この記事で分かること
- 強アルカリ水素とは:電気分解によりpH12〜13以上の強アルカリ性を持たせ、さらに水素ガスを豊富に溶け込ませた水です。油脂やタンパク質を強力に分解しつつ、水素の還元作用により金属の酸化(錆)を防ぐ特徴があります。
- ウインテストの装置の特長:特許技術の3層構造電解槽により、塩分などの不純物を含まない純水ベースの強アルカリ水素水を生成できるのが特徴です。高い洗浄力と水素による防錆効果を両立可能です。
- 電解槽をどうやって分けるのか:イオン交換膜」を使い、電解槽を陽極室・中間室・陰極室の3つに物理的に仕切ります。中間室にのみ電解促進剤(塩など)を入れ、膜を通じて電気のみを通すことで、生成される洗浄水に不純物や塩分が混入するのを防ぐことができます。
ウインテストの強アルカリ水素含有洗浄水生成装置
半導体検査装置などを手がけるウインテスト株式会社が、次世代の洗浄技術を用いた強アルカリ・水素含有洗浄水生成装置の販売を開始しました。
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00774048
この装置は、化学薬品に頼らない環境配慮型の洗浄ソリューションとして注目されています。
強アルカリ水素とは何か
「強アルカリ水素含有洗浄水」は高いpH(アルカリ性)を持ちながら、水素ガス(H2)が豊富に溶け込んでいる水」を指します。
一般的なアルカリ性洗剤や石鹸とは異なり、「水そのものに洗浄力を持たせたもの」と考えると分かりやすいでしょう。
1. 強アルカリ水素水の2大要素
この水が強力な洗浄力を持つ理由は、主に2つの特性に分解できます。
① 強アルカリ性(pH12〜13以上)
- 油汚れの分解(鹸化反応):油分と反応して石鹸のような物質に変え、汚れを浮かせます。
- タンパク質分解:指紋や皮脂などの有機物汚れを強力に分解します。
- 除菌効果:多くの細菌やウイルスは、pH12以上の環境では生存できないため、洗浄と同時に除菌も行えます。
② 高濃度な水素(還元力)
- 酸化防止(防錆):水素には「還元作用」があるため、金属を洗浄しても錆びさせにくい(酸化させない)という大きなメリットがあります。
- 汚れの剥離:微細な水素の泡が汚れと素材の隙間に入り込み、物理的に汚れを浮かせます。
2. なぜ「環境に優しい」と言われるのか
通常のアルカリ洗剤には、界面活性剤やリン酸塩などの化学物質が含まれています。これらは排水時に環境負荷を与えますが、強アルカリ水素水は「水とごく少量の電解質」だけでできています。
- 残留物がない:乾くと何も残らないため、二度拭きが不要です。
- 中和が容易:空気に触れて二酸化炭素を吸収すると、自然にpHが下がり、最終的には「ただの水」に戻る性質があります。

強アルカリ水素含有洗浄水とは、電気分解によりpH12〜13以上の強アルカリ性を持たせ、さらに水素ガスを豊富に溶け込ませた水です。油脂やタンパク質を強力に分解しつつ、水素の還元作用により金属の酸化(錆)を防ぐ特徴があります。界面活性剤を含まないため、環境負荷が極めて低い次世代の洗浄液です。
ウインテストの洗浄装置の特徴は何か
ウインテストが発売した「ALKALIS(アルカリス)」の最大の特徴は、「純水」ベースで不純物を含まない強アルカリ水素水を作れる点にあります。
1. 特許技術「3層構造電解槽」による高純度
従来の電解水生成装置は、効率を上げるために塩(NaCl)などの電解促進剤を混ぜる必要があり、生成された水に「塩分(塩素)」が残留して精密機器を錆びさせる原因になっていました。
- ウインテストの方式:3つの層に分かれた特殊な電解槽を使用し、電解促進剤を中間層に閉じ込めます。
- 結果:洗浄水側には不純物(イオン)が移行しないため、金属腐食の心配がない純水ベースの洗浄水が作れます。
2. 「洗浄力」と「防錆力」の両立
通常、水で金属を洗うと酸化(錆び)が進みますが、この装置で作られる水には高濃度の水素が含まれています。
- pH12.5以上の洗浄力:油分やタンパク質を強力に分解。
- 還元作用:水素の還元力によって金属の酸化を抑制し、洗浄しながら錆を防ぐことができます。
3. 圧倒的なコストパフォーマンスと環境性能
化学洗剤を使用しないため、ランニングコストと環境負荷を同時に削減できます。
- すすぎ工程の短縮:界面活性剤(泡)を含まないため、すすぎに必要な水の量を大幅に減らせます。
- 廃棄コストゼロ:使用後は中和処理が容易で、そのまま排水可能なため、産業廃棄物としての処理費用がかかりません。
従来の洗浄方式との比較
| 項目 | 一般的なアルカリ洗剤 | ウインテスト「ALKALIS」 |
| 主成分 | 界面活性剤・化学物質 | 純水・水素 |
| 残留物 | あり(ベタつきの原因) | なし(乾けば何も残らない) |
| 金属への影響 | 腐食の懸念あり | 防錆効果あり |
| 環境負荷 | 高い(中和・処理が必要) | 極めて低い(水に戻る) |

