この記事で分かること
装置の概要
「ワイヤボンダ」という自動化装置で行います。超高速・高精度に動くボンディングヘッド、電極位置を正確に捉える画像認識システム、基板を加熱・固定するステージ等で構成され、1秒間に数十本を配線します。
有力メーカー
米K&SとシンガポールのASMPTが世界シェアの大半を占める2大巨頭です。日本勢では、超高速制御に強みを持つヤマハ発動機(旧新川)や、EV等のパワー半導体向け太線装置で圧倒的な超音波工業などが有力です。
素材による装置の違い
金・銅用は球を作る放電装置と加熱が要り、特に銅は酸化を防ぐガス供給機構が必須です。一方、アルミ用は加熱不要な代わりに、ワイヤを直接押し潰すための高い加圧・超音波出力と強固な装置剛性が求められます。
パッケージ基板:ワイヤーボンディング装置とワイヤー素材
パッケージ基板とは、半導体チップ(ダイ)を載せ、マザーボードなどのメイン基板に接続するための中継基板のことです。半導体チップは非常に微細な端子を持ち、そのまま一般的なプリント基板(PCB)に直接実装することは極めて困難です。
そこでチップとマザーボードの間に介在し、電気信号を橋渡しする役割を持つのがパッケージ基板です。
従来の半導体の微細化による性能向上が限界に近づく中、半導体の先端パッケージング技術だけでなくビルドアップ多層構造による高密度・微細配線が求められ、半導体性能向上の新たな競争軸となっています。
前回はパッケージ基板と半導体チップの接続方法特にワイヤーボンディングに関する記事でしたが、今回はワイヤーボンディングの際に使用される装置やワイヤーの素材の違いに関する記事となります。
ワイヤボンディングはどのような装置で行うのか
ワイヤボンディングは、「ワイヤボンダ(Wire Bonder)」と呼ばれる専用の自動化装置で行われます。
現代のワイヤボンダは、ミクロン単位の精密な位置制御と、1秒間に20〜30本以上の高密度な配線をこなす超高速性を両立させた、メカトロニクスと画像処理技術の結晶です。装置は主に以下の4つのシステムで構成されています。
1. ボンディングヘッド(心臓部)
実際にワイヤを接合する最も重要な可動部です。X・Y・Z軸方向に超高速・高精度に動きます。
- 超音波発振器(ホーン): 工具(キャピラリ等)に数十〜数百kHzの微細な振動を伝えます。
- 加圧制御モジュール: 電極にワイヤを押し付ける荷重をミリニュートン(mN)単位でリアルタイム制御します。
- EFO(電気トーチ): ボールボンディングの際、ワイヤ先端に一瞬で火花を飛ばして球(ボール)を作る高電圧ジェネレーターです。
2. 光学・画像認識システム(装置の「目」)
チップの電極パッドは非常に微細で、かつシリコンを切り出す際のわずかなズレ(アライメントの誤差)があります。
- 高解像度カメラと高速画像処理アルゴリズムにより、チップと基板の電極位置をサブミクロン(1μm以下)の精度で瞬時に自動認識し、ボンディング位置をリアルタイムで補正します。
3. ワークステージ & 搬送システム(土台)
チップが載った基板(リードフレームやサブストレート)を固定する場所です。
- ヒーターブロック: 固相接合を促すため、基板を150℃〜250℃程度に精密に加熱・維持します。
- 自動ローダー/アンローダー: マガジンから基板を自動で供給・排出する搬送ロボットです。
4. ワイヤ供給・クランプ機構
髪の毛よりも細い金属ワイヤ(15〜50μm程度)を、たるませず、引っ張りすぎずに供給するシステムです。
- スプール(糸巻き)からワイヤを繰り出し、空気の力(エアーテンション)で制御しながら、接合直後にワイヤを引きちぎるための「クランパー(挟み具)」が連動して動きます。
現代のワイヤボンダの性能と主要メーカー
現在の量産工場で稼働している自動ワイヤボンダは、ほぼ完全に無人化・自動化されています。
- 驚異的なスピード: 1本のワイヤを引く(ボール形成→1stボンド→ループ→2ndボンド→切断)の一連のアクションを、わずか数〜数十ミリ秒で行います。画面で見ると、ヘッドが肉眼では追えないほどの超高速で微振動しているように見えます。
- 主要メーカー: 世界市場はいくつかの有力メーカーがリードしています。
- Kulicke & Soffa (K&S)(米国:業界最大手の一角)
- ASM Pacific Technology (ASMPT)(シンガポール/香港)
- ヤマハ発動機(旧・新川)(日本:高い精密制御技術に強み)
- チョプラ(Cho-Onpa / 湖北工業など)(日本:パワー半導体向けウェッジボンダで強み)

「ワイヤボンダ」という自動化装置で行います。超高速・高精度に動くボンディングヘッド、電極位置を正確に捉える画像認識システム、基板を加熱・固定するステージ等で構成され、1秒間に数十本を配線します。
どのようなメーカーが有力なのか
ワイヤボンディング装置(ワイヤボンダ)の市場は、世界シェアを二分する海外の2大巨頭と、高い精密技術や特定分野で圧倒的な強みを持つ日本メーカーがリードしています。
1. Kulicke & Soffa(K&S:キューリック・アンド・ソファ / 米国)
ワイヤボンディング技術のパイオニアであり、世界最大手です。
- 強み: 金(Au)や銅(Cu)ワイヤを用いたボールボンディング装置において圧倒的なシェアを誇ります。業界のデファクトスタンダード(事実上の標準)となっており、世界中の半導体受託製造(OSAT)やメーカーに膨大な導入実績があります。
2. ASMPT(エーエスエムピーティー:旧 ASM Pacific Technology / シンガポール)
K&Sと激しく首位を争う、半導体後工程(パッケージング)装置の総合メガサプライヤーです。
- 強み: LED用の廉価な装置から最先端IC用まで幅広いラインナップを持ちます。チップを基板に載せる「ダイボンダ」や樹脂で固める「モールド装置」なども一括して提供できる総合力が強みで、アジアのサプライチェーンに深く食い込んでいます。
独自の強みを持つ日本メーカー
3. ヤマハ発動機(旧・新川)
1970年代に世界で初めて自動ワイヤボンディングマシンを開発した歴史ある名門で、日本国内のシェア1位(世界でも3位グループ)です。現在はヤマハ発動機傘下となっています。
- 強み: 独自の高速・高精度なサーボ制御技術により、複雑なワイヤの弓なり形状(ループ)を寸分の狂いなく、超高速で形成する技術に定評があります。
4. 超音波工業(Cho-Onpa)
社名の通り、超音波応用技術のリーディングカンパニーです。
- 強み: 電気自動車(EV)や産業機器の心臓部であるパワー半導体に使われる、「アルミ太線ウェッジボンディング装置」において市場をほぼ独占するほどの圧倒的なシェアを持っています。
5. カイジョー(KAIJO)
超音波洗浄装置などでも有名ですが、半導体ボンダー事業でも長い歴史があります。
- 強み: 熱圧着超音波ボンディングにおいて、新川に次ぐ国内有力メーカーとして安定した性能の装置を展開しています 。
パソコンやスマホの高性能プロセッサなど、大量生産の汎用・先端ICは「K&S」と「ASMPT」が牛耳っています。一方で、日本の「ヤマハ(旧新川)」が精密制御で食い込み、EV向けのパワー半導体などのニッチ・成長分野では「超音波工業」が圧倒的な存在感を放っている、というのが現在の有力メーカーの構図です。

米K&SとシンガポールのASMPTが世界シェアの大半を占める2大巨頭です。日本勢では、超高速制御に強みを持つヤマハ発動機(旧新川)や、EV等のパワー半導体向け太線装置で圧倒的な超音波工業などが有力です。
ワイヤーの素材によるボンディング装置の違いは何か
ワイヤの素材(金、銅、アルミなど)が変わると、その金属の「硬さ」「酸化のしやすさ」「融点」などの物理的性質に合わせて、以下のように、ボンディング装置(ワイヤボンダ)の構造や求められる機能が大きく変わります。
1. ヘッドの構造と工具(ボール用かウェッジ用か)
素材によって「ボールボンディング」を行うか「ウェッジボンディング」を行うかが決まるため、装置の先端(ヘッド部)の機構が全く異なります。
