この記事で分かること
地熱発電とは何か
地下のマグマの熱で温められた高温の蒸気を利用し、タービンを回して電気を作る仕組みです。燃料を燃やさないためCO2を排出せず、天候に左右されず24時間安定して発電できる特徴があります。
Quaise Energyの特徴
米クエイズ社は、金属ドリルの代わりに「ミリ波」で岩石を溶かして掘削する独自技術を持ちます。地下10〜20kmの超深部へ到達することで地球上どこでも発電を可能にし、既存火力発電所の再利用も目指します。
電磁波を使用するメリット
電磁波で岩石を溶かすため、ドリル刃の摩耗や交換が不要です。物理的な接触がないため超高温・硬質の岩盤も容易に突破でき、さらに溶けた岩石が冷え固まることで穴の壁が自動補強される利点もあります。
JERAの地熱スタートアップへの出資
JERAは米国の地熱スタートアップQuaise Energy(クエイズ・エナジー)社への出資を発表しています。
Quaise Energy」はマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究所からスピンオフした、テキサス州拠点のスタートアップです。
最大の強みは、従来の金属製ドリルビット(刃)ではなく、「ミリ波(高出力の高周波電磁波)」で岩石を融点以上に加熱して蒸発・溶融させながら掘り進む独自技術です。
JERAが最も期待しているのは、「既存の火力発電アセットの有効活用」です。 超深部から得られる超高温の蒸気は、火力発電所で使われている既存の蒸気タービンや送電インフラをそのまま流用できる性質を持っています。
将来的に「CO2を排出する老朽火力を、24時間安定して発電できるクリーンな地熱発電所へ丸ごと転換する」という、極めて合理的な脱炭素ロードマップを描くための一手と言えます。
地熱発電とは何か
地熱発電は、地球の地下深くにある「マグマの熱」を利用して電気を作る仕組みです。
基本的には火力発電と同じように「蒸気の力でタービンを回して発電」しますが、燃料を燃やすのではなく、地球が持つ天然の熱をそのまま使うのが特徴です。
電気をつくる具体的な流れ
- 天然のボイラー(地熱貯留層)地下に降った雨水がマグマの熱で温められ、地下1,000〜3,000mの深さに高温の蒸気や熱水として溜まります。この場所を「地熱貯留層(ちねつちょりゅうそう)」と呼びます。
- 蒸気の汲み上げ(生産井)「生産井(せいさんせい)」という井戸を掘り、そこから地上の「気水分離器」へ向けて一気に蒸気と熱水を吸い上げます。
- タービンを回して発電気水分離器で水分を切り離し、純粋な「蒸気」だけの力で「タービン」を高速回転させ、つながっている「発電機」で電気を作ります。
- 地下へのリサイクル(還元井)使い終わった熱水や、蒸気が冷えて戻った水は、「還元井(かんげんせい)」という別の井戸から再び地下の地熱貯留層へと戻します。こうして水を循環させることで、温泉枯れを防ぎ、半永久的にエネルギーを取り出すことができます。
主なメリットと課題
日本の地熱資源量は、アメリカ、インドネシアに次ぐ世界第3位であり、資源大国になれるポテンシャルを秘めています。
- メリット: 太陽光や風力と違い、天候や夜間に左右されず24時間365日いつでも安定して発電できる点です(ベースロード電源と呼ばれます)。また、発電時にCO2をほぼ排出しません。
- 課題: 地下の調査から発電所の稼働までに10年以上の長い時間と巨額のコストがかかります。また、日本の地熱エリアの多くが温泉街や国立公園と重なっているため、地元との調整や景観保護の規制をクリアする難しさがあります。

地熱発電とは、地下のマグマの熱で温められた高温の蒸気を利用し、タービンを回して電気を作る仕組みです。燃料を燃やさないためCO2を排出せず、天候に左右されず24時間安定して発電できる特徴があります。
Quaise Energyの特徴は何か
Quaise Energyの主な特徴は、従来の地熱発電の常識を覆す「ミリ波掘削技術」と「超深部への到達」にあります。
既存の火力発電所を再利用できる
超深部から得られる蒸気は、石炭やガスを燃やして作る蒸気と同じくらい超高温です。そのため、廃止予定の火力発電所のタービンや送電網をそのまま流用して、クリーンな地熱発電所へと丸ごと作り替えることができます。
ミリ波(電磁波)で岩石を溶かす掘削技術
物理的な金属ドリルを使わず、高出力の電磁波(ミリ波)で岩石を500℃以上に加熱し、溶融・蒸発させながら掘り進めます。ドリル刃の摩耗や交換という、深部掘削における最大のコストと技術的限界をクリアしました。
地下10〜20kmの「超深部」を狙う
従来の地熱発電(地下数km)の約5倍にあたる深さまで掘り進め、500℃以上の超高温・超高圧の熱源に到達することを目指しています。これにより、井戸1本あたり従来の約5倍のエネルギーを取り出せます。
地球上どこでも発電可能にする
これまでは火山地帯など特定の場所でしか地熱発電ができませんでしたが、地下10km以上掘れば、地球上のほぼすべての場所で十分な熱源に到達します。地理的な制約がなくなります。

