この記事で分かること
NAURAはどんな半導体製造装置を製造しているのか
「中国のApplied Materials」と称される総合装置メーカーで、露光装置を除くエッチング・CVD・PVD・ALD・洗浄・熱処理・イオン注入など前工程のほぼ全域をカバーしています。28nmプロセスまでの国産代替が可能な水準に達し、M&Aも駆使して製品ラインを急拡大しています。
CVD装置の国産化が進んでいるのはなぜか
技術の核心が露光装置のような超精密光学系ではなく「気体制御」にあるため参入障壁が相対的に低い点が最大の理由です。加えて米系大手出身の帰国技術者による知識移転、中国国内に根付いたサプライチェーン、政府による新設ファブへの国産装置50%義務化という三つの要因が重なり、28nm向けでは量産段階に達しています。
ALD装置の国産化の状況はどうか
Piotechを中心に3D NAND向けの成熟ノード領域では実用段階に近づいています。一方で先端ロジック向けの高精度ALD、GAA(ゲートオールアラウンド)トランジスタ対応、前駆体(有機金属材料)の国内調達という三つの課題が残り、ASMインターナショナルなどトップメーカーとの技術差は依然大きい状況です。
CVD、ALD装置の国産化の状況
東京エレクトロン、アドバンテスト、SCREENホールディングス、ディスコ、KOKUSAI ELECTRICの日系5社の2026年3月期における中国向け売上高の合計は、初めて前年度比マイナスとなり、約1割の減少となりました。
これは中国市場に依存してきた日本の半導体装置メーカーにとって、構造的な転換点を示すものです。
NAURAやAMECといった中国の装置企業は、政府の国産化政策と「大基金」と呼ばれる国家ファンドの後押しを受けて急拡大しています。
さらに、2026年時点で、中国の新設ファブに対して国産装置の採用比率を50%以上とする「国産装置50%ルール」が確認されており、これは米中半導体戦争が「封じ込め対迂回」の段階から、中国による完全なデカップリングへの能動的な移行段階へとシフトしたことを象徴するものです。
前回の記事は国産化の現状と現像装置の国産化が難しい理由に関する記事でしたが、今回はNAURAはどんな半導体製造装置を製造しているのかやCVD、ALD装置の国産化の状況に関する記事となります。
NAURAはどんな半導体製造装置を製造しているのか
「中国のApplied Materials」と呼ばれる総合装置メーカー
NAURAは「中国のApplied Materials」と呼ばれる総合製造装置メーカーで、露光機以外ほぼ全ての工程の装置を手がけており、28nmプロセスまではほぼ国産代替が可能な水準に達しています。
2001年に設立され、2023年時点の売上高は220億8,000万人民元(約4,550億円)、従業員数は約1万2,000人に達する大企業です。
2023年には世界の半導体装置企業の売上高ランキングでトップ10に入っています。
主力製品ラインナップ
NAURAの半導体装置部門が手がける主力製品は幅広く、前工程のほぼ全域をカバーしています。
① エッチング装置(プラズマエッチング) 回路パターンを形成するために不要な膜を削る装置で、NAURAの主力製品の一つです。2024年にはエッチング設備と薄膜成長設備が大幅な成長を遂げており、2025年も成長を維持する見込みです。
② CVD・ALD装置(薄膜成長装置) CVD(化学蒸着)装置のほか、SiC結晶成長炉装置、酸化拡散装置・アニーリング装置も手がけています。これらは絶縁膜や金属配線の形成に不可欠な工程を担います。
③ PVD装置(物理蒸着/スパッタリング) マグネトロンスパッタリング装置を中心としたPVD装置も製品ラインに含まれています。配線材料の成膜や電極形成などに幅広く使われます。
④ イオン注入装置 半導体に不純物を打ち込んでトランジスタの特性を制御するための装置で、従来は米国Axcelis Technologiesや日系企業がほぼ独占していた分野です。NAURAは2024年にイオン注入装置の開発を明らかにしており、2025年に入って量産を開始。中国国内の半導体企業へ出荷済みであることを、展示会の説明員が明かしています。この参入は中国にとって重要な突破口とみられています。
⑤ ウェット洗浄装置・その他 ウェット洗浄装置、FPD向けUVキュア装置・搬送装置、マスフローコントローラーなども製品群に含まれています。また半導体以外にも、リチウムイオン電池関連装置、新素材向けの熱処理装置、真空装置なども手がけており、事業領域は半導体装置にとどまりません。
M&Aで製品群をさらに拡大中
