この記事で分かること
ASMPTのTCB装置:FIREBIRDの特徴
ナノ単位駆動に加え、加熱時の熱膨張やツールの傾きをリアルタイムで自動補正する制御機構により、サブミクロン級の高精度位置合わせを実現します。
BESIのTCB装置:9800 TCの特徴
±0.5μm以下の超高精度アライメントと毎秒400℃超の急速昇降温が特徴です。局所N2雰囲気での酸化防止機能や微小~高荷重の精密制御を備え、先端チップレット等の超微細ピッチ実装で高い歩留まりを誇ります。(102字)
FIREBIRDと9800 TCの性能差
FIREBIRDは高いスループットと量産実績を誇り2.5D実装等に強みを持ちます。一方、9800 TCシリーズは位置精度±0.5μm以下と毎秒400℃超の急昇降温性能で勝り、より微細なピッチの圧着に適します。
半導体パッケージ基板:TCB装置 1
パッケージ基板とは、半導体チップ(ダイ)を載せ、マザーボードなどのメイン基板に接続するための中継基板のことです。半導体チップは非常に微細な端子を持ち、そのまま一般的なプリント基板(PCB)に直接実装することは極めて困難です。
そこでチップとマザーボードの間に介在し、電気信号を橋渡しする役割を持つのがパッケージ基板です。
従来の半導体の微細化による性能向上が限界に近づく中、半導体の先端パッケージング技術であるビルドアップ多層構造による高密度・微細配線が求められ、半導体性能向上の新たな競争軸となっています。
前回は熱圧着(TCB)による実装に関する記事でしたが、今回はTCB装置メーカー、特に大手メーカーの特徴に関する記事となります。
FIREBIRDの特徴は何か
ASMPTの「FIREBIRD」は、2.5D/3Dパッケージングやチップレット実装向けに設計された先端TCB(熱圧着)ボンディング装置のフラッグシップモデルです。主な特徴は以下の通りです。
1. サブミクロン級の超高精度アライメント
微細化が進むマイクロバンプ(接続ピッチ30μm以下)に対応するため、±1.0μm以下の極めて高い位置決め精度を備えています。高度な光学画像認識と軸制御により、接合時の熱影響下でも高精度な位置合わせを維持します。
2. 精密な熱・荷重(フォース)プロファイル制御
急速加熱・急速冷却に対応した加熱機構と高応答な荷重制御アクチュエータを搭載。数ニュートン程度の微小な荷重から高荷重までをリアルタイム制御し、薄型ダイ(チップ)の割れや変形を防ぎながらはんだを確実に溶融・固化させます。
3. リアルタイムな面傾き(コプラナリティ)補正
加圧・加熱中に発生するツールやチップの微小な傾きをリアルタイムで検知・アクティブ補正します。チップ全体のバンプに均一な圧力を加えることで、接合不良(未接合や隣接端子とのショート)を低減します。
4. 量産ライン向けの高スループット設計
TCB装置の弱点とされてきた処理速度(タクトタイム)を克服するため、搬送系やアライメント動作の高速化、効率的な温調サイクルを採用し、ファウンドリやOSATの量産に適した生産性を実現しています。
5. 多彩な接合プロセス(NCF / CUF)への適応性
非導電性フィルム(NCF)を挟み込んで圧着するプロセスや、圧着後に液体樹脂を流し込むキャピ ラリーアンダーフィル(CUF)プロセスなど、先端パッケージの多様なフローに対応します。
TSMCのCoWoSに代表される2.5Dインターポーザ実装や、先端ロジック・HBMの積層工程において、世界中の大手ファウンドリやOSATで業界標準機の一つとして広く導入されています。

