この記事で分かること
1. 飲料缶にアルミニウム合金が適している理由
軽量で輸送効率が良く、加工性に優れるため「DI法」による高速大量生産が可能です。また、酸素や光を完全に遮断して品質を保つ能力が高く、使用後はわずか3%のエネルギーで再生できる高い環境性能を備えています。
2. どんなリチウムイオン電池部材に使われるか
主にEVやスマホ用電池の「外装材(パウチ用フィルムや硬質ケース)」や、内部で電気を取り出す「正極集電体(アルミ箔)」に使用されます。軽量化、放熱性向上、防湿性の確保という極めて重要な役割を担っています。
3. 正極集電体にアルミニウムが適している理由
高い電圧(高電位)がかかる正極において、表面に酸化皮膜を作ることで電解液への溶出を防ぎ、化学的に安定して通電できるためです。また、導電性と放熱性に優れ、銅よりも軽いため電池の軽量化にも大きく貢献します。
アルテミラのアルミニウム技術
アジア系投資ファンドのMBKパートナーズによる、アルミ缶国内3位のアルテミラ・ホールディングス(HD)買収に関して、外為法審査を通過したことが報じられています。
先月(2026年4月)、MBKによる工作機械大手牧野フライス製作所への出資計画に対し、政府が外為法に基づき「中止勧告」を出したばかりだったからしたがMBKによるアルテミラ買収の承認は、投資家に対して「日本市場は安全保障リスクが限定的であれば、外資による重要業種の買収も受け入れる」という一定の予測可能性を示した形になります。
前回は外為法審査の目的や通過した理由に関する記事でしたが、今回は、実際のアルミニウム用途に関する記事となります。
飲料用アルミ缶はどのように製造するのか
飲料用アルミ缶の製造は、たった1枚の薄いアルミニウムの円板を、魔法のように引き伸ばして形作る「DI法(ドロー・アンド・アイアン成形)」という技術が主流です。主な工程は以下の通りです。
1. 打ち抜き(カップ成形)
巨大なロール状のアルミニウム合金板を、円形に打ち抜くと同時に、浅いコップのような形(カップ)にプレスします。
2. しごき加工(DI成形)
このカップを、パンチと呼ばれる棒で押し込み、いくつもの細いリング(ダイス)を通過させます。これにより、底の厚みはそのままに、側面だけが薄く、高く引き伸ばされます。
3. トリミングと洗浄
引き伸ばされて縁がギザギザになった上部を、一定の高さで綺麗に切り揃えます。その後、成形時に付着した潤滑油を洗い流します。
4. 印刷・コーティング
缶の表面にデザインを直接印刷し、保護用のコーティングを施します。また、缶の内側には、中身の飲料がアルミと反応して味が変わらないよう、特殊な樹脂コーティングをスプレーします。
5. ネッキングとフランジング
缶の口の部分を少しずつ絞って細くし(ネッキング)、最後に蓋を巻き付けるための「縁(フランジ)」を作ります。
6. 検査
ピンホール(小さな穴)や内面の汚れ、傷がないかをカメラやセンサーで全数検査し、合格したものが飲料メーカーへ出荷されます。
工場に届いた後、飲料が充填され、最後に「蓋(エンド)」が巻締められて、私たちが目にするアルミ缶が完成します。

アルミニウム合金板を円形に打ち抜き、プレス機で側面を薄く高く引き伸ばす「DI法」という技術が主流です。洗浄・印刷後、内面に樹脂を噴射して品質を保護し、缶口を絞って蓋を取り付けられる形状に仕上げます。
どんな合金が使われるのか
飲料用アルミ缶には、部位ごとに求められる強度が異なるため、主に3000系と5000系という2種類のアルミニウム合金が使い分けられています。
1. 缶胴(ボディ):3004合金
缶の本体部分には、アルミニウムにマンガン(Mn)とマグネシウム(Mg)を加えた「3004合金」が使用されます。
- 特徴: 加工性が高く、薄く引き伸ばしても破れにくい粘り強さがあります。
- 役割: 「DI法」で側面を極限まで薄く加工するために不可欠な材料です。
2. 缶蓋(エンド):5182合金
プルタブを含む蓋の部分には、マグネシウムを多く含んだ「5182合金」が使われます。
- 特徴: 3000系よりも強度が高く、硬いのが特徴です。
- 役割: 炭酸飲料などの内部圧力に耐える強度が必要です。また、タブを立ち上げた際にパキッと割れる(開口する)適度な硬さが求められます。

