この記事で分かること

半導体パッケージ基板:UVレーザー
パッケージ基板とは、半導体チップ(ダイ)を載せ、マザーボードなどのメイン基板に接続するための中継基板のことです。半導体チップは非常に微細な端子を持ち、そのまま一般的なプリント基板(PCB)に直接実装することは極めて困難です。
そこでチップとマザーボードの間に介在し、電気信号を橋渡しする役割を持つのがパッケージ基板です。
従来の半導体の微細化による性能向上が限界に近づく中、半導体の先端パッケージング技術であるビルドアップ多層構造による高密度・微細配線が求められ、半導体性能向上の新たな競争軸となっています。
前回はCO2レーザービア加工機の有力メーカーである、三菱電機とビアメカニクスの装置に関する記事でしたが、今回はUVレーザーに関する記事となります。
UV(紫外線)レーザーはどんな特徴を持っているのか
半導体パッケージ基板の穴あけで使用されるUV(紫外線)レーザーとは、主に波長355nmの紫外線を用い、多層基板内に微細な通電用孔(マイクロビア)を高精度に形成する加工技術です。
主な特徴とメカニズム
- コールドプロセス(非熱的加工)
- 赤外線レーザーが熱で材料を溶融・蒸発させるのに対し、高エネルギーなUV光子は樹脂などの有機高分子の分子結合を直接切断(光化学的アブレーション)します。これにより焦げ(炭化)、熱変形、バリ(デブリ)の発生を最小限に抑えられます。
- 超微細径の加工(直径5〜30µm以下)
- レーザーの集光スポット径は波長に比例して小さくなるため、波長が短くスポット径を絞りやすいUVレーザーは、従来の加工機では難しい微細なビア(マイクロビア)を精密に穿孔可能です。
- 銅箔のダイレクト加工(Direct Via)
- 銅などの金属は紫外線領域の吸収率が高いため、絶縁層(ABF膜など)だけでなく、表層の銅箔を事前にエッチング除去することなく一度に直接貫通・穿孔できます。
他の穴あけ手法との比較
| 項目 | UVレーザー | CO2レーザー | メカニカルドリル |
| 主な波長 | 355 nm(紫外線) | 9.4 µm / 10.6 µm(遠赤外線) | 機械的切削 |
| 加工原理 | 光化学的解離(非熱的) | 熱的溶融・蒸発 | 物理的削り出し |
| 対応ビア径 | 5 〜 30 µm(超微細) | 30 〜 100 µm(中・小径) | 75 µm 以上 |
| 銅箔直接加工 | 可能 | 困難(反射率が高いため) | 可能(刃具摩耗大) |
| 熱影響(HAZ) | 極めて小さい | 比較的大きい | 機械的ストレス・バリが発生 |
主な用途
- FC-BGA基板(Flip Chip Ball Grid Array):PCやサーバー向け高性能CPU・GPUのパッケージ基板において、絶縁材料(ABF:味の素ビルドアップフィルム)への高密度マイクロビア形成に使用されます。
- 2.5D / 3D パッケージング(有機インターポーザ・再配線層):HBM(高帯域幅メモリ)接続やチップレット構成で使われる再配線層(RDL)の微細孔加工に対応します。
- FPC(フレキシブルプリント基板)・HDI基板:ポリイミドなどの熱に弱い極薄フィルム材への微細ブラインドビア・スルーホール加工に適用されます。

波長355nmの紫外線で分子結合を直接切断(非熱加工)する技術です。熱変形を抑えつつ絶縁層や銅箔を直接穿孔でき、先端半導体パッケージ基板へ30μm以下の超微細な通電用孔(ビア)を高精度に形成します。
なぜ大きな穴あけには適さないのか
UVレーザーが大きな穴あけに適さない最大の理由は、除去体積あたりの加工速度(スループット)が著しく低く、コストが見合わないためです。
スポット径が小さく「面削り(走査)」が必要になる
UVレーザーのビームスポット径は非常に小さいため、大きな穴(100µm以上など)を開けるには、ビームを円状に何度も走査させて内側を削り落とす「トレパニング加工」が必要となります。1発の照射で開けられるCO2レーザーなどに比べ、1穴あたりの時間が極端に長くなります。
出力の限界と波長変換ロス
UVレーザー(355nm)は、元の赤外線レーザーを波長変換結晶に通して生成するため、変換ロスが生じて高出力化が困難です。CO2レーザーのように高い熱エネルギーで一気に広範囲の樹脂を溶融・蒸発させることができません。
高い装置・運用コスト
UVレーザーの発振器や光学系は非常に高価で、紫外線による光学素子の劣化が早いためメンテナンスコストもかかります。高い精度を必要としない大径穴の加工に用いると、体積あたりの加工コストが高くなりすぎます。
そのため、実際の基板製造では「30µm以下の微細ビア=UVレーザー」「30〜100µm以上の穴や貫通孔=CO2レーザーやメカニカルドリル」という使い分けや、両者を組み合わせたハイブリッド加工が行われています。

ビームが極細で高出力化も難しいため、大径穴を開けるにはビームを何度も走査する必要があり、スループット(生産性)が著しく低下します。また装置・維持費が高価なため、大径穴の加工ではコストが見合いません。
なぜ分子結合を直接切断できるのか
UVレーザーが分子結合を直接切断できるのは、「UV光(紫外線)の光子1個が持つエネルギー」が、樹脂などの有機物が持つ「化学結合のエネルギー」と同等またはそれ以上に高いからです。
物理メカニズム
- 波長が短く、光子エネルギーが高い
- 量子力学の法則(E = hc/λ)により、光のエネルギー E は波長λに反比例します。波長が短いUV光(355nm)は、赤外線(10.6µm)の約30倍にも及ぶ約3.5 eVの光子エネルギーを持っています。
- 有機高分子の結合エネルギーと同等以上
- パッケージ基板に使われるエポキシ樹脂やポリイミドなどの主要な化学結合は、UV光子のエネルギーとほぼ同等の強さです。
- C–N 結合:約3.0 eV
- C–C 結合:約3.6 eV
- C–H 結合:約4.3 eV
- パッケージ基板に使われるエポキシ樹脂やポリイミドなどの主要な化学結合は、UV光子のエネルギーとほぼ同等の強さです。
- 「光化学アブレーション」による非熱的分解
- 赤外線レーザーはエネルギーが小さいため、分子を振動させて「熱」に変え、溶かして蒸発させます(光熱プロセス)。一方、UVレーザーは光子が分子の電子状態を直接励起し、熱を介さずに化学結合を瞬時に分解してガスや微粒子として弾き飛ばします(光化学アブレーション)。
この「熱を介さず直接結合を切り刻む」性質により、周囲の樹脂を焦がしたり熱変形させたりすることなく、きれいで微細な穴を開けることが可能になります。

波長が短いUV光は光子エネルギー(約3.5eV)が非常に高く、樹脂の化学結合エネルギーと同等以上だからです。赤外線のように熱を発生させず、光化学反応(光化学アブレーション)で分子結合を直接分解します。

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