レゾナック、純利益増加 なぜ増加したのか?なぜNCFのレゾナックのシェアが高いのか?

この記事で分かること

  • なぜ純利益が増加したのか:NCFなど生成AI市場の急拡大でHBM向け先端半導体材料の需要が激増し、利益率の高い製品構成へ転換したことが主因です。併せてデータセンター向けHDD事業のV字回復や、不採算事業の整理・減損損失の解消といった構造改革の完遂が、利益を大きく押し上げました。
  • NCFとは:導体チップを積層する際に間に挟む薄い接着フィルムです。チップ同士を絶縁しながら熱圧着で固定する役割を持っています。HBM向け先端半導体材料としての需要が増加しています。
  • なぜレゾナックのシェアが高いのか:旧昭和電工の「素材設計力」と旧日立化成の「機能評価技術」の統合にあります。これにより原料から製品まで一貫開発が可能となり、顧客(チップメーカー)と同じ評価装置を自社で保有して開発スピードを極限まで高めている点が最大の強みです。

レゾナック、純利益増加

 レゾナック・ホールディングスは2025年12月期の純利益が前期比で約2.6〜2.7倍(650億円前後)に急拡大する見通しを発表しています。

レゾナック、今期純利益は2.6倍 半導体・電子材料が好調継続
レゾナック・ホールディングスは13日、2026年12月期の連結純利益(国際会計基準)が前年比2.6倍の770億円になるとの見通しを発表した。半導体・電子材料事業が好調を継続しているほか、前期に複数事業の売却で計上した減損損失の減少により大幅...

 この躍進の背景には、主に「生成AI需要の爆発」「不採算事業の整理(構造改革)の完了」という2つ要因があります。

なぜ純利益が増加したのか

 レゾナックの純利益が2.7倍という驚異的な伸びを見せている理由は、「過去数年の苦しい構造改革』が終わり、生成AIという『最強の追い風』をフルに受けられる体質になったから」です。

 具体的には、以下の3つのサイクルが完璧に噛み合ったことが要因です。


1. 生成AI特需:利益率の高い「先端材料」の爆増

 AI半導体(NVIDIAのGPUなど)の製造には、従来の半導体よりも高度な「後工程(パッケージング)」の技術が必要です。

  • HBM(高帯域メモリー)向け材料: チップを多層に積み上げるAI用メモリーに不可欠な絶縁・接着材(NCFなど)で、レゾナックは圧倒的なシェアを持っています。
  • 高収益モデルへの転換: 利益の薄い汎用品から、技術難易度が高く利益率も高い「AI専用材料」へシフトしたことで、売上の伸び以上に利益が跳ね上がりました。

2. 「負の遺産」の一掃(構造改革の完了)

 レゾナックは、旧昭和電工と旧日立化成が統合して誕生しましたが、これまではその「統合費用」や「不採算事業の整理」に追われていました。

  • 減損損失の消滅: 前期までは赤字事業の売却や工場の閉鎖に伴う一時的な損失(減損)を計上していましたが、これがほぼ終わりました。
  • 筋肉質な体質: 10件以上の事業売却を行い、稼げない事業を切り離したことで、会社全体の収益性が底上げされました。

3. データセンター向けHDDの回復

 意外な貢献者が、データセンターで使われるハードディスク(HD)メディアです。

  • AIデータ保存需要: 生成AIが学習・生成する膨大なデータを保存するため、大容量HDDの需要が急回復しました。
  • V字回復: 以前は足を引っ張っていたこの事業が、一気に「稼ぎ頭」の一つに返り咲きました。

 単に「市場が良くなった」だけでなく、「儲からない仕事を捨て、AIという勝てる場所にリソースを集中させた」という経営判断が、2.7倍という数字に直結しています。

生成AI市場の急拡大でHBM向け先端半導体材料の需要が激増し、利益率の高い製品構成へ転換したことが主因です。併せてデータセンター向けHDD事業のV字回復や、不採算事業の整理・減損損失の解消といった構造改革の完遂が、利益を大きく押し上げました。

NCFとはなにか

 NCF(Non-Conductive Film:非導電性フィルム)とは、半導体チップを何層にも積み重ねる際に使われる、薄いフィルム状の接着剤のことです。主に以下の2つの役割を同時に果たします。

  • 絶縁(ガード): チップ同士が意図しない場所でショートしないよう保護する。
  • 接着(固定): 重ねたチップを熱と圧力でしっかり貼り合わせる。

なぜ今、注目されているのか

 生成AIに使われる超高速メモリ「HBM(高帯域メモリー)」の製造に不可欠なためです。HBMはビルを建てるようにチップを垂直に積み上げますが、NCFを間に挟んで一気に加熱・圧縮することで、接続(ボンディング)と絶縁を同時に行います。