本体には加工性と強度のバランスに優れた「3004合金(マンガン・マグネシウム添加)」が、蓋には高い内圧に耐えつつ開封しやすい硬さを持つ「5182合金(マグネシウム添加)」が一般的に使用されています。
なぜ缶にはアルミニウム合金が適しているのか
飲料用缶にアルミニウム合金が広く採用されている理由は、その物理的特性と経済性が、製造から消費、リサイクルまでのサイクルに完璧に合致しているためです。
1. 軽量かつ十分な強度
アルミニウムの比重は鉄の約3分の1と非常に軽く、輸送コストの削減に直結します。合金化(3000系・5000系)することで、薄く加工しても炭酸飲料の内圧に耐えられる強度を確保しています。
2. 優れた加工性(DI成形)
アルミは柔軟で伸びやすいため、1枚の板から継ぎ目のない底付きの容器を高速で大量生産するのに適しています。
3. 内容物の保護(遮断性と耐食性)
光、酸素、湿気を完全に遮断し、飲み物の風味と品質を長期間保ちます。また、内面にコーティングを施すことで、飲料による腐食を防ぎ、金属臭が移るのを防いでいます。
4. 圧倒的なリサイクル性
アルミ缶は「リサイクルの王様」と呼ばれます。
- エネルギー節約: ボーキサイトから新地金を作るのに比べ、使用済み缶から再生地金を作るエネルギーはわずか3%で済みます。
- 水平リサイクル: 缶から再び缶へと再生(Can to Can)できるため、資源が枯渇しにくい持続可能な素材です。

軽量で輸送効率が良く、加工性に優れるため高速大量生産が可能です。また、酸素や光を遮断して品質を保つ能力が高く、使用後はわずか3%のエネルギーで再生できる圧倒的なリサイクル性を備えているためです。
どんなリチウムイオン電池部材に使われるのか
アルテミラ(旧三菱アルミニウム等の技術を継承)が製造するリチウムイオン電池(LiB)向け部材は、主に電池の「外装(パッケージ)」と「集電体」という、電池の安全性と性能を左右する重要な部分に使われています。
1. ラミネートフィルム(パウチ型外装材)
スマートフォンや一部の電気自動車(EV)に使われる「パウチ型」電池の表面を覆う材料です。
- 構造: アルミ箔を樹脂フィルムで挟んだ多層構造になっています。
- 役割: アルミが湿気の侵入を完全に防ぎつつ、柔軟な形状を維持します。
2. 電池ケース(角形・円筒形外装缶)
EV用バッテリーとして主流の「角形」や「円筒形」のケース本体です。
- 技術: 飲料缶製造で培った深絞り加工技術(DI成形など)を応用し、軽量で衝撃に強く、放熱性に優れたアルミケースを作ります。
3. 正極集電体(高純度アルミ箔)
電池の内部で電気を取り出すための薄い膜です。
- 役割: 正極活物質を塗布する土台となり、電気を効率よく流します。高い純度と均一な厚みが求められます。

主にEVやスマホ用電池の「外装材(パウチ用フィルムや硬質ケース)」や、内部で電気を取り出す「正極集電体(アルミ箔)」に使用されます。軽量化、放熱性向上、防湿性の確保という極めて重要な役割を担っています。
ラミネートフィルムや集電体にアルミニウムが適しているのはなぜか
リチウムイオン電池(LiB)の「ラミネートフィルム」と「集電体」にアルミニウムが選ばれるのは、それぞれ異なる物理的・化学的なメリットがあるからです。
1. ラミネートフィルム(外装材)に選ばれる理由
ラミネートフィルムの心臓部には厚さ40ミクロン程度のアルミ箔が使われています。
- 水分・ガスの完全遮断(ハイバリア性):LiB内部の電解質は水分と反応するとガスを発生させ、破裂や劣化の原因になります。金属であるアルミは、プラスチックフィルムでは防げない極微量の水分や酸素の浸入を完全にシャットアウトします。
- 成形性と柔軟性:アルミは延性が高いため、電池の形に合わせて複雑にプレス加工(深絞り)しても破れにくく、バッテリーの薄型化や軽量化に貢献します。
2. 正極集電体に選ばれる理由
電池内部で電気をやり取りする「集電体」には、正極(プラス側)にアルミ、負極(マイナス側)に銅が使われます。
- 高電位での化学的安定性:リチウムイオン電池の正極は非常に高い電圧(電位)がかかります。アルミはこの高電位下で表面に強固な「酸化皮膜」を作るため、電解液に溶け出すことなく安定して電気を流し続けることができます。
- 高い導電性と放熱性:電気抵抗が低いためエネルギーロスが少なく、充放電時に発生する熱を素早く逃がすことができます。
- 軽量化:銅などの他の導電性金属に比べて比重が軽いため、電池全体の重量エネルギー密度の向上に役立ちます。

外装では水分や酸素を完全に遮断し、電池の劣化を防ぐバリア性と柔軟性が重宝されます。集電体では、高い電圧下でも腐食せず安定して通電できる化学的耐性と、軽量で優れた導電性・放熱性を持つため不可欠な素材です。

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