荏原製作所の半導体工場向け冷却装置

半導体製造装置の画像 半導体

この記事で分かること

チラーの使用工程

露光やプラズマエッチング、CMP、成膜など前工程全般で使われます。プラズマ熱や摩擦熱を冷却し、加工位置ズレや化学反応のバラつきを防ぐことで、ナノ単位の加工精度と歩留まりを維持します。

精密な温度管理の方法

装置信号から熱負荷を先回り検知する「フィードフォワード制御」と、冷却・加熱の精密な同時調整を組み合わせます。ウエハ直近のセンサで二重監視し、熱変動を即座に相殺して±0.01℃単位で維持します。

電力・水消費の削減

常時フル稼働を見直し、熱負荷に応じたインバータ可変制御を採用。冷やし過ぎをヒーターで再加熱する電力ロスを削減しました。さらに排熱量に合わせて一次冷却水の流量を絞ることで、水消費も抑えます。

荏原製作所の半導体工場向け冷却装置

 荏原製作所が展開する半導体工場向け冷却装置(チラー)および流体制御ソリューションは、装置の熱負荷に応じた運転制御と流体技術の最適化により、従来比で電力および冷却水の使用量を3〜5割(30〜50%)削減する省エネ技術です。

 2nm以下の先端プロセスや3D積層、EUV露光、高出力プラズマエッチングの採用により、装置1台あたりの発熱量が大幅に増加するなかで省エネ技術にも注目が集まっています。

チラーは半導体製造のどんな工程で使われるのか

半導体製造におけるチラー(温度調節装置)は、熱による加工寸法のブレや化学反応速度の変動を防ぐため、前工程(ウエハ処理)のほぼすべての主要プロセスで利用されます。

チラーが使われる主な工程と役割

工程温調・冷却の主な対象チラーの役割と要件
プラズマエッチングウエハステージ(静電チャック)、RF電源最も過酷かつ台数が使われる工程。 プラズマ熱からウエハを守り、深さ・幅の加工形状やエッチング速度をウエハ全面で均一に維持。
露光(リソグラフィ)ウエハ・マスクステージ、光学レンズ/鏡、光源熱膨張によるナノメートル単位の位置ズレ(重ね合わせ精度低下)を防ぐ。±0.01℃レベルの超精密温調が必須。
CMP(化学機械研磨)研磨定盤(プラテン)、スラリー(研磨液)摩擦熱によるスラリーの化学反応速度の変化を抑え、平坦化精度と研磨パッドの寿命を維持。
CVD / PVD(成膜)チャンバー壁面、シャワーヘッド、真空ポンプチャンバー壁面への不要な副生成物の付着防止や、高出力駆動部の熱保護。
イオン注入ウエハホルダー、ビームライン高エネルギーイオンの衝突に伴うウエハ過熱とレジスト焦げを予防。
洗浄・ウェット処理薬液槽、リンス液薬液の化学反応速度を一定に保ち、エッチング・洗浄の再現性を維持。

特にエッチング工程で不可欠とされる理由

  • ダイレクトな熱可変処理: ドライエッチングでは数キロワット級のプラズマをウエハに照射するため、一瞬で熱が上昇します。ウエハ裏面にフッ素系不活性不燃性冷媒(ガルデンやフロリナートなど)を流し、リアルタイムで熱を吸収・放熱します。
  • 多ゾーン個別制御(マルチゾーン温調): 最新の2nmプロセスや3D積層チップでは、ウエハの「中央部」と「外周部」で数度の温度差をつけて反応速度を調整するため、1台のチラーから異なる温度の冷媒を複数のゾーンへ独立供給する制御が行われます。

チラーは露光やプラズマエッチング、CMP、成膜など前工程全般で使われます。プラズマ熱や摩擦熱を冷却し、加工位置ズレや化学反応速度のバラつきを防ぐことで、ナノ単位の加工精度と歩留まりを維持します。

どのように精密に温度を管理するのか

 半導体チラーが±0.01℃レベルの超精密温調を実現できるのは、単に「温まったら冷やす」のではなく、製造装置からの動作予測(フィードフォワード)と加熱・冷却の同時精密制御を組み合わせているためです。

