この記事で分かること
1. 増益の理由
前年同期の低迷からの反動(ベース効果)に加え、AIやEV向け高付加価値品の需要拡大、原料・燃料高の一服による採算改善、過剰競争抑制(反内巻)に伴う市況の底打ちが重なったことが主な要因です。
2. AI・半導体分野で好調な企業
CMPスラリー大手の安集微電子や特ガス・レジストの南大光電など地場材料企業が好調です。また需要を牽引するDRAMの長鑫存儲(CXMT)やファウンドリの中芯国際(SMIC)も業績を伸ばしています。
3. CXMT・SMICの特徴と先端企業との差
SMICは中国最大ファウンドリでEUVなしで7nm級を製造も、TSMCと約2世代の差や低歩留まりが課題。CXMTは汎用DRAMで急成長もSK Hynix等と1〜2世代の差があり、AI用HBMが不在です。
中国化学産業、前年比65%増益
中国国家統計局および業界団体が発表した2026年1〜6月期(上半期)のデータによると、中国の化学産業(化学原料および化学製品製造業)の最終利益は前年同期比約65%(利益総額ベースで67.8%増)の大幅増益となりました。
前年同期の市況下落・需要低迷から市況価格が回復軌道に乗り、利益率が大きく改善しています。特にハイテク・エネルギー分野を中心とした需要回復が主要因となっています。
なぜ増益となったのか
前年同期の業績低迷からの反動(ベース効果)に加え、高付加価値品需要の拡大とコスト構造の改善が重なったことが主な要因です。
1. 前年の業績底打ちによる反動(ベース効果)
- 前年同期は不動産不況や汎用プラの市況下落により利益水準が大きく低下していたため、比較対象が低く増益率が押し上げられました。
2. ハイテク・新エネルギー領域の強い需要
- AI・半導体分野: 集積回路(IC)等の増産に伴い、フォトレジストやエッチングガスなど高機能電子材料の出荷が急増しました。
- EV・電池・クリーンエネルギー: リチウムイオン電池用部材や車載用軽量化樹脂などの需要が堅調で、製品高付加価値化に寄与しました。
3. 原料・燃料コストの安定とスプレッド拡大
- 原油や石炭などエネルギー・基礎原料価格の激しい値動きが落ち着き、製品価格との差額(加工マージン/スプレッド)が改善しました。
4. 供給過剰の抑制策(「反内巻」政策)の影響
過当競争(内巻)による価格崩壊を防ぐため、省エネ・安全基準の厳格化や低採算プラントの稼働削減が進み、市況の底割れが回避されました。

前年同期の業績低迷からの反動(ベース効果)に加え、AI・EV向け高付加価値品の需要拡大、原料・燃料高の一服による採算改善、過剰競争抑制(反内巻)に伴う市況の底打ちが重なったことが要因です。
AI・半導体分野で好調な企業はどこか
中国の半導体国産化推進やAI・EV向け需要の急拡大に伴い、地場の半導体材料・電子化学品メーカーおよび需要を支える国内半導体大手が好調な業績を上げています。
主要な半導体材料・電子化学品メーカー
- 安集微電子(Anji Microelectronics): CMP(化学機械研磨)スラリーやポスCMP洗浄液の中国最大手。国内ファウンドリへの採用拡大で業績を大きく伸ばしています。
- 南大光電(Nata Optoelectronics): 高純度電子特殊ガスやArF/KrF用フォトレジストを手掛け、成熟〜先端プロセス向けで需要を取り込んでいます。
- 彤程新材料(Red Avenue New Materials): 半導体およびディスプレイ向けフォトレジストの主要サプライヤーとして地場シェアを拡大しています。
- 中環領先半導体: 300mm(12インチ)シリコンウェーハの国内大手。特注対応や高い価格競争力を背景に出荷量を増やしています。
材料需要を牽引する中国の主要半導体企業
- 長鑫存儲(CXMT):中国のDRAM最大手。AI向けメモリ等の強い需要を追い風に業績が急拡大し、株式上場を果たしました。
- 中芯国際(SMIC)/ 華虹集団: ファウンドリ大手。28〜40nmなどの成熟ノードを中心に高稼働が続き、国内材料メーカーからの調達・消費(素材ブラックホール化)を強力に推進しています。

