リンテックの最先端半導体部材

この記事で分かること

1. どんな部材の量産化を目指すのか

AI半導体の積層化に対応する極薄ウェハ用の「高平坦化バックグラインドテープ」などの次世代実装向け特殊部材や、2nm以下の超微細前工程を支える「EUV露光用ペリクル」の量産化を目指します。

2. なぜ段差を埋め込めるようになるのか

貼付時は液体のようになじんで電極の隙間まで密着し、研削前には熱や光(UV)で硬化して強靭な土台へ変化する、分子レベルで性質をコントロールできる特殊な樹脂設計技術(粘着剤)を用いているためです。

カーボンナノチューブのEUV透過性が高い理由

EUV光を吸収しにくい炭素原子で構成されている上、ナノレベルの網目状(ネット状)で大部分が空間になっており、膜厚も数ナノメートルと極限まで薄いため、光を遮る障害物が物理的に少なく透過しやすくなります。

リンテックの最先端半導体部材

 リンテックが最先端半導体部材である高付加価値テープやEUVリソグラフィ向けの新部材への「70億円規模の投資」および「2026年内の量産移行」に関する計画を発表しています。、

 AI半導体の進化(HBMの積層化やチップレット技術)に伴う高付加価値テープなどの需要急増を捉えるための戦略的な動きです。

どんな部材の量産化を目指すのか

 リンテックが2026年内の量産化に向けて投資する対象は、主に「次世代パッケージング(後工程)向けの高付加価値テープ・材料」および「EUVリソグラフィ(前工程)向けの新部材」の2つがコアとなります。

 同社の中期経営計画(LSV 2030 – Stage 2)の技術ロードマップや直近のクリーン設備投資の動向から、量産化を目指す具体的な部材は以下の通りです。

1. 高度後工程(Advanced Packaging)向け 特殊テープ

 AI半導体の性能を左右する「3Dスタッキング(積層化)」や「チップレット技術」に不可欠な、極薄ウェハ処理用のプロセス材料です。

  • 高平坦化(フラット化)バックグラインドテープ
    • 役割: ウェハの裏面を極限(数十マイクロメートルレベル)まで薄く削る際、回路が形成された表面を保護するテープです。
    • 量産化の目的: HBM4などの多層積層では、ウェハに「バンプ(微細な電極の突起)」が並んでいます。従来のテープではこの段差を吸収しきれず、薄削時にウェハが反ったり割れたりする原因になっていました。バンプの段差を完全に包み込み、研削後にはUV(紫外線)照射で糊残りのないよう綺麗に剥がせる「次世代型高高低差吸収テープ」や、それを進化させた「樹脂コーティングプロセス材料」の量産ラインを確立します。
  • 高耐熱ダイシングテープ / 回路面保護材料
    • 役割: チップを切り出す(ダイシング)際や、その後の実装プロセスでチップを固定・保護する材料です。
    • 量産化の目的: チップレットや2.5D/3Dパッケージでは、後工程であっても従来より高い熱処理がかかるケースが増えています。高熱に耐えつつ、必要なタイミングでストレスなく剥離・転写できる高機能テープの量産能力を引き上げます。

2. EUV露光用「カーボンナノチューブ(CNT)ペリクル」

 前工程(微細化)における非常に大きなマイルストーンとして、リンテックが量産化を進めている最先端部材が「CNTペリクル」です。

  • ペリクルとは: 回路の原画である「マスク(レチクル)」にゴミが付着するのを防ぐ防塵カバーのことです。
  • なぜCNT(カーボンナノチューブ)なのか:2nm世代などの最先端露光に使われるEUV(極端紫外線)は、物質に吸収されやすいという厄介な性質を持っています。従来のシリコンベースのペリクルだと、EUV光が透過しにくく、さらに露光時の超高温で劣化しやすいのが課題でした。リンテックが開発したCNTペリクルは、「90%以上の高いEUV透過率」「優れた耐熱性(1200℃以上)」を両立しています。
  • 量産化の目的: 次世代の高出力EUV露光装置(High-NA EUVなど)が本格稼働する時期に合わせ、このCNTペリクルを商業ベースで安定供給できる量産体制を2026年内に構築することを目指しています。

  これまでリンテックが得意としていた「切るためのテープ(ダイシング)」「削るためのテープ(バックグラインド)」という単なる消耗品の枠を超え、

  • 「AI半導体の超高密度積層を可能にするプロセス材料」
  • 「2nm以下の超微細露光を支えるCNT防塵部材」

 という、最先端半導体の歩留まり(良品率)と生産性を直結して左右する「構造・露光プロセスのキーマテリアル」の量産化を目指しています。

最先端AI半導体の積層化(HBM等)に対応する極薄ウェハ用の「高平坦化バックグラインドテープ」などの次世代パッケージング向け特殊部材や、2nm以下の超微細前工程を支える「EUV露光用ペリクル」の量産化を目指します。

なぜ段差を埋め込めるようになるのか

 ウェハ表面の微細な電極(バンプ)の段差をきれいに埋め込める(吸着できる)ようになる理由は、「熱や紫外線(UV)によって、性質がガラリと変わる特殊な樹脂(粘着剤)の設計技術」にあります。