ASMPTの「FIREBIRD」は2.5D/3D実装向け先端TCB装置です。サブミクロン級の超高精度な位置合わせ、精密な熱・荷重制御、傾き補正機能を備え、薄型チップの破損や反りを抑えて高い生産性を誇ります。
どのように超高精度アライメントを実現しているのか
TCB装置(FIREBIRDなど)におけるサブミクロン級の超高精度アライメントは、単に「カメラで見て合わせる」だけでなく、光学・熱・機構・制御の4つの領域を統合することで実現しています。
1. 両面同軸光学アライメント(Look-Up / Look-Down)
- 同時撮像: チップを吸着したツールの下と基板の間に専用の二重視野カメラ(上下同時撮像光学系)を割り込ませます。
- 直接比較: チップ下面のアライメントマークと基板上面のマークを同一光軸上で一度に撮影・解析することで、レンズの歪みや機械的な移動誤差を排除し、両者の相対位置をミリ秒単位で算出します。
2. 熱膨張のアクティブ予測・補正(Thermal Drift Compensation)
- 熱変形の打ち消し: ツールが数百℃まで加熱されると、金属やセラミックの熱膨張により、ツール先端の位置がミクロン単位で伸びたり傾いたりします。
- リアルタイム補正: ツール内部の温度センサーと位置エンコーダのデータを元に、膨張量をリアルタイムで計算。膨張する動きと逆方向へステージをナノメートル単位で微駆動(オフセット)させて位置ズレを打ち消します。
3. ナノメートル分解能の駆動機構
- ガタつき(バックラッシュ)の排除: 移動軸にはボールねじではなく、摩擦のないリニアモーターやエアベアリング(空気圧浮上)を採用しています。
- 超高分解能エンコーダ: ナノメートル(nm)単位の分解能を持つスケール(位置読み取り機構)を搭載し、目標位置に対してミリ秒以下の応答速度で追従・静止させます。
4. 接触時の横滑りを防ぐ「チルト(平行度)補正」
- 面接触の均一化: チップと基板がわずかでも斜めに接触すると、加圧時にチップが横方向へ滑ってバンプがズレます。
- ピエゾアクチュエータ制御: 接触直前にピエゾ(圧電素子)を用いてツールの傾き(3次元の角度)をミクロン精度で平行に調整し、垂直方向のみに正しく加重がかかるように制御します。
「正確に位置を認識し、加熱による変形をリアルタイムで相殺しながら、ナノメートル単位で垂直に押し込む」というフィードバック制御を圧着の一瞬(数秒以内)の間に行うことで超高精精度を維持しています。

上下同時撮像カメラによるマークの直接比較、リニアモーターによるナノ単位駆動に加え、加熱時の熱膨張やツールの傾きをリアルタイムで自動補正する制御機構により、サブミクロン級の高精度位置合わせを実現します。
BESIのTCB装置の特徴は何か
BESI(Besi Semiconductor Industries)のTCB装置(代表モデル:9800 TC / 9800 TC next)は、先端チップレットや2.5D/3Dパッケージング領域向けに設計された業界屈指の超高精度実装システムです。主な特徴は以下の通りです。
1. サブミクロン級(±0.5μm)の超高精度アライメント
- 業界最高峰の位置決め精度: XY軸のアライメント精度において 0.5 µm @3σ(高分解能ビジョンシステム)を実現しています。狭ピッチ化が進むマイクロバンプやチップレット接続において圧倒的な歩留まりを誇ります。
2. 超高速な昇・降温とリアルタイム熱制御
- 急速加熱・急速冷却: ボンドヘッドの昇温速度は 400℃/秒以上、降温速度は 75℃/秒以上 と非常に高速です。温度均一性(±1℃)を高精度に維持し、短いサイクルタイムで正確なはんだ溶融・固化プロセスを実行します。
3. 極小~超高荷重までカバーする精密フォース制御
- 広範な加重制御レンジ: 微小な荷重制御(-15 N〜2 Nでの±0.1 N精度)から、最大500 N(オプションで1 kNまで拡張可能)の高荷重まで対応します。25μm以下の極薄ダイの割れを防ぎつつ、70×70mm級の大型ダイにも対応可能です。
4. 微小N2(窒素)インナートチャンバー
- 酸化の防止とガス代削減: 接合部周囲のみを限定的に不活性ガス(N2)環境(酸素濃度100 ppm以下)に保つ小型チャンバーを搭載。バンプの酸化を防いで接合信頼性を向上させると同時に、窒素消費量を最小限に抑えます。
5. 高度なチルト(傾き)補正と面均一性
- 面傾き制御(< 1μm): 接合時の傾き(チルト)を1μm以下に抑え、大型ダイ全体に配置された数千~数万個のマイクロバンプへ均一に熱と加重を伝達します。
6. ハイブリッドボンディング領域への技術的連続性
BESIはアプライド・マテリアルズ(Applied Materials)等との提携を通じ、TCB(熱圧着)からさらに次世代のハイブリッドボンディング(直接接合)に至るまで、先端パッケージングの超高精度実装技術をリードしています。

