この記事で分かること

東ソーのクロロプレンゴム値上げ
東ソーは2026年8月31日、クロロプレンゴム(CR、製品名:スカイプレン)全品種の価格改定(値上げ)を発表しました。
世界的な物価高騰に伴い、主要な原材料価格だけでなく、固定費や物流コストの上昇が続いています。コスト低減、省力化、物流の効率化などあらゆる合理化策を実施してきたものの、コスト上昇分が企業努力で吸収できる限界を大幅に超える状況となりました。
クロロプレンゴムとは何か
クロロプレンゴム(CR:Chloroprene Rubber)は、2-クロロ-1,3-ブタジエン(クロロプレン)を重合させて作られる代表的な合成ゴムです。
米国デュポン社が開発した商標名「ネオプレン(Neoprene)」でも広く知られ、耐熱性・耐候性・耐油性・機械的強度のバランスが良い「万能型ゴム」として幅広い産業で使われています。
主な特徴
- バランスの優れた耐久性:耐熱性、耐寒性、耐オゾン性、耐候性に優れ、屋外環境でも劣化しにくい性質を持ちます。
- 耐油性・耐薬品性:天然ゴムに比べて油や各種薬品に強く、鉱物油などによる膨潤が抑えられます。
- 難燃性(自己消火性):分子構造内に塩素原子を含んでいるため、火元から離すと燃え広がりにくい特性があります。
- 高い機械的強度:引っ張り強度や耐摩耗性に優れ、金属や布地との接着力も高いため加工性に優れています。
主な用途
- 自動車用部品:ドライブシャフトブーツ、各種ホース類、伝動ベルト、ウェザーストリップ。
- 工業用資材:コンベアベルト、電線被覆材、防振ゴム、パッキン・ガスケット類。
- 接着剤:溶剤型クロロプレンゴム系接着剤(木材・金属・ゴムなどの強力な接着用途)。
- 一般消費財:ウェットスーツ、パソコン・精密機器の保護スリーブケース、スポーツ保護具。
短所・制限事項
電気絶縁性が他の汎用ゴム(EPDMなど)よりやや劣る点や、極低温環境下で長時間放置すると結晶化により硬化しやすい点が挙げられます。

クロロプレンゴム(CR)は、耐熱性・耐候性・耐油性・難燃性・機械的強度のバランスに優れた万能型合成ゴムです。「ネオプレン」の名称でも知られ、自動車部品や工業用ベルト、接着剤、ウェットスーツなどに幅広く用いられます。
なぜ値上げを行うのか
東ソーがクロロプレンゴムの値上げを実施する主な理由は、製造・販売にかかる各種コストの大幅な高騰と、企業努力による吸収限界です。
- 原料・エネルギー価格の高騰:主要な合成原料(クロロプレンモノマー等)に加え、製造プラントの稼働に必要な電力・燃料などのユーティリティコストが上昇しているため。
- 固定費・物流費の増加:世界的なインフレに伴う人件費、設備の維持管理費用、および製品を届けるための輸送費用(物流費)が増加しているため。
- 安定供給の維持・確保:徹底した省力化やコスト削減(合理化策)を続けてきたものの、上昇分を自社内で吸収しきれず、事業継続と将来にわたる安定供給体制を維持するため。

原材料やエネルギー価格、物流費・固定費の高騰が続いており、コスト削減などの自助努力だけでは吸収限界を超えたためです。今後も製品の安定供給体制と事業の継続性を維持・確保することを目的としています。
クロロプレンゴムの有力メーカーはどこか
クロロプレンゴム(CR)市場は世界的にプレイヤーが限られた集中度の高い市場であり、日本企業3社(デンカ、東ソー、レゾナック)で世界全体の供給能力の約60%を占める圧倒的なシェアを持っています。
主要企業のグローバルシェアと生産能力
世界のクロロプレンゴム年間総生産能力(約38万〜40万トン)に基づく主なメーカーのシェアと立ち位置は以下の通りです。
| 企業名 | 拠点(国) | 世界シェア(目安) | 年間生産能力(目安) | 特徴・立ち位置 |
| デンカ(Denka) | 日本 | 約30〜40%(世界1位) | 約10.0万トン | 世界首位。新潟県糸魚川市の自社鉱山(石灰石)を活用した独自の製造基盤を持つ。 |
| ARLANXEO(アーランセオ) | ドイツ/サウジアラビア | 約15〜20% | 約6.0万〜7.0万トン | 旧バイエル/ランクセスのゴム事業を継承。欧米市場を中心に強い展開力を持つ。 |
| 山西合成ゴム(Shanxi Synthetic) | 中国 | 約10〜15% | 約4.0万〜5.0万トン | 中国最大の製造拠点を持つ主要メーカー。 |
| 東ソー(Tosoh) | 日本 | 約8〜10% | 約3.4万トン | 世界4〜5位規模 / 国内2位グループ。「スカイプレン」ブランドを展開。 |
| レゾナック(旧・昭和電工) | 日本 | 約5〜6% | 約2.3万トン | 国内3社の一角。高耐熱・高性能グレード等に強み。 |
日本国内市場における東ソーの位置付け
日本国内の製造メーカー(デンカ・東ソー・レゾナックの3社)に絞った場合、東ソーの生産能力シェアは約21%(国内2位)を占めます。
- デンカ:約64%
- 東ソー:約21%
- レゾナック:約15%
東ソーは世界・国内ともに最大手ではないものの、高品質な難燃・耐油性ゴムや接着剤用特殊グレード(カルボキシル変性等)に強みを持つ重要な主要サプライヤーとして位置付けられています。

クロロプレンゴムの世界市場はデンカ(約30〜40%)が首位で、アーランセオ(約15〜20%)が続きます。東ソーは世界シェア約8〜10%(国内2位)で、デンカやレゾナックを含む日本3社で世界の約6割を占めます。


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