この記事で分かること

9月国内エチレン製造ライン稼働率:70.2%
9月国内エチレン製造ライン稼働率は70.2%。中国の構造的過剰生産と国内需要低迷を背景に、好況の目安である90%割れは50カ月連続に到達しています。
中国勢による汎用樹脂の過剰生産と輸出攻勢によるアジア市場の需給悪化、および国内の構造的な内需縮小が直撃したことに加え、ナフサの安定的な量的確保や調達環境の不安定さが重なり、各社は意図的な減産・稼働調整を強いられています。
エチレンは何に使われるのか
エチレンは「石油化学のコメ」とも呼ばれる最も基本的な基礎化学原料であり、主に以下のようなプラスチックや生活用品の材料として幅広く使われています。
主な用途と製品例
- ポリエチレン(PE)
- エチレンをそのまま多数結合させて作られる代表的なプラスチックです。レジ袋やポリ袋、ラップ、容器、灯油缶などに使われています。
- エチレングリコール(EG)
- PETボトルの材料や、衣料用に使われるポリエステル繊維の原料になります。また、自動車の不凍液としても使われています。
- 塩化ビニル樹脂(PVC)の原料
- エチレンに塩素を反応させて作られます。水道管などの配管材、住宅の窓枠、ビニールシートなどに加工されます。
- スチレンモノマー(SM)
- エチレンとベンゼンから作られ、発泡スチロールや家電製品の筐体(ポリスチレン)などの原料になります。
- 酢酸ビニル(VAM) / EVA樹脂
- 接着剤や塗料のほか、スニーカーの靴底やマットなどに使われる柔軟性のあるEVA素材の原料になります。
- 工業用エタノール
- 消毒液やインク、塗料の溶剤として使用されています。
日用品から建築資材、自動車部品、繊維にいたるまで、現代の物づくりに欠かせない多様な製品の出発点として利用されています。

エチレンは「石油化学のコメ」と呼ばれ、レジ袋や容器に使うポリエチレン、PETボトルやポリエステル繊維の原料、水道管用の塩化ビニル、発泡スチロールなどの基礎原料として日用品から建築材まで広く使われます。
なぜエチレン製造設備の稼働が下がっているのか
国内のエチレン製造設備(エチレンセンター)の稼働率が長期にわたって低下(90%割れ)している背景には、一時的な需要変動ではなく、世界的な需給構造の変化と国内の環境悪化が同時に生じている複合的な理由があります。
1. 中国勢による巨大な過剰生産とアジア市況の悪化
最も大きな要因は、中国における石油化学設備の急激な増強です。中国では国を挙げた大型設備の建設により、エチレンおよびその誘導品(ポリエチレンなど)の生産能力が大幅に拡大しました。
しかし、中国国内の内需が低迷したため、余剰となった安価な化学製品がアジア市場全域へ一気に流出。これにより市況が暴落し、日本の化学メーカーは採算面から減産(稼働抑制)を余儀なくされています。
2. 国内需要(内需)の構造的な縮小
日本国内におけるエチレン需要そのものが減少傾向にあります。
- 人口減少・少子高齢化: 包装資材や日用品など、汎用プラスチック全体の国内需要が縮小。
- 産業構造の変化:自動車の軽量化やEV化に伴う部材の変化、製造業の海外移転などにより、国内での素材需要が減退しています。
3. 原料(ナフサ)の調達制約とコスト高
日本のエチレン製造は、原油を精製して得られる「ナフサ」を主原料としています。
中東情勢の緊張などによるナフサ調達の不安定化や価格高騰、地政学リスクに伴う調達ルートの制約が 重なり、原料確保の観点からもフル稼働をかけにくい状況が続いています。
こうした背景から、各社は「需要に見合った生産体制への縮小」や「定期修理の延長・稼働調整」を実施せざるを得ず、稼働率が好不況の目安とされる90%を大幅に下回り続ける構造に陥っています。

中国の大型設備増強による世界的な供給過剰と安価な製品流入、人口減少に伴う国内プラスチック需要の縮小、ナフサ調達制約によるコスト高が重なり、採算悪化を回避するため各社が減産を続けているからです。
日本のエチレン製造有力メーカーはどこか
日本の主要エチレン製造メーカーと、稼働率低下(稼働減)に対する対策は以下の通りです。
1. 日本の主要エチレン製造メーカー
現在、日本国内でエチレンセンター(ナフサ分解炉)を運用している主な企業・合弁会社は以下の通りです。
- 三菱ケミカル / 旭化成(三菱ケミカル旭化成エチレンとして水島地区で共同運営)
- 三井化学(千葉工場、大阪工場)
- 出光興産(千葉製油所)
- 丸善石油化学 / 京葉エチレン(千葉地区)
- レゾナック(旧昭和電工)(大分コンビナート)
- 東ソー(四日市事業所)
- ENEOS / 東燃化学(川崎地区など)
2. 稼働減に対する主な対策
構造的な需要低迷とアジア市況悪化に対応するため、各社は単なる減産にとどまらず、根本的な体制見直しを進めています。
- プラントの減損・閉鎖および集約(事業撤退)
- ENEOSなどの石油・化学メーカーは川崎地区などで保有する複数設備を1基へ集約する方針を表明。
- 三井化学、三菱ケミカル、旭化成など大手メーカー間でも、水島地区などの老朽・低稼働プラントを停止し、他の拠点(大阪など)に生産を集約・統廃合する動きが具体化しています。
- 競合他社とのアライアンス(広域連携・合弁化)
- 同一コンビナート内(千葉地区や水島地区など)でのパイプライン結合や原料融通、共通インフラの運用統合を進め、固定費削減と稼働効率化を図っています。
- 高機能・グリーン化学品へのシフト
- 汎用品(低価格の合成樹脂向け)の規模を縮小する一方、自動車軽量化材料、電子材料、ヘルスケア用途など「高付加価値なスペシャリティ化学品」へ投資集中を行っています。
- バイオマスナフサを用いた環境配慮型エチレンの生産や、使用済みプラスチックを化学的にリサイクル(ケミカルリサイクル)する取り組みを加速させています。

日本の主要メーカーは三井化学、三菱ケミカル、出光興産、レゾナックなどです。稼働減対策として、ライバル同士のプラント統合・休止による設備削減や、高付加価値な高機能素材・グリーン化学品へのシフトを急速に進めています。


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