±0.5μm級の超高精度アライメントと、毎秒400℃以上の超高速昇降温性能を備えます。微小から高荷重まで対応する荷重制御や局所N2雰囲気による酸化防止機能により、先端実装で極めて高い歩留まりを実現します。
FIREBIRDと9800 TC / 9800 TC nextの性能差はどこにあるのか
ASMPTのFIREBIRDが「高い量産スループットと包括的なプロセス適応力」に優れるのに対し、BESIの9800 TC / 9800 TC nextは「±0.5μm以下の超高精度と超高速な温調性能」に特化している点が最大の性能差です。
| 比較項目 | ASMPT FIREBIRD | BESI 9800 TC / 9800 TC next |
| 位置決め精度 | ±1.0 μm 前後 | ±0.2 ~ 0.5 μm(超高精度) |
| 昇降温スピード | 高速(量産バランス重視) | 昇温 >400℃/秒、降温 >75℃/秒(極めて高速) |
| 環境制御(酸化防止) | 標準的なN2パージ対応 | 局所N2インナートチャンバー(O2 < 100ppm) |
| 荷重制御範囲 | 広範な荷重を精密制御 | 微小荷重(-15N〜)〜 最大1kN |
| 得意領域・強み | ファウンドリ・OSATでの大量生産性(高UPH) | 超微細ピッチ・先端チップレット実装 |
1. アライメント精度と微細ピッチ対応力の差
- BESI (9800 TC next): ±0.5μm以下の精度を誇り、将来のハイブリッドボンディング領域に近い超微細ピッチ(20μm以下)のチップレット接合で圧倒的な歩留まりを実現します。
- ASMPT (FIREBIRD): ±1.0μmレベルの精度を維持しつつ、実量産ラインでの安定性と処理スピードを極限まで高めています。
2. 熱サイクル(昇降温)と歪み制御の差
- BESI: 毎秒400℃を超える急昇温と急速冷却により、加熱時間を最短化して熱拡散やチップの不要な膨張・歪みを最小限に抑えます。
- ASMPT: リアルタイムなコプラナリティ(傾き)補正と安定した熱プロファイルにより、大型ダイや複数積層時の接合不具合を防ぎます。
3. 量産実績とエコシステムにおける立ち位置
- FIREBIRD: TSMCのCoWoSをはじめとする2.5D/3Dパッケージの量産ラインで標準機として深く組み込まれており、稼働実績とスループット面で強みを持ちます。
- 9800 TC next: ウルトラハイエンドのロジックや次世代メモリ等、より厳しい歩留まり・精度条件が求められる最先端プロセスで採用が進んでいます。

FIREBIRDは高い生産性と量産実績を強みに2.5D実装等に広く採用されています。一方、9800 TCシリーズは位置精度±0.5μm以下の超高精度と毎秒400℃超の急速昇降温を備え、超微細ピッチ実装に特化します。


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