ウインテストの洗浄装置は、特許技術の3層構造電解槽により、塩分などの不純物を含まない純水ベースの強アルカリ水素水を生成できるのが特徴です。高い洗浄力と水素による防錆効果を両立し、精密機器の腐食を防ぎつつ、環境負荷と廃棄コストを大幅に削減します。
電解槽をどうやって分けるのか
ウインテストが採用している「3層構造電解槽」は、特殊な「イオン交換膜」というフィルターを使って、内部を物理的に3つの部屋に仕切ることで実現しています。
3層構造の仕組み
通常、水に電気を流すには「電解促進剤(塩など)」が必要ですが、これを洗浄水に混ぜると不純物になってしまいます。そこで、電解槽を3つに分けます。
- 中間室(薬剤の部屋):ここに電解促進剤を循環させます。電気を通すための「通り道」としての役割だけを担わせます。
- 陽極室・陰極室(純水の部屋):中間室の両サイドに配置され、ここには「純水」だけを流します。
- イオン交換膜(仕切り):中間室と両サイドの部屋を隔てる膜です。この膜は「電気(イオン)は通すが、液体そのものや不純物は通さない」という性質を持っています。
なぜ洗浄水が汚れないのか
電気を流すと、中間室にある促進剤の成分がイオン化し、膜を通って隣の部屋の純水と反応します。しかし、促進剤の「本体(カスや塩分)」は膜にブロックされて中間室に留まるため、両サイドから出てくる洗浄水は「純粋な強アルカリ水素水」となるのです。
この方式のメリット
- 非接触:薬剤と洗浄水が直接混ざり合うことがありません。
- 安定性:純水だけでは電気が流れにくいという物理的な弱点を、中間室の薬剤がサポートすることで解決しています。
「純水」からこれほど高いpH(pH12.5以上)を安定して作れる技術は非常に珍しく、それがウインテストの大きな強みとなっています。

特殊な「イオン交換膜」を使い、電解槽を陽極室・中間室・陰極室の3つに物理的に仕切ります。中間室にのみ電解促進剤(塩など)を入れ、膜を通じて電気のみを通すことで、生成される洗浄水に不純物や塩分が混入するのを防ぐ仕組みです。
なぜこれまでイオン交換膜を使用した電解槽がなかったのか
「イオン交換膜」自体は古くからある技術ですが、「洗浄水生成装置」として実用化・普及しなかったのには、技術的・コスト的な高い壁があったからです。
1. 膜の耐久性と「目詰まり」の問題
イオン交換膜は非常にデリケートです。
- スケーリング現象:水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル分が、電気分解の過程で結晶化し、膜の表面にこびりついてしまいます(目詰まり)。
- 性能低下:目詰まりが起きると電圧が上がり、装置の故障や電力消費の増大を招くため、長期間安定して高pHの水を生成し続けるのが困難でした。
2. 構造の複雑化と高コスト
一般的な電解槽は、水を2つに分ける「1枚の膜(2室構造)」で済みます。
- 3層構造の難しさ:ウインテストが採用した「3層構造」は、膜を2枚使い、さらに中間室に薬剤を循環させるシステムが必要です。
- コスト増:部品点数が増え、制御が複雑になるため、これまでは「そこまでコストをかけて純粋なアルカリ水を作るニーズ(市場)」が限定的だと考えられてきました。
3. 「2室構造」で十分だと思われていた
これまでは、多少の塩分や不純物が混じっても、家庭用や一般的な工業洗浄では問題になりませんでした。
- 市場の変化:近年、半導体の微細化やEVバッテリー部品など、「わずかな不純物や腐食も許されない」超精密洗浄の需要が急増したことで、ようやくこの高コストな3層構造技術に光が当たったのです。
ウインテスト(および提携先のレドックステクノロジー社)は、膜の目詰まりを防ぐ独自の制御技術を確立し、さらに精密機器業界からの「脱・溶剤」「脱・塩素」という強いニーズが重なったことで、ようやく製品化が実現しました。

イオン交換膜は膜の目詰まり(スケーリング)が起きやすく、長期的な安定稼働とコストの両立が困難でした。また、これまでは多少の不純物混入が許容されていたため、複雑な3層構造を量産する需要が限定的だった背景もあります。

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