この記事で分かること

半導体パッケージ基板:ドライフィルムレジスト
パッケージ基板とは、半導体チップ(ダイ)を載せ、マザーボードなどのメイン基板に接続するための中継基板のことです。半導体チップは非常に微細な端子を持ち、そのまま一般的なプリント基板(PCB)に直接実装することは極めて困難です。
そこでチップとマザーボードの間に介在し、電気信号を橋渡しする役割を持つのがパッケージ基板です。
従来の半導体の微細化による性能向上が限界に近づく中、半導体の先端パッケージング技術であるビルドアップ多層構造による高密度・微細配線が求められ、半導体性能向上の新たな競争軸となっています。
前回はMSAP、フォトレジストによるパターニングに関する記事でしたが、今回はパターニングに使用されるレジスト材料に関する記事となります。
ドライフィルムレジストにはどんな物質が使用されるのか
半導体パッケージ基板やプリント基板の製造で使われるドライフィルムレジスト(DFR)は、感光性の樹脂層を上下の保護フィルムで挟んだ3層構造になっています。
その中心となる「感光性レジスト層(フィルム本体)」には、光に反応して硬化する以下のような化学物質(成分)が配合されています。
1. 感光性レジスト層の主な化学成分
- 高分子バインダー(結着剤)
- 主な物質: アクリル系樹脂、メタクリル酸共重合体など
- 役割: フィルムとしての物理的な強度や柔軟性を与え、現像時には弱アルカリ性水溶液に溶けて洗い流される性質(アルカリ可溶性)を付与します。
- 光重合性モノマー / オリゴマー
- 主な物質: 多官能アクリレート系化合物など
- 役割: 露光(光の照射)を受けると、分子同士が結合して網目状に架橋・硬化し、現像液に溶けない強靭な壁を作ります。
- 光重合開始剤
- 主な物質: ベンゾフェノン系誘導体、オキシムエステル系化合物など
- 役割: 紫外線などの光を吸収してラジカル(反応性の高い物質)を発生させ、モノマーの重合反応を一気に引き起こす「火付け役」となります。
- 染料・顔料・添加剤
- 役割: 露光後や現像後に回路パターンを目視で確認しやすくするための着色料や、保存中の自然硬化を防ぐ熱安定剤などが含まれます。
2. DFR全体のフィルム構造
基板にラミネートされる前のドライフィルムは、以下の3層構造(サンドイッチ状)になっています。
- カバーフィルム(表面保護層)
- ポリエチレン(PE)などのフィルム。基板に貼り付ける直前に剥がします。
- 感光性レジスト層(本体)
- 上記の化学成分が均一な厚みに塗布されたメインの層(厚さは用途により数数十 μm)。
- サポートフィルム(ベースフィルム)
- ポリエチレンテレフタレート(PET / ポリエステル)フィルム。レジストの形状を支え、露光する直前(ダイレクト露光の直前など)まで表面を保護します。

ドライフィルムレジストの主成分は、強度や現像性を担うアクリル系高分子バインダー、光で硬化する光重合性モノマー、反応を促す光重合開始剤です。これらがPEやPETの保護フィルムに挟まれています。
ドライフィルムと液状レジストの違いとは何か
半導体パッケージ基板や高密度プリント基板の製造では、シート状のドライフィルムレジスト(DFR)のほかに、液状の液状レジスト(LPR:Liquid Photoresist)も使い分けられています。
1. ドライフィルムレジスト(DFR)と液状レジスト(LPR)の主な違い
| 比較項目 | ドライフィルムレジスト(DFR) | 液状レジスト(LPR) |
| 物理形態 | フィルム状(厚みが一定で扱いやすい) | 液体状(スピンコートやスプレー等で塗布) |
| 膜厚のコントロール | 20〜50μmなど、厚膜の均一性が高い | 数μm〜15μm程度までの極薄膜が可能 |
| 解像性(微細化) | L/S = 10〜15μm付近が実用的な限界になりやすい | L/S = 数μm〜10μm未満の超微細パターンに対応 |
| 段差追従性 | 凹凸や既存の配線段差がある場合、気泡(ボイド)を巻き込みやすい | 流動性があるため、微細な凹凸や段差に密着しやすい |
| 作業性・コスト | ラミネートするだけで簡便、量産性に優れる | 塗布・乾燥条件のシビアな管理が必要でコストが高め |
2. 半導体パッケージ基板での使い分け
半導体パッケージ基板の高密度化(ファインピッチ化)が進むにつれ、求められる性能に応じて以下のように使い分けられています。
DFR(ドライフィルム)が使われる領域
- 中・高密度パッケージ(FC-CSPや一般的なMSAP基板)
- 配線幅/間隔(L/S)が 15μm〜20μm 程度、あるいはそれ以上の比較的ゆとりのある層や、一定の厚み(膜厚)が必要な回路形成に向いています。作業性が良く、安定した量産が可能です。
LPR(液状レジスト)が使われる領域
- 最先端の微細パッケージ(次世代FC-BGAや高密度SAP/MSAP)
- L/Sが 5〜10μm を下回るような超微細な回路形成や、すでに下層に細かい配線段差があるビルドアップ層では、フィルムでは密着不良や解像不足が起きるため、液状レジスト(電着レジストやスピンコート・ダイコート対応レジストなど)が必須となります。極薄かつ高解像度にパターニングできるため、最先端AIチップ用の基板などで採用が進んでいます。

ドライフィルム(DFR)は作業性と厚膜性に優れ通常のMSAP基板に最適です。一方、液状レジスト(LPR)は超薄膜化が可能で高解像なため、先端パッケージの超微細配線(L/S数μm)に使い分けられます。
なぜドライフィルムレジストは解像性で劣るのか
ドライフィルムレジスト(DFR)が液状レジスト(LPR)に比べて解像性で劣る(微細化が難しい)主な理由は、主に以下の3点によるものです。
ラミネート時の段差追従性の限界
熱と圧力で基板に貼り付ける際、既存の配線段差に対して完全に密着しきれず、微小な空隙(ボイド)や浮きが生じやすくなります。これが現像時のパターン剥がれやラインのショートを引き起こす原因になります。
膜厚の厚さと光の回折・散乱
DFRはフィルムとして自立させる必要があるため、厚みが20〜40μm程度と比較的厚くなります。厚膜であるほど露光時に光が内部で回り込みやすく、パターンの側面が垂直に立ち上がらずにテーパー状になるため、数μm以下の超微細な配線(L/S < 10μm)の解像が困難になります。
サポートフィルムや界面による光のボやけ
露光時に表面の保護フィルム(PETなど)やレジスト層との界面を光が通過する際、散乱が起きるため、フォトマスクのパターンがシャープに転写されにくくなります。

ドライフィルムレジストは膜厚が厚く(20〜40μm)、露光時に光の回折や散乱でパターンが垂直に立ち上がりにくいことや、ラミネート時の段差追従性の限界により、数μm以下の超微細加工(解像性)で液状レジストに劣ります。


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