CMPスラリー大手の安集微電子や特ガス・レジストの南大光電といった地場材料企業が好調です。また需要を牽引するDRAMの長鑫存儲(CXMT)やファウンドリの中芯国際(SMIC)も業績を大きく伸ばしています。
CXMT、SMICの特徴、トップ企業との差はどれくらいなのか
中国の半導体産業を牽引するSMIC(中芯国際)とCXMT(長鑫存儲)は、米国の輸出規制に直面しながらも巨額の国家支援と内需を背景に急成長を遂げています。
しかし、TSMCやSK Hynixなどの米・亜・欧の最先端企業と比較すると、プロセス世代・歩留まり(生産効率)・AI向け製品(HBM等)の面で明確な技術ギャップが存在します。
1. SMIC(ファウンドリ / 晶円代工)
主な特徴
- 中国最大のファウンドリ: HuaweiのAIチップ(Ascendシリーズ)やスマートフォン用SoC(Kirin)、AlibabaのAI用チップなど、中国の主要なAI・先端半導体の製造を一手に引き受けています。
- DUV多重露光の限界突破: EUV(極端紫外線)露光装置が入手不可能な制約下で、従来のArF液浸DUV露光装置を極限まで駆使(マルチパターニング)し、7nm級(N+2/N+3)の量産や5nm級の立ち上げを達成しています。
先端企業(TSMC、Samsung等)との比較・技術ギャップ
- 技術世代の差(約2世代 / 4〜5年の遅れ): TSMCやSamsungが2nmノード(GAA構造)の量産を開始する中、SMICはDUV頼みの5nm/7nmにとどまり、実質2世代ほど後塵を拝しています。
- 歩留まりと生産コストの壁: EUVを使わずにDUVを何度も重ねて露光するため工程数が劇的に増え、歩留まり(良品率)が低く(20〜40%程度と推計)、コスト面で民間の商業ベースに乗りにくい構造的欠点を抱えています。
- 欧州生態系からの孤立: 半導体露光装置最大手のASML(オランダ)や先端研究機関imec(ベルギー)との直接的な協力関係が断たれており、次世代プロセス研究へのアクセス制限が長期的なハンデとなっています。
2. CXMT(メモリ / DRAM)
主な特徴
- 中国初の本格的汎用DRAMメーカー: DDR4/LPDDR4から最新のDDR5/LPDDR5への転換を急ピッチで進め、自国市場の需要を背景に世界DRAM市場シェアを急拡大させています(シェア約8%前後に上昇)。
- 低価格・内需優先戦略: 中国国内のエレクトロニクス市場向けにコストパフォーマンスの高いメモリを供給し、脱外国産を推進しています。
先端企業(SK Hynix、Samsung、Micron)との比較・技術ギャップ
- 微細化ノードの差(約1〜2世代 / 3〜4年の遅れ): 海外大手3社が1α/1β/1γnm(10nm台前半)のEUV適用DRAMを量産するのに対し、CXMTは17〜18nm付近を中心としており、チップの集積度・エネルギー効率で遅れをとっています。
- HBM(高帯域幅メモリ)の決定的な欠落:AIサーバー向けで圧倒的需要を誇るHBM領域において、SK Hynix(世界シェア約50%超)やSamsung、Micronが市場を独占しています。CXMTはHBMの本格的な商業供給に至っておらず、AI向けメモリ市場での本格競合は2028年以降になるとみられています。
- SMIC(製造): TSMCと比べ「EUVなしでの高コスト製造」が最大のネック。技術的・集積度的には7nm/5nmまで力技で到達したものの、商業的独立性ではなく国家主導の需要に依存しています。
- CXMT(メモリ): 汎用DRAM(DDR5等)では先端に肉薄し始めていますが、「HBMなどAI特化型メモリの不在」によりSK Hynix等の収益性・先進性には遠く及びません。

SMICは中国最大ファウンドリでEUVなしで7nm級を製造も、TSMCと約2世代の差や低歩留まりが課題。CXMTは汎用DRAMで伸びるもSK Hynix等と1〜2世代差があり、AI用HBMが不在です。


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