東邦亜鉛、亜鉛の一次製錬からの撤退と新事業

金属の精錬、加工のイメージ画像 エネルギー関連

この記事で分かること

亜鉛の一次製錬

海外鉱山から採掘された天然の亜鉛鉱石を原料とし、化学処理や電気分解を経て高純度亜鉛地金を抽出・生産する事業です。スクラップ等を扱う二次製錬に対し、天然資源から素材を創出する基幹産業を担います。

鉛・レアメタルのリサイクル

使用済みバッテリーや電子基板等の廃棄物を「都市鉱山」として回収し、独自の技術で高純度な鉛やレアメタルを抽出・再利用する事業です。海外鉱石に依存せず国内で資源を循環させる持続可能なモデルです。

使用済み鉛蓄電池からの鉛回収

バッテリーを破砕して樹脂や電解液と分離後、鉛成分を還元炉で溶融して粗鉛を取り出します。これを精錬工程で不純物を取り除いて精製し、高品質な再生鉛地金として固め、再び新品原料へ循環させます。

東邦亜鉛、亜鉛の一次製錬からの撤退と新事業

 東邦亜鉛は、創業以来の主力事業であった亜鉛の一次製錬(天然鉱石からの製錬)および海外鉱山開発(資源事業)からの完全撤退を進めており、鉛・銀の製錬、亜鉛リサイクル、ならびにレアメタルの回収を中心とした資源循環型(サーキュラーエコノミー)ビジネスへと急速に構造改革を進めています。

 鉱石依存度を下げ、使用済みの鉛蓄電池(自動車バッテリー等)などのリサイクル比率を大幅に向上。また、製錬工程で得られる副産物(や、ビスマス・アンチモンといったレアメタル)の自社回収体制を強化し、収益源の最大化を図っています。

亜鉛の一次製錬とはどんな事業なのか

 亜鉛の一次製錬とは、地中から掘り出した天然の鉱石(鉱山から採掘された亜鉛精鉱)を原材料とし、化学・電気的処理を経て純度の高い金属亜鉛(地金)を抽出・生産する事業のことです。

 金属スクラップや使用済み製品からリサイクルして抽出する「二次製錬」と対比される、いわゆる「資源からの素材づくり」を担う基幹産業です。

1. 一次製錬の具体的な工程

 亜鉛の一次製錬は、主に湿式製錬(電解法)という方法で行われます。

  1. 買鉱(原材料の仕入れ)主に海外の鉱山から、選鉱されて粉末状になった「亜鉛精鉱(硫化亜鉛)」を輸入します。
  2. 焙焼(ばいしょう)鉱石を高温で焼き、硫黄分を取り除いて「酸化亜鉛」にします。このとき発生する二酸化硫黄から副産物として「硫酸」を製造・販売します。
  3. 浸出・浄液酸化亜鉛を硫酸溶液に溶かし、含まれている鉄・銅・カドミウム・鉛などの不純物を化学処理で取り除きます。
  4. 電解採取高純度になった硫酸亜鉛溶液に大きな電流を流し、電極(陰極)に純度99.99%以上の高純度亜鉛を付着・析出させます。
  5. 鋳造析出した亜鉛を溶かして固め、自動車の防錆鋼板やダイカスト部品、メッキ用原料などの「亜鉛地金インゴット」として出荷します。

2. どのように利益を出すビジネスなのか

 一次製錬会社の収益構造は、単に「亜鉛を売る価格」だけで決まるわけではありません。主な収入源は以下の3つです。

  • 溶錬費(TC:Treatment Charge)鉱山会社から鉱石を買い取る際、「加工代」として差し引く手数料。鉱石の需給バランスによって毎年(またはスポットで)変動します。
  • フリーメタル(金属ゲイン)技術力を高めて鉱石から理論値以上に効率よく亜鉛を回収したり、精錬過程で得られる副産物(銀、インジウム、鉛、硫酸など)を売却して得られる利益。
  • 価格・為替マージンLME(ロンドン金属取引所)での亜鉛市況価格や、ドル建て取引に伴う為替変動(円安効果など)。

3. なぜ事業として苦戦しやすいのか(構造的課題)

 東邦亜鉛をはじめとする国内一次製錬事業が撤退・縮小に追い込まれた背景には、自社でコントロールできない外部環境への極端な依存があります。

  • TC(加工代)の低迷:世界的に鉱石が不足したり、中国などの巨大精錬プラントが増設されると、鉱石の奪い合いが起きて加工代(TC)が暴落し、精錬すればするほど赤字になる構造に陥ります。
  • 莫大な電気代:電解採取工程で大量の電力を消費するため、近年の世界的なエネルギー価格高騰や電気代高騰が直撃します。
  • 設備維持コストと環境対応:巨大な高炉・電解工場を維持するための固定費や脱炭素(CO2排出削減)対応コストが重くのしかかります。

 現在多くの非鉄金属メーカーは、リスクの大きい「天然鉱石からの一次製錬」から、原材料調達が安定しており環境負荷も低い「廃棄物・使用済み製品からのリサイクル(二次製錬・回収)」へと事業構造を急速に切り替えています。

