この記事で分かること

牛や豚の非食用部位の高負付加価値化
政府はこれまで廃棄または低価格で処理されていた牛や豚の非食用部位(内臓の一部、血液、骨など)を化粧品や薬品など高価値な資源として活用した事業の実証事業に対する補助金の交付を行うことを発表しています。
非食用部位を高価値な資源として活用し、食肉処理・加工企業の収益構造を改善することや未利用資源の有効活用により廃棄物を削減し、環境負荷の低減と国内資源循環を両立させる狙いがあります。
どのような化粧品に使用できるのか
農林水産省が支援する「牛や豚の非食用部位(内臓、皮、血液など)」からのバイオ素材抽出技術により、以下のような化粧品カテゴリーでの応用が想定・期待されています。
1. 主な対象化粧品カテゴリーと用途
- スキンケア製品(美容液、保湿クリーム、化粧水、パック)
- 主成分: コラーゲン、ヒアルロン酸、エラスチン(皮、真皮層、関節・軟骨組織から抽出)
- 用途: 高い保湿力、肌のハリや弾力の維持、エイジングケア(年齢に応じたケア)。特に家畜由来の天然エラスチンや低分子化コラーゲンは、肌への親和性や保湿性能に優れています。
- 洗顔料・クレンジング・角質ケア製品
- 主成分: 消化酵素(パンクレアチン由来のプロテアーゼやリパーゼなど:膵臓・胃から抽出)
- 用途: タンパク質や皮脂を分解・除去する酵素洗顔料やピーリング製品。毛穴の黒ずみや古い角質をやさしくケアする成分として活用されます。
- 美白・エイジングケア(美容液、シートマスク)
- 主成分: プラセンタエキス(胎盤)、ヘム鉄・成長因子様成分(血液分離成分)
- 用途: ターンオーバーの促進、メラニン生成の抑制サポート、肌のツヤ・透明感向上。
- ヘアケア製品(トリートメント、ヘアパック、頭皮用ローション)
- 主成分: 加水分解ケラチン(毛・爪・角質層由来)、アミノ酸複合体
- 用途: 毛髪の補修・ハリコシ付与、頭皮の保湿環境の改善。
2. 食肉副産物由来成分(クリーンビューティ / アップサイクル)の強み
- トレーサビリティ(生産履歴)の明確さ
- 国内の厳しい衛生・検疫基準を通った牛・豚から採取するため、原材料の安全性や由来(どこの農場・食肉処理場か)を追跡しやすく、高い品質管理が可能です。
- 「アップサイクル素材」としてのストーリー性
- これまで未利用・廃棄されていた資源を再利用するため、SDGsや環境配慮(アップサイクル化粧品)を重視するブランド・消費者にとって大きなアピールポイントとなります。
今後、精製技術の向上や臭い・色の低減処理が進むことで、高級スキンケア市場をはじめ多様な化粧品への導入が進むと期待されています。

