この記事で分かること

グンゼの次世代静電気対策糸
グンゼ株式会社は2026年10月8日、カーボン(炭素)や金属を一切使わない次世代の制静電気対策糸「STATAWAY(ステタウェイ)」を開発したと発表しました。
同社が長年培ってきた高機能プラスチックフィルムの樹脂成型加工技術を繊維開発に融合させることで、従来の静電気対策糸が抱えていた「色やデザインの制限」という大きな課題を解決しています。
静電気対策糸とは何か
静電気対策糸(制電糸・導電糸)とは、摩擦などで衣服や資材に溜まる静電気(帯電)を抑制し、効率よく外部へ逃がす機能を持たせた特殊な糸のことです。
静電気を抑える仕組み
静電気対策糸は、主に以下の2つのメカニズムで静電気を逃がします。
- 漏洩(導電): 糸自体が電気を通すルートとなり、衣服全体の静電気を人体や空間へ分散・接地側へ流す。
- コロナ放電: 糸の表面で微弱な放電(空気中の水分やイオンを解した放電)を起こし、静電気の中和を行う。
主な種類と特徴
| 種類 | 特徴 | 主な用途・長所 | 課題・短所 |
| カーボン混練・被覆系 | 合成繊維(ナイロンやポリエステル)に炭素(カーボン)を配合 | 高い導電性と耐洗濯性。作業着やクリーンウェアの定番 | 黒色〜灰色になるため、白や淡色の生地には使いにくい |
| 金属繊維・メッキ系 | ステンレス線や、糸の表面に銀・銅などの金属メッキを施したもの | 極めて高い制電・電磁波遮蔽効果 | 柔軟性やコスト、耐薬品性に制限がある |
| イオン導電・有機高分子系 | イオン導電性ポリマーなどの有機化合物を複合配置 | 白や鮮やかな発色が可能。デザイン性を重視する一般アパレル向け | 従来の金属・カーボン系に比べ高度な成形技術が必要 |
| 親水性(吸湿)タイプ | 繊維構造内に水分を保持しやすい親水性基を持たせたもの | 摩擦による帯電そのものを軽減 | 低湿度(乾燥した冬場など)では効果が低下しやすい |
主な用途
- 産業・作業用: 半導体・電子部品工場のクリーンウェア(静電気破壊防止)、石油・製薬現場の防爆服、医療用ガウン。
- 一般アパレル: 冬物のニット・アウター(着脱時のパチパチ防止、スカートのまつわりつき防止、花粉・ホコリの付着抑制)。
- 工業資材: 複写機・プリンターの静電気除去ブラシ、粉体輸送用フィルター、コンベアベルト。

静電気対策糸とは、摩擦で生じた静電気を高い導電性や空気中への放電により効率よく逃がす特殊な糸です。着脱時のパチパチ感やホコリ付着を防ぐ一般アパレルから、精密機器の帯電を防ぐ作業着まで幅広く使われます。
なぜプラスチックフィルムで放電できるのか
「プラスチックフィルムそのものが放電している」のではなく、「電気を通す特殊なプラスチック(イオン導電ポリマー)」を「フィルム加工で培った精密な成型技術」によって糸の中に正しく配置しているため放電が可能になっています。
一般的なプラスチックは電気を通さない「絶縁体」ですが、今回の技術では以下の2つの仕組みによって放電(制電)を実現しています。
1. 電気を通す「イオン導電ポリマー」の働き
カーボン(炭素)や金属を使わない代わりに、電気(電荷)を移動させられる「イオン導電ポリマー」という特殊な樹脂素材を使用しています。
- イオンの移動(導電): 衣服などに静電気が溜まると、ポリマー構造内のイオンが動くことで電荷が移動します。
- 空気中への放電(漏洩): 表面に到達した電荷は、空気中の水分などを介して微弱な放電(コロナ放電)を起こしたり外部へ逃げたりするため、静電気が中和されます。
このポリマー自体が透明〜無色に近いため、黒いカーボンや金属のように糸を黒ずませることがありません。
2. なぜ「フィルム技術」が必要なのか?(精密な配置)
イオン導電ポリマーは、単に繊維へ適当に混ぜ合わせるだけでは「電気の通り道」が繋がらず、高い効果が得られません。
ここで活用されたのが、グンゼがプラスチックフィルム事業で培ってきた「樹脂成型加工技術」です。
- 多層・積層成形: フィルムの製造では、厚さ数ミクロン単位で異なる種類のプラスチックを綺麗に重ね合わせる(積層する)技術が使われます。
- 繊維内での最適配置: この技術を糸の製造(紡糸)に応用することで、イオン導電ポリマーを繊維内部の「最も効率よく電気を逃がせる場所」に途切れなく、高精度に配置することに成功しました。
- 素材:黒くならない「イオン導電ポリマー」が電気を移動させて空気中に逃がす。
- 加工: 「フィルムの多層・精密成型技術」を使って、そのポリマーを糸の中にベストな形でレイアウトする。
この2つの組み合わせによって、「プラスチック技術を活用しながら、鮮やかな色のまま放電できる糸」が実現しています。

電気を通す無色の「イオン導電ポリマー」を使用しているためです。フィルム成型技術を応用してポリマーを糸の中に途切れなく精密配置することで、色の美しさを保ちながら静電気を空気中へ分散・放電させています。
静電気対策糸でのイオン導電ポリマー利用の利点は何か
静電気対策糸にイオン導電ポリマーを利用する主な利点は、「色の自由度」と「繊維本来のしなやかさ・加工性」を両立できる点にあります。
1. 鮮やかな色や白が出せる(デザイン性)
- 従来(カーボン・金属): 糸が黒ずんだり金属色になったりするため、白やパステルカラー、鮮やかな発色の生地には使えませんでした。
- プラスチック利用: 無色透明に近いため、染色を邪魔せず白や明るい色の生地にも自由に使えるようになります。
2. しなやかで軽やか(着心地・風合い)
- 金属繊維のようにゴワついたり重くなったりせず、一般的な合成繊維(ポリエステルやナイロンなど)と同等の柔らかさ・伸縮性・肌触りを維持できます。一般アパレル(ニットやカットソー)にも違和感なく採用できます。
3. 精密な加工と均一な品質(成型性)
- 糸のベース素材(ナイロン等)と同じ「高分子(プラスチック)」であるため馴染みが良く、フィルム技術などの精密な成型・複合技術を活用できます。これにより、導電成分を糸内部へ均一に配置でき、品質が安定します。
4. 錆びず、アレルギーの心配がない(耐久性・安全性)
- 耐錆・耐洗濯性: 金属のように汗や洗濯で酸化・劣化(錆び)することがなく、制電効果が長持ちします。
- 安全性: 肌に触れる衣服で金属アレルギーを起こすリスクがありません。
プラスチックの利用により、従来の静電気対策糸が抱えていた「黒くなる・硬くなる・劣化しやすい」という弱点を克服し、デザイン性と機能性を高次元で両立できるようになります。

無色透明に近いため糸が黒ずまず、白や鮮やかな発色が自由に表現できます。また金属のようにゴワつかず柔らかい風合いを保てるほか、汗や洗濯による錆びの心配がなく安全に使える点も大きな利点です。

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