SKグループ、日本でAIに特化した次世代データセンター開設

この記事で分かること

SKグループのAI特化型データセンターの特徴

NVIDIAのDSXプラットフォームを基盤に、SKハイニックス製HBMと独自の内部冷却技術「iHBM」を組み合わせ、消費電力を抑えながらAIの学習から推論までライフサイクル全体を一貫処理できる次世代AIファクトリー型データセンターです。

日本に設立する理由

日本企業のAI需要を取り込みつつ自社半導体のショーケースにするためです。加えて、地政学リスクへの対応として韓日の半導体・AI分野での経済安全保障上の連携を強化する狙いもある。

SKグループ、日本でAIに特化した次世代データセンター開設

 韓国大手財閥のSKグループは、2028〜29年をメドに日本でAIに特化した次世代データセンターを開設する計画を明らかにしました。自社の最先端半導体を活用しつつ、米NVIDIAと連携して設計することで、消費電力を抑えながら高度な計算能力を実現するとしています。

 同社によると日本企業のAI活用による生産性向上を支援するとともに、自社半導体のショーケースとする狙いもあるとのことです

SKグループのAI特化型データセンターの特徴は何か

① AIライフサイクル全体をカバーする「AIファクトリー」設計

 このデータセンターは単なる計算基盤ではなく、「データの取り込みから学習、ファインチューニング、大規模推論に至るAIのライフサイクル全体を管理し、データから価値を創造するために専用に設計されたコンピューティングインフラ」として位置づけられています。


② NVIDIAのDSXプラットフォームを基盤とするフルスタック設計

 SKテレコムのAIファクトリーは、NVIDIAのDSXのソフトウェア、ハードウェア、運用を含むフルスタック・リファレンスアーキテクチャに基づいており、エネルギー効率を高めながら低コストでトークンを生成することで、さまざまなAIワークロードを支えます。

 NVIDIA DSXプラットフォームは、コンピューティング、電力、冷却、ネットワーク、運用を統合アーキテクチャに統合しており、メガワットあたりのトークンパフォーマンスを最大化してトークンコストを最小限に抑えることができます。

 また電力グリッドサービスとの接続により、再生可能エネルギーやハイブリッド電力の運用最適化も行います。


③ SKハイニックス製HBMによる省電力・高性能の両立

 自社の最先端半導体(SKハイニックス製)を活用し、NVIDIAと連携して設計することで、消費電力を抑えながら高度な計算能力を実現するのが大きな差別化点です。

 HBM4はDRAMダイを垂直に積層しシリコン貫通ビアで接続することで、ビットあたりの消費電力を抑えながら大容量の帯域幅を提供します。AIトレーニングクラスターは世代ごとにHBM容量を増大させており、さらなる高速化・大容量化が実現されています。


④ iHBM:HBMパッケージ内部に冷却素子を内蔵する最新技術

 SKハイニックスが2026年5月に発表した「iHBM」は、このデータセンターを技術的に支える重要な要素です。

 iHBMはHBMのパッケージ内に冷却素子(ICE:Integrated Cooling Elements)を搭載する技術で、HBMとGPUを接続するD2D PHY(最も熱が集中する箇所)の真上にICEを配置することで効率的に熱を逃がします。

 これにより熱抵抗を30%低減し、高温・高負荷環境下でも安定した動作を実現します。

 iHBMに内蔵されたICEは、パッケージ最深部の熱源と表面のコールドプレートを直結する役割を果たします。チップレベルの熱管理(iHBM)と施設レベルの熱管理(水冷システム)が完全に同期・連携することで、次世代AIサーバーラック全体の電力使用効率(PUE)が劇的に改善されます。

 既存の工程でも大量生産が可能で、既存システムとの互換性が高い点も強みとされており、SKハイニックスはHBM5などの次世代製品への本格適用を進める方針です。


⑤ 自社半導体のショーケース兼、日本企業への開放

 崔泰源会長は「日本企業のAI活用による生産性向上を支援し、自社半導体のショーケースにもする」と明言しており、単なる自社利用にとどまらず日本企業へのAIインフラ提供を目的としています。


