この記事で分かること
- どんな医薬品向け包装材か:PTP包装の「樹脂製フタ材」技術です。アルミ箔の代わりに、指で押すと適度に破れる特殊な樹脂フィルムを採用し、包装全体を単一素材(モノマテリアル)化でき、高いリサイクル性と使いやすさを両立した次世代の環境配慮型包装材です。
- 旭化成が技術を譲渡した理由:自社で製造を行うよりも、販路を持つ他社に技術を託す方が「資産効率」と「社会実装のスピード」を最大化できると判断したためです。
旭化成医薬品向け包装材の特許技術のTOPPAN HDへの譲渡
2025年12月12日、旭化成が保有する医薬品向け包装材の特許技術をTOPPANホールディングス(TOPPANHD)へ譲渡したことが発表されました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC1695Q0W5A211C2000000/
譲渡されたのは、錠剤やカプセルを1錠ずつ押し出して取り出すPTP包装(Press Through Package)の「フタ」に関する特許群(計12件)です。欧州を中心に強化されている「包装廃棄物規則」など、リサイクルが難しいアルミ複合材からの脱却が求められる市場において、この「オール樹脂製PTP」が有力なソリューションになると期待されています。
どのような医薬品向け包装材なのか
今回の譲渡対象となったのは、主に錠剤やカプセルの包装に使われるPTP(プレス・スルー・パッケージ)包装の「フタ材」に関する技術です。
従来のPTP包装は、ポケット部分(底材)がプラスチック、フタ部分がアルミ箔で構成されていますが、今回注目されているのは、その「アルミの代わりに樹脂(プラスチック)を使用する」ための特殊な技術です。
1. 指で押し出しやすい「脆性(ぜいせい)」フィルム
通常、プラスチックフィルムは伸びやすく、錠剤を押し出そうとしてもなかなか破れません。旭化成が開発した技術は、樹脂でありながらアルミ箔のように「パキッ」と適度な力で破れる特性(脆性)を持たせています。
これにより、お年寄りや力の弱い方でも、これまで通りスムーズに薬を取り出すことができます。
2. 「モノマテリアル(単一素材)」によるリサイクル性
従来の「プラスチック + アルミ」の組み合わせは、素材を分離するのが難しいため、リサイクルが困難でした。
この技術により、フタも底材も同じ樹脂素材(モノマテリアル)で作ることが可能になります。素材が統一されることで、使用済みの包装をプラスチック資源としてリサイクルしやすくなり、環境負荷を大幅に低減できます。
3. 高度なフィルム設計と成膜技術
単に破れやすいだけでなく、以下の機能を両立させているのが特許技術の要です。
- 適切な強度: 輸送中に勝手に破れたりしない強さを保持。
- バリア性能との両立: TOPPANHDが持つ、湿気や酸素を通さない「バリア技術」と組み合わせることで、薬の品質を長期間守ります。
現在、製薬業界では世界的に「脱アルミ」や「プラスチックのリサイクル」が大きな課題となっています。特に欧州などでは環境規制が強まっており、「使いやすく、かつリサイクルできる包装」への切り替えが急務です。
TOPPANHDは、旭化成からこの「破れやすい樹脂フタ」の技術を譲り受けることで、世界初の「リサイクル可能なオール樹脂PTP包装」の製品化と、グローバル市場でのシェア拡大を目指しています。

今回譲渡されたのは、錠剤等を押し出すPTP包装の「樹脂製フタ材」技術です。アルミ箔の代わりに、指で押すと適度に破れる特殊な樹脂フィルムを採用し、包装全体を単一素材(モノマテリアル)化でき、高いリサイクル性と使いやすさを両立した次世代の環境配慮型包装材です。
旭化成が譲渡する理由は
旭化成がこの技術を譲渡した主な理由は、「自社で製造するよりも、特許を他社に活用してもらう方が利益を最大化できる」と判断したためです。
1. 「知財ビジネス」への転換(TBCプロジェクト)
旭化成は現在、自社の技術(無形資産)を製品化するだけでなく、他社に提供・譲渡して収益化する「TBC(Technology-value Business Creation)」というプロジェクトを推進しています。
- 狙い: 自社で工場を建てて売るよりも、すでに販路を持つ他社に技術を託すことで、スピーディーに利益(2030年までに累計100億円目標)を生み出す戦略です。
2. TOPPANHDの強みを活かす「適材適所」
医薬品パッケージ市場で世界的なネットワークを持つTOPPANHDに技術を渡す方が、この優れた技術をより早く、広く世界に普及させることができます。
- 補完関係: 旭化成の「破れる樹脂技術」と、TOPPANの「バリア技術(中身を守る技術)」を組み合わせることで、より完成度の高い製品が完成します。
3. 経営資源の集中
旭 化成は多角的な事業を持つ企業ですが、すべての技術を自社で事業化するのではなく、強みを持つパートナーにライセンスや譲渡を行うことで、資産効率(ROA)を高める経営判断を行っています。
「自社で抱え込むのではなく、最適なパートナー(TOPPAN)に委ねることで、環境技術の普及スピードを上げつつ、特許料などの形で賢く稼ぐ」という、現代的なビジネスモデルへの転換が理由です。

旭化成が技術を譲渡した理由は、自社で製造を行うよりも、販路を持つ他社に技術を託す方が「資産効率」と「社会実装のスピード」を最大化できると判断したためです。
TOPPANHDが技術を導入した理由は
TOPPANホールディングス(TOPPANHD)がこの技術を導入した主な理由は、「環境配慮型パッケージで、世界の医薬品包装市場へ本格参入するため」です。
具体的には、以下の3つの狙いがあります。
- 「脱アルミ」と「リサイクル」への対応現在、世界(特に欧州)では環境規制が強まっており、リサイクルが難しい「プラスチック+アルミ」の包装から、単一素材(モノマテリアル)への切り替え需要が急増しています。旭化成の「樹脂製フタ」技術は、この課題を解決する切り札となります。
- 自社技術とのシナジー(相乗効果)TOPPANHDがもともと強みを持つ「バリア技術(湿気や酸素を通さない技術)」と、譲り受けた「パッと破れる樹脂技術」を組み合わせることで、世界最高水準の「リサイクル可能な次世代PTP包装」を自社製品として提供できるようになります。
- グローバルシェアの拡大医薬品包装は高い品質管理が求められる参入障壁の高い分野ですが、この特許技術を独占的に活用することで、競合他社に対して圧倒的な差別化を図り、グローバル市場でのシェアを一気に拡大する戦略です。

世界的な環境規制を背景に、リサイクル可能な「オール樹脂製PTP包装」を実現し、グローバル市場へ本格参入するためです。自社のバリア技術と譲受した技術を融合させ、次世代の医薬品包装で世界シェア拡大を狙います。

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