この記事で分かること

NECのMeta光海底ケーブル敷設プロジェクト参画
NECは2026年9月22日、Meta(メタ)が主導するアメリカ・フランス間の光海底ケーブル敷設プロジェクト「Petal(ペタル)」に参画すると発表しました。システムの全体設計および構築を担います。
AI(人工知能)の普及やクラウド・データセンター需要の急増に伴い、米欧間のデータトラフィックが大幅に増加していることに対応するインフラ強化施策の一環としての参画です。
Petalの計画内容は
Metaが主導する光海底ケーブルプロジェクト「Petal(ペタル)」は、米国とフランスを結ぶ大西洋横断の大規模通信インフラ計画です。
2029年の運用開始を目指し、大西洋横断路線として初めて次世代のマルチコア光ファイバー技術を本格導入します。
1. 基本スペックとルート
- 区間: 米国 〜 フランス(大西洋横断、総延長 約7,000km)
- 伝送容量: 毎秒1ペタビット(1 Pbps / 1,000 Tbps)クラス(単一世代として最大級)
- 運用開始時期: 2029年予定
2. 技術的特徴
- マルチコア光ファイバー(MCF)の採用: 1本のファイバー内に複数の光の通り道(コア)を配置する新技術です。物理的にケーブルを太くすることなく、伝送容量を大幅に引き上げます。
- 高耐久・高信頼性設計: 障害発生時でも通信途絶を防ぐ給電構造などを採用し、高い稼働率を維持します。
3. 参画企業と役割分担
| 企業名 | 種別 | 計画上の役割 |
| Meta | 主導(米) | プロジェクトの発注・資金拠出 |
| NEC | ベンダー(日) | システム全体の設計、構築、システム供給 |
| 住友電気工業 | 部品供給(日) | マルチコア光ファイバーの供給 |
| Orange | 通信事業者(仏) | フランス側の陸揚げ(着陸)インフラ・運用支援 |
4. 計画の背景と狙い
- AI・クラウド通信の激増への対応: 生成AIモデルの学習やデータ伝送、クラウドサービスの利用拡大により、北米〜欧州間のデータ通信量が急増していることに対応します。
- 自社専用インフラの強化: Metaなどのメガテック企業は、自社サービス(Instagram、Facebook、AIサービス等)のデータセンター間通信を安定させるため、自社主導での光海底ケーブル整備を加速させています。

米Meta主導で米国・フランス間(約7,000km)を結ぶ光海底ケーブル計画。NECが構築を担い2029年運用予定です。マルチコア技術の採用により毎秒1ペタビット級の超高容量を実現し、AI等の通信需要急増に対応します。
マルチコアファイバーとは何か
マルチコアファイバー(MCF: Multi-Core Fiber)とは、1本の光ファイバー(ガラス線)の内部に、光の通り道である「コア(中心部)」を複数配置した次世代の光伝送技術です。
従来の光ファイバーは1本の中にコアが1つしかありませんでしたが、マルチコア化することで、ケーブル自体の太さをほとんど変えずに通信容量を数倍〜数十倍に引き上げることができます。
従来のファイバーとの比較
| 項目 | 従来の光ファイバー(シングルコア) | マルチコアファイバー(MCF) |
| コアの数 | 1本の中に 1個 | 1本の中に 複数(4個、8個、19個など) |
| 道路での例え | 1車線の道路 | 同じトンネル幅の中に作られた 複数車線の道路 |
| 伝送容量 | 物理的な伝送限界(上限)に到達しつつある | コア数に比例して大幅に容量を拡張可能 |
| ケーブル外径 | 約125 µm(標準サイズ) | 標準サイズ(約125 µm)を極力維持 |
主なメリット
- 空間やコストの劇的な節約光ファイバー束全体の太さを太くすることなく容量を増やせるため、設置スペースが限られる「海底ケーブル」や「都市間の地下管路」に最適です。
- 従来技術の「物理限界」を突破従来の1コアファイバーは、光信号を強くしすぎると波形が歪む物理限界(非線形限界)を迎えていました。信号を複数のコアに分散して流すことで、この限界を回避できます。
実用化に必要な高度技術
- クロストーク(混信)の抑制: コア同士が近づきすぎると隣のコアに光が漏れて混信(クロストーク)します。これを防ぐため、コア同士の配置や周りの材料の屈折率を精密に設計しています。
- 高精度な接続・分岐: 髪の毛ほどの太さ(125 µm)の中にある複数の微細なコアの位置を、ナノメートル単位で正確に位置合わせして繋ぐ技術(融着接続など)が使われています。

1本の光ファイバー内部に複数のコア(光の通り道)を配置した次世代技術。ケーブル幅を変えずに通信容量を数倍に引き上げられます。従来技術の物理限界を克服し、大容量の海底ケーブル等で導入が進んでいます。
NECの役割は何か
Petal(ペタル)プロジェクトにおけるNECの主な役割は、「光海底ケーブルシステム全体の設計および構築(システム供給ベンダー)」です。
Metaがオーナー(発注元・運用者)であり、住友電工が材料(光ファイバー)を供給するのに対し、NECはそれらを組み上げて実際に動く巨大な通信インフラとして納品する総合エンジニアリング(システムインテグレーション)を担います。
主な担当・具体的な役割
- システム全体の設計と構築(エンドツーエンド)
- 米国〜フランス間(約7,000km)を結ぶ海底ケーブルネットワークのルート設計、システム全体の構成設計、機器の調達・製造・施工(海底への敷設)までを一貫して担当します。
- マルチコアファイバー(MCF)の商用システム統合
- 住友電工が供給する「2コア光ファイバー」に合わせた専用の海底中継器(信号増幅器)や端局設備などを開発・統合します。
- 7,000kmという超長距離で信号を歪ませずに「毎秒1ペタビット」の通信品質を維持・実現する技術的な担保を行います。
- 高信頼性・障害耐性(給電構造など)の実装
- 海底で長期間(通常25年程度)安定稼働させるための堅牢な構造設計や、万が一の停電・故障時にも片側から給電を維持できる高耐久な電源システムなどを構築します。
各社との役割分担イメージ
- Meta: プロジェクト主導・資金拠出・ケーブル全体の所有
- NEC:システムエンジニアリング(全体の設計・製造・敷設・統合)
- 住友電気工業: マルチコア光ファイバー素線の供給
- Orange:フランス側での陸揚げ(着陸)拠点・設備の提供と支援
世界中で敷設されている光海底ケーブルのうち、NECはトップクラスのシェアを持つ主要ベンダーの1社であり、今回の世界初となる1ペタビット級システムでもその高い技術力と実績が買われて起用されています。

NECはシステム全体の設計・構築(システム供給)を担当します。約7,000kmのルート設計から機器製造・敷設までを一貫して実施。マルチコア技術を統合し、超高容量な海底通信インフラを実現します。


コメント