 主に以下の2つのメカニズムによって実現しています。

1. 貼り付ける時は「液体のようになじむ」

 ウェハにテープを貼り付ける段階、または液体状の樹脂をコーティングする段階では、材料の粘度をあえて非常に低く(柔らかく)設定しています。

 これにより、微細な電極と電極の隙間(ミクロン単位の谷間)にまで、樹脂がまるで水のようにすみずみまで流れ込み、気泡を残さずに完全に密着します。

2. 削る時は「ガチガチに固まる」

 隙間を埋めた後、熱や光をかけることで樹脂の分子同士を強固に結びつけ(架橋反応)、一瞬で硬いプラスチックのような状態へ変化させます。

 これで段差の凹凸が完全に固定され、上からダイヤモンドの刃でガリガリと裏面を研削しても、電極が潰れたりウェハが歪んだりしない「強靭な土台」へと変わるのです。

 研削が終わった後は、さらに別の波長のUV(紫外線)を当てることで、今度は粘着力がほぼゼロ(サラサラ)になるよう化学設計されています。そのため、せっかく薄く削ったウェハに一切の負荷をかけず、ペリッと綺麗に剥がすことができます。

 この「流動性(なじむ)」→「硬化(支える)」→「消失(剥がれる)」という3つの状態を、分子レベルで完璧にコントロールできるようになったことが、段差を完全に埋め込める理由です。

貼り付ける際は液体のようになじんで微細な電極の隙間まで密着し、研削前には熱や光(UV)で硬化して強靭な土台へと変化する、分子レベルで性質をコントロールできる特殊な樹脂設計技術を用いているためです。

UVでさらさらになるのはなぜか

 UV(紫外線)を当てることで粘着剤がさらさらになり、簡単に剥がせるようになるのは、化学反応によって「接着面の網の目を一気に細かくして、接着面積を激減させているから」です。

 イメージとしては、「マジックテープのフック(トゲトゲ)を、UVの力で一瞬にして球体のビーズに変えてしまう」ような現象が起きています。

1. 粘着剤の分子を「ガチガチの塊」にする

 UVを当てる前の粘着剤は、分子が長くて柔軟に動くため、ウェハの表面にペタッと広く密着しています。

 しかし、UVを当てると粘着剤の中に含まれる「光重合開始剤」という物質が反応し、周囲の分子同士を急速に結びつけます(架橋反応)。これにより、柔らかかった樹脂が一瞬で硬いプラスチックの塊に変わります。

2. 「点」でしか触れていない状態を作る

 樹脂が硬化して縮むと、ウェハの凹凸に柔軟に入り込んでいた粘着剤が引きはがされ、ミクロのレベルで「面」での接触から「点」での接触へと変化します。

  • UV前(面接触): 柔らかいので、隙間なくベッタリ張り付いている(粘着力が高い)。
  • UV後(点接触): カチカチに固まって縮むため、点と点でしか触れていない状態になる(粘着力がほぼゼロ)。

 つきたての柔らかいお餅(UV前)は手や皿にベタベタ張り付きますが、乾燥してカチカチに固まったお餅(UV後)は、皿に張り付かずにコロコロと転がりますよね。あの状態を、UVの光を使ってわずか数秒で人工的に起こしているのです。

UV(紫外線)により粘着剤内の分子同士が急速に結びつき、柔らかい「面」から硬い「点」の接触へとカチカチに硬化・収縮するためです。ウェハとの接着面積が劇的に減少することで、粘着力がほぼゼロになります。

カーボンナノチューブはなぜEUVの透過性が高いのか

 カーボンナノチューブ(CNT)のEUV(極端紫外線)透過性が高い理由は、主に「物質としての圧倒的な『薄さ(低密度)』」「炭素原子そのものの物理的特性」にあります。

 EUV光は「あらゆる物質(空気やガラスですら)に吸収されてしまう」という極めてデリケートな性質を持っています。そのため、光を透かすには以下の2つの条件を同時に満たす必要があり、CNTはそれが完璧に合致しています。

1. 究極にスカスカで、極限まで薄い構造(主因)

 CNTペリクルは、炭素原子が網目のように結びついたシリンダー状のナノチューブを、織物(ネット)のように編み上げた「膜」です。

  • 驚異の膜厚: 厚さはわずか数ナノメートル〜数十ナノメートルしかありません。
  • 構造がスカスカ: ナノレベルで見ると大部分が「隙間(空間)」であるため、EUV光が物質にぶつかる確率自体が物理的に低く、光がそのまま通り抜けることができます。

2. 炭素(カーボン)という元素の相性の良さ

 EUV光(波長 13.5 nm)に対する光の吸収しやすさは、元素(原子番号)によって異なります。

 炭素(原子番号6)は、従来ペリクルに使われていたシリコン(原子番号14)などに比べて、もともとEUV光を吸収しにくい(透過しやすい)特性を持っています。

 「EUV光を遮る障害物(原子)」がそもそも少ない炭素でできており、さらにそれを「極限まで薄く、隙間だらけのネット状」に配置しているため、EUV光がほとんど邪魔されずに透過することができます。

EUV光を吸収しにくい炭素原子で構成されている上、ナノレベルの網目状(ネット状)で大部分が空間になっており、膜厚も数ナノメートルと極限まで薄いため、光を遮る障害物が物理的に少なく透過しやすくなります。

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