この記事で分かること
バイオマスプラスチックとは何か
植物由来の再生可能資源を原料とするプラスチックで、石油由来品と異なりカーボンニュートラルとされ、生分解性タイプと非生分解性タイプがあります。
なぜ添加剤で耐熱性が向上するのか
添加剤が結晶化を促進し分子構造を強化することと、添加剤自体が高温でも分解しにくい安定構造を持つことで、耐熱性が高まります。
なぜ結晶生成の足場となるのか
核剤の表面に高分子鎖が吸着しやすく、そこを起点に結晶が成長することで、緻密な結晶構造ができ分子の動きが抑えられます。
第一工業製薬のバイオプラスチック用耐熱性向上添加剤
第一工業製薬の耐熱性向上添加剤が、植物由来PLAを使う三義漆器店の容器製造に採用されたことが報じられています。
ポリ乳酸は再生可能な植物由来原料から作られ生分解性に優れる一方、透明性を保ったまま耐熱性を高めることが難しく、本格的な普及の妨げとなっていました。
第一工業製薬の耐熱性向上添加剤はこの課題を解決し、成形時間の短縮によるコスト削減にもつながる製品として、北米を中心にコーヒーカプセルやコンビニコーヒーの蓋、惣菜容器などの食品包装用途で採用が広がっています。
バイオマスプラスチックとは何か
バイオマスプラスチックとは、トウモロコシやサトウキビ、木材などの植物由来の再生可能な資源(バイオマス)を原料として作られるプラスチックのことです。
石油を原料とする従来のプラスチックとは異なり、植物が成長する過程で大気中の二酸化炭素を吸収しているため、燃焼させても大気中のCO2総量を増加させないという「カーボンニュートラル」の考え方に基づいた素材とされています。
バイオマスプラスチックの種類
ポリ乳酸などの生分解性プラスチック
バイオマスプラスチックには大きく分けて二つのタイプがあります。一つは、トウモロコシのでん粉などを発酵させて作る乳酸を原料とする「ポリ乳酸(PLA)」のように、微生物によって水と二酸化炭素に分解される「生分解性プラスチック」です。
コーヒーカップや食品容器、農業用フィルムなどに使われていますが、耐熱性や耐衝撃性が石油由来プラスチックに比べて劣るという課題があり、これを改善するための添加剤や改質剤の開発が各社で進められています。
バイオマス由来プラスチック
「バイオポリエチレン」は、見た目や性質が従来の石油由来プラスチックとほとんど同じで、生分解はしないものの、原料が植物由来であるため環境負荷が低いとされる「バイオマス由来プラスチック」です。
バイオマスプラスチックは、海洋プラスチックごみ問題や脱炭素社会の実現に向けた取り組みの一環として、自動車部品、家電製品、包装容器など幅広い分野で活用が広がっています。
一方で、原料となる植物の栽培に農地や水を使うことによる食料問題との競合や、コストが石油由来プラスチックより割高であることなど、普及に向けた課題も残されています。

バイオマスプラスチックは植物由来の再生可能資源を原料とするプラスチックで、生分解性タイプと非生分解性タイプがあり、脱炭素・脱プラスチックの取り組みとして注目されています。
なぜ添加剤で耐熱性が向上するのか
添加剤がプラスチックの耐熱性を向上させる仕組みには、主に二つの作用があります。
1.結晶化促進
ポリ乳酸(PLA)のような植物由来プラスチックは、分子が固まる際にきれいに整列せず、ランダムな状態(非晶質)のまま固まりやすい性質があります。
非晶質の部分は熱に弱く、ガラス転移温度と呼ばれる比較的低い温度(60度前後)で柔らかくなってしまいます。
そこで「核剤」と呼ばれる添加剤を加えると、分子が結晶化する際の足場のような役割を果たし、規則正しい結晶構造が効率よく形成されます。
結晶化度が高まることで分子同士が強く結びつき、熱変形温度(製品が熱で歪み始める温度)が上昇するのです。第一工業製薬の添加剤も、この結晶化促進の仕組みを活用してポリ乳酸の耐熱性と耐衝撃性を両立させているとみられます。
添加剤自体の熱安定性
トレハロースのような糖は分子内の結合が化学的に安定しており、高温にさらされても分解しにくいという特性を持っています。
通常、植物由来の添加剤は石油由来のものに比べて熱に弱く、300度近い高温で成形するエンジニアリングプラスチックには使いにくいとされてきました。
しかし、トレハロースを母骨格とした添加剤は、その安定した分子構造を保ったまま樹脂に溶け込みやすいよう改良することで、高温成形のプロセスに耐えられる性質を実現しています。これにより、添加剤自体が高温で分解・変色せず、樹脂の機能をそのまま維持できるようになります。
このように、結晶構造を整えて熱変形を防ぐアプローチと、添加剤そのものの分子的な耐熱性を高めるアプローチを組み合わせることで、植物由来プラスチックの弱点であった耐熱性が大きく改善されています。

添加剤による耐熱性向上は、結晶化を促進し分子構造を強化する作用と、添加剤自体が高温でも分解しにくい安定した分子構造を持つことの二つの仕組みによって実現されています。
なぜ結晶生成の足場となるのか
核剤と呼ばれる添加剤が結晶生成の足場(核)となる理由は、結晶化という現象が起こる仕組みそのものに関係しています。
プラスチックが冷えて固まる際、高分子の鎖はまず「核」と呼ばれるごく小さな出発点を中心に、規則正しく折りたたまれながら結晶構造を作っていきます。
これは、コップの中で水が氷になる際、わずかな不純物や傷を起点に氷の結晶が成長し始めるのと似た現象です。何もない均一な液体の中から自然に結晶が生まれるには、分子同士がたまたま整列するのを待つ必要があり、非常に時間がかかるうえ、できあがる結晶のサイズもばらばらで小さくなりがちです。
核剤の働き
ここに核剤を加えると、状況が変わります。核剤の粒子表面は、樹脂を構成する高分子鎖と化学的・物理的に相性がよく(分子の極性や結晶格子の間隔が近いなど)、高分子鎖が吸着しやすい性質を持っています。
高分子鎖が核剤の表面に沿って整列・吸着すると、そこを起点に次々と分子が折り重なるように結晶が成長していきます。つまり核剤は、結晶という「建物」を建てる際の最初の「基礎」のような役割を果たしているのです。
核剤の利点
この効果には二つの利点があります。第一に、結晶が生まれる開始点(核)の数が一気に増えるため、結晶化にかかる時間が大幅に短縮されます。
第二に、核の数が多くなることで一つひとつの結晶サイズが小さく均一になり、樹脂全体に細かい結晶が密に分散した状態になります。この緻密な結晶構造が、分子同士の結びつきを強め、熱を加えたときに分子が動きにくくなることで、熱変形温度が上昇し、耐熱性の向上につながります。
ポリ乳酸のように本来結晶化しにくい樹脂では、この核剤の効果が特に顕著に表れ、成形時間の短縮とコスト削減にも同時に貢献することになります。

核剤は高分子鎖が吸着しやすい表面を持ち、結晶成長の出発点となることで結晶化を促進し、緻密な結晶構造が分子の動きを抑えて耐熱性を高めます。

コメント