この記事で分かること
- 揚水発電とは:上下2つのダム間で水を移動させる「巨大な蓄電池」のような発電方式です。昼間などの電気が余る時に、その電力で下のダムから上のダムへ水を汲み上げ、電気が足りない時に水を落として発電します。
- なぜ電力調整に向いているのか:数分でフル稼働できる「速応性」と、余った電気を汲み上げで消費できる「蓄電機能」を併せ持つからです。火力や原発より出力変化に強く、再エネの急な変動を即座に吸収・補完できます。
- なぜ稼働が増加しているのか:九州は日照条件が良く太陽光発電が急増したため、昼間に電気が余りすぎるからです。余った電気を捨てずに揚水(蓄電)し、夕方以降の不足時に発電する「昼に汲んで夜に使う」運用が定着し、稼働が倍増しました。
九州電力の揚水発電の稼働増加
九州電力が揚水発電の稼働をこの10年で2倍に増やしています。
九州は「再エネ先進地」と呼ばれ、晴れた日の昼間には太陽光発電だけで需要のほとんどを賄えるほど電気が余ります。しかし、電気は貯めておくことが難しいため、余った電気を捨てる(出力制御)代わりに、巨大な蓄電池として揚水発電を活用しています。
揚水発電とは何か
「揚水発電(ようすいはつでん)」は「水を使った巨大な蓄電池」です。一般的なダム(水力発電)は、自然に流れてくる雨水などを貯めて発電しますが、揚水発電は「電気を使って、わざわざ水を高い場所へ汲み上げておく」のが最大の特徴です。
1. 基本的な仕組み
揚水発電所には、高い場所(上池)と低い場所(下池)の2つのダムがあります。
- 「充電」にあたる作業(揚水):電気が余っている時に、その電気を使ってポンプを回し、下のダムから上のダムへ水を汲み上げます。
- 「放電」にあたる作業(発電):電気が足りなくなった時に、上のダムから下のダムへ水を一気に落とし、水車を回して発電します。
2. なぜ電気を使って水を上げるのか
電気には「貯めておけない」「需要と供給を常に一致させないといけない」という厄介な性質があるからです。
- 太陽光発電が多すぎる時:使いきれない電気を捨ててしまうのはもったいないので、そのエネルギーを「水の重力エネルギー」として上のダムに保存します。
- 電気が足りない時:太陽が沈んだ夕方や、エアコンの使用が急増する時間に、保存しておいた水を使って発電し、停電を防ぎます。
3. メリットとデメリット
メリット
- 圧倒的なパワーと容量: 家庭用蓄電池とは比較にならないほど、街一つを支えるような巨大なエネルギーを貯められます。
- 起動が早い: スイッチを入れてから数分でフルパワーの発電ができるため、急な需要の変化に強いです。
デメリット
- エネルギーのロス: 水を汲み上げる時と落とす時、摩擦などでどうしてもロスが出ます。入れた電気の約70%〜80%程度しか取り出せません。
- 場所を選ぶ: 上下に2つの大きな池を作れる広大な土地と高低差が必要です。
4. なぜ今、注目されているのか
これまでは主に「夜間に余る原発の電気」を有効活用するために使われてきました。
しかし現在は、発電量が激しく変動する太陽光や風力発電の調整役として、その重要性が再評価されています。九州電力で稼働が激増しているのも、この「再エネの調整役」としてのニーズが高まっているからです。

揚水発電とは、上下2つのダム間で水を移動させる「巨大な蓄電池」のような発電方式です。昼間などの電気が余る時に、その電力で下のダムから上のダムへ水を汲み上げ、電気が足りない時に水を落として発電します。
なぜ電力調整に向いているのか
揚水発電が他の発電方式(火力や原発)に比べて「電力調整」に優れている理由は、主に「スピード」と「容量」にあります。
1. 圧倒的な応答スピード
火力発電所などは、出力を上げるためにボイラーを温め直すなど時間がかかりますが、揚水発電はスイッチを入れてからわずか数分でフルパワー(100%出力)に到達できます。
雲で急に太陽光発電が陰った際などの、突発的な電力不足にも即座に対応可能です。
2. 「電気を吸い込む」ことができる
普通の発電所は「電気を作る」ことしかできません。しかし、揚水発電は「余った電気を消費(汲み上げ)して、ダムに貯める」という逆の動きができます。
太陽光で電気が余りすぎて停電のリスクがある時、巨大な「掃除機」のように余剰電力を吸い取ってバランスを保てるのは揚水発電ならではの強みです。
3. 巨大な蓄電容量
リチウムイオン電池などの化学電池に比べ、ダムに貯めた水の量は膨大です。数時間にわたって数万軒分の電力を供給し続けるスタミナがあるため、大規模な調整に適しています。
「すぐに動ける」機動力と、「余った電気を貯められる」柔軟性が、再エネ時代の救世主となっています。

揚水発電が調整に向いているのは、数分でフル稼働できる「速応性」と、余った電気を汲み上げで消費できる「蓄電機能」を併せ持つからです。火力や原発より出力変化に強く、再エネの急な変動を即座に吸収・補完できます。
なぜ九州電力が稼働を増やすのか
九州電力が揚水発電の稼働をこの10年で2倍に増やした理由は、「太陽光発電の急増」という九州特有の事情にあります。
1. 昼間の「電気余り」を解消するため
九州は日照条件が良く、太陽光発電の導入量が非常に多い地域です。晴れた日の昼間は、需要(使う量)を供給(作る量)が大きく上回ってしまいます。
この余った電気を捨てずに、揚水発電の「ポンプ」を動かして水を汲み上げることで、巨大な蓄電池として活用しています。
2. 「出力制御」を最小限に抑えるため
電気が余りすぎると停電のリスクがあるため、発電を止める「出力制御」が行われます。九電は、まず揚水発電で限界まで電気を吸い込み、それでも余る場合に出力制御を行うというルールを運用しています。つまり、再エネを無駄にしないための最後の砦として稼働回数が増えています。
3. 夜間や夕方の「不足分」を補うため
太陽光が沈む夕方以降、急激に電気が足りなくなります。昼間に太陽光の力で汲み上げた水を、このタイミングで一気に落として発電します。
以前は「夜に汲んで昼に使う」のが一般的でしたが、現在は「昼に汲んで夜に使う」という真逆のパターンが定着し、ほぼ毎日フル稼働しています。
- 10年前: 主に原発の一定な出力を調整するため、時々動かす程度。
- 現在: 太陽光の変動に合わせて毎日1〜2回、必ず充放電を行う「常用設備」へと役割が激変。
- 九州電力は揚水発電を「バックアップ」ではなく「主力級の調整役」として使い倒すことで、再エネの導入量を支えているのです。

九州は日照条件が良く太陽光発電が急増したため、昼間に電気が余りすぎるからです。余った電気を捨てずに揚水(蓄電)し、夕方以降の不足時に発電する「昼に汲んで夜に使う」運用が定着し、稼働が倍増しました。

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