精密温度管理を可能にする4つのコア技術

  • フィードフォワード制御(動作前予測): プラズマ着火など数キロワットの熱負荷がかかる「瞬間」の信号を製造装置から直接受け取り、温度が跳ね上がる前に冷却出力を先回りして立ち上げます。
  • 加熱(ヒーター)と冷却の同時相殺: 大まかな熱はコンプレッサー等で冷やし、±0.1℃以下の微小な温度ブレに対しては、応答速度が極めて速い電気ヒーターの出力を微小に調整して熱量を相殺します。
  • ホットガスバイパス弁・電子膨張弁: コンプレッサーの回転数を変える時間ロスを避けるため、圧縮後の高温冷媒ガスをバイパス弁で直接コントロールし、冷却能力を無段階かつミリ秒単位で調整します。
  • カスケードPID制御(二重フィードバック): チラー出口の冷媒温度だけでなく、実際のウエハステージ内部に埋め込まれた高精度温度センサ(Pt1000等)のデータを常に監視し、二重の制御ループで即座に補正します。

主要コンポーネントと機能

技術要素主な仕組み精密温調への効果
電子比例バイパス弁高温・低温冷媒の混合比を無段階で微調整冷却能力の急激な変化(ハンチング)を防止
高周波PWMヒーターSSR(無接点リレー)による高速ON/OFF駆動温度変化のオーバーシュート(行き過ぎ)を抑制
フッ素系熱媒体(ガルデン等)低粘性・高熱伝達な不活性不燃性液体熱をすばやく奪い、ウエハ裏面への熱伝導タイムラグを最小化
マルチゾーン独立配管ウエハの中心部と外周部で流路を分割1枚のウエハ面内での同心円状の温度ムラを解消

装置からの信号で熱負荷を先回り検知する「フィードフォワード制御」と、冷却およびヒーター加熱の同時微調整を組み合わせます。ウエハ直近のセンサで二重監視し、熱変動を即座に相殺することで±0.01℃単位で管理します。

どのように電力と水消費を3〜5割減にしたのか

 従来の半導体チラーは「常にフルパワーで冷却し、冷やし過ぎた分を電気ヒーターで温め直して微調整する」という熱量を捨てる運転を行っていました。荏原はこれを「熱負荷に応じた完全オンデマンド制御」「ファブ供給水の流量最適化」へ刷新することで、大電力・大節水を実現しています。

電力消費を3〜5割減らす仕組み

  • コンプレッサーとポンプの完全インバータ駆動: プラズマ照射時などの高負荷時と、待機・ウエハ搬送時の低負荷時に合わせ、モーター回転数をリアルタイムで最適化します。
  • ヒーター加熱相殺の極小化: 「冷却力+ヒーター熱」で相殺する無駄なエネルギーロスを減らし、電子膨張弁やコンプレッサーの容積変化によって冷却力そのものをダイナミックに調整します。
  • 流路の圧損低減: 熱交換器や配管内部の流体抵抗を抑える新設計により、ポンプの送水に必要なエネルギーを最小限に抑えています。

冷却水消費を3〜5割減らす仕組み

  • ファブ一次冷却水の比例制御: チラー内部の熱を屋外(クーリングタワー等)へ逃がすための一次冷却水配管に電動バルブを搭載し、排熱量に合わせて水流量を絞り込みます(従来のような常時流しっぱなしを廃止)。
  • プレート式高効率熱交換器: 冷媒と一次水との接触面における熱伝導率を高め、少ない水流量でも効率よく熱を移動させます。

従来方式と荏原省エネ方式の動作比較

制御要素従来のチラー方式荏原の省エネ型チラー削減効果
圧縮機・ポンプ常に一定(100%出力)負荷に連動した可変速(インバータ)無駄な連続全速駆動を廃止
温度微調整大出力ヒーターで冷気を打ち消し冷媒流量・バイパス開度の精密制御ヒーター電力を劇的にカット
一次側冷却水定流量を連続投入必要排熱量に応じた自動開閉・流量調節工場全体の蒸発・補充水量を大幅抑制

常時フル稼働を見直し、熱負荷に応じたインバータ制御を導入。冷やし過ぎをヒーターで再加熱する電力ロスを削減しました。さらに排熱量に合わせて一次冷却水の流量を可変制御することで、水消費も大幅に抑えます。

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