り360度近くを開放したデザインが成り立っています。
オープン型は「開放感」と引き換えに磁場強度が低い(0.3T〜0.4T程度)ため、画質や撮影速度でトンネル型に劣るのが弱点でした。
しかし近年は、AIによるディープラーニングノイズ除去技術を組み合わせることで、「オープンな構造のまま、高磁場装置に迫る画質を得る」という進化を遂げています。

筒状のコイルで囲む方式から、永久磁石などで「上下から挟み込む構造」へ変えたためです。磁場の不均一を高精度に補正する技術が確立されたことで、周りを開放した状態でも正確な撮影が可能になりました。
なぜオープンでは低磁場なのか、どうやって克服したのか
オープンMRIが「低磁場」になる主な理由は、「磁石の種類の違い」と「構造上の空間ギャップ」という2つの物理的制約にあります。
① 永久磁石の物理的限界
- オープン型の多くは永久磁石(ネオジム磁石など)を採用: 電気代がかからず冷却も不要ですが、永久磁石が作れる磁場強度は実用上0.3〜0.4T(テスラ)が限界です。これ以上磁場を強くしようとすると、磁石自体が巨大・重量化しすぎ、建物の床が耐えられなくなります。
- 超電導磁石でオープン化するのが困難: 高磁場(1.5T以上)を出せる超電導磁石は、コイルを液体ヘリウムで超低温冷却しつつ「筒状」に密閉巻きする必要があります。一部に超電導オープン機(1.2Tなど)も存在しますが、冷却構造や漏れ磁場対策が極めて複雑になり、装置価格が跳ね上がってしまいます。
② 広いギャップ(空気層)による磁気の減衰
磁気は空気中を通りにくい(磁気抵抗が高い)性質があります。オープンMRIは患者の開放感を確保するために上下の磁極間の距離(ギャップ)を広く取っているため、ギャップ中央の磁場強度を高めるのが構造的に難しくなります。
構造上「物理的に磁場を強くできない」オープンMRIですが、ハードの制約を「AIによる高度な信号処理・ノイズ除去」で補うことで、高い開放感と実用的な高画質・短時間撮影の両立を達成しました。

永久磁石の物理的限界や広がる隙間で高磁場化が難しいため低磁場になります。この弱点は、AIを用いたノイズ除去技術や計測方式の工夫により、高磁場機に迫る高画質化と撮影の高速化を実現して克服しました。


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