半導体パッケージ基板:熱圧着方式

パッケージ基板のイメージ画像 半導体パッケージ基板

この記事で分かること

熱圧着方式(TCB)とは

チップと基板の接合部に熱と圧力を同時に加えて結合する実装技術です。加熱時の基板の反りを物理的に抑え込み、微細な端子を高精度に接続できるため、HBMや3D積層などの高性能パッケージングに不可欠です。

熱と圧力のかけ方

カメラでチップと基板の位置をサブミクロン単位で正確に合わせ、チップを保持した先端ツール(ボンディングヘッド)で局所的に加熱・加圧します。基板全体を熱さず、接合部のみに直接熱と圧力を伝達させます。

TCB装置の有力メーカー

  • ASMPT(シンガポール):最大手クラスのシェアを持つ業界リーダー
  • BESI(オランダ):高精度実装技術に強み
  • HANMI Semiconductor(韓国):HBM向け装置で急拡大
  • 芝浦メカトロニクス(日本):超精密制御で高い採用実績(107字)

半導体パッケージ基板:熱圧着方式

 パッケージ基板とは、半導体チップ(ダイ)を載せ、マザーボードなどのメイン基板に接続するための中継基板のことです。半導体チップは非常に微細な端子を持ち、そのまま一般的なプリント基板(PCB)に直接実装することは極めて困難です。

 そこでチップとマザーボードの間に介在し、電気信号を橋渡しする役割を持つのがパッケージ基板です。

 従来の半導体の微細化による性能向上が限界に近づく中、半導体の先端パッケージング技術であるビルドアップ多層構造による高密度・微細配線が求められ、半導体性能向上の新たな競争軸となっています。

 前回はなぜ銀の混合によって析出強化が起きるのかや銅の役割に関する記事でしたが、今回は熱圧着による実装に関する記事となります。

半導体パッケージ基板の熱圧着方式とは何か

 熱圧着方式(TCB: Thermo-Compression Bonding)とは、チップと基板(またはチップ同士)の接合部に熱と加重(圧力)を同時にかけ、微細な端子(ハンダバンプや銅ピラー)を短時間で機械的・電気的に結合させる実装技術です。

従来方式(マスリフロー)との違い

 一括加熱する従来のリフロー炉方式に比べ、個別に位置決めしながら局所加熱・加圧を行う点が特徴です。

項目従来方式(マスリフロー / MR)熱圧着方式(TCB)
加熱方法パッケージ全体をリフロー炉で加熱ツール(ツールヘッド)でチップを局部加熱
加圧なし(自重のみ)あり(高精度に加重を制御)
接続ピッチ~100μm 以上~30–50μm 以下(微細化に対応)
薄型・反り対策反り(Warping)が発生しやすい加圧固定により反りを抑制
スループット高い(大量一括処理)低い(1個ずつの個別処理)

主な技術的メリット

  • 端子ピッチの微細化(狭ピッチ化): 隣り合うバンプ同士のブリッジ(ショート)を防ぎ、超多ピン接続を可能にします。
  • 熱反りの抑制: 加熱・冷却プロセス中にツールで基板とチップを物理的に押さえつけるため、基板の熱膨張による歪みや反りを防ぎます。
  • 薄型化チップの積層: HBM(高帯域幅メモリ)のように極薄化したダイを積層する際、破損や位置ズレを防ぎながら確実に接合できます。

主な用途

 HBM(High Bandwidth Memory)の多層積層、2.5D/3Dパッケージにおけるインターポーザへのチップ実装、高性能CPU/GPUのフリップチップ実装などで不可欠なプロセスとなっています。

半導体チップと基板の接合部に熱と圧力を同時に加えて結合する実装技術です。加熱時の基板の反りを物理的に抑え込み、微細な端子を高精度に接続できるため、HBMや3D積層などの高性能パッケージングに不可欠です。

どのようにして狙った位置だけに熱と圧力をかけるのか

 「狙った位置(チップと基板の接続面)」だけに熱と圧力を集中させる仕組みは、「光学アライメント」「局所加熱(密着伝導)」「高精度アクチュエータ」の3つの技術の組み合わせによって実現されています。

1. 位置合わせ:サブミクロン精度のアライメント

  • 光学カメラ認識: ツールがチップを吸着した後、チップ下面と基板上面にある「アライメントマーク(位置決め用目印)」を上下カメラで同時に撮影します。
  • 超精密ステージ補正: 画像解析データを元に、ステージやヘッドのX・Y・Z軸および回転(θ)軸を微調整し、サブミクロン(1μm以下)の精度で微細端子(バンプ)同士の位置を完全に一致させます。

2. 熱の集中:チップ経由の「局所(ローカル)加熱」

  • サイズ整合ツールによる面接触: チップの大きさにピッタリ合わせたツール先端(ボンディングヘッド)で、チップ背面のみをダイレクトに吸着・保持します。
  • 熱伝導の局所化: ツールを加熱(パルス加熱等)すると、熱は「ツール→チップ→バンプ(はんだ)」の最短ルートだけで直線的に伝わります。基板全体を熱炉に入れるわけではないため、周囲の素子や基板への熱影響を最小限に抑えられます。

3. 圧力の集中:垂直荷重の精密リアルタイム制御

  • ボイスコイルモーター(VCM)とロードセル: ツールを垂直下降させる際、高精度荷重センサー(ロードセル)が接合部に伝わる圧力をリアルタイムで計測します。
  • 面均一加圧: 軸の傾き(チルト)をミクロン単位で水平補正した状態で、数ミリニュートン(mN)単位の繊細な加重を垂直に印加します。これにより、狙ったバンプ群だけに偏りなく圧力がかかります。

 「カメラで位置を合わせ、チップ背面から直接熱を流し、ロードセルで垂直に押し込む」という一連の機構を1つのヘッド部で完結させることで、目的の接合面だけに熱と圧力を集中させています。

光学カメラでチップの位置を正確に合わせ、チップを吸着した先端ツール(ボンディングヘッド)から局所的に加熱・加圧します。基板全体を熱さず、高精度センサーで荷重を制御して接合部だけに直接熱と圧力を伝えます。

パルスヒーターとセラミックヒーターの違いは何か

 TCB装置やはんだ付け等で用いられるパルスヒーターセラミックヒーターの主な違いは、「加熱・昇温の応答速度(温度追従性)」と「温度の保持・熱効率」の設計思想にあります。

主な違いの比較

項目パルスヒーター方式(瞬時加熱)セラミックヒーター方式(常時加熱)
加熱メカニズムカンタル等の金属ヒーターに大電流をパルス状に通電させ、自己発熱(自己抵抗熱)させるセラミック内部に埋め込まれた発熱線に通電し、ヒーター全体を常時一定温度に保持する
昇温・降温速度極めて高速(ミリ秒~秒単位で数百℃まで昇温・降温可能)低速(常時一定温度を保ち、急速な温調には不向き)
温度制御センサーで温度をフィードバックしながらミリ秒単位でプロファイルを制御設定温度を安定して維持する静的制御
ツール構造ツール先端の熱容量を極限まで小さく設計蓄熱性を高めるため、ある程度の熱容量と剛性を持つ
適用プロセスTCB(加圧状態で溶融・固化させる場合)や熱に弱い基板への局所接合高スループットなフリップチップ実装や連続加熱工程

1. パルスヒーター方式(瞬時加熱)

  • 仕組み: 抵抗率の高い金属(ヒータチップ)にパルス状の大電流を一気に流し、ミリ秒単位で目標温度(例: 250〜300℃)まで急速立ち上げます。接合完了後は通電を止め、エア冷却等で速やかに冷却します。
  • メリット:
    • 加圧しながら固化できる: 加圧した状態で「加熱→はんだ溶融→冷却・固化」の一連のサイクルを行えるため、バンプのズレや反りを抑えられます。
    • 周辺への熱影響が少ない: 接合時のみ加熱するため、熱に弱い周囲の素子や基板へのダメージを最小限に抑えられます。
  • デメリット: 毎サイクル「加熱・冷却」を繰り返すため、サイクルタイム(タクトタイム)がやや長くなりやすい点や、ツールの熱膨張・収縮による熱疲労への考慮が必要です。

2. セラミックヒーター方式(常時加熱)