NAURAは自社開発にとどまらず、買収によっても製品ラインを広げています。2025年3月には、洗浄装置大手の瀋陽芯源微電子設備(キングセミ)の株式9.49%を取得し、今後さらに持ち株比率を高めて傘下に収める方針を発表しています。
キングセミは枚葉式洗浄装置で高いシェアを持つメーカーであり、この買収によってNAURAの洗浄装置分野での存在感はさらに増すとみられています。
世界シェアから見た位置づけ
経済産業省の資料(2025年12月)によれば、CVD装置市場においてNAURAは約5%のシェアを持つとされており、世界のトップ企業であるApplied MaterialsやLam Researchとはまだ開きがあるものの、中国国内市場での採用が急拡大しており、差を縮めつつあります。

NAURAは「中国のApplied Materials」と称される総合装置メーカーで、露光装置を除くエッチング・CVD・PVD・洗浄・熱処理・イオン注入など前工程のほぼ全域をカバーしています。28nmプロセスまでの国産代替が可能な水準に達し、M&Aも駆使して製品ラインを急拡大しています。
CVD装置の国産化がすすんでいるのはなぜか
CVD(化学気相成長)装置は、ウェハー上にガスを吹き込んで化学反応を起こし、絶縁膜や導電膜などの薄膜を積み重ねる装置です。
半導体製造の「前工程」で何度も使われる基幹装置の一つです。
理由① 技術の核心が「光学系」ではなく「気体の制御」にある
露光装置が10万点以上の超精密光学部品を必要とするのに対し、CVD装置の核心技術は「チャンバー内の温度・圧力・ガス流量をいかに均一に制御するか」という点にあります。
CVD装置はチャンバー内の真空空間に原料ガスを供給しウェハーに酸化膜などを積層するための装置で、エッチング装置と同様に「装置内で気体を制御する技術」を核心としています。
この「気体制御」という技術的な性格は、露光装置が要求するようなナノメートル単位の光学精度に比べて、国産化のハードルが相対的に低い領域です。
理由② 学術・産業の知見が「オープン」に蓄積されている
CVDの基礎となる化学気相成長の原理は、半導体以外にも太陽電池・薄膜コーティング・航空宇宙材料など幅広い産業で長年使われてきた技術です。
そのため大学・研究機関レベルでの知見が豊富に蓄積されており、中国国内の理工系大学でも研究・教育が深く根付いています。これが国産メーカーの人材育成と技術開発を大きく後押ししています。
理由③ 帰国技術者による「知識の移転」
AMEC(中微半導体設備)の創業者・尹志堯氏は米アプライドマテリアルズ出身の技術者であり、高い技術力で世界から評価されています。
NAURAやAMECをはじめとする有力メーカーは、米国の大手半導体装置メーカーで経験を積んで帰国した技術者たちが主導して設立・成長してきた企業です。彼らが持ち帰った実務的な知見が、中国のCVD・エッチング装置開発の質を急速に高めました。
理由④ 米国発サプライチェーンが中国国内に存在していた
「中国国内には、機械加工を含めた米国の半導体製造装置メーカーが構築したサプライチェーンが存在するため、製造も難しくはない」との指摘もあります。
長年にわたって外国装置メーカーが中国に製造拠点を置いてきた結果、精密部品の加工や製造ノウハウが中国国内に蓄積されており、これが国産装置開発の土台となっています。
理由⑤ 国産化を後押しする政策と需要の爆発的拡大
中国政府は2027年までに成熟プロセス向け装置の国産化率を70%に引き上げる目標を掲げており、新たに生産能力を拡張する中国の半導体メーカーには設備の50%以上を国内調達することが求められています。
この強制的な調達要件が、大手ファウンドリのSMICやメモリのYMTCなどから国産装置メーカーへ大量の発注を生み出し、量産実績の積み上げと技術的な改良サイクルの加速につながっています。
現時点での到達水準
エッチング装置ではNAURAが28nm向け装置の量産を開始。さらにAMECはSMICにおいて14nm対応装置の検証を進めていると報じられており、成熟プロセスの範囲では実用水準に近づいています。
ただし先端ノードへの対応はまだ途上で、AMECも自社の主要製品を作るためには部品の4割ほどを輸入に頼っており、完全な自給自足にはまだ課題が残っています。

CVD装置は技術の核心が「気体制御」にあり、露光装置のような超精密光学系が不要なため国産化が進みやすい構造にあります。帰国技術者による知識移転、国内に根付いたサプライチェーン、政府の強制的な調達要件の三つが重なり、28nm向け装置では量産段階に達しています。
成膜装置での先端ノードへの対応で必要なものは何か
28nmまでは通常のCVDが主力でしたが、それより先端のノードになると、CVDの後継技術であるALD(原子層堆積法)が不可欠になります。