鉱山から採掘された天然の亜鉛鉱石を原料とし、化学処理や電気分解を経て高純度の亜鉛地金を抽出・生産する事業です。金属スクラップ等を扱うリサイクル(二次製錬)に対し、天然資源からの素材づくりを担います。

鉛・レアメタルの、リサイクルはどんな事業なのか

 鉛やレアメタルのリサイクル事業(二次製錬)とは、使用済みの製品や産業廃棄物を「都市鉱山」として集め、独自の冶金(やきん)・化学技術で高純度な金属として抽出・精製し、再び産業界へ供給する資源循環型の素材ビジネスです。

1. 主な原料(どこから集めるのか)

 天然の鉱石ではなく、国内で発生する各種廃棄物が原料となります。

  • 鉛の原料: 自動車や産業用フォークリフト、非常用電源などで使われた使用済み鉛蓄電池(バッテリー)が中心です(回収率は90%以上と非常に高水準)。
  • レアメタル・貴金属の原料: 電子基板(E-waste)、半導体・液晶の製造スクラップ、工場からの廃液・排ガスダスト、他金属の製錬工程で生じる副産物(スラグ等)から回収します。

2. 収益モデル(どうやって稼ぐのか)

 収益の構造は主に以下の2つから成り立ちます。

  • スクラップの集荷・処理収入: 廃棄物処理費(引き取り手数料)を受け取るか、あるいは価値のあるスクラップを市場価格で買い付けます。
  • 再生金属・高機能材料の売却: 精製した鉛地金をバッテリーメーカー等へ売却するほか、工程内で抽出した銀・ビスマス・アンチモン・インジウムなどのレアメタル・貴金属を電子部品や化学メーカーへ高く売却することで利益(金属ゲイン)を最大化します。

3. 一次製錬(天然鉱石)と比較した強み・特徴

 鉱山から掘り出す一次製錬に対し、リサイクル事業には以下の決定的な優位性があります。

  • 資源としての濃度(品位)が高い: 天然の鉱石に含まれる金属量は数%以下ですが、バッテリーや電子基板などの廃棄物は金属濃度が数倍〜十数倍高いため、極めて効率よく金属を抽出できます。
  • 省エネ・脱炭素(CO2削減): 鉱山の掘削や長距離の海上輸送が不要で、溶融に必要なエネルギーも少ないため、CO2排出量を大幅に抑えられます。
  • 地政学リスクと海外市況からの自立: 海外鉱山の操業トラブルや鉱石買鉱条件(TC:加工代)の悪化に依存せず、国内の資源循環ルート(ループ)内で安定して事業を継続できます。

使用済みの鉛バッテリーや電子基板などの廃棄物を「都市鉱山」として回収し、独自の技術で高純度な鉛やレアメタルを抽出・再利用する事業です。海外鉱石に頼らず国内で資源を循環させる持続可能な素材ビジネスです。

使用済み鉛蓄電池からどのように鉛を回収するのか

 使用済み鉛蓄電池(自動車・産業用バッテリー)からの鉛の回収は、「物理的選別」「還元溶融」「精錬」という大きく4つの工程を経て行われます。構造が規格化されているためリサイクル効率が極めて高く、95%以上の鉛が再利用されます。

1.破砕・物理選別:ケース・電解液・鉛成分を物理的に分離

 使用済みバッテリーを機械で細かく破砕し、比重差や水流を利用して以下の3要素に分類します。

  • プラスチック(PP樹脂): 外枠ケース。洗浄・再ペレット化されて樹脂原料に。
  • 希硫酸(電解液): 中和処理して硫酸ナトリウム等として再利用または安全に排水。
  • 鉛成分: 鉛格子(金属鉛)と鉛ペースト(酸化鉛・硫酸鉛の粉末)。

2.還元溶融(製錬):約1000℃の高温炉で金属鉛を取り出す

 回収した鉛成分(特にペースト状の酸化鉛や硫酸鉛)にコークス(炭素)や熔剤を混ぜ、還元炉に入れ加熱します。化学反応によって酸素や硫黄を取り除き、溶けた液体状の「粗鉛(そえん)」を取り出します。

3.精錬・不純物除去:用途に合わせて純度99.99%まで向上

 粗鉛を精錬釜に移し、含まれている銅、錫、アンチモン、ビスマスなどの不純物を段階的に化学処理で分離・除去します。この工程で取り除かれた不純物は、レアメタルや貴金属の回収源として活用されます。

4.鋳造(インゴット化):再生鉛地金や鉛合金として製品化

 純度99.99%まで高めた「純鉛」、あるいは用途に応じてカルシウムやアンチモンを再添加した「鉛合金」を型に流し込み、インゴット(地金)として固めます。これが再び新品バッテリーの極板材料として出荷されます。

 廃バッテリーから回収された鉛は、ほぼそのまま新しいバッテリーの原料として循環するため、非常に省エネルギーかつ資源のムダがない「完全循環型のモデル」が確立されています。

使用済みバッテリーを破砕して樹脂や電解液と分離後、鉛成分を還元炉で溶融して粗鉛を取り出します。これを精錬工程で不純物と分離・精製し、純度の高い再生鉛地金として固め、再び新品の原料へと循環させます。

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