 レゾナックはこのNCFで世界トップクラスのシェアを持っており、今回の純利益2.7倍という躍進の「主役」とも言える材料です。

NCF(非導電性フィルム)とは、半導体チップを積層する際に間に挟む薄い接着フィルムです。チップ同士を絶縁しながら熱圧着で固定する役割を持ち、生成AI用メモリ(HBM)の高密度な多層構造を実現するために不可欠な先端材料として注目されています。

なぜレゾナックのシェアが高いのか

 レゾナックが半導体材料(特にNCFなど)で世界的に高いシェアを誇る理由は、主に以下の3つの強みに集約されます。

1. 旧2社の組み合わせ

 2023年に旧昭和電工旧日立化成が統合したことで、材料開発における「上流」と「下流」の技術が一つになりました。

  • 旧昭和電工(分子設計): 原材料そのものを分子レベルで設計する技術。
  • 旧日立化成(機能設計): 顧客のニーズに合わせて材料を加工・配合する技術。この統合により、原材料の設計から最終的な材料の仕上げまでを一貫して自社で行えるようになり、他社には真似できない高性能な製品を素早く開発できる体制が整いました。

2. 「後工程」への先行投資と知見

 半導体の性能向上が「前工程(微細化)」から「後工程(パッケージング)」へ移ることをいち早く見越し、リソースを集中させました。

  • 長年の実績: NCFの前身である「ダイボンディングフィルム」で培った長年の技術蓄積があります。
  • 独占的な立ち位置: AI用メモリ(HBM)のような複雑な積層構造には、超薄型かつ高精度の接着技術が求められますが、これに対応できる企業が世界でも極めて限られています。

3. 「共創」による圧倒的な開発スピード

 自社だけで開発するのではなく、装置メーカーや基板メーカーを巻き込んだコンソーシアム(JOINT2)を主導しています。

  • 実機での検証: 自社内に半導体製造装置を保有しており、顧客と同じ環境で材料を試作・検証できます。これにより、顧客(チップメーカー)の開発期間を大幅に短縮できるため、「レゾナックの材料を使えば安心」という信頼に繋がっています。

「原材料から作れる技術力」と「後工程への特化」、そして「顧客と一緒に開発するスピード感」の3つが、他社の追随を許さない高いシェアの源泉です。

レゾナックが高いシェアを誇る理由は、旧昭和電工の「素材設計力」と旧日立化成の「機能評価技術」の統合にあります。これにより原料から製品まで一貫開発が可能となり、顧客(チップメーカー)と同じ評価装置を自社で保有して開発スピードを極限まで高めている点が最大の強みです。

NCFでどうやって接続、ボンディングをおこなうのか

 NCF(非導電性フィルム)を用いた接続は、「熱圧着(サーマルコンプレッション)」という方式で行われます。

1. フィルムのラミネート(貼り付け)

 まず、回路が形成されたウェハー(またはチップ)の表面に、厚さ数〜数十マイクロメートルの薄いNCFを均一に貼り付けます。この段階ではまだ接着剤は固まっていません。

2. チップの積層と仮固定

 NCFを挟んだ状態で、次のチップを上に重ねます。チップの裏表にある小さな突起(マイクロバンプ)同士が、NCFを突き破って正確に重なるように位置を合わせます。

3. 熱圧着(本硬化)

 上から高温のヘッドでプレスします。

  • 樹脂の流動: 熱によってNCFが一度柔らかくなり、チップ間の隙間を隅々まで埋めます。
  • 金属接合: さらに熱と圧力を加えることで、バンプ同士が溶けて合金化し、電気的に接続されます。
  • 硬化: 同時にNCFも化学反応でカチカチに固まり、接続部を強力に固定・保護します。

なぜこの方法が良いのか

 従来の「液体を流し込む方式(アンダーフィル)」に比べ、NCFは「あらかじめ挟んである」ため、チップを何層も積み上げるHBMのような構造でも、樹脂がはみ出したり気泡が入ったりするリスクが極めて低いのが利点です。

チップ表面にNCFを貼り、その上に別のチップを重ねて熱と圧力を加える「熱圧着(TCB)」で接続します。熱で軟化したフィルムが隙間を埋めつつ、チップ間の金属突起がフィルムを貫通して接合され、同時に樹脂が硬化して絶縁と固定を一気に完了させます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました