この記事で分かること
MEMSガスセンサーとは
半導体の微細加工技術を用い、シリコン基板上に超小型ヒーターや検知膜を集積したデバイスです。省電力かつ超小型な点が特徴で、電池で動く家庭用ガス警報器や各種IoT機器に採用されています。
なぜガスで抵抗が変化するのか
加熱した半導体表面では、吸着した酸素が電子を奪い高抵抗となっています。そこへガス分子が付着・反応して酸素が離れると、奪われていた電子が半導体に戻り、電子が移動しやすくなって電気抵抗が急低下します。
増産の理由
北米を中心に電池式家庭用ガス警報器の需要が急増し、省電力なMEMSセンサーの供給強化が必要となったためです。また、新工場の稼働によりBCP(事業継続)強化や物流効率化を図る狙いもあります。
新コスモス電機のMEMSガスセンサー増産
新コスモス電機は、大阪市淀川区に「淀川工場」を開所・稼働させ、MEMSガスセンサーをはじめとするガスセンサー全般の生産能力を従来の約2倍以上へと引き上げる体制を整備しています。
国内市場での安定供給にとどまらず、北米をはじめとするグローバル市場で電池式警報器向けセンサーのデファクトスタンダード化を加速させています。
MEMSガスセンサーとは何か
MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)ガスセンサーとは、半導体の微細加工技術を用いて、シリコン基板上に超小型のヒーターや検知膜、温度センサーなどを立体的に集積したガス検知デバイスです。
基板内部に空洞(エアギャップ)を設け、その上に薄膜(メンブレン)を浮かせる構造を作ることで、ヒーターの熱が周りに逃げるのを防ぎ、微小な検知領域だけを効率よく加熱できるように設計されています。
主な特徴とメリット
- 超低消費電力:加熱が必要な熱容量(マイクロヒーター)が極めて小さいため、従来のセンサーと比べて消費電力を大幅(数mW〜数十mW程度)に削減できます。これにより、従来のAC電源(コンセント)必須だった環境から「電池駆動のガス警報器」への移行が可能になりました。
- 超小型・軽量:数ミリメートル角の半導体チップサイズであり、基板への表面実装(SMD)に対応します。
- 高速応答・パルス駆動:ミリ秒単位で目標温度まで加熱できるため、常時加熱し続けずに必要な瞬間だけ通電する「パルス駆動」を行え、さらに省電力化を推進できます。
- 高量産性:シリコンウェハ上で大量生産できるため、製品ごとの個体差を小さく抑えつつ低コスト化を図れます。
従来型センサーとの比較
| 項目 | 従来型ガスセンサー(焼結型など) | MEMSガスセンサー |
| サイズ | 指先〜数センチ程度 | 数ミリメートル角(ICチップと同等) |
| 消費電力 | 数百mW〜1W程度(コンセント電源が主流) | 数mW〜数十mW(電池で数年稼働可能) |
| 加熱構造 | ヒーター線に検知材料を巻き付け焼結 | シリコン薄膜(メンブレン)上のマイクロヒーター |
| 主な用途 | 据置型警報器、定置式産業用検知器 | 電池式警報器、IoTデバイス、スマート家電、スマホ |
代表的な検知原理
- 熱伝導式:ガスごとに固有の熱伝導率を持つ特性を利用し、周囲のガス組成の変化によってヒーターから奪われる熱量(温度・抵抗の変化)を計測します(水素、CO2など)。
- 半導体式:マイクロヒーターで酸化物半導体(酸化スズなど)を加熱し、ガス分子が表面に吸着・反応した際の「電気抵抗の変化」を検出します(メタン、CO、VOCなど)。

MEMSガスセンサーとは、半導体の微細加工技術を用い、シリコン基板上に超小型ヒーターや検知膜を集積したデバイスです。省電力かつ超小型な点が特徴で、電池で動く家庭用ガス警報器やIoT機器に採用されています。
ガス分子の付着でなぜ抵抗が変化するのか
最も一般的なn型金属酸化物半導体(酸化スズ SnO2 など)を例に挙げると、その原理は「酸素を介した電子のやり取りによるポテンシャル障壁の変化」です。
1. 空気中での状態(高抵抗)
- マイクロヒーターで加熱(200〜400℃)すると、空気中の酸素が半導体表面に吸着します。
- 吸着した酸素は半導体内部から電子(キャリア)を奪って負イオン(O- など)化します。
- 表面付近の自由電子が奪われることで「電子枯渇層」が形成され、結晶粒界(結晶同士の境目)のポテンシャル障壁が高くなります。その結果、電子が移動しにくくなり電気抵抗が高い状態に保たれます。
2. 対象ガスが付着した状態(低抵抗)
- メタンや一酸化炭素(CO)などの可燃性・還元性ガスが飛来すると、表面に吸着している酸素イオンと反応して酸化・脱離します。
- 酸素に捕らえられていた電子が半導体内部へと返還されます。
- 電子枯渇層が薄くなってポテンシャル障壁が下がり、電子が自由に移動できるようになるため、電気抵抗が急激に低下します。
この抵抗値の変化量(低下度合い)を電気回路で計測することで、ガスの存在や濃度を特定しています。

加熱した半導体表面では、吸着した酸素が電子を奪い高抵抗となっています。そこへガス分子が付着・反応して酸素が離れると、奪われていた電子が半導体に戻り、電子が動きやすくなって電気抵抗が急低下します。
増産の理由は何か
新コスモス電機がMEMSガスセンサーなどの生産能力を2倍以上に引き上げている(増産)主な理由は、以下の3点です。
北米を中心とする海外需要の急増
アメリカなどで家庭用ガス警報器の電池駆動化(コンセント不要化)が進んでおり、超低消費電力なMEMSガスセンサーの需要が急速に高まっているため。
BCP(事業継続計画)の強化
兵庫県三木市の既存工場に加え、大阪市に淀川工場を新設・稼働させることで、大規模災害時などの生産停止リスクを分散し供給体制を二重化するため。
物流・生産効率の改善と短納期化
生産と物流の拠点を集約・統合することで、世界的な受注拡大に対して製品出荷までのリードタイムを短縮するため。
特に「北米市場における電池式ガス警報器向けセンサーのデファクトスタンダード(事実上の標準)化」が最大の増産要因となっています。

北米を中心に電池式家庭用ガス警報器の需要が急増し、超低消費電力なMEMSセンサーの供給強化が必要なためです。また、新工場稼働によりBCP(事業継続)強化や物流効率化を図る目的もあります。


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