この記事で分かること
- 圧延銅箔とは:銅の塊を何度も圧延し、薄く引き延ばして作られる、柔軟性に優れた薄いシートです。曲げに強い特性をもっています。
- 柔軟性と屈曲性に優れる理由:銅の塊を繰り返し圧延し、焼鈍という熱処理を施すことで、結晶構造が均一になります。これにより内部の歪みが抑えられ、折れにくくしなやかな性質を持つため、優れた柔軟性と屈曲性を実現します。
- 増産の理由:スマートフォンの高機能化に伴う圧延銅箔の需要急増に対応するためです。5G通信や高性能化により、圧延銅を使用するフレキシブル基板の需要が高まっているためです。
JX金属の圧延銅箔生産能力を増強
JX金属は、スマートフォンの高機能化に伴う需要増に対応するため、圧延銅箔の生産能力を増強しました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC30CW60Q5A730C2000000/
茨城県日立市にある日立事業所の新工場が2024年度下期に本格稼働し、2020年度比で生産能力を25%増加させる予定です。
圧延銅箔とは何か
圧延銅箔は、銅の塊であるインゴットを複数回にわたって圧延(押しつぶして引き延ばす加工)することで作られる、非常に薄い銅のシートです。
製造方法
圧延銅箔の製造は、まず銅のインゴットを熱間圧延で板状にし、その後、冷間圧延と焼鈍(ねんま)と呼ばれる熱処理を繰り返すことで、徐々に薄く延ばしていきます。この工程を何度も繰り返すことで、目的の厚みまで薄く仕上げられます。
この製造方法により、銅の結晶が均一に整列するため、優れた屈曲性(曲げやすさ)と延展性(引き延ばしやすさ)を持つのが特徴です。
主な用途
圧延銅箔は、その優れた柔軟性から、特に曲げや繰り返し屈曲に耐える必要がある電子機器の部品に多く使われています。
- フレキシブルプリント基板(FPC): スマートフォンやウェアラブルデバイスなど、小型化や複雑な形状が求められる機器の内部回路に不可欠な材料です。
- 高機能な電子機器: パソコンやサーバー、車載機器など、高い信頼性が求められる製品にも広く利用されています。
また、電子機器の回路用だけでなく、電磁波シールド材やバッテリー材料としても使われています。

圧延銅箔は、銅の塊を何度も圧延し、薄く引き延ばして作られる、柔軟性に優れた薄いシートです。主にスマートフォンのフレキシブルプリント基板(FPC)などに使われ、曲げに強い特性から、電子機器の小型化や高機能化に不可欠な材料です。
電解銅箔との違いは何か
圧延銅箔と電解銅箔は、製造方法と特性が異なります。
- 圧延銅箔は、銅の塊を何度も押し延ばして薄くする製法です。このため、結晶構造が揃い、優れた柔軟性と屈曲性を持ち、曲げ伸ばしに強いのが特徴です。主にフレキシブルプリント基板(FPC)など、繰り返し曲がる用途に使われます。
- 電解銅箔は、電気分解(めっき)を利用して、銅をドラムに析出させて作られます。薄く作るのが得意で、製造コストが比較的低いのがメリットです。以前は圧延銅箔より柔軟性に劣るとされていましたが、近年では熱処理などで柔軟性を高めた製品も開発され、一般的なプリント基板やリチウムイオン電池の材料として幅広く使われています。
特徴 | 圧延銅箔 | 電解銅箔 |
製造方法 | 銅の塊を圧延(押し延ばす) | 電気分解(めっき) |
柔軟性 | 高い(曲げに強い) | 比較的低い(近年は改善) |
主な用途 | FPC(フレキシブル基板) | 一般的なプリント基板、リチウムイオン電池 |
コスト | 高価 | 比較的安価 |

圧延銅箔と電解銅箔は製造方法が異なります。
電解銅箔: 電気分解で生成し、安価で薄く作れ、一般的なプリント基板やバッテリーに使われます。
圧延銅箔: 銅を押し延ばして作り、柔軟性に優れ、曲げに強い特性からフレキシブル基板に使われます。
柔軟性と屈曲性に優れる理由は何か
圧延銅箔が柔軟性と屈曲性に優れる理由は、その製造方法にあります。
1. 均一な結晶構造
圧延銅箔は、銅の塊(インゴット)を何度も繰り返し圧延(押し延ばす)ことで作られます。このプロセスによって、銅の結晶が特定の方向に揃い、緻密で均一な構造が形成されます。これにより、内部に不規則な隙間や歪みが少なく、金属としての性質が安定します。
2. 加工硬化の緩和
圧延加工は金属を硬くする「加工硬化」という現象を伴います。しかし、圧延銅箔の製造では、この加工硬化を和らげるために「焼鈍(ねんま)」という熱処理を繰り返し行います。
この熱処理によって、硬くなりすぎた銅が再結晶化して柔軟性を取り戻し、薄くても折れにくい、しなやかな性質を持つようになります。
これらの理由から、圧延銅箔は繰り返し曲げ伸ばしに強く、スマートフォンなどの内部回路で曲面や狭いスペースに収める必要があるフレキシブル基板に最適な材料となります。

圧延銅箔は、銅の塊を繰り返し圧延し、焼鈍という熱処理を施すことで、結晶構造が均一になります。これにより内部の歪みが抑えられ、折れにくくしなやかな性質を持つため、優れた柔軟性と屈曲性を実現します。
増産の理由は何か
増産の主な理由は、スマートフォンの高機能化に伴う、圧延銅箔の需要急増に対応するためです。
JX金属は、この需要拡大に対応するため、茨城県日立市にある日立事業所に新工場を建設しました。これにより、2024年度下期には生産能力を2020年度比で25%増加させ、市場の需要に応じた安定供給体制を構築することを目指しています。また、既存の工場と新工場で生産拠点を分散させることで、災害時などのリスクに備える事業継続計画(BCP)の強化も目的の一つです。
背景と目的
近年、スマートフォンは5G通信対応や高性能なプロセッサーの搭載など、高機能化が進んでいます。これに伴い、内部に使われる電子部品もより高性能で緻密なものが求められており、特に繰り返し曲げに強いフレキシブルプリント基板(FPC)の需要が拡大しています。

増産の理由は、スマートフォンの高機能化に伴う圧延銅箔の需要急増に対応するためです。5G通信や高性能化により、フレキシブル基板の需要が高まっており、安定供給体制を構築し、市場の成長に対応することが目的です。
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