特徴内容
設計思想AIライフサイクル全体(学習〜推論)をカバー
基盤技術NVIDIA DSXフルスタック・アーキテクチャ
半導体SKハイニックス製HBM(最先端品)
冷却革新iHBM技術で熱抵抗30%低減・省電力化
電力効率ワットあたりトークン最大化・再生可能エネルギー対応
用途日本企業向けAIインフラ提供+自社半導体実証

 従来のデータセンターとの最大の違いは、半導体・冷却・ソフトウェアを垂直統合で設計している点にあります。SKハイニックスのHBM技術とNVIDIAのシステム設計を組み合わせることで、消費電力あたりのAI処理性能を最大化する次世代インフラとなっています。

NVIDIAのDSXプラットフォームを基盤に、SKハイニックス製HBMと独自の内部冷却技術「iHBM」を組み合わせ、消費電力を抑えながらAIの学習から推論までライフサイクル全体を一貫して処理できる次世代AIファクトリー型データセンターとなっています。

AIファクトリーとは何か

 AIファクトリーとは、AIのライフサイクル全体(データ取り込み→学習→ファインチューニング→推論)を一貫して加速・効率化するために設計された、次世代の専用コンピューティングインフラです。

 従来のデータセンターとの違いは、膨大な量のデータを処理・最適化し、価値あるAIモデルやトークンを生産するために「特別に構築」されている点にあります。

 NVIDIAのジェンスン・フアンCEOはこれを「インテリジェンスを生産する新しいタイプの製造業」と表現しており、データセンターが単なる情報の保管・処理施設ではなく、AIという「製品」を製造する工場に進化したものと位置づけています。

 事前設計されたラックレベルの設計、セキュアAI、統合ソフトウェアスタックを組み合わせた構成可能なブロックとして提供され、大規模なインテリジェンスへの価値創出時間を短縮します。NVIDIAのアクセラレーテッドコンピューティングにより、ワットあたりより多くのトークンを処理できるエネルギー効率も特徴です。

なぜ日本に建設するのか


1. 日本企業のAI需要を取り込む

 日本企業のAI活用による生産性向上を支援することを明確な目的として掲げており、製造業をはじめ多くの日本企業がAIインフラを必要としている市場を狙っています。

2. 自社半導体(HBM)のショーケースにする

 SKハイニックス製の最先端半導体の「ショーケース」にする意図も明言されており、日本市場での実績を積むことで半導体ビジネスの拡大にもつなげる狙いがあります。

3. 韓日の経済安全保障上の連携

崔会長は「韓国と日本は、半導体・AI分野での協力を戦略的に強化する必要がある。一部のシステムを統合すればコストも下がり、戦略的な武器にもなり得る」と述べ、急変する世界秩序の中で生き残るために韓日経済連携が不可欠だと強調しました。「連携が実現すればどの国も手出しできなくなる」とも発言しており、地政学的なリスクへの対応という側面も色濃くあります。

4. キオクシア投資収益を日本に再投資する姿勢

 崔会長は「外国企業が韓国に投資して巨額の利益を上げ、すべて持ち帰ったら良い気持ちはしない。日本も同じ感情を持ちうる」と述べたうえで、「韓国と日本は協力できる分野があまりにも多く、協力可能な領域には投資を惜しまない」と強調。キオクシアへの投資収益を日本の半導体産業との協力に再投資する意向を示しています。

5. アジア展開のモデル拠点として

 最初のAIファクトリーは2027年に韓国で稼働し、アジアの他地域への展開に向けたモデルとなる計画で、日本はその次のステップとして位置づけられています。


 市場獲得・半導体販促・韓日同盟・地政学対応・アジア展開という複数の戦略が重なった、SKグループにとって極めて重要な対日投資と言えます。

日本企業のAI需要を取り込みつつ自社半導体のショーケースにするため。加えて、地政学リスクへの対応として韓日の半導体・AI分野での経済安全保障上の連携を強化する狙いもある。

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