半導体パッケージ基板:CO2レーザー

半導体パッケージ基板のイメージ画像 半導体パッケージ基板

この記事で分かること

半導体パッケージ基板:CO2レーザー

 パッケージ基板とは、半導体チップ(ダイ)を載せ、マザーボードなどのメイン基板に接続するための中継基板のことです。半導体チップは非常に微細な端子を持ち、そのまま一般的なプリント基板(PCB)に直接実装することは極めて困難です。

 そこでチップとマザーボードの間に介在し、電気信号を橋渡しする役割を持つのがパッケージ基板です。

 従来の半導体の微細化による性能向上が限界に近づく中、半導体の先端パッケージング技術であるビルドアップ多層構造による高密度・微細配線が求められ、半導体性能向上の新たな競争軸となっています。

 前回はビアホールの役割やレーザー加工に関する記事でしたが、今回はCO2(炭酸ガス)レーザーに関する記事となります。

CO2(炭酸ガス)レーザーの特徴は何か

 CO2(炭酸ガス)レーザーは、炭酸ガス(CO2)を主とする混合ガスを媒質とし、遠赤外線領域である波長約10.6μm(基板加工用では9.3〜9.4μmも併用)の光を出射する代表的な気体レーザーです。

CO2レーザーの主な特徴

  • 非金属・樹脂材料に対する圧倒的な吸収率
    • 波長10.6μmの遠赤外光は、樹脂、プラスチック、ガラス、木材、紙などの有機物・非金属に非常によく吸収されます。照射したエネルギーがそのまま高効率に熱へ変わるため、高速な溶融・蒸発加工が可能です。
  • 高出力かつ高いエネルギー変換効率
    • 電気エネルギーからレーザー光への変換効率が10〜20%とレーザー機器の中でトップクラスに高く、大出力化が容易でランニングコストにも優れます。
  • 高速なスループット(処理スピード)
    • 熱による瞬時の気化作用を利用するため、加工速度が非常に高速です。電子基板分野では、1秒間に数千〜1万個以上のビアホールを高速開口する標準光源として定着しています。
  • 裸の金属表面では反射されやすい
    • 遠赤外の長波長光は、銅・アルミ・金などの表面で反射されやすい性質があります。そのため、基板の銅箔を直接掘る場合は超短パルス化や表面処理といった工夫(ダイレクト加工)が行われます。

主な用途

  • 電子・半導体基板: パッケージ基板(BGA等)やプリント基板における絶縁層(ABFやガラスエポキシ)の微細ビア穴あけ。
  • 産業・製造全般: 樹脂やアクリル板の切断、銘板へのマーキング(刻印)、ダンボールや布地の裁断、医療用レーザーメス。

樹脂や非金属への高い光吸収率と高出力・高効率な熱加工性が特徴です。熱で材料を瞬時に溶融・蒸発させるため、基板の高速穴あけや樹脂の切断に優れます。一方、裸の金属には反射されやすい特性を持ちます。

なぜABFに対して高い吸収率を持つのか

 CO2レーザーの光エネルギーが、ABF(味の素ビルドアップフィルム)を構成する「エポキシ樹脂(有機物)」と「シリカフィラー(無機物)」の分子結合の振動数とピッタリ一致して共鳴(赤外吸収)するからです。

高い吸収率を持つ3つの物理・化学的理由

  1. エポキシ樹脂(C-O結合)の共鳴
    • CO2レーザーから出る波長(約9.3〜10.6 μm)の赤外光は、ABFの主成分であるエポキシ樹脂中のC-O(炭素-酸素)結合やエーテル結合の伸縮・振動エネルギー領域と重なります。光の波長と分子の振動が一致(共振)することで、光エネルギーが効率よく分子に吸い込まれます。
  2. シリカフィラー(Si-O結合)の極めて高い吸収ピーク
    • ABFには熱膨張を抑えるために微細なシリカ粒子(SiO2)が大量に充填されています。シリカに含まれるSi-O(シリコン-酸素)結合は、特に波長9.3 μm付近で極めて強い吸収ピークを持ちます。そのため、基板加工用のCO2レーザー(9.3〜9.4 μm波長)はシリカにも直接強力に吸収されます。
  3. 熱エネルギーへの瞬間的変換
    • 光が共鳴吸収されると、分子の熱振動が劇的に増幅され、光エネルギーが瞬時に熱に変わります。これにより、樹脂とシリカフィラーが同時に一瞬で加熱・分解・蒸発(気化)するため、綺麗なビアホールが形成されます。

 裸の金属(銅など)は遠赤外線を鏡のように反射してしまいますが、ABFのような「有機樹脂+シリカ」の複合材料は、CO2レーザーの波長にとって最も光を吸収しやすい「黒い壁」のような状態になるため、高い吸収率を示します。

CO2レーザーの波長(約9.3〜10.6μm)が、ABFを構成するエポキシ樹脂やシリカフィラーの分子結合の振動数と共鳴(赤外吸収)するためです。光が瞬時に強力な熱に変わり、効率よく分解・蒸発させます。

基板のCO2レーザーの有力メーカーはどこか

 パッケージ基板向けのCO2レーザー加工機(レーザービア加工機)市場は、日系メーカー2社(三菱電機・ビアメカニクス)が世界シェアの過半数〜7割近くを占める独壇場となっています。

有力メーカーと特徴・シェア

  • 三菱電機(日本)
    • シェア:世界トップ(推定50%〜60%超)
    • 特徴: ビルドアップ基板・HDI基板向けCO2レーザー加工機の絶対的王者です。1秒間に7,000〜10,000穴以上を開ける超高速ガルバノスキャナ技術とパルス制御技術に強みがあり、世界中の大手基板メーカー(台湾・韓国・日本など)に圧倒的な導入実績を持ちます。
  • ビアメカニクス(Via Mechanics / 日本)
    • シェア:ハイエンド領域でトップクラス(推定20%〜30%)
    • 特徴: 旧・日立ビアメカニクス。PCやAIサーバー用の高層FC-BGAなど、最高難度のハイエンド半導体パッケージ基板向けで非常に強い支持を得ています。高精度な穴位置補正やガラスコア基板向けの次世代レーザー加工技術の開発でも業界をリードしています。
  • Han’s Laser(大族激光 / 中国)
    • 特徴: 中国最大のレーザー機器メーカー。中国国内の基板メーカー向けを中心に、コストパフォーマンスを武器に汎用〜中厚基板領域で急速にシェアを拡大しています。
  • MKS Instruments / ESI(米国)
    • 特徴: 超微細加工やUVレーザー分野に強みを持ちますが、パッケージ基板用レーザー加工機全般でも一定の市場シェアを有します。
  • LPKF Laser & Electronics(ドイツ)
    • 特徴:試作・研究用途や特殊材料向けレーザー加工に強みを持つグローバル大手です。

日系2社(三菱電機・ビアメカニクス)が世界市場を独占しています。圧倒的スピードと実績でトップシェア(過半)を誇る三菱電機と、AIサーバー等ハイエンドFC-BGA基板に強みを持つビアメカニクスが二大巨頭です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました