この記事で分かること

NTTらによる光チップレットの量産技術開発
NTTグループおよび主要パートナー企業は、次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」の中核技術である「光チップレット」の量産技術開発を本格化させると発表しました。
東芝傘下のジャパンセミコンダクターの拠点である岩手県北上市の事業所に実用化を見据えたパイロットラインを構築し、2028年頃をめどに年産1万台規模の生産体制確立を目指す計画が進められています。
IOWNとは何か
IOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)とは、NTTが中心となり提唱している、光技術を活用して従来の電子技術の限界を突破する次世代のコミュニケーション・情報処理基盤の構想です。
インターネットや通信ネットワークの未来を見据え、AIやデータ量の爆発的な増加による「電力の壁」や「遅延の壁」を克服することを目的としています。
IOWNが掲げる3つの画期的なターゲット
従来のインフラと比較して、以下の圧倒的なパフォーマンス向上を目標に掲げています。
- 電力効率 100倍(圧倒的な省電力化によりカーボンニュートラルに貢献)
- 伝送容量 125倍(大容量データの超高速伝送)
- 遅延 200分の1(エンド・エンドの遅延を削減し、リアルタイム性を極限まで高める)
IOWNを構成する3つの主要要素
IOWN構想は、主に以下の3つの要素で構成されています。
- オールフォトニクス・ネットワーク(APN:All-Photonics Network)
- 端末からネットワーク、サーバーの内部に至るまで、あらゆる場所に「光」をそのまま導入する技術です。電気へ変換する際のロスや発熱がなくなり、超低消費電力・超低遅延・大容量化を実現します。
- デジタルツインコンピューティング(DTC)
- 現実世界のモノや人、さらには社会全体をサイバー空間上で高精度に再現し、未来の予測やシミュレーションを行えるようにする技術です。
- コグニティブ・ファウンデーション(CF)
- ネットワークからコンピューティングリソースに至るまで、あらゆるICTインフラをAIを活用して一元的に管理・最適化する基盤です。

NTTが推進する次世代情報通信基盤。ネットワークから端末内部まで光技術(オールフォトニクス)を導入し、電力効率100倍、伝送容量125倍、遅延200分の1を実現してAI時代の電力爆発を解決します。
光チップレットとは何か
光チップレット(光電融合デバイス)とは、電気信号と光信号を一つのチップ上、あるいは極めて近接したパッケージ内で直接変換・融合させ、チップ間の通信を従来の「銅線(電気配線)」から「光」に置き換える次世代の超小型デバイスです。
IOWN構想において、サーバー内部やAIアクセラレータ(GPU等)の高速通信を支えるキーテクノロジーとなっています。
なぜ光チップレットが必要なのか
生成AIの急拡大により、膨大な数のGPUやCPUを高速で連携させる必要がありますが、従来の電気配線(銅線)には深刻な物理的限界(ボトルネック)が生じています。
- 電気抵抗による発熱と電力ロス: 伝送速度を上げようとするとジュール熱が増大し、データセンターの冷却電力が限界に達しています。
- 信号劣化と距離の限界: 電気配線では高周波化に伴い信号が減衰するため、ラック間やチップ間での長距離・大容量通信が困難になります。
これに対し、光信号は「発熱しない」「電気抵抗を受けない」「波長多重により大容量を一度に送れる」という特性を持つため、次世代の電力課題を根本から解決するアプローチとして期待されています。
光チップレットを構成する3つの主要技術
製造には最先端の半導体プロセスと光学技術の融合(ヘテロジニアス・インテグレーション)が不可欠です。
- シリコンフォトニクス(Silicon Photonics)
- 通常の半導体と同じシリコン基板上に、微細な光の通り道(光導波路)や変調器を作り込み、シリコン上で光をコントロールする技術です。
- 化合物半導体レーザー(光源)
- シリコン単体では光を発しにくいため、インジウムリン(InP)などの化合物半導体で作られた極薄のレーザー光源をシリコン基板上に精密に集積(ボンディング)します。
- 先端パッケージング(EICとPICの統合)
- 演算を担う電子集積回路(EIC)と、光通信を担う光集積回路(PIC)を、微細なバンプやダイレクトボンディング技術を用いて高密度に一体化します。
もたらされるメリット
- 圧倒的な省電力化: 信号伝送に伴う発熱と消費電力を劇的に削減。
- 帯域幅の飛躍的向上: 複数波長の光を重ね合わせて送る波長多重通信により、従来の電気配線とは比較にならない大容量データを一瞬で転送。
- 遅延の最小化: チップ間を光速で直結することで、AI処理やリアルタイム制御におけるラグを極限まで排除。

チップ間の通信を従来の電気配線から光に置き換える次世代デバイス。シリコンフォトニクス等の技術を活用し、AIサーバーなどの膨大な電力消費や発熱、帯域のボトルネックを根本から解決します。
岩手県北上市の事業所ではどんな生産を行うのか
岩手県北上市にある東芝傘下のジャパンセミコンダクターの事業所では、次世代通信基盤「IOWN」の核心となる光チップレット(光電融合デバイス)向けの「シリコンフォトニクス量産技術」の開発と製造が行われます。
具体的には、以下のプロセスや技術の確立が担われます。
- シリコンフォトニクスの製造プロセス構築
- シリコン基板上に、光を伝送する微細な「光導波路」や「変調器」「受光器」などを高精度に集積させるための半導体前工程の量産技術を開発・生産します。
- 異種材料集積(ヘテロジニアス・インテグレーション)への対応
- シリコン単体では発光させることが難しいため、化合物半導体などの異なる材料をシリコン基板上に精密に組み合わせるための基盤技術・製造ラインを整備します。
- パイロットラインの運用と量産化検証
- 2028年頃の年産1万台規模のパイロットライン稼働、および2031年までの本格的な国内量産体制の移行を見据え、研究開発段階から生産性を10倍以上に引き上げるための製造プロセス検証が行われます。
AIデータセンターなどの膨大な電力・発熱課題を根本から解決する光電融合デバイスの、国内サプライチェーンの心臓部として極めて重要な役割を担っています。

岩手県北上市の事業所では、IOWN構想向けの光チップレット(光電融合デバイス)に必要な「シリコンフォトニクス」の製造ラインを構築。シリコン基板上への光導波路や変調器の集積など、量産化プロセスの確立を推進します。


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