- 金(Au)・銅(Cu)・銀(Ag)用装置:これらは「ボールボンダ」と呼ばれます。ワイヤ先端を溶かして球を作るための高電圧放電装置(EFO:電気トーチ)が必須です。工具には、すり鉢状の穴が空いた「キャピラリ」を使用します。
- アルミ(Al)用装置:主に「ウェッジボンダ」と呼ばれます。ボールを作らないためEFOは搭載されていません。ワイヤを斜め前方から供給し、クサビ型の「ウェッジツール」でダイレクトに押し潰すための独特なワイヤ繰り出し機構(クランパーやカッター)を持っています。
2. ガス供給システム(酸化防止機構)の有無
これが「銅(Cu)ワイヤ」とそれ以外を分ける最大の装置的違いです。
- 銅(Cu)/ PCC用装置:銅は大気中で加熱すると一瞬で酸化し、綺麗なボールが作れません。そのため、EFOで放電する瞬間に、先端へ窒素(N2)や成形ガス(窒素+水素の混合ガス)をピンポイントで吹き付ける「ガスシールドノズル」と「精密ガス流量制御システム」が装置に標準装備されています。
- 金(Au)・アルミ(Al)用装置:大気中で加熱しても酸化しない(アルミは自己不動態化する)ため、これらのガス供給用の配管やノズルは不要です。
3. ステージ(ヒーター)の加熱能力
固相接合を成立させるための温度が素材によって異なるため、チップを載せるステージの仕様が変わります。
- 金(Au)・銅(Cu)・銀(Ag)用装置:接合を促進するために熱が不可欠なため、ステージには150℃〜250℃(場合によっては300℃近く)まで急速かつ精密に加熱・維持できる高出力なヒーターブロックが組み込まれています。
- アルミ(Al)用装置(特にパワー半導体向け太線):アルミは常温(室温)でも超音波と荷重だけで十分に固相接合します。そのため、装置のステージに加熱ヒーターがそもそも付いていない(常温ステージ)ケースが多く、熱によるチップへのダメージを完全に排除した設計になっています。
4. 超音波・加圧の出力と装置の「剛性」
パワー半導体に使われる「太いアルミ線」と、その他の「細線」では、装置のパワーと頑丈さが桁違いに変わります。
- アルミ太線用(パワー半導体)装置:直径数百μmもの硬い太線を押し潰すため、数ニュートン〜数十ニュートンという非常に強い力(荷重)をかける必要があります。また、超音波の出力も高いため、装置全体が振動に負けないよう極めて重厚で剛性の高いフレームと、大出力の超音波ホーンが搭載されています。
- 金・銅などの細線用装置:ミリニュートン単位の微細な制御が必要なため、ヘッド部は重厚さよりも「超高速で細かく動ける軽量さ」が追求されています。
素材による装置の違いまとめ
| 対象ワイヤ素材 | 金(Au) | 銅(Cu)/ PCC | アルミニウム(Al)太線 |
| 装置のタイプ | 高速自動ボールボンダ | 高速自動ボールボンダ | パワーデバイス用ウェッジボンダ |
| 放電装置(EFO) | あり | あり | なし |
| ガス配管(N2等) | なし(不要) | 必須(酸化防止用) | なし(不要) |
| ステージ加熱 | あり(150〜250℃) | あり(150〜250℃) | なし(原則、常温) |
| ヘッドの特徴 | 軽量・超高速(多ピン対応) | 軽量・超高速(硬い銅対策の加圧制御) | 重厚・高剛性(大出力・大荷重) |
このように、工場でワイヤの素材を変更する(例:金から銅へ切り替える)場合は、単にワイヤを付け替えるだけでなく、装置にガス配管を追加したり、銅専用の加圧・超音波プロファイルが組めるソフトウェアやヘッドにアップデートしたりする必要が生じます。

金・銅は先端を丸める放電装置と加熱が必要で、特に銅は酸化を防ぐガス供給機構が必須。一方、アルミは加熱不要な代わりに、直接押し潰すための高い加圧・超音波出力と強固な装置剛性が求められます。


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