牛や豚の皮や内臓等から抽出したコラーゲンやヒアルロン酸、消化酵素などを活用し、高い保湿・弾力をもたらすスキンケアや、毛穴ケア用の酵素洗顔料、毛髪補修ヘアケア、プラセンタ美容液等に応用できます。
現在、コラーゲン、ヒアルロン酸はどのように製造されているのか
現在、コラーゲンとヒアルロン酸は主に以下の方法で製造・精製されています。
1. コラーゲンの主な製造方法
主に動物の皮や骨、または魚の皮やウロコを原料とし、化学的・酵素処理によって抽出・精製されます。
- 豚由来・牛由来(動物由来)
- 原料: 豚皮(ポークスキン)や牛骨・牛皮など。
- 製法: 原料を洗浄・脱脂した後、酸抽出(稀塩酸や酢酸などを使用)または酵素分解(ペプシンなど)を行い、トリミングされた抽出液からろ過・精製・乾燥して粉末や溶液にします。
- 特徴: 熱安定性が高く、化粧品やゼラチン・食品向けとして長年の実績があります。
- 魚由来(フィッシュコラーゲン)
- 原料: 鮭やタラなどの魚皮、タイなどのウロコ。
- 製法: ウロコの場合は酸処理で脱灰(カルシウム除去)したのち、温水抽出や酵素分解を行って低分子(ペプチド)化します。
2. ヒアルロン酸の主な製造方法
かつては鶏のトサカなどからの抽出が主流でしたが、現在は微生物発酵法が世界の主流となっています。
- 微生物発酵法(現在の主流)
- 原料: 連鎖球菌(Streptococcus属など)の微生物培養液。
- 製法: 糖分などを与えて培養した菌が菌体外に生成するヒアルロン酸を、分離・精製・アルコール沈殿・乾燥して製造します。
- 特徴: 均一な品質で大量生産が可能であり、動物由来の病原体感染リスクがないため、現在の化粧品・医薬品・サプリメントの主流です。
- 動物抽出法(従来法・一部利用)
- 原料: 鶏のトサカ(鶏冠)や牛の眼球など。
- 製法: 原料を破砕後、タンパク質分解酵素で処理し、除タンパク・溶媒沈殿を繰り返して抽出・精製します。
こうした背景の中で国内の食肉副産物(豚・牛の特定部位)から、発酵法等と同等以上に高品質でトレーサビリティの明確な素材を効率よく安全に抽出する技術の確立を目指すものです。

コラーゲンは豚皮や魚皮・ウロコを酸処理や酵素で抽出分解して製造されます。ヒアルロン酸はかつて鶏のトサカから抽出していましたが、現在は高い安全性と大量生産性に優れる微生物の発酵法が主流です。
プロテアーゼやリパーゼの現在の製造方法は
プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)やリパーゼ(脂肪分解酵素)の現在の製造方法は、産業用や化粧品・洗剤用など用途によって異なりますが、現在は微生物発酵法が主流となっています。
1. 微生物発酵法(現在の主流)
- 原理: 糸状菌(カビの一種)や細菌、酵母などの微生物を巨大な培養タンクで大量に培養し、菌が生産・分泌する酵素を回収します。
- 主な菌株: Aspergillus属(コウジカビなど)や Bacillus属(枯草菌の仲間)が広く使われます。
- メリット:
- 大量生産が可能でコストが低い。
- 品質が均一で、動植物由来のような病原体感染やアレルギーのリスクを低減できる。
- 遺伝子組み換え技術や変異株の活用により、特定のpHや温度環境に強い酵素を設計しやすい。
2. 動植物からの抽出法(伝統的・特定用途)
- 原理: 牛や豚の膵臓(パンクレアチンに含まれるトリプシンやリパーゼ)や胃粘膜(ペプシン)、あるいはパパイヤ(パパイン)やパイナップル(ブロメライン)といった植物から物理的・化学的に抽出・精製します。
- メリット: 人間の消化器官に近い生理活性を持つものや、独自の基質特異性(特定の物質だけに働く特性)を持つ酵素が得られます。
- 用途: 医療用医薬品(消化剤など)や、特定の製薬・特殊な化粧品原料として現在も利用されています。
製造プロセスの主な流れ(微生物発酵の場合)
- 菌の培養: 糖分やアミノ酸などの栄養素を含んだ培地で微生物を液体培養(発酵)させ、酵素を大量に分泌させます。
- 分離・回収: 遠心分離やろ過によって、培養液から菌体を取り除き、酵素が含まれる液体(粗酵素液)を回収します。
- 濃縮・精製: 限外ろ過や沈殿法、クロマトグラフィーなどを用いて不純物を取り除き、高純度に濃縮します。
- 製剤化: 用途に合わせて粉末化、液体化、または安定化処理を行って製品とします。
今回農水省が支援する実証事業は、こうした微生物発酵全盛の中であえて国内の食肉副産物(内臓等)からの酵素抽出に着目し、高付加価値な素材として国産サプライチェーンを構築する狙いがあります。

プロテアーゼやリパーゼは、カビや細菌などの微生物を用いた発酵法による大量生産が主流です。一部の医薬品や特殊用途では、動物の内臓や植物からの抽出法も利用されています。

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