インフィニオンのタイ新工場

半導体後工程のイメージ画像 半導体

この記事で分かること

インフィニオンのタイ新工場

 ドイツのパワー半導体大手インフィニオン・テクノロジーズ(Infineon Technologies)が、タイ・サムットプラーカーン県(バンコク近郊)に新たな半導体「後工程(組み立て・検査・パッケージング)」の製造拠点を開設しています。

 主に電気自動車(EV)、AIデータセンター、産業機器、エネルギーインフラ向けのパワー半導体やモジュール製品の後工程を担い、最大化されれば、同社最大級の後工程拠点のひとつとなります。

どんな半導体製品を製造するのか

 インフィニオンのタイ(サムットプラーカーン県)の新工場では、主にパワー半導体(電力制御用半導体)およびパワーモジュール製品の「後工程(組み立て・パッケージング・最終検査)」が行われます。

 前工程(ウエハの焼き付け等)で作られた半導体チップ(ダイ)を輸入し、保護ケースへの封止や配線、精密な動作テストを経て、製品として完成させて出荷します。

主な製造製品と用途

 製造される半導体製品は、高電圧・大電流を効率よく制御・変換するための複雑で高付加価値な製品群が中心です。

1. 電気自動車(EV)向け パワー半導体・モジュール

  • メインインバーター用モジュール:バッテリーの直流電力を交流に変換し、EVの駆動モーターを制御する心臓部パーツ。
  • 車載充電器(OBC)& DC-DCコンバーター:外部電源からバッテリーへの充電や、高電圧から補機用(12V/48V)への電圧変換を担うパワーIC。

2. AIデータセンター・サーバー向け 電源IC・パワー素子

  • 高効率パワーサプライ(電源装置)用IC:AI処理で激増する電力需要に対応するため、超高効率で発熱を抑えながら電力を供給するパワー半導体。

3. 再生可能エネルギー・産業機器向け パワーモジュール

  • 太陽光・風力発電用インバーター:発電した電力を系統に送るための電力変換モジュール。
  • EV急速充電スタンド用 パワーユニット:大電力を高速かつ安全に車両へ供給するスイッチング素子・モジュール。
  • 産業用モータードライブ:工場のロボットや産業機械の省エネ制御を行うインバーターモジュール。

技術的特徴(パッケージングと対応素材)

SiC(炭化珪素)およびGaN(窒化ガリウム)への対応

 従来のアナログシリコン(Si)だけでなく、次世代の「ワイドバンドギャップ半導体」と呼ばれる高効率なSiCやGaNを用いた高耐圧・高熱放散パッケージにも対応しています。

全プロセスの一貫対応

 前工程工場(ドイツのドレスデンやマレーシアのクリム工場など)から届いたウエハに対し、ウエハテストからダイシング(切断)、ダイ/ワイヤボンディング、樹脂封止(モールド)、最終動作選別検査までの全後工程を一貫して実施します。

主に電気自動車(EV)、AIデータセンター、再生可能エネルギー機器などに向けた「パワー半導体」や「パワーモジュール」です。前工程からの半導体チップの組み立て、パッケージング、動作検査を行っています。

インフィニオンのパワー半導体・モジュールの特徴は何か

 インフィニオン・テクノロジーズ(Infineon Technologies)は、パワー半導体(電力制御用半導体)のグローバル市場において長年トップシェアを誇る業界のリーダー企業であり、以下のような特徴を持っています。

1. Si・SiC・GaNの「全方位戦略(フルスペクトラム)」

 従来のシリコン(Si)製品だけでなく、次世代のワイドバンドギャップ半導体であるSiC(炭化珪素)およびGaN(窒化ガリウム)のすべてにおいて、業界トップクラスのラインナップと技術力を備えています。

  • Si(シリコン):長年の技術蓄積による極めて高い信頼性とコストパフォーマンス。
  • SiC(ブランド名:CoolSiC™):高耐圧・高耐熱性に優れ、EVの駆動インバーターや急速充電器、産業機器の高効率化に貢献。
  • GaN(ブランド名:CoolGaN™):超高速スイッチングと高効率が強みで、電源の小型化やAIデータセンター向け電源に最適。

2. 業界標準となっている「高度なモジュール技術」

 素子単体(ダイ)だけでなく、複数のパワー素子や制御回路を1つのパッケージに集積した「パワーモジュール」技術で圧倒的な実績を持ちます。

  • 車載向け(HybridPACK™ シリーズなど):EVのメインインバーター向けなどで世界のデファクトスタンダード(標準)となっており、優れた放熱性とコンパクトなサイズを実現。
  • インテリジェント・パワー・モジュール(CIPOS™ IPMなど):パワー素子に駆動・保護回路を統合しており、家電や産業用モータードライブの設計を容易にします。

3. 低損失・高パワー密度(省エネと小型化)