2nm以降ではCVDだけでは要求を満たせない工程が増えており、FinFETからGAAへの移行に伴って側壁の完璧なコントロールが必須になるため、ALDが不可欠の存在になっています。
ALD装置の国産化率は「CVDより低い」が急追中
半導体製造装置の前工程における中国の国産化率は、2017年の4%から2025年には21%へと跳ね上がりました。ただし国産化の程度は装置の種類による差が大きく、PVD装置の国産化率は50%、エッチング装置も37%に達しています。
ALD装置単体の国産化率については公式な数値の開示が限られていますが、CVD装置と一体で急拡大している段階にあります。
中国のALD装置を牽引する「Piotech(拓荊科技)」
中国のALD・CVD装置分野で最も注目される専業メーカーがPiotechです。薄膜形成(CVD/ALD)に特化した装置メーカーで、NAURAやAMECと並ぶ重要企業として位置づけられており、国内で不足していた薄膜装置のギャップを埋める存在として3D NAND向けのALD装置に強みを持っています。
2010年4月に米国からの帰国技術者グループと中国科学院の共同で設立され、2015年には国家集積回路産業投資基金(大基金)などから投資を受けています。顧客はSMIC、華虹半導体、YMTCなど中国を代表するファウンドリ・メモリ大手が名を連ねています。
NAURAとSiCarrierも参入を加速
PiotechだけでなくNAURAもALD装置の製品ラインを拡充しています。NAURAはプラズマエッチング装置・PVD・CVD・SiC結晶成長炉装置・酸化拡散装置・アニーリング装置・ウェット洗浄装置など幅広い前工程装置を手がけており、その中にALD装置も含まれています。
さらにファーウェイが支援するSiCarrierもCVDとALD等の成膜装置を手がけており、「すべて量産可能」と説明員が明かすほど急速に製品化を進めています。
YMTC(長江存儲)が国産ALD装置の実証の場に
ALD装置の国産化が進む背景として、YMTCの存在が大きく作用しています。米国による規制強化でYMTCは米国からの半導体製造装置の輸入ができなくなり、2023年初めに中国国営投資会社3社から70億ドルの投資を受け、独自技術と中国製半導体製造装置で再起を図っています。
まず従来世代の3D NANDを生産して経験を重ね、その後先端3D NANDの生産に乗り出す方針とされています。3D NAND製造は多数のALD工程を必要とするため、YMTCの生産ラインが中国製ALD装置の量産実績積み上げの場となっています。
残る課題:前駆体と先端ノード対応
装置本体の国産化が進む一方、ALD固有の難題として前駆体(プリカーサー)の問題があります。ALD成膜では前駆体となる有機金属材料(プリカーサー)を真空チャンバー内に導入して基板表面に吸着させ、その後チャンバー内を排気して余剰分を除き、酸化・窒化させて薄膜を形成します。
異なるプリカーサーや酸化源がチャンバー内に残留すると膜質に悪影響を与えるため、パージ工程の精密な制御が極めて重要です。
この前駆体の高純度品は現状、米国や日本の材料メーカーへの依存度が高く、装置の国産化が進んでも材料面のサプライチェーンが断たれれば製造継続が困難になるという構造的な弱点が残っています。
また先端ロジックへの対応という観点では、シングルウェハCVD/PECVD分野では先端ロジック・メモリの量産で米系大手が強く、バッチLPCVD/ALD分野では垂直炉などの多数枚同時処理で日系勢が膜厚均一性・歩留まり・CoO(装置保有コスト)で優位に立っています。
GAA(ゲートオールアラウンド)トランジスタなど最先端ロジックに必要な高精度ALDについては、ASMインターナショナルや東京エレクトロン、Applied Materialsが依然として大きな技術的優位を持ち、中国勢はその域に達するには至っていません。
ALD装置の国産化は「3D NAND向け成熟ノード」という限定的な領域では実用レベルに近づきつつありますが、先端ロジック・先端メモリに必要な高精度ALD、GAAトランジスタ向けの超薄膜制御、前駆体の国内調達という三つの壁が依然として立ちはだかっています。

中国のALD装置国産化はPiotechを中心にYMTCの3D NAND向けで実用段階に入りつつあります。しかし先端ロジック向けの高精度ALD、GAA対応、前駆体の国内調達という三つの課題が残り、ASMインターナショナルなどトップメーカーとの技術差は依然大きい状況です。

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