ペロブスカイト太陽電池の耐久性向上

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この記事で分かること

ペロブスカイト太陽電池の耐久性向上

 東芝、信越化学工業、新潟大学は3者連携により、耐久性能を先行品の1.5倍(世界最高水準)に引き上げた次世代ペロブスカイト太陽電池の開発成功を発表しています。

 ペロブスカイト太陽電池の最大の課題であった「水分や光による物理的・化学的劣化の早さ」を大幅に克服し、耐久性能で世界最高水準に達しました。

 今回の発表は大規模量産で先行する中国メーカーに対し、日本勢は「超長寿命・高信頼性」という品質面で対抗するという姿勢を示す一例となっています。実用化に向け、2030年代の市場投入を目指しています。

ペロブスカイト太陽電池とは何か

 ペロブスカイト太陽電池は、「ペロブスカイト」と呼ばれる結晶構造を持つ材料を発電層(光を吸収して電気に変える層)に使用した次世代の太陽電池です。2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授らの研究グループによって発案・開発されました。

主な特徴

  • 軽くて曲げられる(高い設置性):フィルムなどの薄い基板の上に形成できるため、従来のシリコン型太陽電池では設置が難しかった耐荷重の低い屋根、ビルの壁面、曲面構造などにも設置可能です。
  • 低温・印刷技術による低コスト製造:液体の塗料を塗って乾燥させる「印刷」に近いプロセスで製造できるため、高温での結晶育成が必要なシリコン型に比べて製造エネルギーとコストを抑えられます。
  • 国産資源(ヨウ素)の活用:主原料であるヨウ素は、日本が世界シェアの約3割(世界第2位)を占める数少ない国産鉱物資源です。原料供給を海外に依存せず国内調達できる強みがあります。

従来のシリコン型太陽電池との比較

項目ペロブスカイト太陽電池シリコン系太陽電池
形状・重量極薄・軽量・曲げられる重い・固い(ガラス基板保護が必要)
主な設置場所ビル外壁、耐荷重の弱い屋根、曲面住宅屋根、平地(メガソーラー)
製造プロセス塗布・塗工(低温)高温溶解・シリコンウエハ加工
原料ヨウ素など(日本で自給可能)高純度シリコン(主に中国に依存)

現在の課題と対応

 水分や熱、光によって劣化しやすい「耐久性」が長年の課題でしたが、封止材(水分遮断材料)の改良や塗布プロセスの最適化により長寿命化が進んでいます。

ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造の材料を発電層に使う次世代太陽電池です。薄く軽いため曲げられ、ビルの壁面や耐荷重の低い屋根にも設置可能です。液体を塗布して安く製造でき、主原料のヨウ素を国内調達できるのも強みとなっています。

なぜ水で分解してしまうのか

 代表的なペロブスカイト材料(CH₃NH₃PbI₃ など)が水分で分解する理由は、結晶の中に「水と結びつきやすい有機成分」が含まれており、侵入した水分子によって結晶構造が不可逆的に破壊されるためです。

分解が進むメカニズム

  • 1. 有機成分の高い吸湿性結晶の中央にある有機イオン(メチルアンモニウムイオン:CH₃NH₃⁺)は塩(えん)の性格を持ち、水分子(H₂O)を引き寄せる強い性質があります。
  • 2. 水和物の形成による構造破壊水分子が結晶内部に入り込むとイオン間の結合が弱まり、水和物(CH₃NH₃PbI₃・H₂O)へ変化して本来の規則正しい立体構造が歪みます。
  • 3. 不可逆な化学分解さらに水が存在すると完全に分解が進行し、光を吸収して発電する黒色のペロブスカイトが、発電能力のない黄色のヨウ化鉛(PbI₂)へと変質します。

化学分解の反応式

 CH₃NH₃PbI₃(ペロブスカイト・黒色)+ H₂O → PbI₂(ヨウ化鉛・黄色)+ CH₃NH₂(メチルアミン・気体)+ HI(ヨウ化水素)

 副産物であるメチルアミン(CH₃NH₂)が気体となって外部へ抜け出てしまうため、一度分解すると二度と元のペロブスカイト結晶には戻りません。

 このため、信越化学などの封止技術で水分子の侵入を徹底的に防ぐことが長寿命化の鍵となります。

結晶内の有機成分が水分子を引き寄せやすいため。水が侵入すると結晶構造が破壊され、発電能力のないヨウ化鉛などへ不可逆的に分解してしまいます。分解時に副生成物が気体となって抜けるため、元に戻らなくなるのが原因です。。

どのように耐久性を先行品の1.5倍に向上したのか

 寿命(耐久性)を1.5倍に伸ばした最大の要因は、「外部からの侵入物を完全に防ぐ封止材料」「内部の結晶欠陥を減らす製膜プロセス」の相乗効果にあります。

水蒸気と酸素を徹底遮断する高機能封止材(信越化学・新潟大学)

 ペロブスカイト結晶は水分と反応すると瞬時に分解・消失する弱点があります。信越化学の合成・樹脂技術をベースに、透湿性(水分の通しやすさ)を極限まで低減した特殊なシリコーン系・高分子封止材を開発しました。太陽電池モジュールの端部や界面からの水蒸気・酸素の浸入をシャットアウトします。

界面密着性の向上による剥離防止

 屋外の昼夜の寒暖差で各層が膨張・収縮する際、発電層と保護層の間に隙間が生じるとそこから劣化が進みます。新開発の封止技術では各層間の密着度を飛躍的に高め、熱ストレスによる微細なひび割れや剥離(メカニカルストレス)を極小化しました。

塗布プロセスの最適化による膜の高品質化(東芝)

 東芝独自の精密塗布技術により、ペロブスカイト層を隙間なく均一に形成。膜内部のミクロな結晶欠陥やムラを徹底的に排除しました。欠陥を減らすことで、光照射や熱によって結晶内部のイオンが動いてしまう「イオン移動(劣化の主原因)」の発生を低減させています。

 外部からの劣化要因(水・酸素・熱)の遮断と、内部構造の欠陥低減を同時に達成したことが、世界最高水準の長寿命化につながっています。

信越化学と新潟大学が開発した極めて透湿性の低い高機能封止材で水蒸気や酸素の侵入を徹底遮断しつつ、東芝の精密塗布技術で結晶欠陥を低減しました。外因遮断と内部構造の高品質化により劣化を抑え長寿命化を実現しました。

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