  • オン/オフ切り替え時の電力ロス(スイッチング損失)と電流が流れる際の抵抗(導通損失)を極限まで低減しています。
  • 同じ電力容量であればシステム全体を大幅に小型化・軽量化でき、機器のエネルギー効率(クーリングコスト削減やEVの航続距離アップ)を高めます。

4. 自己保護・制御機能を内蔵した「スマート化(IPD / PROFET™)」

 単なるスイッチ機能にとどまらず、過電流・過熱・短絡(ショート)などを自動検知して回路を保護する「IPD(インテリジェント・パワー・デバイス)」や「スマート・パワー・スイッチ」に強みがあります。

  • 従来の機械式リレーやフューズを電子化(ソリッドステート化)し、無音化・長寿命化・高信頼性化を実現します。

5. 周辺回路を含めた「システム全体の最適化」

 パワー半導体単体だけでなく、それを高速かつ安全に制御するゲートドライバーICや、車載マイコン(AURIX™シリーズなど)まで自社で網羅しています。これにより、顧客は制御用マイコンからパワー駆動部まで一括して最適化された設計が可能となります。

Si・SiC・GaNの全素材に対応し、低損失で高効率な性能が特徴です。車載や産業用に優れた放熱・小型化技術や保護機能を備えたモジュールを提供し、周辺回路を含めたシステム全体の最適化を可能にします。

パワー半導体・モジュールの有力メーカーはどこか

 パワー半導体およびパワーモジュール市場は、欧米の大手メーカーが上位を占める一方で、日本メーカー群も世界トップ10内に多数ランクインしており、高い国際競争力を維持している分野です。

 上位5社で世界市場全体の約半分(約45〜50%)を占める集中度の高い業界構造となっています。

1. 世界の主要有力メーカーとシェア概況

 各種市場調査(Omdia、Global Market Insights等)によるパワー半導体全体の市場シェア順位・主要プレイヤーは以下の通りです。

順位メーカー名本社国推定シェア(目安)主な強み・特徴
1位インフィニオン (Infineon)ドイツ約20〜24%圧倒的世界1位。Si・SiC・GaN全領域、車載・産業用モジュールで首位。
2位オンセミ (onsemi)アメリカ約8%前後2位グループ筆頭。SiC基板から自社で手掛ける垂直統合体制に強み。
3位STマイクロエレクトロニクススイス/仏約5〜7%EV大手(テスラ等)へのSiC導入で先行。車載・産業機器向け広域展開。
4位テキサス・インスツルメンツ (TI)アメリカ上位グループパワー管理IC(PMIC)やアナログICに圧倒的な強みを持つ。
5位三菱電機日本約3〜5%産業用・鉄道用・車載用の高耐圧パワーモジュール(IGBT)で世界首位級。

 このほか、アメリカのウルフスピード(Wolfspeed)(SiCウエハ・素子大手)やビシェイ(Vishay)、オランダのネクスペリア(Nexperia)なども主要プレイヤーです。

2. 日本の有力メーカー(世界トップ10圏内)

 日本勢は世界市場の中でトップ10のうち4〜5社を占めており、特に信頼性が求められる「産業機器用」「鉄道用」「車載用パワーモジュール」で高い存在感を示しています。

  • 三菱電機
    • 強み:高耐圧IGBTモジュールで世界トップクラス。電車(新幹線等)、風力・太陽光発電、エアコン用インバーターなど産業・重電向けに強い。
  • 富士電機
    • 強み:車載・産業用インバーター向けパワーモジュール。SiCへの投資も積極化中。
  • 東芝(東芝デバイス&ストレージ)
    • 強み:データセンターや産業機器・自動車向け MOSFET や小信号デバイスなど幅広く網羅。
  • ローム(ROHM)
    • 強み:次世代材料であるSiC(炭化珪素)にいち早く着目し投資を加速。自社でウエハから素子まで生産する一貫体制が武器。
  • ルネサス エレクトロニクス
    • 強み:車載マイコンで世界トップクラス。マイコンとパワー半導体を組み合わせたシステムソリューションを強みとする。

3. モジュール・次世代(SiC/GaN)領域での特徴

SiC(炭化珪素)市場

 EVの走行距離伸長に直結するため激しい開発競争が続いており、STマイクロ、インフィニオン、オンセミ、ウルフスピード、ロームの5社が市場をリードしています。

パワーモジュール市場

 単体の素子(ディスクリート)より市場成長率が高く、設計の難易度が高いため、インフィニオン、三菱電機、富士電機、オンセミの4社が大きなシェアを握っています。

首位は独インフィニオン(シェア約2割)で、米オンセミや欧STマイクロなどの欧米勢が上位を占めます。日本勢は三菱電機、富士電機、ロームなどがトップ10に入り、合計で約2〜3割のシェアを保持しています。

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