半導体パッケージ基板:超低粗化での密着性向上

半導体パッケージ基板のイメージ画像 半導体パッケージ基板

この記事で分かること

半導体パッケージ基板:超低粗化での密着性向上

 パッケージ基板とは、半導体チップ(ダイ)を載せ、マザーボードなどのメイン基板に接続するための中継基板のことです。半導体チップは非常に微細な端子を持ち、そのまま一般的なプリント基板(PCB)に直接実装することは極めて困難です。

 そこでチップとマザーボードの間に介在し、電気信号を橋渡しする役割を持つのがパッケージ基板です。

 従来の半導体の微細化による性能向上が限界に近づく中、半導体の先端パッケージング技術であるビルドアップ多層構造による高密度・微細配線が求められ、半導体性能向上の新たな競争軸となっています。

 前回はラミネートの前処理に関する記事でしたが、今回はCZ処理に変わる低粗化タイプによる密着性向上に関する記事となります。

超低粗化タイプでの表面処理とは何か

 超低粗化タイプとは、高周波・高速通信対応の基板において、銅配線表面の凹凸(粗さ)の深さをナノメートルレベル(Ra < 0.1μm)にまで極限まで小さく制御した表面処理技術(およびその処理液・銅箔)のことです。

 従来の粗化処理がアンカー効果(物理的なひっかかり)を出すために深い凹凸を作っていたのに対し、超低粗化タイプは「表面を平滑に保ったまま密着させる」ことを目指した技術です。

従来の粗化タイプとの違い

項目従来の粗化タイプ超低粗化タイプ
算術平均粗さ(Ra)約 0.3 ~0.5μm 以上約 0.1μm以下(数~数十nm)
主な密着メカニズム強力な物理アンカー効果(くさび効果)微細アンカー + 化学結合(有機膜・接合剤)
高周波特性(伝送損失)凹凸での電流迂回により損失が大きい平坦に近く表皮効果による抵抗・損失が極小
微細回路への対応力銅のエッチング量が大きく微細配線が崩れる銅を極少量しか削らないため極微細配線(L/S)が可能

超低粗化タイプが必要とされる2つの理由

  1. 表皮効果による伝送損失の抑制
    5G/6G、AIサーバーなどで使われる数GHz〜数十GHzの高周波領域では、電流が表面の極めて薄い層(数百ナノメートル)しか流れません。超低粗化タイプにすることで電流の通り道が直線的になり、高周波における導体抵抗を最小限に抑えられます。
  2. 微細配線(再配線層:RDL)の形成
    半導体パッケージの進化に伴い、配線幅や配線間隔(Line/Space)が数マイクロメートルレベルまで細くなっています。従来の処理のように銅を深く溶かすと配線自体が細り切れてしまうため、削る量を最小限に抑える超低粗化処理が必須となります。

密着性を落とさない工夫(化学密着の併用)

 凹凸を小さくすると物理的なアンカー効果が弱まり、絶縁樹脂(ABF等)が剥がれやすくなるという課題が生じます。

 これを克服するため、超低粗化タイプではシランカップリング剤や有機密着向上剤(AP:Adhesion Promoter)などの化学薬品を併用します。銅表面と樹脂の間に化学結合(分子レベルの架橋構造)を張り巡らせることで、「鏡面のように平らでありながら剥がれない」密着性を実現しています。

超低粗化タイプとは、高周波基板において銅表面の凹凸をナノレベルまで極限まで抑える表面処理技術です。表皮効果による抵抗・伝送損失を減らしつつ、化学結合等を併用して高い平滑性と樹脂密着性を両立させます。

なぜ高周波信号では表面の抵抗が重要になるのか

 高周波信号において表面の抵抗(伝送損失)が極めて重要になるのは、電流が導体の表面付近に集中して流れる「表皮効果(Skin Effect)」という現象が発生するためです。

1. 表皮効果が発生するメカニズム

導体に電流が流れると、その周囲や内部に磁界が発生します。

  1. 電流の変化と自己インダクタンス
    高周波信号(交流)では電流の向きと大きさが激しく変化するため、導体内部に誘導起電力(逆起電力)が生じます。
  2. 中心部での抵抗(インピーダンス)増大
    導体の「中心部」ほど取り囲む磁束が多くなるため、自己インダクタンスが非常に大きくなり、電流の流れを妨げる力(逆向きの渦電流)が強く働きます。
  3. 表面への電流移動
    その結果、電流は磁束の影響が最も少ない「導体の表面(表皮)」を優先して流れるようになります。