  • 仕組み: 耐熱性・絶線性に優れたセラミックス(窒化ケイ素や窒化アルミニウムなど)の中に発熱体を埋め込んだもので、常に一定の高温に保たれた状態で運用します。
  • メリット:
    • 高い熱効率と安定性: 熱伝導率が高く、ツール全体の温度を均一かつ高精度に長時間維持できます。
    • 高スループット: ツール本体の加熱・冷却待ち時間がないため、連続してチップをタクト良く吸着・圧着できます(プレヒートや事前仮圧着工程などに最適)。
  • デメリット: 常時高温であるため、ツール接触と同時に熱が急速伝導します。そのため、接触後の複雑な温度プロファイル制御や「加圧したまま冷却・固化させる」制御には適していません。

TCB実装における選定

  • パルスヒーター: 極小バンプのズレ防止や、薄型ダイの反り抑制が最優先されるファインピッチTCB・積層工程で威力を発揮します。
  • セラミックヒーター: プロセス時間の短縮やツール剛性・面均一性が重視される標準的なフリップチップ接合や仮圧着(Pre-bonding)工程などで好んで用いられます。

パルスヒーターは通電時のみ数秒で急昇温・冷却でき、加圧保持したままはんだを溶融・固化させて反りを防ぎます。

セラミックヒーターは常時一定温度を維持し、加熱待ちがなく高速・連続処理(高タクト)に適します。

TCB装置の有力メーカーはどこか

 TCB(熱圧着)装置市場は、AI半導体やHBM(高帯域幅メモリ)、チップレット需要の急増を背景に競争が激化しています。

1. グローバルトップ企業(高シェア・大手)

  • ASMPT(シンガポール/香港)
    • TCB装置市場の世界トップシェアを誇る最大手。
    • 2.5D/3Dパッケージング向けに「FIREBIRD」シリーズを展開し、ファウンドリや大手OSATに広範な納入実績を持ちます。
  • BESI(Besi Semiconductor Industries / オランダ)
    • 高精度フリップチップ・ボンダーで圧倒的な技術力を持ち、TCB分野でもトップクラスのシェアを誇ります。
    • アプライド・マテリアルズ(Applied Materials)との資本・技術提携など、先端パッケージングで強力な存在感を示しています。
  • Kulicke & Soffa(K&S / アメリカ・シンガポール)
    • ワイヤーボンディングの大手ですが、TCB装置分野でも高度な面接触・ファインピッチ制御技術を強みに大きな市場シェアを保有しています。

2. HBM・メモリエコシステムで急成長するメーカー

  • HANMI Semiconductor(ハンミ半導体 / 韓国)
    • SKハイニックス等のHBM製造ラインに「DUAL TC BONDER」を大量供給し、HBM向けTCB市場で急速にシェアを拡大・台頭した主要プレイヤーです。
  • HANWHA Precision Machinery(ハンファ / 韓国)
    • 韓国のメモリメーカーの供給網分散(マルチスourcing)の流れに乗り、HBM用TCB装置の開発・供給を強化しています。

3. 日本の有力メーカー

  • 芝浦メカトロニクス(Shibaura Mechatronics)
    • 超精密位置決め技術や熱制御技術に優れ、先端後工程向けのフリップチップ/TCBボンダーでグローバルに高い評価と採用実績を持ちます。
  • 新川(Yamaha Robotics Holdings / ヤマハ発動機グループ)
    • 旧・新川のボンド技術を継承し、後工程用ボンディング装置全般で実績があります。

選定のポイント

  • HBM(SKハイニックス・Samsung等): HANMI Semiconductor、ASMPT、日本メーカー系が凌ぎを削る領域。
  • ロジック・2.5D(TSMC系・ファウンドリ等): ASMPT、BESIが強み。

TCB装置の主要メーカーは、用途・市場ごとに存在感を発揮しています。

  • ASMPT(シンガポール):大手ファウンドリ等に強い世界最大手クラス
  • BESI(オランダ):高精度実装で高いシェアを保有
  • HANMI Semiconductor(韓国):HBM向けで急成長しシェア上位
  • 芝浦メカトロニクス(日本):超精密制御で高い評価

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