米クエイズ社は、金属ドリルの代わりに「ミリ波」で岩石を溶かして掘削する独自技術を持ちます。地下10〜20kmの超深部へ到達することで地球上どこでも発電を可能にし、既存火力発電所の再利用も目指します。
電磁波を使用するメリットは何か
電磁波(ミリ波)で岩石を溶かして掘る最大のメリットは、従来の金属ドリルが持つ「物理的な限界」をすべて突破できる点にあります。
刃の交換が不要(コストと時間の削減)
従来の金属ドリルは、硬い岩盤を掘るとすぐに刃(ビット)が摩耗して壊れます。交換するには、数km〜十数kmもの長さのパイプをすべて地上に引き上げ、刃を替えてまた戻すという「トリッピング」と呼ばれる膨大な作業が必要になり、これが深部掘削のコストの大部分を占めていました。電磁波は非接触で岩を蒸発させるため、刃の摩耗そのものが存在しません。
超高温・超硬質の岩盤でも進める
地下10kmを超えると、温度は400℃〜500℃を超え、岩石も非常に硬くなります。金属ドリルは熱で強度が落ちて使い物にならなくなりますが、電磁波(高出力レーザーのようなもの)にとっては、周囲が高温であるほど岩石を溶かしやすくなるため、深部に行くほど効率が上がります。
掘った穴の壁が「自動で補強」される
ミリ波によって強力に加熱された岩石は、一度溶けたあと、周囲の冷たい泥水などで冷やされてカチカチのガラス状(ガラス質ライニング)に固まります。これにより、掘った穴の壁が自動的にコーティングされて強固になり、地下深くの凄まじい圧力で穴が押し潰されるのを防ぐことができます(通常は金属のパイプを挿入して壁を補強する必要があります)。
「壊れない、摩耗しない、深くなるほど速く掘れる」のが電磁波を使用するメリットです。

電磁波(ミリ波)で岩石を溶かすため、ドリル刃の摩耗や交換が不要です。物理的な接触がないため超高温・硬質の岩盤も容易に突破でき、さらに溶けた岩石が冷え固まることで穴の壁が自動補強される利点もあります。
どのように電磁波を発生させるのか
Quaise Energy社が岩石を溶かすために使う強力なミリ波(電磁波)は、「ジャイロトロン(Gyrotron)」と呼ばれる特殊な高出力の電子管(真空管の一種)を使って発生させます。
この技術はゼロから新しく作られたものではなく、もともと核融合研究において、プラズマを1億℃以上に加熱するために数十年にわたり開発・使用されてきた実績のある技術です。
1. 電磁波(ミリ波)を発生させる仕組み
- 電子の放出と加速: 装置の内部(真空)で電子を放出し、強い電圧をかけて超高速まで加速します。
- 磁場による高速回転: 強力な超電導マグネットで作った磁場の中にこの電子を送り込みます。すると、電子は磁力線に巻き付くようにして、目にも留まらぬ速さでグルグルと螺旋状に回転を始めます(サイクロトロン運動)。
- ミリ波への変換: 電子が高精度に揃って回転することで、その運動エネルギーが「ミリ波(波長が数ミリの、非常に周波数が高くエネルギー密度の濃い電磁波)」へと変換され、強力なビームとして放出されます。
2. 地下10km以上先へどうやって届けるのか
電子レンジのように電磁波をそのまま四方に拡散させては、地下深くを掘るエネルギーにはなりません。
そこで、地上のジャイロトロンで発生させたミリ波ビームを、「導波管」と呼ばれる特殊な金属製のパイプの内側に反射させながら、レーザーのようにまっすぐ地下の底まで送り届けます。
穴の最深部に到達したミリ波は、接触することなく岩盤に照射され、その圧倒的な熱エネルギーで岩石を瞬時に溶かし、蒸発させて掘り進んでいきます。

核融合技術から生まれた「ジャイロトロン」という装置を使います。加速した電子を強力な磁場の中で高速で円運動させることにより、電子の運動エネルギーを高出力のミリ波(電磁波)に変換して発生させます。

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