2. 周波数と電流の流れる厚み(表皮深さ)

 電流が表面からどのくらいの深さまで流れるかを表す指標を表皮深さ(Skin Depth: δ)と呼びます。

 表皮深さは周波数(f)、導体率(σ)、透磁率(μ)を用いて次の公式で表されます。

  δ = √(1/πfσμ)

 周波数が高くなればなるほど表皮深さ δは急激に薄くなります。

  • 1 MHz(ラジオ波程度):表皮深さ 約 66 μm
  • 1 GHz(スマホ4Gなど):表皮深さ 約 2.1 μm
  • 10 GHz(5G / 高速基板):表皮深さ 約 0.66μm(660 nm)
  • 28 GHz(ミリ波通信):表皮深さ 約 0.39 μm (390 nm)

 周波数が高くなると、厚みのある銅配線であっても表面の数百ナノメートルという極めて薄い層しか電流の通り道として使えなくなり、実質的な電気の断面積が小さくなるため抵抗が跳ね上がります。

3. 表面の「凹凸(粗さ)」が引き起こす問題

 電流が表面の超薄膜層に集中することで、銅配線の表面状態が直接信号に悪影響を及ぼします。

  • 実質的な配線距離の延伸
    密着性を高めるための微細なアンカー凹凸(数マイクロメートル)が存在すると、表皮深さ(数百ナノメートル)の方が小さいため、電流は凹凸の谷や山に沿って曲がりくねりながら進むことになります。直線距離よりもはるかに長い距離を走らされるため、導体抵抗が増大します。
  • 高周波エネルギーの減衰(伝送損失)
    抵抗の増加によって信号のエネルギーが熱として失われ(導体損失)、高速なデータ通信で信号波形が鈍ったり情報が途切れたりする原因となります。

 このため、5G/6Gやミリ波通信といった高周波回路基板では、表面抵抗と伝送損失を抑えるために、「銅表面の凹凸を極限まで減らした超平滑な銅箔」や「表面を荒らさずに密着させる無粗化処理」が不可欠となります。

高周波信号では「表皮効果」により電流が導体の極めて薄い表面層に集中して流れるためです。表面に凹凸があると電流が沿うように迂回して実質的な配線長が増加し、抵抗が跳ね上がって大きな伝送損失を引き起こします。

超低粗化タイプとCZ処理はどのように使い分けられるのか

 高周波(信号損失対策)目的でなくても、「配線の微細化(ファインピッチ化)」や「ショート・断線の防止」を目的として超低粗化タイプが使用されます。

 一方で、配線幅が十分に広くコスト重視の一般的な基板では、今でも従来の「粗化タイプ」が主流です。

高周波以外で超低粗化タイプが使われる主な理由

  • 配線の断線防止(回路の超微細化)
    スマートフォンや先進半導体向けなどで配線幅・間隔(L/S)が数マイクロメートルレベルに細くなると、従来の粗化処理のように銅を深削りする加工では配線が溶けて細り、断線してしまいます。超低粗化なら配線形状を損なわずに処理できます。
  • 回路間のショート防止(シード層のフラッシュエッチング性)
    SAP(セミアディティブ工法)などで不要な薄い銅めっき(シード層)を薬品で溶かして除去する際、表面が深い凹凸だと凹部に銅が残りやすく短絡(ショート)の原因になります。平滑な超低粗化表面であれば、シード層を均一かつスムーズに除去できます。
  • 絶縁信頼性(CAF耐性)の向上
    配線同士の距離が近づくと、凹凸の尖った部分に電界が集中し、銅イオンが樹脂中を伸びてショートを引き起こす「イオンマイグレーション(CAF)」の起点になりやすくなります。表面を平滑にすることで電界集中を防ぎ、絶縁信頼性を高められます。

用途による使い分け

タイプ主な用途採用する主なメリット
超低粗化タイプ高周波通信基板、先端パッケージ基板(CPU/GPU等)、モバイル用微細基板低伝送損失、超微細回路の形成、ショート・断線防止
従来の粗化タイプ一般家電、車載(一部)、電源基板、大電流・広配線幅の基板安価な処理コスト、物理アンカーによる強力な接着信頼性

高周波用途以外でも、配線の微細化による断線防止、ショート防止、絶縁信頼性の向上などを目的に使用されます。ただし、配線幅が広くコスト重視の一般的な基板では、現在も従来の粗化タイプが主流です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました