この記事で分かること

日本政策投資銀行のデクセリアルズへの融資
デクセリアルズが日本政策投資銀行(DBJ)から融資を受け、新工場の建設や生産能力増強に活用することを発表しています。
日本政策投資銀行には、単なる財務リターンだけでなく、同社の中期経営計画(2024〜2028年度「進化の実現」)における技術革新(サステナブル材料の開発・製造)や人財戦略、地域経済への貢献といった「社会的価値と経済的価値の双方の創出」が評価され、今回の調達につながっています。
デクセリアルズの事業内容は何か
デクセリアルズ株式会社は、スマートフォン、自動車、ディスプレイ、データセンターなどのエレクトロニクス分野を中心に、電子部品・接合材料・光学材料などの製造・販売を行う高機能材料メーカーです(旧・ソニーケミカル)。
ニッチ領域で世界トップシェアを誇る製品を複数展開しており、主な事業分野と代表的製品は以下の通りです。
1. 接合材料・粘接着事業
電子機器やディスプレイの組み立てにおいて、微細な回路の接続や部材の接合を担う材料を展開しています。
- 異方性導電膜(ACF):液晶ディスプレイや半導体ICチップを基板に微細ピッチで接続・固定する薄膜フィルム。世界シェア首位を維持しています。
- 光学弾性樹脂(SVR):ディスプレイパネルとトッププレートの隙間(エアギャップ)を埋める透明な液状接着剤。光の乱反射を抑えて視認性を高め、耐衝撃性も向上させます。
- 工業用粘着テープ・液状接着剤:電子機器内の基板固定や防塵・放熱・構造接着に用いられる高機能テープ・接着剤。
2. 光学材料事業
光の透過や反射をコントロールし、画面の見やすさや光学機器の性能を高める材料・部材を提供しています。
- 反射防止フィルム(ARF):ディスプレイ表面への外光や蛍光灯の映り込みを防ぎ、明瞭な表示を実現する高機能フィルム。
- 無機偏光板・無機波長板:耐熱性・耐光性に優れ、プロジェクターや産業用光学機器に使われる光学素子。
3. 電子部品・フォトニクス事業
バッテリーの安全性向上や、データ通信の高速化を支えるハードウェア製品を展開しています。
- 二次保護ヒューズ:ノートPCやスマートフォンなどのリチウムイオンバッテリーパックに搭載され、過充電や過電流による発火事故を防ぐ安全部品。
- フォトニクス(光半導体)関連製品:生成AIの普及に伴うデータセンター向け光トランシーバーに使用される受発光素子(アバランシェフォトダイオード等)などの光半導体デバイス。
事業の特徴と強み
- 4つのコア技術:「材料開発」「プロセス技術」「評価技術」「分析・解析技術」の4つを連携させ、製品そのものだけでなく顧客の製造プロセスに合わせたソリューションを提供しています。
- 注力領域のシフト:従来のモバイル・PC向け領域に加え、電動化・自動運転が進む車載ディスプレイ・電装分野や、生成AI市場の拡大に伴うフォトニクス(光伝送)領域へ事業基盤を拡大しています。

スマートフォンや自動車、データセンター向けに、異方性導電膜(ACF)などの接合材料、反射防止フィルムなどの光学材料、二次保護ヒューズや光半導体を開発・製造・販売する高機能材料メーカーです。
調達資金は何に使うのか
調達資金(30億円)の主な使い道は、「新工場の建設・設備投資」および「中長期的な成長に向けた事業基盤の強化」です。
鹿沼事業所(栃木県)の新工場建設・設備投資
- 生産建屋の新設および最新の生産ライン導入
- 高度なクリーン環境の構築や工場全体の自動化・省力化投資
主力製品の生産能力増強(車載・半導体・ディスプレイ向け)
- 異方性導電膜(ACF)をはじめとする主力接合材料の増産
- 電動化・自動運転が進む自動車市場や、AI・半導体関連の需要増加に対応する供給体制の強化
中長期的な技術開発・人財・サステナビリティ投資
- 環境負荷を低減するサステナブル材料の研究開発・製造プロセス刷新
- 高度専門人財の獲得・育成やDX(デジタル変革)推進

調達した30億円は、栃木県鹿沼事業所での新工場建設や設備投資に充てられます。異方性導電膜(ACF)など主力製品の生産能力を増強し、車載や半導体向け供給体制の強化や環境材料の開発・設備刷新に活用します。
なぜ日本政策投資銀行が投資するのか
日本政策投資銀行(DBJ)は政府系の金融機関であり、単なる短期的な収益性だけでなく、「日本の産業競争力の強化」「社会課題の解決」「地域経済の活性化」に資するかどうかを重視して資金供給を行います。
1. グローバルで不可欠な「日本の先端部材技術」の強化
デクセリアルズが持つ異方性導電膜(ACF)をはじめとする高機能材料や光半導体技術は、世界中のスマートフォン、車載機器、データセンターなどで使われる不可欠な技術です。
こうした世界トップシェアを持つ日本の電子材料・部材技術の生産基盤を維持・拡張することは、日本の産業全体の国際競争力向上に直結します。
2. 社会的価値と経済的価値を両立するビジネスモデルの評価
DBJは同社を「DBJ未来価値共創企業」の初回認定企業として選定しています。デクセリアルズの中期経営計画におけるサステナブル材料の開発、環境負荷低減、高度人財への投資といった取り組みが、「社会課題の解決(環境・技術革新)」と「収益拡大(経済的価値)」を同時に実現する優れたモデルであると判断されたためです。
3. 国内投資を通じた「地域経済・雇用」への貢献
栃木県(鹿沼事業所等)での新工場建設や最新設備の導入は、国内における技術基盤の維持だけでなく、地方での雇用創出や関連サプライチェーンの活性化に貢献します。
地方創生や国内産業基盤の強化をミッションに掲げるDBJの役割と合致しています。
4. 独立期からの長年にわたる伴走支援(パートナーシップ)
DBJは、2012年にソニーから独立(MBO)した際のリスクマネー供給や、その後の光半導体企業の買収(M&A)支援など、同社の成長フェーズにおいて一貫して支援を行ってきた歴史があります。
事業の成長性や経営陣のガバナンスに対する深い理解と長期的な信頼関係が存在します。

デクセリアルズが持つ世界シェアの電子材料技術を強化し、日本の産業競争力を高めるためです。サステナビリティと収益性を両立する事業モデルや、新工場建設による地域経済への貢献も高く評価されています。

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